今回ライナーが刺されると期待されていると思いますが、申し訳ございません!
今回ライナー刺されません!
自分もライナー対ストーカーを書こうと思ったんですが、自分の中のガビ山先生に待ったをかけられました!
なので、ライナー対ストーカーは次話になります!
本当に申し訳ございません!
自分の中のガビ山先生にまた脳を焼かれたので初投稿です!
『ねぇ、ライナー。赤ちゃんを抱っこしてあげて』
『……え』
その言葉を聞いて、そんなことは出来ないと思った。
大勢の人を殺した俺が、この子たちに触れることなんて許されないと思ったから。
『いや……でも。アイ……俺は』
『お願い……ライナー』
『ああ……わかった』
出産したばかりで精神が不安定になっているのだろう。
泣きそうになりながらアイは俺に頼んでくる。
そうまでして頼まれたのに、断ることは出来なかった。
眠っている子に、血まみれの手を伸ばす。
呼吸が荒くなり、吐き気が込み上げてくる。
いやだ、触れたくない、この子たちを汚したくない。
やめてしまいたいのに、逃げてしまいたいのに。
『大丈夫だよ、ライナー』
優しく微笑むアイが、それを許してくれない。
俺なんかが、この子たちに触れてもいいのだと言ってくれる。
逃げることを許してくれない。
そうだ、逃げないと誓ったのに。
俺はまた逃げようとしていた。
覚悟を決めてまだ眠っている子に触れる。
『……あ』
あれだけあった罪悪感が、後悔が、逃げたいという思いが、一瞬で消え去った。
『あれ……なんで』
気付いたら目から涙が出ていた。
そんなつもりはないのに。
止めようと思っているのに全然涙が止まらない。
『アイ……ごめん。ちがうんだ……すぐ止めるから』
止めないといけないのに、涙は止まらない。
止めようと思っているのに、止め方がわからない。
どうしてしまったんだ俺は。
こんなこと前の世界でもなかったのに。
このままじゃアイにおかしくなったと思われてしまう。
だけど、アイは。
『ありがとう、ライナー』
嬉しそうに笑った。
『その子たちのために泣いてくれてありがとう。その子たちが産まれた、こと。祝福して……くれて。……ありがとう』
『俺……が?』
アイも耐えきれずに泣き出す。
アイは言った。
祝福してくれてありがとうと。
『いい……のか?俺なんかがこの子たちを祝福しても』
祝福なんてしてはいけないと思っていた。
大勢の人を殺して、責任も果たさず、守るべき子供たちから逃げた、俺のような存在がこの子たちを祝福なんてしてはいけないと。
『いいんだよ……ライナー。祝福……してあげて』
そうまで言われて、もう我慢することはなかった。
「……よ」
『あり……がとう』
言ってしまったら、もう止められなかった。
止めるつもりもなかった。
『ありがとう』
「……イナー」
心からの言葉だった。
「……きてよ」
『産まれて来てくれて……ありがとう』
小さくて、柔らくて、それでいて、とてもあたたかい。
世界で一番大切な存在を、潰してしまわないように、壊してしまわないように、やさしく抱きしめる。
『大丈夫……必ず……守るから』
「ライナー!」
「起きてよライナーさん!」
名前を呼ばれながら体を揺さぶられて目を覚ます。
「アクア?ルビー?」
目を開けるとアクアとルビーが俺をのぞき込んでいる。
「おそーい!やっと起きた!」
「もう朝だよライナーさん」
「アクア、ルビー……どうして?」
アクアとルビーがどうして俺の部屋にいるんだ?
「どうしてって、ライナーさんがウチに泊まったからだよ」
「そうか……そういえば泊まっていたな」
どうしてアクアとルビーがいるのかと疑問に思ったが、そういえばアイの部屋に泊まったんだった。
アイの部屋に泊まるのは初めてだったから泊まったことを忘れていた。
「寝ぼけてないで早く起きて!」
「もう朝ごはんできるよ」
たしかに今日はドーム公演の日だから寝ぼけている場合じゃない。
朝食が出来ているなら早くいかないとみんな俺が行くまで待つだろうし、ドーム公演の準備だってあるから起きないといけない。
「顔を洗ったらすぐに行くから先に行っててくれ」
「わかった」
「早く来てね!」
アクアとルビーを先に行かせて、俺は洗面所で顔を洗う。
冷たい水で顔を洗えば眠気が一瞬で無くなる。
「夢を……見なかったな」
この世界に生まれ、自分の存在が覚醒してから毎日夢を見ていた。
夢の内容は俺が子供の時や戦士候補生の時。
あいつらと一緒に生活していた時だったり、副長としてあいつらといた時のことだったりした。
あの世界で生きていた俺のさまざまな記憶を夢として見ていた。
そのおかげで俺は自分の犯した罪を忘れることはなかったし、毎日多少なり苦しむことが出来た。
「あいつらの……おかげなのか?」
毎日見ていた夢を見なかった理由として考えられるのは間違いなくアイたちだろう。
きっとアイたちと一緒に寝たから夢を見なかった。
「俺にとって……あいつらは」
どういう存在なんだ?
守るべき存在なのは間違いない。
だけど家族じゃないし、友人ともちょっと違う。
共に戦う仲間というわけでも俺のあとを継承するわけでもない。
「あいつらにとって……俺は」
どういう存在なんだ?
「ライナーまだ!?」
そんなことを考えていたせいでみんなを待たせてしまっていたらしい。
ルビーに呼ばれてしまう。
「すまない、今行く!」
早く顔を拭いてみんなのところに行かないと。
今は俺のことなんかよりドーム公演を優先するべきだろうに。
急いで顔を拭きみんなのところへ行く。
「やっと来た!」
「すまない。まだ寝ぼけていた」
「大丈夫?疲れているんじゃない?」
「そうかもしれないな。気を付ける」
アイが俺の心配をするからそれに合わせる。
実際、ドーム公演のために色々としていたから疲れているのは間違いないからな。
「ドーム公演が終わったらしばらくお休みもらったら?」
「まぁ……考えておく」
「あ、これ休まないやつだ」
休むつもりではあるが、忙しくて休めない可能性だってある。
だからそんな目で見ないでくれアクア。
「とりあえず今はドーム公演だ。休みの話は公演が終わった後でいい」
「それはそうだけど……」
アクアも優先すべきことがわかっているからしぶしぶといった感じで引き下がる。
ドーム公演をすればその感動できっと俺の休みのことなんか忘れてしまうだろうから、これで問題ない。
「とりあえず朝ご飯出来たから食べちゃおうよ!」
「そうだな。ほら、みんなで食べよう」
アイが朝食を用意してくれたからアクアの意識をそっちに誘導する。
アイが用意してくれたのはトーストとサラダにハムエッグ。
言ったらまたいろいろと言われそうだから黙っておくが、俺の食事のほとんどはコンビニ弁当やカップ麺だからこういった誰かの手料理は新鮮だ。
「よし、じゃあみんな手を合わせて。せーの!」
「「「「いただきます!」」」」
トーストをかじると外はサクッとしていて中はしっとりとしていてとても美味い。
パンがいいのか、トースターがいいのか、あるいは俺の普段の食事がひどいのかとにかく食がすすむ。
「そういえばライナー。どんな夢見てたの?」
「ルビー、どうして俺が夢を見ていたって思うんだ?」
食べているとルビーがそんなことを聞いてくる。
どうしてルビーは俺が夢を見ていたことを知っているんだ?
「ライナー寝言で言ってたよ。『ありがとう』とか。『守る』とか」
「……そうか」
まさか、口に出していたとは。
今回は2人が産まれた時の記憶だったが、あの世界の記憶だったら聞かれたらマズイ。
少し気を付けないといけないな。
「どんな夢を見ていたか教えてよライナー!」
顎に手を当てて考える。
あの世界のことを話すことは出来ないが、俺が見たのはアクアとルビーが産まれた日の記憶だ。
なら話しても問題ないだろう。
「どうしたのライナー?」
「覚えていないんだろ。夢ってそんなもんじゃん」
どうやら考えていたせいで待たせてしまったみたいだ。
アクアとルビーが産まれた時のことを話したことはなかったからいいきっかけかもしれない。
「すまない、夢の内容は覚えているんだが夢というよりは俺の記憶だから話すか少し迷った」
「記憶?」
「どんな記憶なの!?」
興味津々と言った感じのルビーにアクアも興味がありそうだ。
「俺が見たのはアクアとルビーが産まれた日の記憶だ」
「……僕と」
「……私が」
夢として見たおかげであの日の記憶を鮮明に思い出すことが出来た。
2人を初めて抱いた時のことを。
机に視線を落とし、あの時のことを思い出しながら話す。
「俺が初めて2人に会ったのはアイが2人を産んで病室で休んでいる時だ。2人はアイの横で並んで眠っていた」
産まれたばかりでどっちがアクアでどっちがルビーかなんてわからなかったが、2人とも同じくらいかわいかった。
「2人を見ていたらアイにだっこしてあげてくれって言われたんだが、俺はそんなこと出来ないって思った。俺なんかが触れてしまったら、この子たちを汚してしまうと思ったからだ」
たくさんの人を殺して血塗れになってしまった俺の両手。
そんな手で触れてしまったら、この子たちを汚してしまうと。
だから、俺はこの子たちに触れるわけにはいかないと思っていたんだ。
「だけど、アイが泣きそうになりながら俺に頼むから、俺はだっこすることにしたんだ。2人を産んだばかりで精神的に不安定なアイの頼みを断ってしまったらアイを傷付けてしまうと思ってな」
世間は決して認めてくれないであろう、妊娠と出産。
長時間にも及ぶ激痛を乗り越えて産まれた子をだっこしてもらえなかった時にアイがどれだけ傷付くかを考えたら、俺に断ることは出来なかった。
「2人を抱いたとき、俺は驚いていた。2人を抱いたら勝手に涙が溢れて来たんだからな」
あの世界でも勝手に涙が溢れたことなんてなかった。
泣く資格なんて俺には無かったからだ。
「どうして涙が流れるのかわからないし、止めようと思っても全然止まらないから俺は自分がおかしくなってしまったと思ったよ」
あの時まで、あの世界でも、今の世界でも涙が勝手に流れたことなんてなかった。
きっと2人に触れてしまった罪悪感でおかしくなってしまったんじゃないかと思っていた。
「だけどそんな俺にアイが言ってくれたんだ。『ありがとう』ってな」
どうしてそんなことを言うのかその瞬間はわからなかった。
どうしてアイは俺に『ありがとう』なんて言ったのか。
「『その子たちのために泣いてくれてありがとう』、『その子たちが産まれたことを祝福してくれてありがとう』。アイにそう言ってもらって、俺はようやく気が付いたんだ。俺はこの子たちが無事に産まれて来てくれたことを心から喜んでいるんだってな」
大勢の人を殺して、戦士としての責任も果たさず。
守るべき子供たちから逃げだしたクソ野郎が俺だ。
そんな奴が、この子たちを祝福なんて出来ない。
祝福なんてしてはいけないと思ったのに。
だけどアイは許してくれた。
こんな俺に言ってくれた。
『ありがとう』と。
『祝福してくれてありがとう』と。
「もう涙を止める気はなかった。俺は泣きながら言ったんだ。『産まれて来てくれて……ありがとう』。『大丈夫……必ず……守るから』ってな。ルビーが聞いたのはきっとその時の言葉だろう」
寝言だから1部分しかうまく聞き取れなかったんだろう。
それで俺がどんな夢を見ていたのか気になって聞いてみたという感じか。
「これが今日俺が見た夢……だ」
話終わったからみんなを見るとアクアもルビーも顔を真っ赤にしているし、アイにいたっては真っ赤な顔になっているうえに目に涙まで浮かべている。
もしかして俺はけっこう恥ずかしいことを言ってしまったんじゃないのか?
そう思ったら俺も顔が赤くなるのを感じた。
なんとも言いようのない空気が漂う。
「ねぇ……ライナー。今からドームなのにどうするのこの空気?」
「いや……俺は聞かれたから答えただけで」
真っ赤な顔のままアイに責められるが、まさか俺もこんな風になるとは思わなかったからどうしようもない。
「前々から思っていたけど……やっぱりライナーって私たちのパパだよね!」
どうしようか迷っていたらルビーがとんでもないことを言い出した!
「いや……血の繋がりはないから俺は2人の父親じゃ」
「血の繋がりとか、そういうことじゃないよライナーさん」
否定しようとするが、すぐにアクアに遮られる。
「出産の時にいてくれて、僕たちが産まれたことを泣くほど喜んでくれたうえに、『産まれて来てくれて……ありがとう』、『大丈夫……必ず……守るから』って言ってくれるのは血の繋がり関係なく父親だよ」
「だけどな……」
「どうしてそこまで否定するの!?は!もしかして本当に私たちのパパだからバレないように必死になってるの!?」
「本当に違うんだ!アイもなんとか言ってくれ!」
まずい、どんどん俺が父親だと疑われている。
アイが俺が父親じゃないと言ってくれれば2人も納得してくれるだろう。
「もうライナーがパパでいいんじゃない?」
「アイ!?」
なんか遠い目をしたアイが俺が父親でいいとか言い出した!
「どうしてそんなことを言うんだ!」
「だって、これだけ一緒にいてくれているのに父親じゃないって言うのは無理あるよ。それに父親って言われる度に否定するの大変でしょ?ならいっそのことライナーが父親ってことにした方が楽じゃない?」
アクアとルビーはおろかアイですら俺を父親ということにしようとしてくる。
このままだったら本当に俺が父親ってことになりかねない!
俺の味方は誰1人いないが、引けない状況がある!
今がそうだ!
「とりあえず今は飯を食うぞ!それにこの後ドームだ!俺が父親かどうかは後だ!」
「逃げた」
「逃げたな」
「逃げたね」
逃げたことになるかもしれないが、このあとドームだから俺の判断は間違っていないはずだ。
「いっそのことドームでカミングアウトしちゃおうかな?」
「そんなことしたら大問題になるから絶対にするなよ!」
そんなことしたらどれだけ炎上するかわかったもんじゃない。
俺たちだけじゃなくて苺プロが終わっちまう!
「あはは、冗談だよ!」
「何度も言うが、そういった冗談はやめろ」
アイは何度かこういった冗談を言うが、そのたびに心臓が苦しくなるからやめてほしいんだが。
「どうすればライナーを私たちのパパに出来ると思う?」
「まずは外堀を埋めるべきだな。SNSにライナーさんと俺たちが一緒にいるところをアップしまくろう」
アクアとルビーがなにやら企んでいる。
これから一緒に写真を撮られたりしないように気を付けないといけないな。
まったく、どうしてドーム公演当日にこんなことで悩まなくちゃならないんだ。
「アクア!ルビー!ライナー!今日のドーム公演がんばろうね!」
まったく、本当にタチが悪い。
その笑顔で俺たちはドーム公演の成功を確信してしまうんだから。
アイがアクアとルビーを産んだことや、2人の父親のこと。
考えるべきことはたくさんあるが、今は忘れよう。
今はただ、アイたちの最高の輝きをこの目に焼き付けるべきだからだ。
進撃の巨人最終章を見ました!
原作者ならびに、アニメスタッフや声優さん、関係者のみなさん!
本当にありがとうございました!