【推しライナー】   作:チェシャ猫もどき

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ある日突然巨人に襲われる。

たくさんの人が食われる中で目の前で大切な人が食われそうになる。

力が無くて叫ぶことしか出来ない。

そんな中で、助けを求める声を聞いて立ち上がったライナーはエレンにとっても理想のような存在だったという考察を見て脳が焼けたので、初投稿です!


鎧の巨人

 

「そろそろ時間か」

 

「わかった。アクア、ルビー行くよ!」

 

「はーい!」

 

「わかった!」

 

 朝食を食べ終わり着替えてドームへ向かう準備をする。

 

「しかし、いいのか?俺と一緒に行かなくてもお前たちはまだ家にいていいんだぞ?」

 

俺はチェックやら何やらいろいろとやりたいことがあるからもう出るが、アイたちはまだ家で休んでいても問題ないのだが。

 

「いいからいいから!せっかくライナーが泊まってくれたんだから行くときも一緒に行こうよ!」

 

「うん、一緒に行く!」

 

「その方が効率的だし」

 

「そうか、わかった」

 

わかってはいたが、みんなにここまで言われたら断ることは出来ない。

どうせみんなドームに行くんだから別にいいだろう。

 

「よし、じゃあ一緒に行こう」

 

「アクア、ルビー行くよ!忘れ物ない!?」

 

「大丈夫!」

 

「ちゃんと持ったよ!」

 

確認もしてみんなで一緒にドームに行く。

チェーンを外し、鍵を開けて外へ出ると誰かにぶつかった。

 

「すまない!大丈……」

 

 ぶつかってしまったから怪我をしていないか相手を見た瞬間、思考が停止する。

 

 相手は20代前半くらいの男性で黒いパーカーを来ていて、手にはナイフを持っている。

 

 そして、そのナイフが血に濡れていた。

 

(誰の血だっ!?ぶつかったのは……まさか!!)

 

 自分の腹を見ると刺されたであろう部分が赤く染まっている。

 

「ぐ、ああ!」

 

 認識すると同時に痛みが襲い掛かって来る!

 

「どうしたのライナー!?」

 

 しまった!

 アイたちがいる!

 このままじゃマズイ!

 

「うわぁああ!」

 

「させるか!」

 

 アイたちに襲い掛かろうとする奴の手を抑える!

 

「お前たち!部屋に戻れ!」

 

「え!?どうして!?」

 

「何があったの!?」

 

「ライナー!血が出てる!」

 

 マズイ!

 みんな混乱していて行動出来ていない!

 ここは俺がコイツを無力化するしかない!

 刺されはしたが、この程度の相手くらい俺なら!

 

「やっぱり子供なんて作ってやがった!」

 

 無力化しようとすると奴が言う。

 やっぱりってなんだ!?

 どうしてアイが子供を産んだことを知っている!? 

 

「ファ……ファンを裏切るふしだら……っ!」

 

 間違いなくコイツはアクアとルビーがアイの子供だと知っていやがる!

 SNSには社長たちの子としてアップしているのにどうしてだ!?

 いや、今はそんなことはどうでもいい!!

 早くコイツを無力化して!

 

「ファンの事を蔑ろにして!裏ではずっとバカにしてたんだろ!」

 

『知ってるだろ?話したもんな?どう思った?あの時……どう思った?』

 その声が。

 

 その言葉が。

 

 その目が。

 

 あいつと重なった。

 

「この噓つきが!!!」

 

 

『このッ……裏切りもんがあぁああ!!』

 

 

「…………あ」

 

 抑えていた手からナイフがすり抜けて、刺さった。

 

「ライナーぁああ!!」

 

「来るな!早く戻れ!」

 

 アイの叫びが聞こえる。

 このままじゃ、みんな殺される!

 倒れそうになるが、倒れるわけにはいかない!

 

 抜かれそうになったナイフを腕を掴んで止める。

 激痛が走るが、抜かれたら出血多量で死ぬ!

 ここで死んだらアイたちも殺される!

 まだ死ぬわけにはいかない!

 

「俺がアイツを外に出す!そしたらドアを閉めて鍵をかけろ!」

 

「でも!それじゃライナーが!」

 

「俺のことはいい!早くしろ!」

 

ドアを閉めるように言うがすぐに行動出来ないでいる!

当然だ!

それは俺を見捨てることになる!

 アイたちにそんなことが出来るわけがない!

 

それでも!

刺された俺を犠牲にした方がアイたちが助かる!

なら、やるしかない!

 

「うぉおおおお!!」

 

「うわぁっ!!」

 

掴んでいた手を離し奴を押す。

抑えが急に無くなったことと、押されたことで奴はバランスを崩して倒れる。

ナイフが抜けて大量の血が流れるが関係ない!

たとえ死んでもこいつらは守る!

 

「ライナー!」

 

「来るな!」

 

 駆け寄って来ようとするアイを止める!

2度も刺された俺じゃコイツを抑えられない!

 コイツが自由になる前に早く部屋に戻らせないといけない!

 

「アクア!2人を守れ!!」

 

 それがどれだけ残酷なことを言っているか。

 どれだけアクアを傷付け、苦しめることになるかわかっている。

 

 それでも、この場においてみんなを守れるのはアクアしかいなかった。

 

「アイ!戻るんだ!」

 

「アクア!だけどライナーが!」

 

「ダメだ!アイに何かあったらライナーさんの覚悟が無駄になる!!」

 

 アクアに引っ張られ部屋に戻らされるアイを見て、油断してしまった。

 

「離せよっ!」

 

 ナイフが脇腹に突き刺さる。

 3度も刺され全身の力が抜けてしまう。

 コイツを抑えておかないといけないのに、抵抗出来ずに倒れてしまう。

 

「待……て」

 

 奴を止めようと手を伸ばすが、その手は届かない。

 

 血が流れすぎた。

 体が冷たくなっていく。

 視界が暗く狭くなっていき、意識が遠のいていく。

 

(これで……俺も……楽に)

 

 この世界に生まれたが、ようやく死ぬことが出来る。

 ずっと苦しかったが、やっと楽になれる。

 意識が消えかけた中でそう思ったのに。

 

「ライナァアアア!助けてええええ!」

 

 俺を呼ぶ声が聞こえる。

 

「ライナァアアアア!」

 

 立て。

 

「ママが殺されちゃう!助けてぇええええ!!」

 

 守れ。

 

「ライナァアアアア!!」

 

「ライナーさぁああああん!!」

 

 戦え!

 

「ライ……ナー」

 

アクアとルビーを守るように奴の前にアイは立っている。

 

「お前……どうして」

 

信じられないといった表情で奴が俺を見る。

何度も刺したはずの俺が再び立ち上がっているのが信じられないと言いたげに。

そして、それは間違いなく奴の晒した隙だ。

 

駆け出す。

ふらつきながら、倒れそうになりながらアイたちを守るために走る。

 

「うわぁああああ!!」

 

恐怖の混ざった叫びとともにナイフが突き出される。

躱そうとすればきっと耐えきれずに倒れてしまう。

 

手を出してナイフを受け止める。

 

もう俺は終わる!

今更この程度の傷を気にすることはない!

 

投げ飛ばすために無事な方の手で奴を掴む。

俺は3度も刺されていてさらに片腕しか使えない状態であり、奴は無傷。

本来なら投げ飛ばすことなんて到底不可能だ。

 

だが奴はまだ死なずに向かって来る俺に恐怖した!

奴は耐えられない!

 

「うぉおおおお!!」

 

 このあとどうなるかなんて全く考えずに奴を投げ飛ばす。

 投げた勢いで俺の手からナイフは抜けた。

 奴はナイフを失いはしたが、大した怪我をしたわけじゃない。

 俺が死ぬ前に、なんとかして無力化しないといけない!

 

「なんでだよ……悪いのはお前らだろ!」

 

 奴が叫ぶが聞く気も聞かせる気もない。

 奴がおかしなことを言う前に早く。

 

「散々好き好き言って釣っておいてよ!全部嘘っぱちじゃねぇか!!」

 

「違う!!違うんだ!!」

 

 奴を無力化しないといけないのはわかっていた。

 だけど、その言葉を受け入れることが出来なかった。

 

『確かに皆騙した……けど。すべてが嘘じゃない!本当に仲間だと思ってたよ!!』

 

「確かにみんなを騙していた!ずっと嘘を吐いて……お前たちを裏切った。でもすべてが嘘じゃない!!お前たちのことは本当に仲間だと思っていたんだ!!」

 

 信じられるわけがない。

 何の罪もない人達を大勢殺して、みんなをずっと騙していた俺のことなんて信じられるわけがない。

 それでも、俺たちはみんなのことを仲間だと思っていたんだ。

 

「何の罪もない人達を大勢殺した!!みんなをずっと騙していて!!信じてくれていたのに裏切った!!苦しんで死ぬのが当然だ!!」

 

 俺は苦しんで死んで当然の人間だ。

 それだけの罪を犯したんだから。

 

「だけどこいつらは違う!!こいつらは誰も殺していない!!」

 

 俺は何の罪もない大勢の人達を自分の意志で殺し大量殺人鬼だ。

 そのくせ被害者面していた最低なクソ野郎だ。

 

 俺は救いようのない存在だが、こいつらは違う!

 たしかにみんなを騙していたが、誰も殺していない!

 

 まだ間に合うはずだ!

 

『何で……そんなに……急ぐんだよ』

 

「頼む……急がないでくれ」

 

 ああ……こんな気持ちだったのか?

 

『まだ……ちゃんと……話し合ってないじゃないかぁあああ』

 

「まだ……話し合ってないじゃないかぁあああ!!」

 

 すまない。

 お前は話し合おうとしてくれたのに。

 それなのに俺はお前を殺してしまった。

 

「何を……言ってんだよ」

 

 混乱してる様子の奴の言葉で正気に戻る。

 いつの間にか奴じゃない、あいつらに向かって言ってしまっていた。

 この世界に、あいつらはいないのに。

 

「私なんて元々無責任でどうしようもない人間だし、人を愛するってよくわからないから。私は皆が喜んでくれるようなきれいな嘘を吐いてきた」

 

 アイが言う。

 誰かを愛したかったから、アイは嘘を吐いてきた。

 

「いつか嘘が本当になる事を願って、頑張って、努力して、全力で嘘を吐いてきたよ」

 

 嘘がいつか本当になる。

 その言葉を信じて努力していた。

 その努力は決して嘘じゃない。

 

「私にとって嘘は愛。私なりのやり方で愛を伝えてたつもりだよ」

 

 正しいやり方じゃなかったかもしれない。

 それでも必死で愛を伝えていた。

 

「君たちのことを愛せたかはわからないけど、愛したいと思いながら愛の歌を歌ってたよ。いつかそれが 本当になる事を願って」

 

 その愛は嘘だったかもしれない。

 だけど、愛そうとしたことは絶対に嘘なんかじゃない。

 

「今だって君の事、愛したいって思ってる」

 

 アイは俺の前に出て手を差し伸べる。

 その手に本当の愛したいを乗せて。

 

「嘘吐け……俺のことなんて覚えてもいないんだろ。見逃してもらおうと……」

 

「リョースケ君だよね。よく握手会来てくれてた」

 

 アイが名前を呼ぶ。

 人の名前を覚えるのが苦手なアイだが、ファンの名前は覚えようと頑張っていた。

 それはアイドルとして人気になるためでもあっただろうが、それ以上に愛したいと思っていたからだ。

 

「あれ?違った?ごめん私、人の名前覚えるの苦手なんだ。お土産でくれた星の砂、嬉しかったな。今もリビングに飾ってあるんだよ」

 

 ファンからのプレゼントはどれも大切にしているが、その中で特に気に入っていた物だ。

 自分の瞳にある星と同じだからと。

 

「んだよ……それ……そういうんじゃ……!」

 

 そんな言葉をかけられるとは思っていなかったのかもしれない。

 奴の殺意が消えて、動揺へと変わる。

 

「あああああああ!!」

 

 アイの言葉に、血に濡れた両手。

 自分がしてしまったことを受け入れられなくなってしまったのか、奴は叫びながら逃げた。

 

「ライナー!!」

 

「ライナーさん!!」

 

「ライナー!!」

 

 奴がいなくなったことでアイたちはもう大丈夫だ。

 そう思った途端に力が抜けて倒れてしまった俺にアイたちが駆け寄る。

 

「お前たち……怪我……は」

 

「ライナーが守ってくれたから大丈夫だよ」

 

「そうか……よかった」

 

 その言葉を聞いて心から安心出来た。

 意識が消えていく。

 

 もう……いいだろう。

 

 あいつらの苦しみに比べたら到底足りないだろうが、それなりに苦しんだと思う。

 なにより、アイたちを守ることが出来た。

 

 だから……もう……楽になってもいいだろう?

 

 何もしなくても死ぬが、この意識を手放せばすぐに楽になれる。

 苦しむことが出来たし、こいつらを守れたからもう未練なんてない。

 

 ないはず……なのに。

 

「お願いライナー!!しっかりして!!」

 

「ちくしょう!!止まれ!!止まれよ!!」

 

「嫌だよライナー!!死なないで!!」

 

 どうしてお前たちは……俺を。

 

「どう……して」

 

 死なせてくれないんだ。

 

 全部を言えたわけじゃない。

 だけど俺が言いたいことを理解したんだろう。

 俺を呼ぶ声が止んだ。

 

「だって家族じゃない……私たち」

 

 ああ……そうか。

 俺たちは家族だったのか。

 

 いつも一緒にいたわけじゃない。

 だけど、たくさんの時間を一緒に過ごしてきた。

 なら、俺たちは家族と言ってもいいのかもしれない。

 家族が死にそうになっていたら、死なないで欲しいと思うのが当然だよな。

 そんな当たり前のことを俺はわかっていなかった。

 

 巨人の力があれば助かっただろうが、今の俺には巨人の力は無い。

 俺は死ぬ。

 それでも、何かを。

 

 俺が死んでも大丈夫なように。

 アイたちが前に進めるように。

 

「アクア……辛いことさせて……ごめんな」

 

「ライナーさんは間違ってないよ。だから……謝らないで」

 

 俺を置いてアイを部屋に戻らせるなんてひどいことをさせてしまった。

 それなのに俺を気遣ってくれている。

 どうか……俺が死んでも自分を責めたりしないで欲しい。

 

「ルビー……呼んでくれて……ありがとう。おかげで……守れた」

 

「ライナー……守ってくれて……ありがとう」

 

 俺は楽になろうとしてしまった。

 ルビーが俺を呼んでくれたから、また立ち上がることが出来た。

 どれだけ感謝しても足りやしない。

 

「アクア……ルビー。お前たちは……自由だ」

 

目の前で人が死ぬところを見てしまった2人の心は傷付いてしまうだろう。

それでも、俺の死なんかに縛られずに自由に生きて欲しい。

 

「アイ……2人を……頼む」

 

「アクアとルビーは私が守るから。だから……もう大丈夫だよ」

 

 涙で濡れていた星が輝いた。

 きっと……俺がいなくても大丈夫だろう。

 俺がいなくても……アイたちにはみんながいる。

 何も……心配いらない。

 

 もう……心残りはない。

 意識が消えていく。

 

「……ライナー」

 

 消えていく意識の中で、声が聞こえる。

 

「私たちを守ってくれて」

 

 冷たくなった俺の体。

 

「私たちと出会ってくれて」

 

 その頬にあたたかな両手が触れる。

 

「ありがとう」

 

 唇に柔らかい何かが触れた。

 

愛してる

 

 消えてしまう瞬間、たしかに聞いた。

 

 嘘じゃない。

 

 本当の『愛してる』を。

 

 

 

 





大切な人たちを守って死ぬことが出来たから間違いなくハッピーエンドです。
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