【推しライナー】   作:チェシャ猫もどき

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ふと気が付いてあらためて推しの子のEDを聞きました。

歌詞が進撃にもぶっ刺さっている気がして脳が焼かれたので初投稿です!



ある兵士の話

 

「兵士?」

 

「パラディ島の壁内に存在する兵団組織に所属する人間のことをそう呼ぶんだ。兵団は憲兵団、駐屯兵団、そして調査兵団の3つある。まぁ、この世界の警察や軍隊みたいなものだと思ってくれ」

 

 人が集まって生きていく以上、人々を統治する政府や悪人を取り締まる警察組織は自然と出来るものだ。

 

「憲兵団は警察業務と王の近衛兵を担う組織だ。駐屯兵団は壁の補強や警護、壁内の治安維持をしている。そして……調査兵団だ」

 

 俺が所属した組織、調査兵団。

 

「調査兵団は壁の中で暮らす島の人間たちの中で唯一壁の外に出て、外の世界を調査する兵団だ」

 

「え……壁の外って」

 

「当然、巨人たちがいる」

 

「それじゃ……巨人に会ったら食べられちゃうんじゃ」

 

 例え現代兵器でも苦戦するだろう相手だ。

 出会ったら最後、食われてしまうと考えるのは当然だ。

 

「壁内人類も大人しく食われるわけじゃない。壁内人類は立体機動装置を開発した」

 

「立体……機動?」

 

 現代では生まれることの無かった装置だ。

 どんな物なのかわからなくてもしょうがない。

 

「立体機動装置は兵士が巨人と戦うための武器だ。アンカーが付いたワイヤーの射出装置を腰のベルトの左右に付けて、ワイヤーを打ち出してアンカーを壁や巨人の体に突き立てる。そして、ワイヤーを高速で巻き取り、付属してあるガスボンベからの噴射で素早い空中移動を行い手に持った2本のブレードで巨人のうなじを削ぐんだ」

 

「どうしてうなじを削ぐの?」

 

 巨人を相手のわざわざ近づく危険を冒してうなじを削ぐよりも他にやりようはあると、普通はそう考えるだろう。

 

「巨人の弱点がうなじしかないんだ。巨人には再生能力があって、うなじが無事ならたとえ大砲で頭部を吹き飛ばされようと再生する。だから、立体機動装置で近づいてうなじを削ぐんだ」

 

「……再生するなんて」

 

 ただでさえ恐ろしい巨人に再生能力まであると知って、みんなの顔が恐怖に染まる。

 

「でも……巨人に近づくのは危ないんじゃ」

 

「巨人の攻撃を躱せなかったり、ワイヤーを掴まれたり、一体を倒しても大群に囲まれて捕まることもある。それにガスが無くなったら逃げることも出来なくなるから立体機動装置があっても巨人と戦うのはかなり危険な行為だ」

 

「どうして……そこまで」

 

「どうして……か」

 

 島には多くの巨人がいる。

 立体機動装置があっても危険なのは変わらない。

 壁の中にいれば巨人に襲われることはなく、安全に暮らしていける。

 それなのに、どうしてわざわざ危険を冒してまで壁の外に出るのか。

 

「自由に……なりたかったからだ」

 

 あいつも、あいつらも、みんな……自由を求めていた。

 誰も……世界を滅ぼそうなんて考えちゃいなかった。

 

「自由を求めて……進み続けていた」

 

 どれだけ犠牲が出ようと。

 その犠牲を無駄にしないためにも。

 あいつらは進み続けていた。

 

「いろんな奴がいた」

 

 本当にいろんな奴がいた。

 

「俺達は始祖の情報を得るために憲兵団になろうと考えた。憲兵団になれば内地に行けて王に近づけるから始祖の情報も手に入りやすいと思ったからだ。そのために俺達はまず兵士を育成する訓練兵団に入隊した」

 

 そこで、俺達はあいつらに出会った。

 

「あれは入隊式の最中だった。突然、芋を食い出した奴がいた」

 

「……芋?」

 

 みんな不思議そうにする。

 普通、そんな時に芋を食う奴がいるなんて思わないもんな。

 

「教官が咎めると悪びれる様子もなく答えた。うまそうだから盗んだと」

 

 今でもハッキリと思い出せる。

 それくらい強烈な出来事だった。

 

「そんな悪党だが、さすがにまずいと思ったのかその芋を半分譲ると言って教官を買収しようとしたんだ。しかし……その差し出した芋はでさえ到底半分に満たない僅かなものでしかなかった。奴らに譲り合う精神など無いからな。本当に……どうしようもない奴らだった」

 

 どいつもこいつもバカな奴らばっかりだった。

 

「便所に入るなりどっちを出しに来た忘れるバカだったり。自分のことしか考えてねぇ不真面目なやつに、人のことばっかり考えてるクソ真面目な奴。突っ走るしか頭にねぇ奴に、何があってもついて行く奴ら」

 

 本当に……いろんな奴らがいた。

 

「それに……いろんな奴らがいて、そこに俺たちもいた」

 

 いろんな奴らと一緒に……俺たちもいた。

 

「そこにいた日々はまさに……地獄だった」

 

 あいつらと一緒にあいつらと一緒に飯を食って、一緒に努力して、一緒に笑いあった。

 あの日々は、間違いなく地獄だった。

 

「……ライナー」

 

 名前を呼ばれる。

 しまった、この話はあまり関係なかった。

 あの世界のことを話していて、ついあいつらのことを思い出してしまった。

 

「すまない……話が逸れてしまったな。話を戻そう」

 

 関係のない話をするな。

 みんなとあいつらは関係ないだろう。

 

「訓練兵を卒業する日、俺たちは再び壁を破壊することに決めた」

 

「……どうして」

 

 壁を破壊して壁内に侵入出来た。

 なのにどうして壁を破壊するのかと。

 

「訓練兵の時も仲間に始祖の情報を探ってもらっていたんだが、大した情報が得られなかった。だからまた壁を破壊して始祖を持っているだろう王の動きを見ようとしたんだ」

 

「でも……それじゃあみんなが」

 

「ああ……壁を破壊したことで巨人が壁内に侵入して……みんな食われた」

 

 一緒に暮らして、一緒に努力して来たあいつらは……俺のせいでみんな食われた。

 

「俺も……仲間を殺した」

 

 そうだ……俺が殺した。

 

「訓練兵の中にマルコという奴がいた。マルコに俺達の聞かれてはいけない会話を耳にされてしまったから、俺は正体がバレることを恐れ、マルコが巨人に殺されればうまく口封じが出来ると思った」

 

「……っ!」

 

 誰も言葉を発せない。

 慕っていた俺が、自分の意志で一緒に暮らしていた仲間を殺したという事実を受け入れられないんだろう。

 

「俺は空中でマルコを屋根に叩き付け、動けないように押さえつけている間に仲間に立体機動装置を外させた。マルコはその場から動けないまま巨人に食われた」

 

 直接殺さなくても、すべては巨人のせいになる。

 誰も俺たちを疑うことも無く、問題は解決するはずだった。

 

「マルコは言った。『何で……そんなに……急ぐんだよ』って、『まだ……ちゃんと……話し合っていないじゃないか』って、そう……言ってくれたのに」

 

「…………あ」

 

 マルコは話し合おうとしてくれたのに。

 それなのに、俺は話し合おうとせずにマルコを殺した。 

 

「マルコが巨人に食われるのを見ながら、俺は……何でマルコが巨人に食われているんだって思った」

 

「……え?」

 

「そして、怒りに身を任せてその巨人を殺した。よくもマルコを……とか言いながら」

 

 みんなどうして俺がそんなことを言うのかわからないといった表情だった。

 当然だ。

 マルコを殺したのは俺だ。

 なのにその俺自身がマルコが食われていることに驚いて、マルコの敵を討つかのように巨人を殺したんだから。

 

「俺は……耐えられなかった。何の罪もない人達を大勢殺して………あいつらのことをずっと騙し続けていることに」

 

 馬鹿な奴らに囲まれて、3年も暮らしたから。

 俺たちはガキで何一つ知らなかった。

 こんな奴らがいるなんて知らなかった。

 

「俺は罪の意識に耐えられず……心の均衡を保つために無意識に自分は壁を守る兵士だと思い込むようになっていた。心が分裂して……記憶の改竄すら起きていた」

 

 戦士だったはずだった。

 それなのに、俺は兵士になっていた。

 俺は戦士でも兵士でもない、半端なクソ野郎になっていた。

 

「壁を破壊して何の罪もない人達を大勢殺した大量殺人鬼なのに……被害者ぶっていたんだよ」

 

 何の罪もない人達を大勢殺して、あいつらをずっと騙していたのは俺なのに。

 あいつらの方が俺の何倍も辛い思いをしたのに。

 

「だが、それも再び壁を破壊したことで終わった。俺達と同期の兵士に巨人になれる奴がいたんだ」

 

「じゃあ……その人が」

 

「きっと……始祖の力を持っていると俺達も判断した」

 

 俺達以外の知性巨人だ。

 俺達が探し求めていた始祖の力で間違いないと思った。

 

「俺達はそいつを確保しようとしたが……結果だけ言えば俺達は敗北した」

 

「……え」

 

「ライナーたちは巨人なんでしょ?」

 

 巨人の力を持っている人間が3人もいるのだから、勝って当然と思うだろう。

 

「理由はいくつかある。相手にも巨人の力を持った人間がいたこと。島の人間は巨人との戦闘経験が豊富だったこと。巨人にも通用する新兵器を開発したこと。なにより……あいつらはどんなに絶望的な状況でも決して諦めたりせずに、犠牲もいとわずに最後まで戦い続けていた」

 

 犠牲が出たとしても、その犠牲を無駄にしないためにもあいつらは決して諦めずに戦い続けた。

 

「だから……負けた」

 

 戦士でも兵士でもなくなってしまった半端なクソ野郎である俺が、あいつらに勝てるわけがなかったんだ。

 

「あいつらに敗北したが、島への援軍によって俺だけは助け出されてマーレに帰還した」

 

 俺のせいでマルセルは死んでアニとベルトルトも島に取り残されたのに、俺だけは生きてマーレに帰還した。

 死ぬべきは俺だったのに。

 

「……大丈夫なの?帰って」

 

「始祖は……手に入れられなかったのに」

 

「当然……作戦失敗のすべての責任は俺にある。巨人の力を剥奪されるはずだった」

 

 作戦は失敗した。

 それどころかこちらの巨人の力を失ったんだから責任を取らなくてはいけない。

 

「じゃあ……ライナーはそれで」

 

「いや……俺は巨人の力を剥奪されなかった」

 

「どうして?」

 

 言おうとしたことを遮る。

 みんなにそんなことを言って欲しくなかった。

 

「俺が巨人の力を剝奪されなかった理由は2つある。1つは残っていた戦士候補生が1人しかいなかったからだ」

 

 戦士候補生の育成には時間がかかる。

 体力、頭脳、射撃能力、格闘術、忠誠心などの様々な能力が優れている子供を何年もかけて育成する。

 いなくなったからといって、すぐに補充出来る存在じゃない。

 

「その戦士候補生は俺の持つ巨人の力よりもマルセルの巨人の力の方に適性があったから、その巨人の力を継承したんだ。もっとも……その巨人の力はマルセルを食った奴が自分の意志で俺達に着いてきてくれたから確保出来たんだがな」

 

「その人は……どうして」

 

 俺達に着いて来れば死ぬとわかっていた。

 それでもあいつは、みんなを守るために俺達に着いて来た。

 

「島を守るためだ。4つの巨人の力のうち、3つも失ったらさすがに帰れない。巨人の力を取り戻そうと島に残って戦い続けただろう」

 

 それを回避するために、あいつは死ぬのを覚悟して俺達に着いて来てくれた。

 

「そして2つ目の理由だが、マーレが巨人の力を失ったことで中東と呼ばれる地域の国々が連合を組んで戦争を仕掛けてきたんだ」

 

 巨人の力を使って戦争をしていたマーレがその力の一部を失った。

 世界中から恨まれているマーレに戦争を仕掛けるには充分だったんだろう。

 

「皮肉なもんだ……巨人の力を失ったから俺は巨人の力を剥奪されそうになったのに、巨人の力を失ったことで起こった戦争のおかげで俺は生かされたんだからな」

 

 その戦争が起きなかったら、俺は間違いなく巨人の力を剥奪されていた。

 

「その戦争で……俺は命がけで戦い続けた。苦しんで死にたかったんだ」

 

 死んで楽になるわけにはいかなかった。

 だから、戦った。

 戦争で戦い続ければ、苦しんで死ねると思った。

 だから、戦い続けた。

 

「だが……俺は生き残った」

 

 死ねなかった。

 俺は生き残った。

 

「死を求めて戦う姿は……味方からは命を賭して忠誠を示しているように見えたらしい」

 

 俺は死にたかっただけだ。

 

「苦しみたくて敵の攻撃を受ける姿は……味方からは自分の身を顧みずに仲間を守っているように見えたらしい」

 

 俺は苦しみたかっただけなんだ。

 

「そうやって戦い続けて……俺はマーレの盾なんて呼ばれるようになった。あれだけなりたかった英雄に……俺はなっていた」

 

 何の罪もない人達を大勢殺し、あいつらのことを騙し続けて。

 俺は英雄になっていた。

 

「そうして戦い続けて……マーレは戦争に勝利した。戦争は終わった」

 

 俺は死ぬことなんてなく、生き残ってしまった。

 

「じゃあ……ライナーはもう戦わなくてもよくなったの?」

 

「いや……マーレは勝利こそしたが、実際はかなり立場が危うくなったんだ」

 

「どうして……戦争に勝ったんでしょ?」

 

 戦争に勝利したマーレだったが、問題が発生した。

 かなり致命的な問題が。

 

「戦争に勝利はしたが、かなりギリギリだった。文明が進んで巨人だろうと殺せる兵器が増えたんだ。それに飛行船も開発されて巨人の届かない空からの攻撃も可能になっていた。巨人の力も絶対じゃなくなっていた」

 

 通常兵器ですら無垢の巨人どころか、九つの巨人を殺せるくらいになっていた。

 さらに技術が進み戦場が空へと移れば、巨人は何も出来なくなる。

 

「それにマーレは巨人の力に頼り切っていたから兵器は旧式だった。このまま諸外国と兵器の差が広がれば近いうちにマーレは滅ぼされかねなかった」

 

 巨人の力を過信してマーレはいつしか周りから取り残されていた。

 滅ぼされないために、マーレが生き残るための方法は1つしかなかった。

 

「だからマーレは……再びパラディ島に攻めることを決定したんだ」

 

「……どうして」

 

 失敗した始祖奪還計画。

 それが再び行われようとしていた。

 

「始祖の力を手に入れればすべての巨人を操ることが出来る。その力を使ってマーレが攻め込まれないようにして、その間に兵器の開発を進めるためだ」

 

 巨人の力に頼らなくても戦えるように。

 巨人の力が不要になりつつあった。

 

「マーレは島の悪魔が地鳴らしをして世界を滅ぼそうとしていることにして世界と連合を組み、島に宣戦布告をすることにした」

 

「そんなの……あんまりだよ」

 

「マーレが先に島に攻めたのに」

 

 そうだ、マーレが、俺が先にあいつらに攻撃をして、あいつらを殺した。

 あいつらは犠牲者なのに。

 

「じゃあ……ライナーも島に?」

 

「いや……俺は、島には行かなかった」

 

「……どうして?」

 

 島に攻め込む以上、巨人の力を持つ俺も島に攻めるはずだった。

 

 戦士として、戦わなければいけなかった。

 

「…………俺は」

 

 言うんだ。

 どうして俺が島に行かなかったのか。

 

「俺…………は」

 

 言うんだ。

 俺がどうしたかを。

 

「お……れは」

 

 言うんだ。

 俺が犯した罪を。

 

「ライナー」

 

 言えずにいる俺に、アイが触れる。

 

「大丈夫……みんなライナーの味方だよ」

 

 誰も、俺を責めたりしていない。

 みんなまっすぐに俺を見てくれる。

 みんな俺の味方でいてくれる。

 

 目を閉じる。

 覚悟を決めろ。

 

 犯した罪から、みんなから逃げたりするな。

 

「俺は……自殺したんだ」

 

 俺は逃げた。

 何もかもを捨てて、俺は逃げ出した。

 

「戦士として……戦わなければいけなかった」

 

 戦士として戦う責任があった。

 

「子供たちを……守ってあげなければいけなかった」

 

 あいつらを真っ暗な未来から救い出してあげなければいけなかった。

 

「苦しんで……死ななきゃいけなかった」

 

 大量殺人鬼である俺は、苦しんで死ななきゃいけなかったのに。

 

「俺は……逃げた」

 

 苦しみに耐えられずに、死んで楽になってしまった。

 

「そして俺は……この世界に生まれていた」

 

 この世界に生まれて、みんなに出会った。

 

「これが……俺がこの世界に生まれる前の記憶だ」

 

 これが俺が犯した、決して許されることのない罪。

 

「これでみんなわかったはずだ……俺が最低なクソ野郎だってことに」

 

 今までずっとみんなを騙していた。

 贖うことの出来ない罪を犯しておきながら、償うこともせずに死んで楽になった。

 

「俺はずっとみんなのことを騙していたんだ!」

 

 このことを誰にも言わずに、ずっと黙っていた。

 

「みんな俺のことを慕ってくれるけど……俺はそんな存在なんかじゃないんだ!」

 

 俺のような存在が、みんなから大切にされていい存在なんかじゃない。

 俺は何の罪もない人達を大勢殺した、大量殺人鬼なんだ!

 

「……嫌だ……自分が」

 

 戦士としての責任も、守るべき子供たちからも、自分の罪からも逃げておきながら、みんなのことをずっと騙し続けていた自分が大嫌いだ。

 

「もう……」

 

 消えてしまいたい。

 

 そう言おうとしたとき……ぬくもりに包まれた。

 

「ごめんね……ライナー」

 

 アイが俺を抱きしめていた。

 

「気付いてあげられなくて……ごめんね」

 

 まるであの日のように、俺を抱きしめてくれている。

 

「ライナー……話してくれてありがとう」

 

「ライナーがどれだけひどいことをしたのかは……わかったよ」

 

「それでも……みんなライナーの味方だよ」

 

「どう……して?」

 

 みんなが俺に言う。

 俺がどれだけの罪を犯したのかわかったはずなのに、俺のことを責めたりしていない。

 わからない。

 どうして俺の味方なんだと言えるんだ。

 

「どうしてって……そりゃ、お前がいい奴だからだろ」

 

「……社長」

 

「あなたがひどい人間だったら、私たちだってここまであなたのことを大切に思ったりしないわよ」

 

「……ミヤコさん」

 

 社長とミヤコさんがそう言ってくれる。

 

「ライナーはさ……私たちのことを守ってくれたでしょ?」

 

「ライナーがいたから……私たちはこうしてみんなで一緒にいられるんだよ」

 

「もしもライナーがいなかったら……私たちこんなにきっと仲良く出来てないよ」

 

「……みんな」

 

 みんながそう言ってくれる。

 

「ライナーはいつも私たちのことも大切にしてくれたでしょ?」

 

「仕事で忙しいはずなのに、休みの日なんかも僕たちと一緒にいてくれた」

 

「だから、私たちもみんなライナーさんのことが大好きなんだよ!」

 

 アクアとルビーがそう言ってくれる。

 

「ライナーがいなかったらあの日に私は殺されちゃってたでしょ?ライナーがいたから私はこうしてみんなと一緒にいられるんだよ」

 

 あの日、俺がいなかったらアイは殺されていた。

 

「それに……ライナーがいたからアクアとルビーに出会えたんだよ。だから……自分の存在を否定したりしないで」

 

「いい……のか?」

 

 いいのか?

 俺なんかがみんなと一緒にいても。

 

「いいんだよ。私たちはみんな……ライナーと一緒にいたいんだよ」

 

「…………あ」

 

 許してくれた。

 俺なんかがいてもいいんだと。

 

「…………ああ」

 

 溢れてくる気持ちを抑えることは出来なかった。

 

「生まれて来てくれて……ありがとうライナー」

 

「うわああああああ!!」

 

 何の罪もない人達を大勢殺しておいて、責任からも逃げて、苦しむこともせずに死んで逃げた。

 みんなのこともずっと騙していたのに、許してくれた。

 

 こんな俺が……生まれてきたことを祝福してくれた。

 

 まるで小さな子供のように泣き喚いた。

 

 殺して、騙して、逃げ出した。

 

 そんな俺が、またみんなに救われてしまった。

 

 やっぱり……俺は最低だ。

 

 でも……安心した。

 

 大丈夫……俺はちゃんと、地獄に行ける。

 




なにがひどいってライナーにとってはエルディア人というだけで差別される外の世界よりも、差別されず、みんなに慕われて、1つの目的に向かってみんなで一緒に努力していた壁内の方が幸せだったってことだと思います。

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