ポルコはマルセルの弟だからマルセルが作戦よりポルコを優先しかねないこと、本人の性格が味方の盾になる鎧の巨人に向いていないことなどからマルセルが評価を下げなくてもライナーは鎧の巨人を継承出来ていたという考察を見て脳が焼けたので初投稿です
ちなみにアイ視点です
その人を初めて見た時、何故かわからないけど妙な親近感を感じたのを覚えている。
ライナー・ブラウン。
施設にいるみんなにとって頼れるお兄ちゃんみたいな存在。
小さな子や同じくらいの年頃の子たちはもちろん、施設の職員の人たちも頼りにしている。
私自身も施設に入ったばかりの頃はよく面倒を見てもらったし、今も前ほどじゃないけどライナーは私を気にかけてくれている。
だからこそ不思議だった。
どうして私がライナーに親近感を覚えるのか。
その理由が知りたくていつもライナーのことを見ていた。
ライナーはいつもみんなの中心にいて、みんなの面倒を見ていた。
自由な時間の時は小さな子たちと一緒に遊んでいて、子供同士でケンカになったときは間に入って仲裁をしていた。
そのおかげで殴り合いのようなひどいケンカになることはなかったし、施設でイジメが起きるなんてこともなかった。
みんなでごはんを食べるときは、誰かが他の子のおかずやおやつを取ったときはとった子にお説教をして自分の分を取られた子にあげていたし、野菜が嫌いな子がいれば食べられるように応援していて、食べきれなかった分をこっそり食べてあげていた。
勉強の時だってわかりやすく説明してくれて、どうしてもわからない時でも出来るまでずっと一緒にいてくれる。
だから施設のみんなは結構勉強が出来て、テストでいい点が取れたと喜ぶ子供たちが多い。
みんなから慕われているライナー。
私なんかがどうして親近感を抱くのか、その理由に気付いたのは本当に何気なくだった。
何気なく自分の顔を鏡で見ていた。
その時はなんとなくだったけど、今にして思えばあの時の私はきっと確かめたかったんだ。
いつもと同じ私の顔。
他の人から嫌われないようにいい子の仮面を被った私。
そして、やっと気付いた。
ああ……あれは私なんだと。
誰かに嫌われないように、怒られないように、嫌な思いをさせないように、殴られたりしないように。
自分を守るためにいい子のフリをしている私とライナーは同じなんだと。
きっとライナーも私みたいに親から愛されていなかったんだ。
だから私みたいにいい子のフリをしているんだ。
それで納得したのに。
私と同じだと納得してあとはほっとけばよかったのに、私は少し欲を出してしまった。
私と同じ存在なら、私を愛してくれるかもしれない。
そんなことを思ってしまったから、気付いた後もライナーのことを見ていた。
そんなことをしていたから、私は気付いてしまった。
ある日、ほんの一瞬だけどライナーが辛そうな顔をしたことに。
一瞬だったから私の見間違いだと思った。
そんなこと無いと見続けていてそれが見間違いなんかじゃないってことがわかってしまった。
みんなでご飯を食べているとき。
起こってしまったケンカを仲裁しているとき。
勉強をしていて、難しい問題をみんなに教えてくれているとき。
他にも何気ない毎日の中でライナーはほんの一瞬辛そうにすることがある。
施設で生活していてつらくなる子は少なからずいる。
特に施設に入ったばかりの子は、施設に来る前のことを思い出して泣いてしまうことがある。
親に虐待されて施設に来る子が多いけど中には親に愛されていても施設に来る子がいる。
それは貧乏で生活が出来なくなってしまった子だったり、事故や病気なんかで両親を亡くしてしまった子。
そんな子は幸せだった時のことを思い出して泣いてしまったりする。
ライナーもそうなんだと思っていた。
きっとライナーもお父さんやお母さんから愛されていたんだと。
つらそうにするのも幸せだった時のことを思い出してしまうからなんだって。
ズルいと思った。
私はお母さんに愛されていなかった。
いつも暴力を振るわれていて、怒られないように、物を投げつけられないように、殴られないように、いつもいい子のフリをしていた。
そうすれば殴られたりしても、ごめんねって言ってくれるから。
抱きしめて愛しているって言ってくれるから。
だからお母さんが万引きで捕まって施設に預けられても、必ず迎えに来てくれるって信じていた。
だって私はお母さんに愛されているから。
だけど、お母さんは私を迎えに来てくれなかった。
気付いてしまった。
私は愛されてなんかいなかったってことに。
だから許せなかった。
愛されていなかった私にはもうこれしか無いのに。
愛されていたライナーにまでこれをされたら私には何も無くなっちゃう。
だから私は職員の人に聞いてしまった。
どうしてライナーは施設に来たのかと?
親が病気や事故で死んでしまっていたのならそのまま嫌いになれた。
愛されていたのにいい子のフリをする卑怯者だって。
親に捨てられていたのならきっと許せた。
やっぱり私と同じだったんだって。
愛されていなかったから、私みたいにいい子のフリをしているんだって。
だけど、答えはどっちも違った。
『ライナーは赤ちゃんの頃に施設の前に捨てられていたんだよ。だからライナーのお父さんとお母さんのことはわからないんだ』
ライナーには何も無かった。
わからない。
どうして?
どうして、愛されていなかったわけでもないのにいい子のフリをするの?
いい子でいないと怒ったり、殴ったりしてくる人なんていないはずなのに。
わからない。
どうして?
どうしてそんな風に辛くなれるの?
愛してくれる人なんていないはずなのに。
どれだけ考えても、どれだけ見ていてもわからない。
知りたかった。
どうすればそんな風に辛くなれるのか。
知ることが出来れば私も辛くなれるのかもしれないと思ったから。
何も無いライナーがつらくなれるのなら、お母さんとの思い出がある私なら誰かを愛せるかもしれないと思ったから。
だけど、どれだけ考えてもどれだけ見ていてもどうしてライナーが辛くなってしまうのかわからない。
ライナーが辛そうにするのは特別な何かがあった時なんかじゃなくて何気ないとき。
みんなでご飯を食べている時や、勉強を教えてくれる時に、ケンカを止めている時。
みんなでいる時にライナーはよく辛そうになる。
わからない。
ライナーが誰を思い出しているのかわからない。
みんなで一緒にいる時だからきっとお父さんとお母さんを思い出しているわけじゃない。
わからない。
赤ちゃんのころからいるからずっとみんなと一緒にいるのに、ライナーだけが知らない誰かと一緒に生きていたなんてありえない。
わからない。
ライナーはその知らない誰かを愛していたの?
愛していたから辛くなってしまうの?
私もライナーみたいにすれば誰かを愛することが出来るの?
どれだけ考えても、どれだけ見ていても。
どうしてなのか全然わからない。
どれだけ考えても、どれだけ見ていてもわからないから直接ライナーに聞くしかないと思った。
だけど施設にはライナー以外にたくさんの子供たちがいてライナーもみんなの面倒を見ていたりするから二人っきりになることがほとんどないし、二人っきりになれたとしてもすぐに他の子が来てしまう。
ライナーと二人っきりになるために観察していて、朝にならチャンスがあることがわかった。
ライナーは朝早く起きて職員の人たちのお手伝いをしていることが多い。
だから私も早起きしてチャンスを待った。
だけど早起き出来なかったり、早起き出来てもライナーが起きていなかったり、他の子も起きていたり、職員の人もいたりとなかなか二人っきりになれなかった。
それでも諦めなかったのはどうしても愛を知りたかったから。
ライナーは私よりずっと年上で高校を卒業したら施設から出て行ってしまう。
そうしたら誰かを愛する方法が二度とわからなくなってしまうと思ったから。
だからあきらめずに早起きを続けていて、ついにチャンスがきた。
その日は私は早起き出来て、ライナーも早起きして職員の人のお手伝いをしていた。
(やった、ついにきた!)
ライナーを手伝って早く終わったから一緒に散歩に行きたいと言って外に連れ出して二人っきりになれた。
(これでどうすれば愛せるのか聞ける!)
ちょっとごきげんになりながら、学校であったことなんかを話ながら一緒に公園まで行く。
普段は色んな人がいる公園に私たちしかいなくてこれで安心して聞けるなんておもいながら私はついにライナーに聞いた。
「ねぇ、どうしてライナーはそんなに辛そうなの?」
ずっと気になっていたことを私はついにライナーに聞いた。
ライナーがみんなでご飯を食べているときや勉強を教えてくれているとき、ケンカを止めてくれた時なんかにどうしてすごく辛そうにしているのかを。
どれだけ考えても、どれだけ見ていてもわからなかったこと。
ライナーが赤ちゃんのころから施設にいることを伝えて、ライナーが誤魔化せないようにする。
これでライナーは本当のことしか言えなくなるはず。
「なのに……どうしてライナーは辛そうなの?」
知りたかった。
辛くなれる理由を。
「ライナーは何を知っているの?」
「……てくれ」
ライナーが知っている秘密。
どうしてもそれが知りたかった。
「誰かと生きていたの?」
「やめ……てくれ」
誰と一緒に生きていたのか知りたかった。
私はお母さんと一緒に生きていたから、ライナーの真似をすれば私もライナーみたいに辛くなれると思ったから。
「誰かを愛していたの?」
誰かを愛していたのなら、誰かを愛せるなら知りたかった。
私も誰かを愛してみたいから。
このチャンスの逃したらもう聞くことは出来なくなってしまうかもしれないから必死だった。
絶対に知るんだと、絶対に愛せるようになるんだって決意していたから馬鹿な私は気付かなかった。
「やめろ!もうやめてくれ!」
ライナーが傷付いていることに。
誰かを愛す方法を絶対に教えてもらおうと思っていたのに、そのことを思わず忘れてしまった。
だって今までライナーが声を荒げるところなんて見たことなかったから。
ケンカを止めるときも、悪いことをした子を叱るときも、ライナーは穏やかで言い聞かせるように言ってくれる。
そんなライナーがお母さんみたいに叫んだ。
私が悪いことをしたから。
私がひどいことをしたから。
私が迷惑をかけたから。
私が悪い子だから。
だからライナーが怒った。
やっぱり私なんかが愛されるなんて。
私なんかが誰かを愛したいだなんて。
そう思ったのに、
「俺が人殺しだってことくらいちゃんとわかってる!苦しんで死ななきゃいけなかったってこともわかってるんだ!だから……」
その言葉で訳がわからなくなる。
どういうこと?
ライナーが人殺し?
そんな訳がない。
だってライナーは赤ちゃんのころから施設にいるのに誰かを殺すことなんてありえない。
苦しんで死ななきゃいけなかったって言っている。
まるで一度死んだことがあるみたいに。
ライナーが何を言っているのかわからなくて頭の中が混乱している。
「あ……アイ。ち……ちが。いや、ちがわないんだ……俺は」
ハッとした様子でライナーが私を見ている。
何を言えばいいのかわからない様子で、泣きそうな顔で、私を見ている。
何が起きているのかわからなかったけど、私がライナーを傷付けしまったということだけはわかった。
「ごめんね……ライナー」
傷付けてしまったから。
ひどいことをしてしまったから。
悪いことをしてしまったから。
だからあやまろうと思ったのに
「……あ」
ライナーはそう呟いて、
「違う!!違うんだアイ!!悪いのは俺なんだよ!!」
叫びながら地面に這いつくばった。
「俺があの時食われていればよかったんだ!!」
わからない。
食われていたらってどういうことなの?
こわい化物でもいたの?
「なんの力も無いくせに……英雄になりたいなんて思ったから」
わからない。
英雄になりたいってどういうことなの?
そこには英雄がいたの?
ライナーも英雄になりたかったの?
「全部……俺が悪いんだよ」
わからない。
そこがどんな場所で。
そこにどんな人がいて。
ライナーが何をしてしまったのか、私にはなんにもわからない。
「……嫌だ……自分が」
何もわからないけど、でも嫌だと思った。
「もう……」
ライナーがどんなところで生きていたのかなんて私にはわからない。
ライナーが誰と生きていたのかなんて私にはわからない。
ライナーが何をしてしまったのかなんて私にはわからない。
でも、ライナーが辛そうにしているのは嫌だと思った。
ライナーが言おうとしていたことが聞きたくなくて。
辛そうなライナーに何かしてあげたくて。
「ごめんね……ライナー」
ライナーを抱きしめた。
「気付いてあげられなくて……ごめんね」
いつからなんだろう。
ライナーが苦しかったのは。
誰にも言えずにずっと苦しんでいたかもしれないのに、私は全然気付いてあげられなかった。
「つらかったでしょ?……よくがんばったね」
つらかったはずなのに、そんなことは誰にも気付かせないで、みんなのためにがんばってくれていた。
だから言ってあげたかった。
よくがんばったねって。
「…………ッ!!」
それでもライナーは我慢している。
まるで泣くのを我慢する小さな子供みたいに。
だから言ってあげたかった。
「もう……泣いてもいいんだよ」
泣いてもいいんだよって。
つらいときは泣いてもいいんだよって。
「…………あ」
ライナーの口からもれた小さな声。
「…………ああ」
それが少し大きくなる。
もしかしたらライナーは本当に誰かを殺してしまったのかもしれない。
それは絶対に許されないことなのかもしれない。
だけど、今だけでも。
私だけでも。
ライナーの味方だよってことを伝えたかった。
「大丈夫だよ……ライナー」
泣いている子にしてあげるように。
お母さんがいつか私にしてくれたように。
ライナーの頭をなでる。
安心できるように。
ライナーが泣いてしまえるように。
「うわああああああ!!」
小さな子のように大きな声で泣くライナーを抱きしめたまま、頭をなでる。
今は誰かを愛してみたいだなんてどうでもよかった。
今はただ、一人ぼっちだったライナーが少しでも楽になればいいとおもえた。
ライナーは高校生の設定で書いているのに、地下室の時のライナーの姿で脳内再生されてしまうのはどうして?