カミキの扱いに脳を焼かれたので初投稿です!
「いやー、ここに来るのも久しぶり!」
私は1人で宮崎に来ている。
ドーム公演のあとの充電期間の最後に私は宮崎に来ていた。
アクアとルビーを産むために来て以来、ライブやイベントで来たくらいでプライベートで来たことはなかったからすごく懐かしい!
「やっぱり地方だとバレにくいね」
変装しているとはいえ、やっぱり都会と地方じゃ正体のバレやすさが全然違う。
都会だと変装していてもたまにバレることがあるから、正体がバレにくい地方だとあまり気を使わなくてちょっと楽だ。
「へぇー、こんなところに祠なんてあったんだ」
私が泊まっている宿の近くに祠があった。
宮崎には結構いたけど、ほとんど病院にいたし正体がバレたらいけないからあんまり出歩けなかったんだよね。
だからこうしてあらためて見て回るのは楽しかった。
「そろそろ出て来てくれてもいいんじゃない?」
変装のためにつけていたウィッグを外して、祠を背にして振り返る。
私の言葉を聞いて、木の影から1人の男性が出て来た。
「いつから気付いていたんですか?」
「別に……ここで出て来てくれたら場面的に映えるなって思ったからだよ」
謎の祠を背に、一対一。
もしこれが映画のような物語だったらいい場面になると思ったから声をかけてみたけど、どうやら間違ってなかったみたい。
「はは、さすがトップアイドルだ!わかっていますね!」
彼も同じように思っていたらしくて、嬉しそうに笑う。
「それで……どうして私を呼んだのかな?」
私の部屋に直接届いていた手紙。
それに書いてあったのは妊娠してお腹が大きくなっている私の写真と、私が入院していた病院の近くまで来るように書かれたメモ。
文字だけだったらイタズラや嫌がらせとして無視することも出来たけど、写真があったらさすがに指示に従うしかなかった。
だから大人しくここまで来た。
呼び出すだけなら東京でも出来るはずなのに、どうしてわざわざこんなところまで呼び出したのか気になった。
「どうしてって……あなたを殺すためですよ」
その言葉を言うと、彼は懐からナイフを取り出した。
予想はしていたけど実際に出されると怖くなる。
「私を殺す前に……お話しない?」
「話ですか」
「そう。悩みや困ってることがあったら私、力になるよ」
誰かを殺すなんて、そんな簡単に出来ることじゃない。
ライナーもリョースケ君も、たくさん辛い思いをしてたくさん悩んだはず。
だからこそ、殺したりする前に話し合わなきゃ。
『まだ……話し合ってないじゃないかぁあああ!!』
私たちはまだ話し合っていない。
ライナーがいた世界とは違う。
殺し合いをしなくちゃいけない世界じゃない。
私たちはまだ話し合えるはずなんだから。
「いいですよ。何もわからないまま死ぬのは嫌でしょうし」
どうやら私を殺そうとする理由を教えてくれるみたい。
よかった、まだ彼を助けることが出来るかもしれない。
「僕の命は軽いんです」
その言葉を聞いて、ライナーのことが浮かんだ。
ライナーも、自分が生きていることが苦痛だったから。
「だからあなたのような才能に溢れ、誰からも愛され、価値のある存在を殺したいんです」
「どうして?」
理解出来なかった。
私は誰かを愛したことも、誰かに愛されたこともなかった。
そんな私には価値がないって思ったことはある。
愛して、愛されたいと願った。
そのためにみんなに嘘を吐いたりしたし、未成年のアイドルなのに子供を産んだりもした。
悪いことをしたけど、そのために誰かを殺そうなんて思ったことはなかった。
だから、知りたかった。
何も知らないままじゃ、何も出来ないから。
「価値あるあなたの命を奪ってしまったら、こんな僕の命でも重みを感じることが出来るんですよ」
わからない。
理由を聞いたけどわからない。
どうしてそうなるのか、私にはわからない。
「それに、あなたを殺したら絶対に彼が苦しむでしょう?」
「ライナーの……こと?」
彼と言われて、ライナーのことだと思った。
「ええ、ライナーさんのことで合ってますよ」
「どう……して?どうして、ライナーを苦しめたいの?」
違って欲しいと思っていたけど、間違いじゃなかった。
どうして、ライナーばっかり苦しむようなことになるんだろう。
「だって、彼は僕よりも下ですから」
どういう意味かわかってしまった。
だって、私はライナーが何をしたか知っているから。
そして、ライナー自身がそのことで自分を許せずにずっと苦しんでいたことを知っているから。
「あなたたちを初めて見たのは、演技の勉強のために劇団ララライに来た時でした。僕はその時、その劇団に所属していたんです」
彼の言う通り、私は演技の勉強のために劇団ララライに行ったことがある。
まさか、その時からだったの?
その時からずっと、私を殺そうとしていたの?
「あなたを見た時にすぐにわかりました。誰よりも才能があって、だけどその才能に驕らず努力を続けるあなたはこの世界で輝く存在だと。必ず誰からも愛されて、価値のある存在になるって」
「そんなに評価してくれると殺されるかもしれないってわかっていてもうれしいね」
嬉しいのは嘘じゃないけど、だからこそ怖い。
そんなに評価している相手を殺そうとする彼が。
「じゃあ……ライナーを苦しめたいのはどうして?ライナーがあなたよりも下なら、興味なんてわかないんじゃないの?」
彼が言った言葉から考えたら彼よりも下、私はそう思わないけど、彼にとっては価値のない存在であるライナーに興味なんてわかないはず。
「たしかに彼は価値のない存在です。こんな僕よりもはるかに命が軽い」
ライナーがどんな人か知らないから仕方ないのかもしれないけど、むしろ知らないのに勝手なことを言う彼に怒りがわく。
ライナーがどれだけ苦しんでいたかも知らないくせに。
それでも、誰かのためにライナーがどれだけがんばっていたかも知らないくせに。
「彼を初めて見た時にすぐにわかりましたよ、彼は苦しんでいるって」
その言葉を聞いてドキリとした。
私だってライナーが苦しんでいることに全然気付かなかったのに、彼は見ただけでわかったなんて。
「生きているのが苦しくて苦しくて仕方がないのに、自ら死を選ぶことも出来ないでいるって」
前世で罪を犯したライナーは生きているのが苦しかった。
だけど、死んで楽になろうなんて考えずにずっと苦しみながら生きていた。
「そんな彼を見て思ったんです、僕よりも下がいたって」
その時のことを思い出したのか、彼は本当に嬉しそうに笑った。
何も知らなければ本当に素敵な笑顔に思えるからこそ、彼への恐怖が大きくなる。
「彼が生きている間は、僕は下じゃない。彼が1番下だから、僕の命にわずかだけど重みが生まれるって」
彼の考え方ならきっとそうなんだろうね。
ライナーのことを知らないからそう言えるんだ。
ライナーのことを知っていたら、そんな風に思えないはずだもん。
「なのに、彼は少しずつ苦しまなくなりつつあったんですよ。あなたたちと一緒に過ごしていくうちに」
私たちはずっとみんなで一緒にがんばって来た。
それがきっとライナーのためにもなっていたんだ。
「特に顕著だったのはあの子たちが産まれてからですよ」
「アクアとルビー……だね」
あの子たちなんてアクアとルビー以外にいるわけがない。
2人のこともずっと知られていて、もしかしたら2人も殺されかねないことが怖い。
「ええ……アクアくんとルビーちゃんが、自分の子供が産まれたから。守る対象が出来たから彼は自らを少しずつ肯定出来るようになってしまった」
「そう……だね。自分の子供……だもんね」
言えない。
ライナーはアクアとルビーが自分の子供だって最近まで知らなかったなんて。
私がライナーが寝ている間にそういうことをしたなんて。
いろんな意味で言えない。
「困るんですよ、彼には僕よりも下でいてもらわないと」
「だから……私を殺すの?」
「はい、そうすれば彼は死ぬまで苦しんでくれるでしょう?」
きっと彼の言う通り、ライナーは苦しむ。
死ぬまで、私が殺されたのは自分のせいだと思って。
「死ぬほど苦しいけど、だけど子供たちのために自ら死ぬなんてことはしない。子供たちを守るために死ぬほど苦しみながら、それでも死ぬまで生き続けるはずです」
きっと彼の言う通りだ。
ライナーは苦しむ。
普通の人なら死んでしまうくらい。
だけど、それでもライナーは死んだりしない。
アクアとルビーのために。
B小町のみんなために。
社長とミヤコさんのために。
一緒にがんばってくれるスタッフのみんなのために。
どれだけ苦しくても、みんなのために必死になって生き続ける。
ライナーはそういう人間だ。
「彼が生きていれば、僕の命に重みが生まれる。だから、彼には苦しみながら生きて欲しいんです。あなたが僕に殺されたあとも10年くらい苦しみながら、出来れば死ぬまでずっと苦しんでいて欲しいですね」
嘘なんかじゃない。
彼は心から、私を殺したいって。
ライナーに苦しんで欲しいって思っている。
理解できない。
どうしてそんな風に思えるのか。
私には全くわからない。
それでも、まだ間に合うはず。
「知っているから言うけどさ。アクアとルビーは私の子供なんだ」
「ええ、知っていますよ。あなたたちのことはずっと見ていましたから」
誰も愛せないと思っていた私をみんなが救ってくれた。
きっと、彼も救えるはず。
「私は誰かを愛したことも、誰かに愛されたこともないって思っていたの。だから自分の子供なら愛せるかもしれないって思ってアクアとルビー産んだんだ」
本当に馬鹿で、身勝手で、こんなどうしようもない私のところに産まれて来てくれた、世界で1番素敵な子供たち。
「アイドルをしながら子育てするのは大変だったけど、それでも素敵なことがたくさんあったよ」
アイドルとしても、母親としても、数えきれないほどの素敵なことがあった。
「こんな私がみんなから愛されているって気付けたのは、みんながいたからなの」
アクアとルビーにライナー、社長とミヤコさんにB小町のみんな。
スタッフのみんなに、ファンのみんな。
他にもたくさんの人達のおかげで、私は幸せになれた。
「気付いていないだけで、あなたにも必ずあなたのことを大切に思ってくれている人たちがいるよ」
私はずっと気付けなかったけど、私はずっとみんなに愛されていた。
彼にだって、必ず彼のことを大切に思っている人がいる。
「だからさ……誰かを殺すのなんてやめてよ。誰かを殺すより……大切な人たちと一緒に生きていく方が何倍も素敵だよ」
彼が私を、誰かを殺したら、彼のことを大切に思っている人たちがきっと悲しむ。
だから、まだ間に合ううちにその人たちと一緒に生きて欲しい。
そうすればきっと、自分がどれだけみんなから愛されているかに気づけるはずだから。
「言いたいことはそれだけですか?」
「…………え」
私の言葉を聞いて、彼は面倒くさそうに言った。
「僕を説得するつもりかは知りませんが無駄ですよ。だってもう何人か殺していますから」
「…………そんな」
「もちろん、バレないように他の人間を使って間接的に殺したので僕が犯人だってバレませんでしたよ」
どうして?
どうしてそんなことが出来るの?
どうして誰かを殺したのに、そんなに普通でいられるの?
「あなたを殺したことで僕は警察に捕まるかもしれませんが、それでも構いません。あなたという誰からも愛される価値のある存在を直接この手で殺す。あなたが殺されたら彼は死ぬまで苦しみ続ける。そうなれば誰かと一緒に生きるなんて面倒なことをしなくても、僕は自分の命に重みを感じ続けることが出来る」
わからない。
話し合ったけど、どうしてそうなるのか全くわからない。
「なので……殺しますね」
彼がナイフを持って、近づいて来る。
私を殺すために。
逃げようと後ろに下がっても、祠にぶつかって逃げることが出来なくなる。
「ああ……そうだ。あなたを殺したら先生と同じ場所に隠してあげますよ」
「…………せんせ?」
先生と聞いて、ゴロー先生のことを思い出した。
私のファンで、アクアとルビーを取り上げてくれるはずだった人。
「あなたの主治医の先生も僕が殺したんです。正確には僕が情報を教えた他の人間が殺したんですけど、その先生の死体をその祠の裏に空間に隠したんです」
彼の言った通り、祠の裏には空間があった。
ここからは見えないけど、きっとそこに先生はいる。
「だからあなたを殺したらその死体を同じ場所に隠してあげますね。そうすればさみしくないでしょう?」
それが悪いことだと疑っていない。
本気でいいことだと思っている。
「それじゃあ……死んでください」
嬉しそうに笑いながら、近づいて来る。
「…………たすけて」
ごめんねライナー。
話し合えば、きっとわかりあえると思ったのに。
私には無理だった。
「たすけて」
そのせいで、またライナーを戦わせてしまう。
「助けてライナァアアア!!」
祠の裏から、ライナーが飛び出した。
「なんっ!?うがぁ!」
突然現れたライナーに驚きながらナイフを突き出すけど、ライナーはそれを躱して腕を折る。
「うぉおおおおおお!!」
そのまま彼を掴んで投げ飛ばした。
「大丈夫か!?アイ!!」
「うん!大丈夫だよライナー!!」
ライナーは私を守れるように私の前に立って、彼を睨み付けている。
「どう……して?」
痛みに呻きながらどうしてライナーがここにいるのか聞いて来る。
「この場所は前に来たことがあって祠の裏に空間があるのは知っていた。ここなら隠れられてお前を迎え撃ちやすいと思って待っていた」
私にここに来るように指示があった時、私たちは相談して犯人をここに呼び出すことにした。
その時にライナーがここに祠があってその裏に空間があって隠れられるって教えてくれたから、ライナーがここに隠れて犯人と戦うことにした。
「その腕じゃもう戦えないだろう。もう諦めろ」
ライナーは前世で軍人だった。
片方の腕が折れている彼じゃもうライナーには勝てないはず。
「それで……僕を捕まえてどうするんですか?警察に突き出したら、アイが子供を産んだことを暴露しますけど」
彼のしたことは絶対に許されることじゃないけど、警察に捕まったとしても私がアクアとルビーを産んだことを知っているし、その証拠もある。
だから、彼は強気でいる。
「かまわない。どうなったとしても受け入れる。これはみんなで決めたことだ」
私が妊娠した証拠があるから暴露されることも考えたけど、みんなで相談してそれを受け入れることにした。
世間は絶対に許してくれないだろうけど、それでもみんなは私たちの味方でいてくれるって言ってくれた。
この先、どれだけ辛いことがあったとしてもみんなで一緒にがんばって行こうって決めたから。
だからもう、何も怖くない。
「暴露でもなんでもすればいい。だからもう諦めろ」
彼を捕まえようとライナーが近づいていくけど、急に止まった。
「これは……まさか!!」
ライナーが周りを見渡すから私も同じようにすると、私たちの周りにたくさんのカラスがいた。
「どうして……きゃあ!!」
「アイ!!」
どうしてカラスがこんなにいるのか不思議に思ったけど、そのカラスたちが私に襲いかかって来る!
「くそっ!!やめろ!!」
すぐにライナーが来てカラスたちを追い払ってくれた。
「大丈夫かアイ!?」
「うん、私は大丈夫だよ!!」
ライナーが追い払ってくれたから私に怪我はないけど。
「だけど!!」
「逃げたか!」
私が襲われている間に、彼は逃げてしまった。
「早く追いかけないと!」
「いや……無理だ」
ライナーがそう言うから周りを見ると、カラスたちが私たちを監視するように周りの木に止まっている。
きっと私たちが彼を追いかけようとしたらまた襲ってくる、そんな気がした。
「アイ、お前に何かあったらいけない。奴のことは諦めよう」
「…………でも」
ライナーはそう言うけど、彼が妊娠のことを暴露するかもしれないし、そうじゃなくてもまた誰かを殺したりするかもしれない。
彼を自由にしておきたくないのに、でも諦めるしかない。
そう思ったとき、1羽のカラスが私たちの前に飛んできた。
「カァ!!」
カラスの鳴き声なんてわからないけど、まるで自分たちに任せろって言っているように思えた。
「ああ……頼む」
ライナーがそう言うと、カラスたちが一斉に飛び立った。
きっと、彼の元に向かって。
「アイ……帰ろう」
そう言って、ライナーが私に手を伸ばす。
「うん……みんなのところに帰ろう」
その手を取って、一緒に歩いていく。
大好きなみんなのところへ、一緒に帰るために。
★
森の中を必死に走る。
折られた腕が痛むが、捕まるわけにはいかない。
だって、まだ彼女を殺していないんだから。
「はぁ……はぁ、ここまで来れば」
だいぶ走ったから山の奥まで来た。
後ろを振り返っても彼らが追いかけて来ている様子はない。
「はは……これで……また殺せる」
今回は殺せなかったけど、捕まることはなかった。
失敗したせいで警戒されるだろうけど、チャンスはいくらでもある。
むしろ、どうやって殺すか考える楽しみが出来た。
「腕を治して……それから」
これからやるべきことを考えようとして、気付いた。
僕の周りを大量のカラスが取り囲んでいることに。
「なん……だ?」
異常な光景に思考が停止するけど、すぐに思い出した。
僕が逃げることが出来たのは、カラスの群れが彼らを襲ったからだ。
あの時は逃げるチャンスだったから必死だったけど、気付いてしまった。
カラスたちは彼らを狙っていたんじゃない。
本当の獲物は僕だった。
「カァ!!」
それが正しいと言うかのように1羽のカラスが鳴くと、それを合図に大量のカラスたちが襲い掛かって来る!
「うわぁ!やめろ!!」
カラスたちの嘴で啄まれ、爪で引っかかれる!
振り払おうとしても、片腕が折れているせいで振り払えない!
「…………あ」
そうやって逃げていたら、足元が無くなって、浮遊感に襲われた。
強い衝撃に襲われて、意識が朦朧とする。
全身が痛い。
仰向けに倒れていたらしく、目を開けてなんとか周りをみる。
崖が見えた。
きっと、そこから落ちたんだ。
「だ…………れ?」
気付く。
視界の端で、誰かが僕を見ていた。
「たす…………け」
助けを求める。
だけど、僕を助けてくれる様子はない。
僕を置いて、どこかへ行く。
「…………ま」
待って。
そう言おうとして、黒い羽が舞った。
「…………やめ」
皮膚が裂ける。
肉が千切れる。
骨が外されていく。
体が無くなっていく。
死にたくない。
「…………し」
僕の命が軽くなっていく。
それが最後だった。
原作でどうなるかはわかりませんが、この作品のカミキはこういう人間ということにしてください!
全国のカミキファンの皆様!
カミキをこのように扱ってしまい誠に申し訳ございません!