【推しライナー】   作:チェシャ猫もどき

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遅くなってしまい本当に申し訳ございません!

書きたい話はあるんですが、いきなりその話にいくのはあれなんでそれまでの繋ぎの話を考えていたらだいぶ期間が空いてしまいました!
しかも短めの話になると思っていたのに、書き始めたらどんどん盛り上がってしまい文字数も一万を超えるという。
地の文そんなに多くないと思うのにどうして?

1ヶ月近く投稿しなかった自分に脳を焼かれたので初投稿です!




たったひとつの冴えたやり方

 

「ライナーって彼女いるのかな?」

 

 それはレッスンが終わって、帰る準備をしながらしていたみんなとの会話の中で出て来た。

 

「……彼女?」

 

「どしたの急に?」

 

 なんの脈絡もなく、急にそんな話題が出て来たから不思議に思った。

 

「この前さ、私クラスの男子に告白されたんだよね」

 

「え、マジ!?」

 

「それで!?それで!?」

 

「OKしたの!?」

 

 告白されたって事実に一気に盛り上がる。

 私たちはアイドルだけど、まだ10代の学生なわけだからそういったことに興味はある。

 だから、その告白になんて返事したのかすごく気になる!

 

「いや、普通に断ったよ」

 

「なーんだ、つまんないの?」

 

「OKすればよかったのに」

 

「どうして断ったの?」

 

「どうしてって……アイドルなんだから当たり前でしょ」

 

「ま、そうだよねー」

 

 文句を言う私たちに呆れたように言った。

 アイドルだから恋愛禁止だから断るのは当然といったら当然なんだけど、それでも万が一を期待したかった。

 だってその方が面白いし!

 

「それにダメだとはわかっているんだけどさ、告白された時に相手の男子とライナーと比べちゃったんだよね」

 

「あー、それをしたらダメでしょ」

 

「ライナーと比べたら学生は勝てないって」

 

「だよねー」

 

「え、どうしてライナーと比べちゃダメなの?」

 

 ライナーと相手の子を比べてしまったって言葉にみんな納得しているけど、私はどうしてみんなが納得しているのかよくわからない。

 

「え、普通わかるでしょ」

 

「あれか、アイは小さい頃からライナーと一緒だから慣れてるんじゃない?」

 

「アイにとっては普通なのかー」

 

「え、え?何?どういうこと?」

 

 なんか私が疑問に思っていることにみんな納得しているけど、私はさっぱりわからない。

 一体どういうことなの?

 

「アイにとっては当たり前かもしれないけど、ライナーってめちゃくちゃかっこいいよ!」

 

「いや……ライナーがかっこいいのはわかるけど、かっこいい人は他にもいるでしょ?」

 

 私だってライナーはかっこいいと思う。

 でも、かっこいい人は他にもいるし、ライナーと告白してくれた子とはかっこいいの種類が違うから問題ないと思うのに。

 

「ちっちっち!ライナーの他にもかっこいい人がいるのはそうだけど、ライナーみたいに頼り甲斐がある人は10代の若者には中々いないの!」

 

「そうそう!マネージャーとして私たちのことを支えてくれるし、それ以上に1人の人間として私たちのことを気にかけてくれているからすごく嬉しいんだよね!」

 

 ライナーはマネージャーとして私たちB小町のみんなのスケジュールを調整したり、体調を気にかけてくれている。

 それにマネージャーじゃなくて個人としても私たちの勉強をみてくれたり、相談に乗ってくれたりとすごく頼りになる。

 たしかに、10代の学生にライナーみたいな頼もしさを求めるのはダメかもしれない。

 

「それにライナーは変な目で私たちのこと見ないし!」

 

「アイドルだから仕方ないことだけど、大抵の男の人は胸とか見てくるよ!誤魔化してるつもりかもしれないけどバレバレだっての!」

 

「……たしかに」

 

 握手会や、学校でも男の人に胸を見られたりすることは多い。

 男の人がそういったことに興味があるのは仕方ないし、それが嫌ならそもそもアイドルなんてやってないから受け入れている。

 だとしてもやっぱりそういうのは気になっちゃうし、たまにガッツリ見てくる人もいる。

 そう考えると私たちをそういった目で見てこないライナーってけっこうすごいのかも?

 

「というわけで、告白されたときにライナーとその子を比べちゃったことで改めてライナーの魅力っていうの?そういうのに気付いたってわけ!だからライナーに彼女がいるのか気になったのよ!」

 

 たしかにライナーはかっこいいし、頼りになるし、私たちをそういった目で見ないし、女の人からの好感度も高そうだから彼女がいてもおかしくない。

 

 ライナーに彼女がいるかもしれない。

 そう思った時、何故かわからないけど胸の奥がズキリと痛んだ気がした。

 

「いや……ライナーに彼女なんて、いないんじゃない?」

 

 私はライナーには彼女がいないって言った。

 

「そうだよね、忙しいから彼女なんて作る暇なんてないよね」

 

「そうだよそうだよ!ライナーに彼女なんていないよ!」

 

 ライナーに彼女なんていないに決まってる!

 だってマネージャーとして忙しくしているんだから!

 だから彼女なんていないに決まってる!

 

「いや……それはどうかな?意外といるかもよ?」

 

「……え?」

 

 彼女がいるかもしれないって意見に困惑した。

 ライナーに彼女がいるかもしれないってどうして?

 

「この前……聞いちゃったんだよね。女性スタッフが『ライナーさんってかっこいいよね』って言っているの」

 

「マジで!?」

 

「本当!?」

 

「……嘘」

 

 信じられなかった。

 別におかしいことじゃないのに、それを信じられなかった。

 

「ライナーはマネージャーだけど、ずっと一緒にいるわけじゃないからね。意外と私たちの知らないところで誰かといい関係になっているかもよ」

 

 嫌だ。

 

 私の知らないところで、誰かと仲良くしているライナーを想像してなぜかそう思った。

 

「少なくとも私たちとそういう関係にはなれないよね。アイドルとマネージャーだし、私たち未成年だもんね」

 

「そりゃあ……無理だね」

 

 ライナーとそういった関係になれないってわかって、安心したような、嫌なような、なんとも言えない気分になった。

 

「それに今の私たちじゃライナーに釣り合わないって気がしない?」

 

「たしかに、私たちライナーに頼り切りだもん」

 

「それにライナーの方がかなり大きいから付き合っても恋人ってより兄妹って思われそうだね」

 

 ライナーの身長は190くらいある。

 だからライナーと私たちが並んだら頭一つ分以上も身長差があって恋人だと思われないかもしれない。

 身長はこれからまだ成長するとしても、問題はライナーに頼り切りになっていることだと思う。

 

 ライナーがマネージャーだから私たちの面倒を見てくれるのは当然かもしれないけど、それ以上にいろいろと面倒を見てくれている。

 それが嬉しいけど、それだけじゃ嫌なんだ。

 私たちもライナーのために何かしてあげたいって思っている。

 

「しかもこの前ライナーがミヤコさんと一緒にいたんだけど……すごくお似合いだったよ」

 

「うわっ!本当だ!」

 

「すごくいい感じじゃん!」

 

 ミヤコさんとライナーが並んでいるところを想像して、2人が結構お似合いだったことにショックを受けた。

 ミヤコさんは私より大人だし、身長だって私より大きい。

 だからライナーと並んでいても兄妹とは思われないし、大人のミヤコさんならライナーのことを支えてあげられる。

 考えれば考えるほど、私たちよりもミヤコさんの方がお似合いなんじゃないかと思った。

 

「でも、ミヤコさん社長と結婚してるからライナーとは無理だね!」

 

「結婚してるなら仕方ないね!うん、仕方ない!」

 

「そ、そうだよ!不倫はダメだよ!」

 

「うんうん、仕方ない!仕方ない!」

 

 ミヤコさんは社長と結婚しているからライナーとは恋人関係にはなれないし、ライナーも不倫とかそういったいけないことをするようなタイプじゃないから大丈夫だ。

 

 ライナーがミヤコさんとそういった関係にならないとわかってホッとする。

 よかった、ライナーはミヤコさんと恋人にはならない。

 

「ミヤコさんがライナーとそういった関係にならないのはわかったけどさ……結局ライナーに彼女がいるかどうかはわかってないよね」

 

「……たしかに」

 

「ミヤコさんが違うのは確定としても、他の人と付き合ってる可能性はあるよね……」

 

 ホッとしたのも束の間、結局ライナーに彼女がいる可能性はまだあった。

 

「でもさ、私たちがいくら考えたところでライナーに彼女がいるかどうかなんてわからなくない?」

 

「それは……そうだけど」

 

 一緒にいることが多いけど、さすがにプライベートのことまではわからない。

 他のスタッフの人と付き合っているとかならまだしも、仕事や芸能界とは関係ない人と付き合っているなら、私たちがそのことを知ることは出来ないもん。

 

「……どうする?」

 

「どうするって……何を?」

 

 どうするって聞かれたけど、何をどうするんだろう?

 

「ライナーに……聞いちゃう?」

 

「…………え?」

 

「……マジ?」

 

「だって……いくら考えてもわからないなら、本人に聞くしかないじゃん」

 

「そうかもしれないけど……」

 

 まさかの提案に、脳が理解を拒んだ。

 いや、私たちがここでいろいろと考えるよりはライナーに直接聞いた方が早いのはわかっているよ。   

 でも、本人に直接聞くのはハードルが高いというかなんというか。

 

「みんなは気にならないの!?ライナーに彼女がいるかどうか!?」

 

「そりゃあ……」

 

「気になるけど……」

 

「なら、聞くしかないじゃん!」

 

「おおっ!」

 

 勢いの良さに圧倒される。

 ここで悩んでいても何も解決しない。

 なら、ライナーに聞いてスパッと解決しちゃおう!

 

「で、誰がライナーに聞くの?」

 

「「「…………」」」

 

 当然の疑問。

 ライナーに彼女がいるか気になるけど、本人に聞くのはちょっと気まずいから誰かにやって欲しい。

 どうやらみんなも同じことを思っていたみたいで、誰も自分が聞くと言い出さない。

 

「それじゃ…………アイ、お願い」

 

「え!!私!?」

 

 まさか私に振られると思っていなかったからめちゃくちゃ驚いた!

 

「どうして私!?」

 

「だってアイとライナーは同じ施設にいたから付き合い私たちより長いじゃん!なら自然な感じでうまいこと聞けるでしょ!?」

 

「そんなことないよ!?」

 

 たしかにみんなより付き合いは長いけど、だからって彼女がいるかどうか聞くのは気まずいよ!

 

「ていうか、聞くなら直接聞こうって言い出したニノが聞くべきだよ!!」

 

「嫌だよ!」

 

 ライナーに直接聞こうと言い出したのはニノだ!

 なら、私じゃなくて責任を持ってニノが聞くべきだと思う!

 

「そもそも!ライナーに彼女がいるのかって言い出したのはたかみーでしょ!!すべての元凶なんだからたかみーが聞いてよ!!」

 

「たしかに私が言ったけど、みんなノリノリだったじゃん!!」

 

「そうかもしれないけどさ!!」

 

 ニノが責任をたかみーに押し付けるけど、たかみーも私たちに責任があると言ってくる!

 もうめちゃくちゃだよ!

 

「ええい!もう面倒くさい!!こうなったらじゃんけんで決めるよ!!」

 

「もうそれしかないね!」

 

「うらみっこなしだよ!」

 

「やってやるよ!」

 

 みんな面倒になってじゃんけんで決めることにした!

 私が聞くことになる可能性だってあるけど、勝てばいいだけの話!

 私はB小町のセンターなんだ!

 じゃんけんだってセンターだ!

 

「それじゃ……いくよ」

 

 みんな息を飲む。

 このじゃんけんの結果で、自分がライナーに彼女がいるかどうか聞くことになるからみんな真剣だ!

 

「「「「最初は……」」」」

 

「おい、お前ら」

 

「「「「うわぁ!!」」」」

 

「うおっ!どうした!?」

 

 じゃんけんをしようとした瞬間に、ライナーに声をかけられたからみんな驚いて叫んだ!

 まさかこのタイミングで本人が来るとは思わないもん!

 

「な、なんだ。ライナーか……」

 

「び、びっくりした!」

 

「ちょっとライナー!急に声をかけないでよ!」

 

「そうだよ!びっくりするじゃん」

 

「えっと……すまん」

 

 私たちに言われてライナーは謝るけど、ちょっと納得がいってないみたいだ。

 ライナーからしたら声をかけただけなのにこんなに言われたから不満に思うかもしれないけど、私たちだってものすごくびっくりしたからお互い様だと思う。

 

「それで、どうしたのライナー?」

 

「いや、レッスンが終わったのに来ないからどうしたのかと思ってな」

 

「あ、本当だ。結構時間たってるね」

 

 ライナーの言葉で時計を見たら、そこそこ時間がたっていた。

 みんな話に夢中になっていたせいで気が付かなかった。

 

「レッスン終わったんだから、さっさと帰れよ」

 

「「「「はーい」」」」

 

 いつまでいても迷惑になっちゃうかもしれないからありがたいね。

 

「じゃあ……帰る?」

 

「……だね」

 

「レッスン……終わったし」

 

「……帰ろっか」

 

 なんかみんな帰る感じになっているけど、みんなの視線が言っている。

 

 誰かライナーに彼女がいるかどうか聞けって。

 

「おしゃべりもいいが、早く帰るぞ」

 

 ライナーもなんか帰ろうとしている。

 ここで聞かなかったら、なんやかんやでずっと聞けなくなっちゃう気がする!

 

 ええい!

 私はB小町のセンターだ!

 このくらいの困難くらい乗り越えてやる!

 

「ねえ、ライナー!」

 

「ん、どうした?」

 

(アイ……まさか!)

 

(やるんだな!?今……!ここで!)

 

(いいよアイ!そのまま聞いちゃえ!)

 

 思い切ってライナーに声をかける!

 声には出さないけど、みんなが応援してくれている気がする!

 よし、ライナーに聞いてやるぞ!

 

「ライナーって!彼女いるの!?」

 

(やりやがった!!)

 

(マジかよアイ!!)

 

(やりやがった!!)

 

 い、言っちゃった!

 ついに言っちゃった!

 ライナーに彼女がいるのかどうか聞いちゃった!

 

「いや、いないが」

 

「「「「おおー!!」」」」

 

「え……どうしたんだお前ら?」

 

 ライナーに彼女がいないことがわかって、私たちの間で達成感のようなものが広がる。

 彼女がいるかどうか聞くことになんか抵抗があったから、それを乗り越えられてよかった!

 

「いや、ライナーに彼女がいるかどうかって話題になったんだよ!」

 

「ああ、だから俺が声をかけた時にあんなに驚いていたのか」

 

 説明してライナーも私たちが驚いたことに納得したみたい。

 ライナーからしたら声かけただけなのにすごく驚かれたから不思議だったんだろうね。

 

「で、本当にいないの?彼女?」

 

「いないって。仕事で忙しいから彼女なんて作る暇なんてねぇよ」

 

「だよねー!」

 

「忙しいもんね!彼女なんて作る暇ないよね!」

 

「……なんで嬉しそうなんだ?」

 

「まぁまぁ!気にしないで!」

 

 もしライナーに彼女がいたらどういう反応をすればいいかわからなかったから、いなくて本当によかった。

 

 本当に、ライナーに彼女がいなくてよかった。

 

「そんなことよりお前ら、早く帰るぞ」

 

「「「「はーい!」」」」

 

 レッスンが遅くなった日はこうしてライナーたちが家まで送ってくれる。

 みんな返事をして、ライナーの車に乗り込む。

 

「それでライナー!本当に彼女いないの!?」

 

「……いないって言っているだろう」

 

「本当~?」

 

「じゃあさ!好きなタイプは!?どんな子がタイプなの!?」

 

「ふわっとした感じでいいから!ね!?」

 

 ライナーに彼女がいないとわかって余裕が出来たから、みんな興味深々でいろいろ聞いていく。

 私もライナーの好きなタイプとか気になるからみんなに乗っかっていく。

 

「はぁ……優しい人だ」

 

「なにそれ!つまんない!」

 

「もっと具体的に!」

 

「ハッキリ答えてよ!」

 

「ふわっとした感じでいいって言っただろ……」

 

 まさかの優しい人って普通の答えに、みんなからブーイングされるライナー。

 ふわっとした感じでいいって言ったけど、優しい人とか普通すぎてつまんないよ!

 

「きれい系!?かわいい系!?」

 

「年上!?年下!?」

 

「芸能人で言ったら誰がタイプ!?」

 

「もう……勘弁してくれ」

 

 私たちの怒涛の質問攻めに、ライナーはぐったりしている。

 うーん、このまま聞き続けても答えてくれなさそうだし、そろそろ勘弁してあげようかな?

 

「ほら、着いたぞ!さっさと帰れ!」

 

「ひどくない!?」

 

「あはは、ありがとねライナー!!」

 

「またね!!」

 

 目的地に着いたから、みんなを降ろしていく。

 私は住んでいる場所が少し遠いのと、ライナーもあまり気を使わなくていいからいつも最後にしてもらっている。

 

「ほら、着いたぞアイ」

 

「ありがとうライナー」

 

 着いたからドアを開けて出る。

 あとは閉めるだけだけど、どうしても気になってしまった。

 

「ねぇライナー……本当に彼女いないの?」

 

「何度も言っているが……本当にいねぇよ」

 

「そっか……ごめんね何度も聞いちゃって!!」

 

「まったく……そんなに気になるのか?」

 

「恋バナは楽しいからね!」

 

「そんなもんか?」

 

「そんなもんだよ!」

 

 何度も聞いちゃったから少し疑われたのを誤魔化した。

 ちょっと聞きすぎちゃったかな?

 でも、ライナーを誤魔化せたからセーフセーフ!

 

「明日は休みなんだからしっかり休めよ」

 

「わかった!またねライナー!」

 

「ああ、またなアイ」

 

 ライナーと別れて借りている部屋に行く。

 アイドルになって少し売れはじめたから私は最近施設を出て、1人暮らしを始めた。

 施設だと他の子がたくさんいるから練習がしづらいし、プライバシーの問題や他の子への迷惑も考えたら施設を出た方が都合がよかった。

 

「ただいま」

 

 ただいまと言っても誰も答えてはくれない。

 一人暮らしだから当然だけど、施設ではたくさんの子と一緒にいたから寂しくなってしまう。

 

「ダメダメ!私はアイドルなんだから!」

 

 前の生活と比べて暗くなってしまいそうになったから、明るくなるように言い聞かせる。

 

「お腹減っちゃった!ご飯食べよう!」

 

 レッスン終わりでお腹が減ったから帰る途中で買ったコンビニのお弁当をレンジで温める。

 いつもは栄養バランスを考えて自炊をしたりしてるけど、たまにはいいよね?

 

「いただきます!」

 

 温め終わったから取り出して食べる。

 

 おいしい。

 おいしいけど、なんか物足りない。

 今までずっとみんなと一緒にいたからかな。

 

 なんだか……さみしい。

 

「……ごちそうさまでした」

 

 食べ終わって、片付ける。

 やることなくなっちゃった。

 

「お風呂入って……寝よう」

 

 なんだかやる気が出ない。

 明日は休みだから、早く寝ちゃおう。

 

 お風呂に入る。

 施設は時間が決まっているし、みんなと入るから1人でゆっくりなんて出来ない。

 だから、すごく恵まれているはずなのに今日はなんだか満たされないような気がする。

 

「……おやすみ」

 

 歯も磨いて、布団に入って寝る。

 疲れが溜まっていたのかすぐに眠ることが出来た。

 

 夢を見た。

 

 私は1人、町の中を歩いている。

 

(あ、ライナーだ!)

 

 歩いているとライナーがいた。

 

(おーい!ライ……)

 

 ライナーに声をかけようとして、気が付いた。

 ライナーの隣に、知らない女の人がいるってことに。

 

 それだけなら普通に声をかけただろうけど、その女の人と一緒に歩いているライナーがすごく楽しそうに笑っていたから、その女の人はライナーの彼女なんだと思ってしまった。

 

 どうしようか迷っていた私にライナーが気が付いた。

 気が付いてくれたことが嬉しくて声をかけようとしたら、ライナーが私に気付いてくれた。

 

(ライ……)

 

 ライナーに声をかけようとして、声が止まる。

 

(ライナー……どうして?)

 

 ライナーは私に気付いた。

 気付いたのに、私から目を逸らした。

 

 目を逸らして、隣にいる彼女にそのまま笑いかけた。

 

(ライナー!!)

 

 私を見て欲しくて叫ぶ。

 

(ライナー!待ってよライナー!)

 

 叫ぶのに、ライナーは私を見てくれなくて、そのまま女の人と一緒に行ってしまう。

 

(待って!待ってよ!)

 

 どれだけ叫んでも、どれだけ走っても、ライナーたちに追いつけない。

 

 私を置いて行ってしまう。

 

 また、1人ぼっちになっちゃう!

 

(ライナー!待ってよ!)

 

「…………待って!」

 

 ライナーたちが見えなくなってしまう瞬間、目が覚めた。

 

 私は手を伸ばしている。

 

「…………夢?」

 

 起き上がって、周りを見る。

 ここは町の中なんかじゃなくて、私の部屋だった。

 

「…………よかった」

 

 あの光景が夢だとわかって、安心する。

 たとえ夢だったとしても、あの光景は本当に怖かった。

 そのせいで胸が苦しくて、全身に嫌な汗をかいている。

 

「寝坊……しちゃった」

 

 時計を見たらいつも起きる時間をかなり過ぎていて、もはやお昼になりかけている。

 

「……洗おう」

 

 ベッドから起きて、洗面所に行く。

 まずは顔を洗って眠気を取りたいし、汗で全身が気持ち悪いからシャワーも浴びたいし、お腹も減ったしで、寝起きが最悪だったせいでやる気が出ないのに、やることはたくさんある。

 

「ふぅ、スッキリした!」

 

 冷たい水で顔を洗ったら、とりあえず眠気はスッキリした。

 スッキリしたら、少し前向きに考えられるようになった。

 

「夢は夢!!ライナーがあんなことする訳がないよね!!」

 

 私が見たのは夢なんだから気にしない!

 ライナーがあんなことするような人じゃないってよくわかっているのに!!

 

『本当に?』

 

「……っ!!」

 

 そうやって自分に言い聞かせていたら、鏡の中の私が語りかけて来る。

 心臓が止まるかと思うくらい驚く私を無視して鏡の中の私が話しかけて来る。

 

『どうしてライナーがあんなことしないって思えるの?』

 

「だって……ライナーはあんなことするような人じゃないって知ってるでしょ?」

 

 自分がおかしくなってしまったと思うけど、だからって鏡の中の私の言葉を無視することは出来なかった。

 あれが私なら、ライナーがあんなことをするような人じゃないって知っているはず。

 なのに、どうしてこんなことを言うんだろう。

 

『本当にそう思うの?』

 

「当たり前だよ、ライナーはあんなことをしたりしないよ」

 

 自信を持って言える。

 ライナーはあんなことしたりしないって。

 

『ふぅん……ライナーのこと、信じているんだ』

 

「当たり前だよ、私はライナーのこと信じてるもん!」

 

 ずっと一緒にいたからライナーがあんなことをする人じゃないってわかってる。

 あれは所詮夢だ。

 私は、あんな夢なんかを信じたりしない。

 

『でも……おかあさんは迎えに来てくれなかったよ』

 

「…………あ」

 

 そうだ、おかあさんは私を迎えに来てくれなかった。

 

 必ず迎えに来てくれるって信じていたのに、おかあさんは私を迎えに来てはくれなかった。

 

 愛されているって信じていたのに、私はおかあさんに愛されてはいなかった。

 

「ライナーは……おかあさんとは違う……よ」

 

 信じているはずなのに、私の声は震えている。

 

「彼女が出来たって……私たちのことも大切にしてくれるよ」

 

 震える声で言う。

 私たちのことも大切にしてくれるって。

 そう信じたいから。

 

『たしかに、彼女が出来たとしてもきっとライナーは私たちのことも彼女と同じくらい大切にしてくれるよ』

 

「ほら、やっぱりそう思っているじゃん」

 

 鏡の中の私も同じように考えていたとわかってホッとする。

 そうだよ、ライナーならみんなを大切にしてくれる。

 だから、心配する必要なんて……。

 

『私たちと同じくらい、彼女のことを大切にするよ。ずっと一緒に頑張って来た私たちと同じくらい彼女になっただけの女性のことを……ね』

 

「…………え?」

 

 その意味を理解するのを拒んだ。

 

 私たちはずっと一緒に頑張って来た。

 B小町の結成した時から、辛い時も苦しい時も。

 みんなで一緒に頑張って乗り越えて来たのに。

 

 それなのに、恋人になっただけの人が、私たちと同じくらい大切にされちゃうの?

 

『それにライナーとその人が結婚したら?子供が産まれたら?それでも私たちを優先してくれると思うの?』

 

「それ……は」

 

 いくら一緒に頑張って来たといっても、私たちと奥さんを同じように扱うわけにはいかない。

 私たちより奥さんを優先することだってあるだろうし、子供が産まれたらその子のお世話だってある。

 ライナーはきっと子育てを奥さん任せにしたりしないと思うから、ますます私たちより家族を優先するかもしれない。

 

 そうしたら、ライナーは夢で見たようなことを。

 

「ちがう……ライナーは……そんなこと」

 

『しないって、言えるの?』

 

「あ……ああ」

 

 言いたいのに、喉が引き攣って言うことが出来ない。

 

 ライナーのことを信じたいのに、信じられなくなっていく。

 ライナーが、私のことを見てくれなくなっちゃうんじゃないかって。

 私のことなんてどうでもよくなってしまうんじゃないかって。

 

『きっと、ライナーは私のことなんて……』

 

「いや!言わないで!!」

 

 それ以上聞きたくなくて、逃げ出した。

 部屋から飛び出して、走る。

 どこに行けばいいのかなんてわからなくて、どうすればいいのかもわからない。

 

 ただ、あの声を聞きたくなくてがむしゃらに走り続ける。

 

(どうして!?どうしてあんな夢を見たの!?)

 

 あんな夢なんて見なかったら、こんなに苦しい思いをしなくてよかったのに!

 

(どうして!?どうしてライナーは私を見てくれなかったの!?)

 

 あの夢で、ライナーは私を見てくれなかった。

 私を見ないフリして、彼女の方を優先した。

 

(いやだ!!ライナー!!私を見てよ!)

 

 私を見て!!

 私を1人にしないで!!

 私と一緒にいてよ!!

 

『本当はわかってるんでしょ?』

 

 声が響く。

 

 本当はわかってる。

 いつまでも一緒にいられないってことくらい。

 

『ライナーは何も言ってくれないじゃない』

 

 ライナーは苦しんでいるのに、私に何も言ってくれない。

 言ってくれないのは、迷惑をかけないためだってわかっている。

 

 だけど、それでも言って欲しいし、頼って欲しい!

 私だって、ライナーのために何かしてあげたい!

 

『邪魔をしちゃダメだよ』

 

 わかってる!

 ライナーの邪魔をしたいわけじゃない!

 ライナーには幸せになって欲しいって、私だって思ってる!

 幸せになって欲しいけど、1人になるのは嫌だ!

 1人はさみしいよ!

 

『もう諦めようよ』

 

 嫌だ!

 諦めたくなんかない!

 誰かに愛されることも!

 誰かのことを愛すことも!

 絶対に諦めたくない!

 

『じゃあ、どうすればいいの?』

 

「それ……は」

 

 どうすればいいのか。

 そう聞かれて、走れなくなってしまった。

 

「わから……ない」

 

 わからない。

 どうすれば誰かに愛されるのか。

 どうすれば誰かを愛することが出来るのか。

 

 私にはわからない。

 

『ほら、やっぱり無理なんだよ』

 

「むり……じゃあ……」

 

 ないって、言えない。

 

 どうするべきなのか。

 どうしたらいいのか。

 何もわからない。

 

「いや……だ」

 

 諦めたくないのに。

 何もわからないから、立ち尽くすことしか出来ない。

 

『最初から無理だったんだよ。私なんかが、誰かに愛されたり、誰かを愛すことなんて』

 

 本当は心のどころで思っていた。

 私なんかが、誰かに愛されたり、誰かを愛することなんて出来ないって。

 

 それを否定したくて。

 誰かに愛されたくて。

 誰かを愛したくて。

 今まで頑張って来た。

 

『全部、無駄だったね』

 

 無駄なんかじゃない。

 みんなと一緒に頑張って来た今までのことが、無駄なはずないのに。

 

 愛されたくて頑張っているのに。

 愛したくて頑張っているのに。

 

 私は愛されていない。

 私は愛していない。

 

『もういいでしょ?楽になっても』

 

 もう、いいかもしれない。

 

 誰にも愛されないなら。

 誰も愛せないなら。

 

 いっそのこと、楽になってしまっても。

 

 ふらふらと、吸い寄せられるように歩く。

 

 道路は車が走っていて、そこに出れば、きっと楽になれるから。

 

「たすけて……らいなぁ……」

 

 その声が、届くはずなんてないのに。

 

 私はいつも一緒にいてくれたライナーを呼んでしまう。

 

 でも、ライナーはここにはいないから。

 

 私は歩道から、車の走る車道へ。

 

「おぎゃーー!!」

 

「っ!?」

 

 車道へ出ようとした瞬間、赤ちゃんの大きな泣き声が響いてきたから思わず足を止めてしまった。

 私の目の前を車が横切っていく。

 

「私っ!何を!?」

 

 慌てて車道から離れる。

 車に轢かれかけたことと、赤ちゃんの泣き声にびっくりしたせいで、心臓が激しく鼓動している。

 

「あ……赤ちゃん」

 

 おかしくなっていた私を正気に戻してくれた赤ちゃんの泣き声。

 泣き声が聞こえた方を向くと、若い夫婦に抱っこされた赤ちゃんが大きな声で泣いている。

 

 どうして泣いているのかはわからないけど、泣き止ませようと赤ちゃんをあやしているおとうさんとおかあさんは。

 困ったような表情で。

 それでもすごく幸せそうに笑っているから。

 

「あれが……愛」

 

 愛を知らない私でも、あれが愛なんだってわかった。

 

「そうだ、私も……赤ちゃんを」

 

 赤ちゃんが欲しいって思った。

 

「そうすれば……私も」

 

 誰も愛したことの無い私でも、自分の赤ちゃんなら愛せるかもしれないから。

 

「うん、そうだ。きっと愛せるはず」

 

 頭の中に響いていた声は聞こえなくなった。

 

「よし、そうと決まったら!」

 

 何をするべきか考えたとき。

 

「…………帰ろう」

 

 自分が起きたばかりの格好のまま、部屋から飛び出して来たことに気付いてしまった。

 服も着替えずに町を全力疾走したとか、冷静になったらめちゃくちゃ恥ずかしい!

 コソコソと人目を避けるようにしながら部屋に戻り、寝汗と全力疾走したせいで汗まみれになった体をシャワーで洗う。

 さっぱりしたらお腹が減っていたからある物を適当に食べてお腹を満たす。

 とりあえず、これで少しはマシになったはず。

 

「さて、まずはどうしようかな?」

 

 赤ちゃんが欲しいけど、私ひとりじゃ赤ちゃんを妊娠することは出来ない。

 お父さんとなるパートナーが必要だ。

 

「うん、やっぱり……ライナーがいいな」

 

 当然、赤ちゃんが欲しいからといっても誰でもいいわけじゃない。

 出来れば素敵な人がいい。

 

 私の知っている素敵な男性は誰か考えたとき、1番に思い浮かんだのはやっぱりライナーだった。

 いつも一緒にいてくれた人。

 

「邪魔はしないから……」

 

 邪魔はしない。

 ライナーが誰と一緒に生きていくことを選んでも、邪魔なんてしないから。

 せめて、一緒にいた証を。

 

 私とライナーの赤ちゃんなら、きっと愛せると思うから。

 

 もしそういったことをしたことがバレたらいけないから、起きないように薬局で睡眠薬を買う。

 

 ライナーの呼び出す方法は、相談したいことがあるから部屋に来て欲しいって言えばきっと来てくれる。

 ライナーを騙すことになるけど、赤ちゃんのためだから仕方ない。

 ライナーの邪魔をしたりしないから、どうか許して欲しい。

 

 スマホを取り出す。

 連絡先のライナーの文字に触れ。

 

 呼び出し音が鳴る。

 いつもなら特に何も感じないのに、今回は心臓がものすごくドキドキしている。

 

 たったの数コールが永遠に感じる。

 

 うまくいかなかったら?

 バレてしまったら?

 そんなことが頭の中をグルグルする。

 

 やっぱりやめてしまおうか。

 同意も無く、そんなことをするのはやっぱりよくないから。

 赤ちゃんのことは諦めた方がいいんのかもしれないなんて。

 そんな考えが頭をよぎったとき。

 

『もしもし、俺だが。どうしたんだアイ?』

 

 私たちは繋がった。

 

 

 




書いてる時
いいぞ!いいぞ!
もっと盛り上げていこう!

書いた後
自分、アイにめちゃくちゃ気持ち悪いことをさせてる気がする。
本当なら前半のギャグっぽい部分だけでさらっと次へいくはずだったのにどうしてこんなことになったの?

正直、投稿するかちょっと迷った。
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