注意!アイのキャラ崩壊があります!
具体的に言うとアホになっています!
かぐや様は告らせたいをリスペクトしたのにどうして?
恋愛頭脳戦なのにアホになってしまったことに脳を焼かれたので初投稿です!
「一生に一度のお願いだ!俺と付き合ってくれ!」
彼は言った。
顔を真っ赤にしながら、彼が持てる限りの愛情を精一杯込めて。
「めちゃくちゃなことを言うんだね。じゃあ、うん。わかった」
彼女は言った。
顔を真っ赤にしながら、彼がくれた愛情に負けないくらいの愛情を込めて。
そして、彼女は彼の頬に手を添える。
彼の目をまっすぐ見つめながら2人の顔が近づいていき、そして。
★
「カット!!」
監督のカットの声がかかる。
監督は何も言わずに考える。
現場に流れる沈黙。
「はい、オッケー!!」
「ありがとうございます!」
「お疲れ様でした!」
その言葉とともに、現場に安堵と撮影に関わった役者やスタッフを労わる気持ち、そして最高のシーンを見事演じ切った主演の2人への称賛の拍手が響く。
「お疲れ様!!」
「ありがとうアイ!!」
今回のドラマ。
アイは主演では無いものの、主人公の少女の親友という重要な役を演じたのであった。
今回の撮影ではアイの出番は無かったがドラマの一番盛り上がるシーンであったため、自分のシーンは取り終わったものの、現場に残って見学していたのであった。
「すごいよかったよ!!」
「みんなのおかげだよ!!」
年齢が近いこと、主演とその親友という役だったため演技の相談などでアイと主演の少女はすっかり仲良くなっていた。
「アイ、そろそろ……」
「あ、わかった!ごめん、私もう行くね!」
「アイ忙しいもんね!また打ち上げでね!」
「うん、またね!」
スケジュールを調整しているとはいえ、大人気アイドルであるアイは忙しい。
この撮影シーンの見学も少し無理を言ったためである。
そのため、感動を分かち合う間もなく次の現場へと向かうのであった。
「いやぁ!よかったね!本当!!」
「ああ、2人ともいい演技だった」
「早くテレビで見たいよ!!」
撮影を見てテンションの上がっているアイは移動の車の中で、ライナーに感想を語る。
お互いのことが好きなのにもかかわらず、素直になれないせいで相手に告白をさせようとする面倒臭い2人がついに告白して結ばれるシーンは主人公の親友という役のおかげで物語のはじめから一緒にいたアイにとっても感動的であった。
(いいなぁ……私もあんな風に告白されてみたいなぁ)
いくらアイドルとはいっても、アイも1人の少女。
好きな人に告白されるというシチュエーションには憧れがあった。
(……あれ?)
そして、星野アイは気付いてしまった。
(私……ライナーに告白されてない)
ライナーに告白されていないことに。
(なんで?どうしてライナーは私に告白してくれないの!?)
本来、知人や友人の状態から告白してから恋人になり、そして結婚して子供が産まれるというのが一般的な流れである。
しかし、アイは薬を盛ってライナーが寝ている間にそういったことをして妊娠するという本来なら訴えられて当然のことをしてしまった。
そのため、告白されて恋人になるという過程をすっ飛ばしてしまった!
当然、されることはない!
ライナーからの愛の告白!
(私はアイドルだよ!?しかも歌もダンスも、しかも演技まで出来るトップアイドルだよ!?なのに!!どうして!?どうしてライナーは私に告白してくれないの!?)
告白シーンを見たばかりのアイの脳内は恋愛に犯されていた。
元々、愛したい愛されたいと強く願っていたアイに生の告白シーンは劇物であった。
さらに、アイは大人気アイドルグループ、B小町のセンターである。
B小町は歌もダンスもトップレベルであり、さらにはドラマや映画にも活躍の幅を広げている。
故にアイのスケジュールは過密であり、満足な睡眠時間を確保出来ていなかった。
睡眠不足ぎみの脳にドラマ撮影をやり終えたことの達成感と開放感、そして生の告白シーンが合わさることでアイのテンションは上がりまくっており、アイから冷静な判断力というものは失われていた。
今のアイの状態。
いわゆる深夜テンションというやつである!!
(ライナーはアクアとルビーのお父さんだよ!?それなのに私に告白してくれないのは絶対におかしいよ!!)
判断力を失った脳は容易く暴走を始める!
しかも脳内での考えなので、100%アイが悪いにもかかわらず誰も暴走を止めることは出来ない!
(許さない!!絶対にライナーに告白させてやる!!)
この日から、アイのライナーに告白させるためのあまりにも一方的な恋愛頭脳戦が始まったのであった!!
★
ライナーから自分に愛の告白をさせると決めたアイだったが、問題があった。
(絶対にライナーから告白させるって決めたのはいいけど、どうすればライナーは私に告白してくれるんだろう?)
そう、どうすればライナーが告白してくれるのかわからないのだ!
アイドルはファンに夢を与えるために恋愛禁止をしている場合がほとんどであり、アイの所属しているグループのB小町も恋愛禁止である!
そのため、アイは今まで恋愛というものをして来なかった!
おまけにアイは美少女であるため同じ学校の生徒や一部のファンから告白されることは何度もあった!
それはアイが特定の相手に対して特に何かしたという訳ではなく、アイドルとしての日々の努力がアイの生まれ持った美貌をさらに磨き上げ、結果として多くの男性を魅了していった。
その結果が、相手からの告白であった!
だから、アイはわからない!
どうすれば相手から告白させることが出来るのかという、恋の駆け引きが!!
(えーと、私に告白してくれた男の子はだいたい……胸を見ていたよね!)
告白してくれた男子を思い出すアイ。
告白してくれた男子に限らず、ファンも芸能関係者も多くの男性がアイの胸を見ていた。
男の性としてどうしても女性をそういった目で見てしまう。
(よし!なら色仕掛けだ!)
そのため、アイはライナーに色仕掛けをすることを選ぶ!
(私はトップアイドルだし!色仕掛けしちゃえばライナーも告白してくれるよね!)
アイの脳内に色仕掛けをした時のイメージが浮かぶ。
『ライナー!』
『うわっ!』
アイはライナーに駆け寄り、その腕に抱き着き胸を押し付ける。
『お、おいアイ!』
『どうしたのライナー?』
『その……胸が』
『当ててるんだよ』
『アイ……好きだ』
トップアイドルのアイにそんなことをされたライナーはアイに告白をする!
(これだ!これでライナーは間違いなく私に告白してくれる!!)
あまりにも杜撰な作戦!
それでも、アイにはとっては成功間違いなしの完璧な作戦であった!
恋愛禁止のアイドルであるアイに恋愛経験など微塵も無い。
しかし、美少女でありトップアイドルでもあるアイはめちゃくちゃモテる!!
日々の努力!
アイドルとしての誇り!
そして、実際にモテるという事実!
それらが恋愛経験など微塵も無いアイに底なしの自信を与えていた!
恋愛経験など微塵のないにもかかわらず未成年のアイドルでありながら子供を妊娠、出産したこの女こそ現代が産んだ歪み!
モンスター経産婦なのである!!
「よし!これでいける!!」
ガバガバにもほどがある作戦を、アイは実行する!
後日、事務所にアイはいた。
作戦を実行し、ライナーに告白させるために!
「あ、いた!」
ライナーは1人で歩いている。
ただの偶然に過ぎないのだが、アイにとっては神の導きのようにも感じている。
「よし、いくぞ!」
そして、アイは実行する!!
「ライナー!!」
「うおっ!」
背後からライナーの腕に抱き着き、その胸を押し付ける。
いきなり抱き着かれたからか、ライナーは驚きの声を上げる。
「なんだアイか」
「えへへ、びっくりした?」
「そりゃ、いきなりされたからな」
(まずは成功!)
何気ないやり取りだが、本番はここからである。
ライナーにアイのことを意識させて告白させなければいけない。
「なぁ、アイ。ちょっと離れてくれないか?」
「え、どうして?」
(あれ、なんかイメージと違うなぁ)
アイのイメージとしてはここでライナーは胸を当てられたことに照れるはずだったのだが、ライナーは照れることなく冷静に言ってくる。
「誰かに見られて噂にでもなったら困るからな」
「あ、うん。ごめん」
ライナーはアクアとルビーの父親だということを明かしたが、それを知っているのは苺プロの初期メンバーだけであり、他のスタッフはそんなことは全く知らない。
なので、この場面を見られて2人が付き合っているなどどいう噂が流れてしまったら仕事に影響が出かねないので、ライナーの言葉は正しかった。
アイもそのことを理解出来てしまったので、作戦を続行することは出来ずにすぐに離れてしまった。
「それで、俺に何か用か?」
「え……いや、特にないよ!大丈夫!」
「そうか、あんまり変なことするなよ」
「う、うん。わかった」
ライナーに言われて大人しく返事するしかないアイだった。
本日の勝敗
アイの敗北
敗因・ライナーが全く照れなかったため
★
「この前は失敗しちゃったけど、次こそライナーに告白させるよ!」
前回、ライナーに告白させることに失敗したアイであったが、諦めるという選択肢は無かった。
アイはトップアイドルではあるが、歌詞が飛んでしまったり、ダンスの振り付けを間違えてしまったことくらいある。
だが、そのミスをうまくリカバリーしたり、同じミスをしないように努力することでこの芸能界を生き残って来た。
そんなアイからすれば、一度や二度の失敗で挫けることなどありえないのだ。
「この前は全然ライナー照れなかったからなぁ……」
腕に胸を押し当てて照れさせることでライナーに告白させるという作戦は失敗したが、そこから次にどうすればうまくいくかをアイは冷静に考える。
「胸を当てるだけじゃ足りないから……もうちょっと激しくしようかな?」
胸を押し当てる以上の激しいアプローチ。
アイの出した結論は。
「ラッキースケベだ!!」
ラッキースケベである!!
ラッキースケベとは!
主にラブコメなどで見られる表現であり、主人公の少年が女の子を巻き込んで倒れてしまった際に胸を鷲掴みにしてしまったり、ひどい時には女の子の股に顔を突っ込んでしまうなどもある!
今回!
アイはライナーに対してそれを実行しようとしていた!!
「ちょ、ちょっと恥ずかしいけど……仕方ないよね!告白してくれないライナーが悪いんだから!!」
さすがのアイでもラッキースケベは恥ずかしくあったが、すべてをライナーのせいにすることでそれを乗り越えてしまった。
アイの脳内にラッキースケベを実行したときのイメージが浮かぶ。
アイとライナーは曲がり角でぶつかり、アイはライナーを押し倒すような形で倒れてしまう。
『いてて、大丈夫か……アイ』
アイを心配するライナーだったが、その手はアイの胸をしっかりと鷲掴みにしていた!
『す、すまないアイ!!』
『ライナーなら……いいよ』
『アイ……好きだ』
この前の腕に胸を押し当てるより激しいアプローチにライナーは落ちた!
(これなら絶対に大丈夫!絶対にライナーは私に告白してくれるはず!!)
その光景を想像したせいでアイも顔を真っ赤にしながらイメージは大成功だった。
普段ならアイドルとしてどうすればいいか冷静に考えて努力することが出来るアイだが、ラッキースケベによりアイの脳内は完全に冷静さを失ってしまっていた!
アイはアホになっていた!!
「よし、絶対にライナーに告白させてやる!!」
アホになったまま、ラッキースケベを実行するためにアイは曲がり角に隠れる。
向こうからは何も知らないライナーが歩いて来る。
(よし、今だ!!)
ライナーが曲がろうとした瞬間に、勢いよくアイは飛び出しライナーぶつかる!!
本来ならここでアイがライナーを押し倒してラッキースケベをするはずだったのだが。
(…………壁?)
ライナーにぶつかった瞬間、アイの脳裏に浮かんだのは巨大な壁であった。
アイとライナーの体格差について言及する。
アイがアクアとルビーを出産した時が151cmであり二十歳になったときに身長が仮に160cmになっていたとしてもアイドルであるアイの体重は約50キロほどになる。
そしてライナーの体格だが、ライナーの身長は188cmで体重は83キロである。
アイとライナーとでは約30キロもの体重差があるのである。
さらに、ライナーには前世での戦闘経験がある。
敵の大砲を何発も受け続けたり、島の兵士たちや同じ巨人同士で激しい戦いを繰り広げたりしたのだ。
そんなライナーからしたら、たとえ油断していたとしてもアイがただぶつかった程度ではビクともしなかった。
(これ……ヤバ)
本来であれば、アイがライナーを押し倒すはずであった。
ライナーに耐えられて逆に自分が弾き飛ばされるなんてことは想定外であった。
そのため、アイは受け身なんて取れるはずもなく、頭から床に激突するはずであった。
「アイっ!!」
そんなアイを救ったのはアイを弾き飛ばした張本人であるライナーだった。
ライナーは持っていた荷物を投げ出し、倒れるアイの背中に手を回してアイが床に激突するのを防いだ。
「大丈夫か!?アイ!!」
「う、うん……大丈夫」
心配そうにアイにそう聞くライナーだったが、アイの脳内はというと。
(ラ、ライナーがすごく近い!!)
ライナーのことでいっぱいであった!!
(顔近い!!助けてくれるのすごくない!?腕がっしりしてる!!すごく心配してくれる!!)
倒れそうになっていたのを大好きな相手が自分を助けてくれたという事実は刺激が強すぎた。
さらに助けるために背中に手を回したことで体は近づき、お互いの顔もかなり接近する。
それらが合わさり、アイの脳内は見事なまでにパニックになっていた!!
「すまない、俺が前をよく見ていれば……」
体を起こしてアイが無事なのを確認したライナーがそう言ったことで、パニックになっていたアイの脳内は冷水を浴びせられたかのように一気に冷静さを取り戻す。
「ううん、大丈夫!大丈夫!私もちゃんと確認してなかったからライナーは悪くないよ!気にしないで!!」
ライナーが自分を責めそうになっていたため慌ててライナーをフォローする。
そもそも、アイがラッキースケベをしようとして起きた事故であったためライナーに非は全くなく、全ての責任はアイにあった。
自業自得で怪我をしそうになったのに、それを助けてくれたライナーが自分を責めている状況を喜ぶことはアイには出来なかった。
「いや……だが」
「本当に大丈夫だから!!むしろ助けてくれてありがとうだよ!!だからもう謝らないでね!!」
「ああ……わかった。ありがとう、アイ」
「う……うん」
(違うんだよライナー。悪いのは私なんだよ)
アイとしては自分が悪いから必死にフォローしたのだが、ライナーからしたら自分を責めないようにアイが気を使ってくれたように見えてしまった。
そのためライナーはアイにお礼を言ったのだが、それが逆にアイの罪悪感を刺激してしまう。
(ごめんねライナー……本当にごめん!!)
しかし、まさかラッキースケベを狙っていましたなんて言えるはずもなく、アイはその感謝を受け入れるしかなかったのであった。
本日の勝敗
アイの敗北
敗因・ライナーが強すぎたため
★
「また……失敗しちゃった」
ライナーに告白させることにアイは二度も失敗してしまった。
しかし、それでめげるようであればトップアイドルにはなれはしない!
「よし!次こそはライナーに告白させるよ!!」
つまり、アイは全く諦めていなかった!
「よく考えたらライナーは私のことを異性として見てない可能性があるから色仕掛けはあまり効果的じゃないかも」
アイとライナーの出会いはアイが小学生でライナーが高校生の時であり、恋愛関係にはなりづらい年齢差。
さらに同じ施設で生活していたためライナーとアイは兄と妹のような関係であった。
アイがライナーとそういったことをした際も、ライナーは薬を盛られて眠っていたため兄妹のような関係が変化することはなかった。
「うーん、どうすればライナーの意識を変えられるかな?」
まず第一にするべきことはアイのことを妹のように思っているであろうライナーの意識を変えることであった。
妹のように思われているままであったら、アイが何をしても効果は薄くなってしまう。
ライナーの意識を変えるためにアイが考えた作戦とは。
「よし、大人っぽくしよう!!」
大人っぽくすることであった。
「服は……イメージがあるからあまり変えられないけど、メイクくらいなら問題ないよね!」
アイドルとしてのイメージを守るためにあまり大きな変化をすることは出来ないが、メイクくらいなら問題ないと判断する。
ネットで大人っぽいメイクを調べて実際にメイクしていく。
「おお!中々いい感じじゃん!」
アイは美少女であるため普段からあまりメイクをせず、したとしてもアイ本来の魅力を生かすためのナチュラルメイクであることが多い。
そんなアイがメイクをしたことで印象はガラリと変わり、普段のアイとは比べ物にならないくらい大人っぽくなっていた。
「よし、これならライナーも……」
アイの脳内にこのメイクをしたアイを見たライナーのイメージが浮かぶ。
『アイがメイクを変えただけなのに、なんだこの胸の高鳴りは!?』
いつもより大人っぽいアイを見たライナーの胸は高鳴る。
『もしかして俺は……アイのことを』
「これならいける!」
大人っぽくなったことで、ライナーは今まで妹のように思っていたアイのことを1人の女性として見るようになる!
それがアイの作戦だった!
「告白はまだされないけど、これは次に繋がるからOK!!」
妹ではなく、1人の女性として見られるようになったことで今まであまり効果のなかった色仕掛けもライナーに効くようになる。
これはライナーに告白させるための布石であった。
「よし、いくぞ!」
そして、アイは作戦を実行する!
(メイクはバッチリ!話す時もいつもより落ち着いた感じでいけば大人っぽくなる!)
事務所にはライナーが1人。
仕掛けるには絶好のタイミングだった。
「ライ……」
「ライナー、ちょっといい?」
「なんですかミヤコさん?」
アイがライナーに話しかけようとしたのと同じタイミングで、ライナーにミヤコが話しかける。
タイミングが被ってしまったことでアイは思わず隠れてしまったが、それは咄嗟の判断にしては間違いなく正解であった。
なぜなら。
(や、やばい!ミヤコさんが大人の女性すぎる!!)
ミヤコの圧倒的な大人の女性力であった!
メイクをして普段のアイとは比べ物にならないほど大人っぽくなったとはいえ、アイは二十歳!
法的には大人とはいえ、普段はアイドルらしく明るく振る舞っているアイはどうしても大人という印象は与えずらい!
それに対するはミヤコ!
ヒアルを入れたりなど、美しさを保つための努力をしているため若く見られがちだが、ミヤコはアイとは違い様々な経験をしてここまで来た立派な大人!
メイク、服装、頼もしさ、立ち振る舞いなど、全てにおいて大人力がアイを上回っていた!
そして、ライナーは年齢は二十代後半であり、さらに前世の記憶があるため精神年齢はさらに大人である!
いろんな人の面倒を積極的に見る頼れる兄貴分なところもあり、ライナーの大人力はかなりのものであった!
(勝てない……全然、ミヤコさんに勝てない)
頼れる兄貴分のライナーと、全ての大人力においてアイを上回るミヤコ。
この2人が並んでいる光景はアイにとって立ち入る隙がないほどに大人すぎた!!
(こ、こんなので私なんかが出て行ったら……)
アイの脳内にイメージが浮かぶ。
『やっぱりミヤコさんは大人の女性だ!それに比べて……』
ミヤコとアイを見比べるライナー。
『メイク程度で大人になれると思っているなんて、アイはずいぶんと……』
アイに冷たい目を向けて。
『お可愛いんだな……』
(ダメだぁああああ!!大人っぽく見られるどころか、ますます子供扱いされちゃう!!)
大人っぽく見られるどころかますます子供扱いされるという逆効果!
完全敗北であった!
この事実を前にしてアイが下した判断。
(せ、戦略的撤退!!)
アイ、まさかの敵前逃亡であった!!
本日の勝敗
アイの敗北
敗因・ミヤコが大人の女性すぎたため
★
「仏の顔も三度まで!もう……許さないよライナー!」
ライナーに告白させることを3度も失敗したアイの怒りは限界を迎えていた。
今まではアイなりに周りのことを考えて行動していたが、三度も失敗したことでやけくそになっていた。
「ふふふ、出来ればライナーが自分の意志で告白してくれるのが一番だけど、もうなりふり構ってらんないからね!奥の手を使わせてもらうよ!!」
そう言ってアイが取り出したのは、アイがライナーに告白されていないことに気付いたきっかけとなったドラマの台本だった。
「演技の練習がしたいって言えばきっと手伝ってくれるはず!そうすれば告白のシーンでライナーが私に告白することになる!!」
アイの作戦は、演技の練習といって主人公をアイが演じ、ライナーが主人公に告白する男子役をやるというものだった。
そうすれば演技とはいえ、ライナーがアイに告白する形になるからであった。
アイとしては演技などではなくライナーの心からの告白がよかったのだが、それ以上にライナーに告白されたいという欲望が上回っていた!!
「よし、今度こそライナーは私に……」
アイの脳内にイメージが浮かぶ。
『一生に一度のお願いだ!俺と付き合ってくれ!』
彼は言った。
顔を真っ赤にしながら、彼が持てる限りの愛情を精一杯込めて。
『めちゃくちゃなことを言うんだね。じゃあ、うん。わかった』
彼女は言った。
顔を真っ赤にしながら、彼がくれた愛情に負けないくらいの愛情を込めて。
そして、彼女は彼の頬に手を添える。
彼の目をまっすぐ見つめながら2人の顔が近づいていき、そして。
「これで今度こそライナーは私に告白してくれる!ライナーもそのシーンを見てるからもしかしたら……よし!!」
演技に入り込み、キスまでいく可能性を考えアイのテンションは上がる!
「それじゃあ、さっそく作戦開始!!」
そのままのテンションでアイはライナーに連絡を取り、仕事終わりに寄ってくれるように頼む。
アイのマネージャーとして部屋に訪れることも多いライナーは疑うこともせずにアイの部屋に訪れる。
「仕事で疲れているのにごめんねライナー」
「いいさ、気にするな」
急に呼び出されたにもかかわらず、ライナーは気にした様子もない。
「それで相談ってなんだ?」
「あのね、演技の練習を手伝って欲しくって」
「別にいいが、演技の経験なんてないけどいいのか?」
「大丈夫大丈夫!」
演技の経験のないことを心配するライナーだが、アイの目的はライナーに告白をさせることなので特に気にしていなかった。
むしろ、演技などせず出来れば本心でやって欲しかった。
「じゃ、さっそくやろっか!」
「ああ」
ライナーに台本を渡してセリフを確認する。
(あれ?ライナーの様子が……)
アイは台本を確認するライナーを見ていたが、ライナーの様子がおかしくなっていことに気が付く。
ライナーは次第に汗をかきはじめ、呼吸も荒くなっていく。
「これは演技だ……これは演技」
(そういえば……ライナーって島のみんなと一緒に生活していた時……)
ライナーは島に潜入して生活していた際に、頼れる兄貴分を演じていた。
その兄貴分の参考にしたのが自分を庇ったせいで死んでしまったマルセルだった。
自分のせいで仲間のマルセルが死んでしまったこと。
何の罪の無い大勢の人達を殺してしまったこと。
自分を信頼してくれている兵士の仲間たちを騙していること。
それらの罪悪感に耐えられずにライナーは人格が分裂してしまった。
そして、作戦が失敗してマーレに帰った後も島の人間は悪魔ではないと知ってしまったライナーだったが、それを言ってしまうとライナーは鎧の巨人の力を剥奪され、母親は巨人兵器にされてしまう。
そのため、ライナーは真実を誰にも言えないまま、戦士隊の副長という英雄を演じるしかなかった。
さらに!
ライナーが自殺してこの世界に産まれた後も、前世の罪を隠して兵士だった時のような頼れる兄貴分を演じていた!
つまり、演技をするという行為はライナーにとってものすごいトラウマになっていた!!
「よし……やろう」
(ライナーかなり辛そうなんだけど!!)
ライナーは汗をかいていて呼吸は荒い。
誰が見ても辛そうであった。
「ごめんライナー!やっぱなし!やっぱやめよう!!」
「いや……だが」
「私、演技の才能もあるから大丈夫!!」
「そうか……すまない」
「い、いいよ!気にしないで!」
アイの急な練習の中止にライナーは戸惑ったものの、すぐにアイが自分を気遣ってくれたのだと理解して感謝した。
(罪悪感!!罪悪感がすごい!!)
演技の練習は嘘でただライナーに告白されたかったなどど言えるはずもなく、アイは罪悪感に耐えるしかなかったのだった。
本日の勝敗
アイの敗北
敗因・演技することがライナーのトラウマになっていたため
★
「アクア、ルビー。もう遅いから寝るぞ」
「まだ……大丈……夫」
「……おきてる」
「眠そうじゃないか、だっこしてやるから……ほら」
「……だっこ」
「……ぱぱ」
眠たいのを我慢して起きていようとする2人をやさしくだっこして寝室に連れていく。
敷かれた布団に2人をやさしく寝かせて、布団をかける。
元々眠かった2人はそれだけであっさりと眠ってしまった。
「2人とも寝ちゃったね」
「ああ……昼間すごくはしゃいでいたからな」
いつもなら寝るまでにもう少し抵抗するのだが、久しぶりのアイのオフに加えライナーも一緒に過ごしたためアクアとルビーは朝からテンションが高くみんなで遊びまわったため、夜更かしが出来るほどの体力は残っていなかった。
(私って……本当に馬鹿だなぁ)
眠った2人をやさしくなでるライナーを見てアイは思う。
(ライナーがこうして2人のお父さんをしてくれるだけで幸せなのに)
普通ならば逃げ出してもおかしくないことをしたにもかかわらず、ライナーは逃げることなくアクアとルビーの父親としての役目を果たしている。
(それなのに告白されたいなんて……許されないよね)
それがどれだけ幸せなことなのか。
気付いたアイはもう、ライナーに告白されたいとは思えなかった。
「なぁ……アイ」
「ん?どうしたのライナー?」
「何か悩みでもあるのか?」
ライナーはアクアとルビーをなでることをやめて、アイに尋ねる。
「どうしてそう思うの?」
「いや……最近少し様子がおかしかったからな。もしかして何か悩みでもあるんじゃないかと思ってな」
「あはは……バレちゃってたか」
アイとしてはうまく隠していたつもりだったのだが、どうやらライナーにはバレていたようでアイは苦笑いをする。
「別に大したことじゃ……」
「アイ」
誤魔化そうとしたアイを、ライナーはまっすぐに見つめる。
それだけで、アイはライナーを誤魔化すのは出来ないのだと理解した。
「あのね……私ライナーに告白されたかったんだ」
「告白?」
告白されたいと言ったアイにライナーは疑問で返す。
「私はライナーを眠らせている間にあんなことしちゃったから普通の人が好きな人にするみたいに告白出来なかったでしょ?だから、なんとかしてライナーに告白させようと思って」
「だから最近様子がおかしかったのか……」
「私って本当に馬鹿だよね!ライナーがこうして一緒にいてくれるだけで充分なのにね!」
今更ながら、自分がアホなことをしていたことに気付いて赤くなったのを誤魔化すためにアイはおどけた。
「だからもう大丈……」
大丈夫だと言おうとしたアイを、ライナーは抱き締める。
「アイ……不安な思いをさせてしまってすまない」
「ライ……ナー」
謝るライナーにアイは言葉が詰まる。
「アイのことも、アクアとルビーのことも嫌いじゃないし、アイたちが俺のことを大事に思ってくれることは嬉しく思っている」
「……うん」
ライナーが自分たちのことを大切に思ってくれていることはアイもよく理解している。
マネージャーとしてアイのことを支えながら、父親としてアクアとルビーの面倒も見ている。
アイたちのことが嫌いであったのなら、決して出来はしないことだから。
「だけど……まだ……自分が許せないんだ」
「……ライナー」
前世でライナーが犯した罪。
何の罪も無い人達を大勢殺し、信じてくれていた仲間を裏切ったこと。
たとえ、世界を救ったとして贖うことなど出来ない罪。
「だから……待っていてくれ。俺が……アイたちのことを好きだと言えるまで」
それでもライナーは言った。
「いつか必ず……好きだと言うから」
必ず好きだと言うと。
「うん……待ってる!ずっと待ってるから!」
アイも言った。
ずっと待っていると。
アイもライナーも、嘘ばかり吐いてきた。
だが、この言葉は。
この思いは。
絶対に嘘じゃない。
本物の愛だった。
本日の勝敗
アイとライナーの勝利
★
「ふん、ふふん!」
「お、ずいぶんごきげんだなアイ」
「えへへ、わかる!?」
かなりごきげんな様子で事務所を歩くアイを壱護が呼び止めた。
昨夜ライナーに必ず好きだと言うと言ってもらったアイは誰が見てもきげんがいいとわかるほどごきげんだった。
「何かあったのか?」
「うん、あったよ!」
「そうか、何があったんだ?」
「うーん、社長にならいいよね!!」
「本当に何があったんだよ?」
何があったのか聞かれたアイは少し悩むが、周りに人がいないこととライナーとの関係を知っている社長にならば言ってもいいかと判断する。
「あのね!ライナーが必ず好きだって言うって言ってくれたんだ!今はまだ無理だけど、必ず好きだって言うからって!」
アイはライナーが自分に言ってくれたことを言った。
いつか必ず好きだと言うと言ってくれたことを。
「へぇ……じゃあ最近様子がおかしかったのは」
「うん!ライナーに告白して欲くていろいろとやってみたんだ!」
「ほぉ……そうかそうか」
アイは気付かない。
壱護の言葉から感情が消えたことに。
ライナーの言葉が嬉しすぎてアイはアホになっていた。
「ライナーからアイが悩んでいるのかもしれないって相談されたんだが、まさか告白されたくていろいろやっていたとはな……」
「えー!ライナー社長に相談してくれてたの!?ライナー優しすぎない!?」
ライナーが自分のためにそこまでしていてくれたことがさらにアイのテンションを上げる。
だから、気付かない。
壱護がブチ切れかけていることに。
「社長もそう思……」
「おい、アイ」
「へ?」
あまりに冷たい壱護の言葉にアイのテンションが一気に落ちる。
「お前何やっているんだ?」
「何って……えっと」
アイもようやく気付く。
これはヤバいと。
「俺もライナーもな、心配してたんだぞ。もしかしたらアイに何かあったんじゃないのかってな」
ただでさえ競争の激しい芸能界。
大丈夫だと思っていても本人も気付かないうちに、身も心もボロボロになっているなんてことは珍しくない。
だからこそ壱護は社長として、ライナーはマネージャーとして、事務所に所属しているタレントたちのことを体調面でも精神面でも常に気にかけている。
ましてやいろいろとやらかしたアイである。
また、何かやらかしてしまったのではないのかと壱護もライナーも気が気ではなかったのである。
「それが……ライナーに告白されたかっただと?」
壱護としてもアイの気持ちはわからなくはなかったかもしれないが、自分たちの知らないところで何かあったにではないかと心配していたにもかかわらず、これである。
「お前ふざけんなよ!!」
「ごめんなさーーい!!」
本日の勝敗
アイの敗北
敗因・心配をかけすぎてしまったため
推しの子の141話がなんかライナーにも刺さっている気がして脳が焼かれました
ミヤコさんのNOということすら奪われるこの世界というセリフが進撃にも通じそうなのなんで?
作風全然ちがうよ?