進撃も推しの子も完結しているので、この作品も完結を目指してがんばります!!
……次はもっと早く投稿出来たらいいなぁ
サボり過ぎてしまった自分に脳を焼かれたので、初投稿です!!
どんなものにも始まりがあれば終わりがある。
どんな生命も生きていくことで年老いて最後は死んでしまうように。
命の無い道具であろうと、使っていくうちに消耗して最後は壊れてしまうように。
最後には終わりが待っている。
それはもはや伝説となったアイドルグループのB小町も例外ではない。
結成当初は中学生だった彼女たちも20歳を超えた。
少しずつアイドル以外の活動の幅を広げていく。
歌手として、役者として、配信者として、タレントとして、あるいは1人の女性として。
それぞれの道へと進むために、B小町は解散することを決めた。
B小町の解散ライブはあの日と同じ東京ドーム。
アイたちが殺されかけ、そしてライナーの真実を知ることが出来たあの日と同じ場所でB小町は最後を迎えることに決めていた。
B小町の最後のライブということもあり、絶対に失敗出来ないライブ。
苺プロはB小町のメンバーはもちろん、社長の壱護やミヤコに事務所の全てのスタッフも総出で準備に取り掛かる。
普段の業務にB小町以外のタレントたちの仕事なども並行して行うためかなりハードではあったが、それでも様々な困難を乗り越えて解散ライブを迎えるのであった。
そして、迎えたB小町の解散ライブ当日。
B小町のメンバーにスタッフたちが慌ただしく準備している中に、ライナーの姿はなかった。
B小町のマネージャーとしてメンバーのサポートやライブの段取りなどをしなければならないにもかかわらず、ライナーはドームではなく都内のホテルの前にいた。
「……そろそろか」
時間を確認する。
許可は取っているが、マネージャーとしてB小町の最後を見届けるためにもそろそろ出発しなければならなかった。
実際にすぐにでも出発出来るように準備は整えてある。
それでも移動していないのはライナーが時間を間違えている訳でも、ましてやライブに参加しない訳でもない。
ライナーは壱護やB小町のメンバー、さらには苺プロのスタッフ達にもちゃんと許可を取った状態でそこにいる。
「……頼む」
ライナーは祈る。
どうか来てくれと。
この解散ライブがアイのアイドルとしての最後の姿になる。
だから、せめて最後だけでもと。
その祈りが届いたのか、ホテルから1人の女性が出て来る。
「……あゆみさん」
「ライナーさん……お願いします」
出て来たのはアイの母親である星野あゆみ。
出て来た彼女はライナーへ頭を下げる。
「わかりました、行きましょう」
「……はい」
頭を下げたあゆみにそう言うとライナーとあゆみは停めてあった車に乗る。
ドームへと向かう車の中。
お互いに何も言えずに、気まずい空気が漂う。
「本当に……いいんでしょうか」
あゆみが口を開く。
「私はあの子にひどいことをしたのに……今更母親づらして会おうだなんて。」
行くと決めたあゆみだが、その心にはまだ迷いがあった。
星野あゆみはアイに対して虐待をしていた。
アイに罵声を浴びせ、暴力を振るった。
そして窃盗で逮捕され、出所しても施設に預けられていたアイを迎えに行くことをしなかった。
そんな自分が今更会うのは間違っているのではないのかと。
「……そうかもしれません」
あゆみの言葉をライナーは否定しない。
「あなたはシングルマザーで、たった1人で子育てをしていました。その苦労は私にはわかりません」
ライナーもアクアとルビーの子育てをした経験のあるライナーだが、アクアとルビーが転生していてあまり迷惑をかけるような子供ではなかったことに加え、子育ては苺プロ全体で行っていた。
マネージャーの仕事があったとはいえ周りに頼れる相手がいたライナーと、たった1人で子育てをしなければならなかったあゆみ。
同じ育児だとしてもライナーとあゆみの苦労はあまりにも違う。
「いくら生活が苦しかったとしても、いくら頼る相手がいなくて辛かったとしても、虐待をしていい理由にはなりません」
苦労していたから。
たった1人で子育てをしていたから。
金銭に余裕がなかったから。
頼れる相手がいなかったから。
様々な理由があるが、たとえどんな理由があったとしても子供を虐待してもいい理由にはならない。
「片親が受けられる社会保障だってあります。それを利用すれば負担を減らすことだって出来たはずです」
「それは……そんなのあるなんて知らなくて。いえ……言い訳ですね」
ライナーの指摘にあゆみは反論するが、それもすぐにやめる。
調べればすぐにわかったことだった。
だが、あゆみは調べず、調べようともしなかった。
そのせいで生活が苦しくなり、アイに虐待をしてしまったのだから。
「あなたは間違いを犯してしまった」
娘を虐待し、窃盗をして、アイを迎えに行かなかった。
どんな事情があったとしても、それらは間違い以外の何物でもない。
「あなたが許されることはないかもしれません。アイが、周りが、なによりあなた自身が自分を許さないでしょう」
虐待されたアイ。
アイのことを大切に思っている苺プロの人間に、アイのファンたち。
なにより、アイに虐待をしてしまったあゆみ自身が。
許すことはないかもしれない。
「もっといいやり方があったはずでした」
逃げずに助けていれば。
実行せずに戻っていれば。
誰かに話していれば。
助けを求めていれば。
もっといい結果になっていたかもしれない。
「時代や環境のせいかもしれません。ですが……選択したのは自分なんです」
世界がそれを許さなかった。
それ以外の選択肢を知ることが出来なかった。
だが、最後にそれを選んで実行したのは他でもない、自分自身。
「誰かを傷付けるつもりがなかったとしても、ただ幸せになりたかっただけだったとしても、犯した罪から逃げることは出来ません。それがたとえ一生贖うことが出来ない罪だったとしても」
罪を償ったとしても。
たとえ罪が許されたとしても。
罪を犯したという意識は、罪悪感は常に付き纏う。
「それでも……ほんの少しくらい……報われてもいいんじゃないかって……思うんです」
やり方を間違えた。
もっといいやり方があった。
たくさんの人を傷付けてしまった。
それでも、大切な人達と一緒に幸せになりたかっただけだった。
許されることはなかったとしても、その努力がほんの少しだけでも報われて欲しかった。
「ライナーさん……あなたは」
「すみません……あなたの事情なんて知らないのに勝手なことばかり言って」
「いえ……むしろ言ってくれてありがとうございます。ほんの少し……気持ちが楽になりました」
報われて欲しい。
はたしてそれは誰に対しての言葉なのか。
決して自分だけに対して言った言葉ではないということをあゆみは感じた。
「あの子に会ってもいいのかなんて……まだわかりません」
ライナーの言葉を聞いても、迷いはまだ消えない。
「会ったせいで……あの子に悪影響が出るかもしれないんですから」
アイにとって、あゆみはライナー達とは違う意味で特別な存在だった。
自分を捨てた母親。
あゆみに捨てられたからアイは誰かに愛されたいと強く願うようになり、それが結果としてアイドル活動の原動力になった。
周りのサポートもあり自分が愛されていないと思うことは無くなったが、母親であるあゆみに会ったらどうなるかはわからない。
会ったせいでパフォーマンスに悪影響が出る可能性は間違いなくある。
アイのこと、ライブの成功のことを考えれば、ライブの前ではなくライブが終わった後に合わせるべきであった。
「アイは強いです。それにみんながいます。だから……大丈夫です」
だが、ライナーたちはライブの前に会わせることを選んだ。
アイなら、アイ達なら乗り越えられると信じた。
「それに、今のあなたなら大丈夫だと思います」
ライナーは確信を持って言った。
あなたなら大丈夫だと。
「正直に言うと、ずっとあなたのことを警戒していました。有名になったアイに会おうとしたり、アイの母親であることを利用して金儲けをしようとしたりするんじゃないかと」
「そんなことは……いえ、警戒するのは当然ですね」
あゆみは否定は出来なかった。
実際に会いたいと思ったことが何度もあったからだ。
それにライナーの具体例に、自分が知らないだけでそういったことがあったのだろうと察したのだ。
「ですが、あなたはアイの母親という立場を利用することはしませんでした。今だって自分が会うことでアイに悪影響がでることを心配しています。だから、もう大丈夫だと思ったんです」
ライナーたち今までも何度かあゆみにアイに会わないかと説得した。
だが、あゆみは自分にそんな資格はないと断り続けた。
芸能人の親という立場を利用して金銭を得ようとする親に、他の芸能人に近づこうとする親。
果ては自分も有名になろうとする者まで、ライナーたちはそういった人間を大勢見て来た。
だから、会おうとせず金銭も要求したりもしないあゆみを信頼することにしたのだ。
「アイはあなたに会いたいと言ったことは1度もありません」
「……やっぱり」
アイが自分に会いたいと言わなかったことに僅かに寂しさを感じながらもあゆみは納得する。
ひどいことばかりした自分に会いたくないと思うのは当然だと。
「ですが、アイは会いたくないと言ったこともありません。それにあなたを憎んでいると言ったことも」
アイはあゆみに会いたいと言ったことは無かったが、会いたくないと言ったこともない。
自分の立場や周りの人間のことを気遣ったのではないかと、ライナーは思っていた。
「アイがあなたのことを憎んでいるのか、憎んでいないのかはわかりません。たとえ今は憎んでいなかったとしても、会ったことで過去の記憶が呼び起されてあなたを憎く思うようになることもあるでしょう」
過去の記憶を思い出せなかったとしても、決して消えたわけではない。
ましてや幼い頃に虐待されていた記憶。
いくら記憶の奥底に封じ込めていたとしても、あゆみがアイに会えば間違いなく目覚めるだろう。
「会わない方がいいのかもしれません。ですが、それではアイのあなたへの思いは小さな子供の頃のまま前に進めないんです」
アイは自身の努力とみんなの支えのおかげでアイドルとしても、1人の人間としても大きく成長しながら前に進んで来た。
アイドルとして、役者として、母親として、女性として、人間として。
寄り添い支え合って来た。
だが、虐待された小さな子供のアイに寄り添うことだけは誰も出来なかった。
アイを虐待したのはあゆみだけで、あゆみに虐待されたのはアイだけなのだから。
「だから会ってください。あなたのことを許すのだとしても、憎むのだとしても、アイに選ばせてあげて欲しいんです」
どうなるかわからない。
最悪な結果になる可能性も0ではないだろう。
それでも、アイはあゆみに会うべきだと。
どうするのか選び、前に進むべきだと。
「わかりました、アイに会わせてください」
迷っていたあゆみの目から迷いが消えた。
どうなろうとも、受け入れる覚悟があった。
「ありがとうございます、あゆみさん」
アイに会うことが辛いことはライナーにもわかっていた。
ライナーも104期生と会うとなったらどれほどの覚悟が必要になるか想像出来るからだ。
「ですがライナーさん1つ聞きたいことがあるんですが」
「なんでしょう?」
「どうしてライブの前なんですか?会うなら別の日でも……」
あゆみの疑問は当然だった。
自分を虐待していた母親に会えば当然、平常心ではいられない。
ならば仕事などがない日に会うのが良いに決まっている。
なるべく早く会う方がよかったとしても、ライブ前、しかも解散ライブの直前に会う必要性があゆみにはわからなかった。
「それは……個人的な理由というか……なんというか」
「……ライナーさん?」
急に歯切れが悪くなったライナーに疑問に思うあゆみ。
それを感じたのか、ライナーは理由を語る。
「見せてあげたかったんです。アイの晴れ舞台を母親であるあなたに」
戦士になった時、それを母に報告したライナーにあったのは誇らしさと喜びだった。
母親が誇りに思ってくれる立派な戦士になれたこと。
これで親子3人で暮らせるという未来への希望。
ライナーが戦士になれたのは自分の力ではなく弟を思うマルセルの根回しのおかげであり、父親は自分たちと暮らすことなど望んでいなかった。
そして、母親もライナーのことを復讐の道具としか思っていなかった。
それでも、戦士になれたこと。
それを母親に伝えることが出来た時の喜びは本当だった。
だから、あゆみに見せたかった。
アイの晴れ舞台を。
アイに知って欲しかった。
アイに、母に自分の晴れ舞台を見せることの出来る喜びを。
「だから……どうしてもライブが終わる前に会って欲しかったんです」
個人的なわがままだと理解しているからだろう、ライナーは少し気まずそうに言う。
絶対に失敗出来ないライブとわかっていながら、それでも和解出来るかどうかもわからない2人のために会わせたいと願った。
「ライナーさん……私……アイに会います。たとえ許されなかったとしても、あの子が前に進めるようにアイの母親として」
きっとたくさん悩み、たくさん反対されたことだろう。
それでもライナーはマネージャーとして、ライブの成功よりも自分たちを優先してくれた。
もうあゆみに迷いはない。
どんな結果になろうとも、受け入れる覚悟が出来ていた。
「ありがとうございます、あゆみさん。それでは、行きましょう」
B小町の解散ライブが行われる東京ドームに着き、ライナーとあゆみは関係者専用の入口から中に入る。
ライナーの案内であゆみはまっすぐにアイたちがいる控室へと向かう。
「ライナー……その人が」
「はい、アイの母親です」
「おかあさん、本当にアイに会うんですか?今までずっと会おうとしなかったのに」
控室の前に立っていた壱護が2人に気付く。
壱護はあゆみを見て確認する。
本当にアイに会うのかと。
ずっと迎えに来なかったくせにと。
「はい、会います」
自分を責める壱護の言葉を受けても、あゆみは言い切った。
アイに会うと。
「ご迷惑なのはわかっています。あの子に会う資格が無いことも。それでも、最後だけでも母親としてあの子の舞台を見届けたいんです」
壱護の目をまっすぐに見る。
長年芸能界で仕事をしてきた壱護の人を見る目は決して節穴ではない。
だからこそ壱護はすぐにわかった。
あゆみの言葉が決して嘘ではないと。
「わかりました、あなたをアイに会わせます。ですが、万が一の時は無理矢理にでも退出させますからね」
「ありがとうございます」
壱護の許可を得て、あゆみは控室のドアノブに手をかける。
目を閉じ、深呼吸をしたあと、ドアを開けた。
「あ、お疲れ様です!!」
「今日はよろしくお願いします!!」
控室ではB小町のメンバーがライブに向けてダンスの振り付けの確認や発声練習を行っていたが、入って来たあゆみに気付いて各自あいさつをする。
アイを除いて。
「ん?どうしたのアイ?」
「なにかあった?」
「……アイ?」
いつもならあいさつをするアイが、何も言わないことに疑問を抱いたメンバーがアイを見る。
アイは信じられないものを見るような目で、あゆみを見ていた。
「おかあ……さん?」
アイのその言葉に、声には出さないが全員が驚愕した。
アイを虐待し、捨てた張本人。
その母親が、目の前に現れたのだから。
「ねぇ……どうして?」
どうするべきか迷うメンバーを尻目に、アイは前に進む。
「どうして……いまさら来たの?」
あゆみを責めるような言葉を言いながら、アイは進む。
「私……たくさん歌ったよ?」
「歌……すごく上手だったね」
B小町はたくさんの歌を出した。
それらの曲はどれも人気で、映画やドラマの主題歌に使われたりオリコン1位になった曲も多い。
「私……たくさんテレビに出たよ?」
「いろんな番組に出てたね。どれもおもしろかったよ」
アイに限らず、B小町の人気は凄まじいものだった。
壱護が仕事を選んではいたが、それでも一時期はB小町を見ない日は無いと言っていいほどに連日多くのテレビ番組やCMに出演していた。
「私……たくさんドラマや映画に出たよ?」
「演技……どれも上手だったよ。私……感動して泣いちゃった」
アイはアイドルだけではなく、女優としても活動の幅を広げていった。
その演技力は本物であり、女優としてとして賞を受賞したことは1度や2度だけではない。
「私だって……わかっていたよね?」
「うん……一目見て……アイだってわかったよ」
何年もアイドルとして、歌やテレビや映画といった媒体で活躍し続けた。
わからないはずがなかった。
「ねぇ……どうして?」
だからこそ、アイにはわからなかった。
「迎えに来るって……言ってくれたのに」
あゆみが、自分を迎えに来てくれなかったことが。
「ずっと……待っていたんだよ?」
誰にも言わなかったが、アイはずっと待っていた。
アイドルとして活躍していれば、いつかあゆみも気付いてくれることを。
あゆみが自分を迎えに来てくれるのを。
「ごめんね……迎えに行かなくて」
経済的に厳しかったから。
虐待をしていたから。
迷惑になってしまうから。
様々な理由をつけて、あゆみはアイを迎えに行かなかった。
それに、待っている訳がないと思っていた。
虐待をして、娘を捨てた母親である自分を。
待っている訳がないと。
恨んでいるに決まっていると。
ずっと、そう思っていた。
「ごめんね……ずっと待っていて……くれたのに」
だが、アイはずっと待っていた。
最低な母親である自分のことを、ずっと。
「ごめんね……こんなに遅くなっちゃって」
待っていてと言ってから、10年以上が経っていた。
「ありがとう……ずっと待っていてくれて」
あゆみがアイを抱きしめる。
あの頃とは違う、傷付けてしまったことを謝るためのものではない。
大切な我が子に、愛していると伝えるための。
心からの愛がこもった抱擁。
「迎えに来てくれてありがとう……おかあさん」
アイがあゆみを抱きしめる。
子供が、どんなに傷付けられても親に捨てられないようにするためのものではない。
大好きなおかあさんに、大好きだと伝えるための。
心からの愛がこもった抱擁。
「おかえりなさい、おかあさん」
迷子になっていたおかあさんが、やっとむすめのところに帰って来られた。
推しの子の父親たち
アイの父親、蒸発
姫川の父親、女優に手を出す
カミキ、人殺し
進撃の父親たち
ジークの父親、息子に洗脳教育
ライナーの父親、ライナーたちから逃げ出す
ヒストリアの父親、使用人に手を出す
サシャのお父さんを除いて、進撃も推しの子もクズばっか!!