【推しライナー】   作:チェシャ猫もどき

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前話から1ヶ月くらい経ってしまいましたが、みなさんお待ちかねの実写版進撃の巨人でございます!!
どうなるのかその目でお確かめくださいませ!!

実写版進撃の巨人でのガビ山先生のエピソードに脳を焼かれたので初投稿です!!


役者たちは集う

 

 実写化。

 

 それは小説や漫画などの二次元の作品をアニメーションではなく、俳優を使って映像化することである。

 主に現代が舞台の作品が実写化されやすいが、中にはファンタジーやSFの作品も多く実写化されている。

 

 アクション、サスペンス、ドラマ、ホラー、ファンタジーなどの様々なジャンルの作品が映像化されてきた。

 

 CG技術、激しいアクション、豪華な衣装やセット、そして役者たちの演技。

 それらによって世界的に人気になった作品やシリーズとなって何作品も制作された作品など、数多くの名作が生み出されて来た。

 

 実写化よる話題性、TVのCMや出演者たちによる宣伝活動により、普段漫画やアニメを見ない層にも存在が認知されることで原作の売り上げが上がるのだ。

 

 実写化。

 

 それは、制作者、出演者、原作者など多くの人々に計り知れないメリットを生み出してくれるのである!!

 

 成功すればの話であるが!!

 

 実写化で成功した作品があるなら、当然失敗した作品もある!!

 

 主な理由は制作側の原作への理解不足である。

 

 何年も連載した作品の場合、全てのエピソードを映像化することは出来ないためどのエピソードを実写化するかを選ばなければならない。

 そうなると内容を詰め込むか、引き延ばすか、オリジナル要素を入れて調整するかになってしまう。

 詰め込み過ぎると展開があわただしくなり見ている人が物語に着いていけなってしまう。

 逆に引き延ばしてしまうと物語が薄っぺらいものになってしまう。

 オリジナル要素を入れて調整しても、それがうまくいくことは少ない。

 理解不足によるそのキャラクターがするはずのない言動をしてしまうなどでその原作ファンの怒りを買ってしまうのだ。

 

 さらにそこに芸能事務所の思惑も混ざって来る。

 

 具体的には、芸能事務所がタレントを売り出すために実写化をすすめ、売り出したいタレントに主人公やヒロインなどのメインキャラクターを演じさせるのだ。

 

 そうなると起こるのが、低い演技力による棒読み!!

 

 これにより、どれだけいい監督、いい脚本、いい演出家がそろったとしても、すべてが台無しになってしまうのである!

 

 故に、実写化が発表されたとしてもファンは素直に喜べないことがほとんどであり、進撃の巨人も例外ではない。

 

 むしろ、実写化を不安視する声の方が多かった。

 

 人が生きたまま巨人に食われるという残酷な描写。

 立体機動による高速移動と激しいアクション。

 物語のどこからどこまでを映像化するのかという取捨選択。

 そもそも登場人物が全員日本人ではない。

 それらの様々な点から、進撃の巨人の実写化の成功は不安視どころか絶望視されていた。

 

 毎日少しずつSNSで公開されていく実写化の情報。

 

 進撃の巨人、完結編の劇場版の公開へのプロモーションの一環であること。

 映画やドラマではなく、短編動画の形式で公開していくというもの。

 動画はマーレ編以降のものであること。

 これらの情報が公開される度に、ファンたちの間ではこれなら大丈夫や、それでも無理だろうなどの議論が交わされた。

 それでも反応としてはその動画の出来栄えを不安視する声の方が多かった。

 

 ある情報が公開されるまでは。

 

 それは登場人物を演じる役者たちの情報である。

 演じる役者は当然ながら日本人であるが、アイドルや新人の役者などではなく演技派と言われる実力者が多かった。

 そのため演技力を不安視する声は小さくなっていったが、それでも0ではなかった。

 進撃の巨人の実写動画。

 その完成度に対するファンたちの不安を消し去った情報、それは。

 

 ライナー・ブラウン*1役、ライナー・ブラウンである!!

 

 声優としての演技力をファン達から絶賛されていたライナー。

 SNSなどでライナーの姿を見たファンからは実写化するならライナー役はライナーと言われていた!

 本気で言っていた訳ではなく冗談のようなものではあったはずだが、しかしそれは現実のものとなった!!

 それからのファンたちの反応はそれはもうすごいものだった。

 

 早くライナーを演じるライナーが見たい!!といった期待の声や。

 もちろん銃フェラはするんだろうな!?と名場面が映像化されることを求める声。

 声優でもメンタルボロボロになったのに、実際に演じてライナーは大丈夫なのか!?といったライナーのことを心配する声。

 他にも様々な反応でSNSは大盛り上がりであった!!

 

 しかし、実写版進撃の巨人でライナーが演じるまでには多くの困難が、主に苺プロ側にあった。

 原作者直々にオファーされたとはいえ、ライナーを進撃の巨人にかかわらせたくないというのが壱護たちの本音である。

 

 進撃の巨人はライナーのトラウマそのもの。

 自分が犯した罪を被害者の視点で見せつけられるのだ。

 しかもアニメになったことで作者からの猛烈なアピールにより、それを自分で演じるという苦行を行った。

 

 ライナーのメンタルがボロボロになりながらも最後までやりきって安心したところに実写化のオファー。

 声優であれだけボロボロになったライナーが、実際に演じたらどうなるかを壱護たちは恐ろしくて想像することが出来なかった。

 

 出演のオファーを壱護は当然断った。

 だが、同時に確信もしていた。

 あの原作者が諦める訳がないと!!

 

 月間とはいえ連載を抱えていながら、その連載に影響が出るほどにライナーに声優をしてくれるように何度も頼んできた相手である。

 その連載から解き放たれたのならば、たとえ何年かかろうと諦めはしないだろう。

 その予想通り、再び出演の交渉に来た作者を見た瞬間に壱護たちは早々に諦めた。

 

 だが、壱護たちもなんとかしてライナーの出演をなくそうとあがいた。 

 進撃の巨人は長期連載作品であるため、1話目から実写化すると大人であるライナーの出番はかなり後になる。

 それまでどうするのか? 

 ライナーの出番まで待つのか?

 それとも後半だけ撮影して、順番に公開していくのか?

 それらの疑問に作者はとてもいい笑顔で言った。

 

 実写版はオリジナルのストーリーにします!!

 

 その瞬間、壱護たちはそれだけはなんとか阻止しなければならないと決意した!

 実写化に対していちゃもんをつけていた姿勢から一変、ライナーの出演を許可する。

 

 しかし、ライナーの出演のための条件を出した。

 

 映画は撮影期間が長くなるため短編の動画シリーズにする。

 戦闘シーン以外の、ライナーの出番を撮影する。

 オリジナルストーリーはもちろん却下。

 

 それらの条件を守るならば、実写版進撃の巨人にライナーを出演させると。

 

 作者からは自分の好きな映画批評家にオリジナルストーリーの脚本を書いてそれにライナーが出演して欲しいという要望が出されたが、そんなものは一瞬で却下された!!

 そんなものにライナーを出すくらいなら、ライナーを今後一切進撃の巨人に関わらせない!!とまで壱護は言い切る。

 そこまで言い切られたことで、あの作者もしぶしぶ諦めて壱護が出した条件を吞んだのであった。

 

 しかし、後に壱護は語る。

 

『本命はオリジナルの方だったんだろうが、結局はライナーを実写に出演させることになったから作者の手の平の上だった気がして仕方がねぇ』と。

 

 ドア・イン・ザ・フェイス。

 

 まず相手に断られるであろう高い要求をしてから、本来の低い要求を提示することで相手に受け入れてもらいやすくする手法である。

 彼がそれを使用したのか、それとも本気でオリジナルストーリーにしたかったのかは不明だが、何はともあれライナーは実写版の進撃の巨人に出演することになってしまったのである。

 

 そして、とあるスタジオにて撮影は行われる。

 

 ウド役 鳴嶋メルト

「なぁ……アクア。本当に大丈夫なのか?」

 

 心配そうにアクアにそう尋ねるのはウド役の鳴嶋メルト。

 今日あまでのあまりにもひどい演技により戦犯扱いされているが、東京ブレイドの舞台での演技は評価されるくらいには演技力は向上し、今回オーディションにてウド役を勝ち取った。

 

 ファルコ・グライス役 アクア

「大丈夫…………多分」

 

「……それ大丈夫じゃないやつじゃん」

 

 ファルコ役は作者の指名により選ばれたアクア。

 指名された時は本人含む苺プロ中の人間がどうするべきか真剣に悩んだが、ライナーにとって大切な存在を他人に演じられるのがなんか嫌だというアイの言葉により出演を決意した。

 

 ガビ・ブラウン役 ルビー

「心配しなくても大丈夫!!私たちがいるし、ママたちだっているんだから!!」

 

「たしかに、あの人達がいるなら大丈夫なのか?」

 

 そう心配しなくても大丈夫と自信満々に答えるのは、アクアと同じく作者の指名によってガビ役に選ばれたルビー。

 ルビーがそう自身満々に言うのには理由があり、ライナーと一緒の現場にいるためすぐにメンタルケアが出来るということと、いざという時のために今は解散したアイを含むかつてのB小町のメンバーが来ているからだ。

 メンバーがメンバーなので迷惑が掛からないかどうかきちんと確認したところ、ライナーのメンタルケアのためならばとあっさりと許可がおりた。

 

 逆に言えば、それほど多くの人間から大丈夫なのかどうか心配されているということでもあるが。

 

 ゾフィア役 不知火フリル

「私も役に入り込むタイプだからライナーさんが実写で演じることがちょっと心配だったけど、あの人達がいるなら大丈夫だと思うわ」

 

「え、フリルさんも入り込むタイプなの!?大丈夫なの!?死にそうになったりしない!?」

 

 フリルも入り込むタイプと知り、大丈夫と自信満々に答えたのが嘘であるかのように慌てるルビー。

 それほど、声優をしていた時のライナーのメンタルはヤバかった。

 

「私はクランクアップしたらリセットされるから大丈夫よ」

 

「ならよかったー!!」

 

「トラウマになってるじゃん」

 

「仕方ねぇだろ……本当に大変だったんだから」

 

「……ごめん」

 

 安心したルビーを見たメルトのツッコミに遠い目をするアクア。

 どれだけ大変だったのかを察し、謝るメルト。

 撮影が始まっていないのにすでに先行きが危ぶまれてしまう。

 

 エレン・イェーガー役 姫川大輝

「お前らやる前から不安になってんじゃねぇよ。演技に出るぞ」

 

「だ、だって~」

 

 オーディションで進撃の巨人の主人公であるエレン役を勝ち取った姫川に注意されるも不満げなルビー。

 言葉にしないが、アクアも不安な気持ちを隠せないでいる。

 メンタルボロボロなライナーの姿を見続けたルビーとアクアにとって、声だけでなく実際に演じるのはハードルが高すぎた。

 

「そんなに心配なら1発OKするくらいの気持ちでいけ。演技する時間が短い方がライナーさんの負担も減るだろ」

 

「……たしかに」

 

「よ、よーし!全部1発OKにしてやる!!」

 

 姫川のアドバイスに納得するアクアと、ライナーのためにやる気を出すルビー。

 先行きがどうなるか危ぶまれたが、なんとかなりそうだと一同ほっとする。

 

 ただ1人を除き。

 

 カリナ・ブラウン役 あゆみ

「あ、あの……でしたら、やっぱり私じゃない方が……」

 

 その1人とは、アイの母親である星野あゆみだった!!

 

「いや、まぁ……気持ちはわかるけど。演技の経験が無いのにいきなり演技してって言われる大変さ」

 

「パパもそうだったもんね……」

 

「え、俺が知らないだけだったと思ってたのに、この人役者じゃないんですか……」

 

「はい……演技の経験なんて全く……」

 

「……マジで?」

 

 いきなり演技をしてくれと言われたカリナに自身も五反田にいきなり映画に出演させられた経験があるアクアと、いきなり声優をやらされたライナーの苦労を知っていルビーが同情し、てっきりあゆみが役者だ思っていたメルトが演技の経験が無いと知り唖然とする。

 

「あの……どうして今回は」

 

「みなさんに……その」

 

「頼まれたんですか?」

 

「……はい」

 

 あゆみは言い切らなかったが、みんなから頼まれたという事実にメルトだけでなく、アクアとルビー以外が疑問に思う。

 なぜ、演技の経験がないあゆみにライナーの母親の役を頼んだのか?

 

「いろいろ考えてやってもらった方がいいってなったんだよ。特に最後の和解のシーンはおばあちゃんにしてもらおうって」

 

 アイと和解したあゆみ。

 そのことはみんなが祝福したことなのだが、同時にこうも思った。

 ライナーも母親と和解させてあげたいと。

 

 進撃の巨人の物語の最後に描かれた光景。

 ライナーが母親と和解出来るという事実。

 ライナーが自殺してしまったことで、母親との和解は不可能となってしまう。

 

 それでも、どうにかして少しでもライナーが救われて欲しいと思っていたところに舞い込んだ進撃の巨人の実写化。

 オリジナルストーリーを却下して、短編動画としてライナーの登場シーンを映像化することに決まったことでライナーと母親の和解も映像化することが出来る。

 そうすればライナーもほんの少しかもしれないが、救われるかもしれない。

 そう思った苺プロはライナーの母親をあゆみにすることを条件にした。

 

 そうしてライナーの前世をボカしつつ説明し、ライナーの母親をあゆみにすることに成功した。

 理由を聞いた作者がものすごくいい笑顔になったことに目を逸らしつつ。

 

「大丈夫だよおばあちゃん!!だってママにあれだけ演技の指導してもらったんだから!!」

 

「え!?あのアイに演技の指導してもらったんですか!?」

 

「はい、一応は……」

 

「マジで?」

 

「……すごいわね」

 

「なにそれ!うらやましい!!」

 

 日本どころか、世界からもその演技力を高く評価されているアイ。

 そのアイに演技の指導をしてもらったという事実に、まだ演技力が低いメルトに業界関係者やファンからもその演技力の高さを評価されている姫川とフリルも心から羨ましがる。

 

「あの……撮影の間とかにアイさんにアドバイスとかもらえない?」

 

「プライベートっていうか、ライナーさんのために来ているんだからダメだろ」

 

「でも、こんなチャンスめったにないし……」

 

「気持ち……わかるわ」

 

 世界的女優のアイに自分の演技を見てもらい、さらにアドバイスまでもらう。

 お互い芸能界で活動していて、さらにアイは女優として自分たちよりさらに多忙であるためこんなチャンスは2度と無いかもしれない。

 そう思うと、なんとかしてアイにアドバイスをもらいたいというのは当然と言えなくもなかった。

 

「どうだろう?ちょっとママに聞いてくるね!」

 

「え、いいの?」

 

「まぁ……いいんじゃねぇか?アイもそういうの結構好きだし」

 

「マジか、頼む!OKしてくれー!」

 

 軽いノリでアイに大丈夫か聞いて来るルビーに少し困惑するも、同じく軽いノリで大丈夫だろうと考えるアクアと本気で祈るメルトに表には出さないが内心で必死に祈る姫川とフリル。

 そんな彼らの祈りを全く気にした様子のないルビーがアイ達の元へ行き、軽く話したあと笑顔で戻って来る。

 

「いいって!!」

 

「軽っ!!そんなんでいいの!?」

 

「パパのメンタルケアの合間でいいならって!!」

 

「よっしゃ!!」

 

「喜ぶのはいいけど、ライナーさんのついでだってことを忘れるなよ」

 

「いや、まぁ、それはそうなんだけど!」

 

「なんにせよ、ライナーさん次第なところはあるわね」

 

「大丈夫だとは思うけど、内容が内容だし何よりなぁ……」

 

「ああ……あれな」

 

「……あれか」

 

「……あれね」

 

「……あれだねぇ」

 

 ライナーのためにB小町が集まったことや、自分たちもいることでライナーのメンタルは大丈夫と思いたいアクアだったが、アクアだけでなくメルト達にも思い当たるとてつもなく大きな問題が1つあった。

 

「「「「「作者がいるんだよなぁ」」」」」

 

 そうこの撮影現場には、すべての元凶とも呼べる存在!!

 進撃の巨人の作者が訪れていた!!

 

 ライナーをモデルにキャラクターを描き、素人のライナーを声優にし、実写も本人に演じてもらうように頼み込む人間である!

 そんな人間が、実際に演じるところを見ないなんてことがあるだろうか?

 いや、見ないはずがない!!

 ましてや連載は完結していて、自由の身である。

 当然、撮影の見学に来ていた!!

 

「大丈夫かな……」

 

「大丈夫……だろ。漫画家だから撮影のことはわからないはずだし……」

 

「でも……あの作者なんだろ?」

 

「あの作者なんだよなぁ……」

 

 大丈夫と言い聞かせても、思い浮かぶのはライナーに声優をしてもらうために連載に影響が出るほどに何度も訪れたというまごうことなき事実。

 彼ならば自分の納得がいくまで何度もNGを出すのではないかという心配が全員にあった。

 

 監督 五反田泰志

「心配すんな、いくら作者だからって勝手なことはさせねぇよ」

 

「監督!!」

 

 そう言って現れたのは監督を務める五反田。

 今までは低予算ながら手掛けた作品で監督賞に7年連続でノミネートしていた大物監督とは言い難かったが、アイを主演に撮影した映画で数々の賞を受賞したことで白羽の矢が立ち、さらに映画批評家に脚本を書かせようとしたという衝撃の事実を知ったアイの頼みによって五反田は進撃の巨人の実写動画の監督を受けたのだった。

 

「でも、本当に大丈夫なの?あの作者だよ」

 

 五反田は勝手なことはさせないと言ったが、相手はあの作者である。

 いくら監督だからといっても、大人しく引くとは思えなかった。

 

「一応意見は聞くし相談もするが、問題がないのにNGにするようなことはさせねぇよ。ま、本人は演技指導でその時のキャラの内心を明かすくらいで、あとは全部こっちに任せるって言ってたから大丈夫だと思うぞ」

 

「そっか、それなら大丈夫だね!」

 

「……そうだといいな」

 

 安心するルビーとそれでも安心できないアクア。

 他のメンバーも正直安心出来てはいないが、いまさらどうしようもないところまで来てしまっている。

 彼らはライナーのメンタルのためにNGを出さないように最高の演技をするという覚悟を決めるのであった。

 

 諦めたと言ってはいけない。

 

「あれ?そういえばその作者さんは今どこにいるの?」

 

「あの人なら今ライナーと話してる」

 

「大丈夫なの……それ?」

 

「大丈夫だろ……多分」

 

 ライナーが作者と一緒にいるという事実に不安が湧き上がり、五反田は大丈夫だと目を逸らす。

 何も大丈夫じゃなかった。

 

「おっと、噂をすればってやつだ」

 

 姫川の言葉にスタジオの入口を見ると、ライナーと作者が一緒に入って来るのが見える。

 作者はライナーと少し話したあと、別れてアイ達出演しないメンバーの方へと移動する。

 その光景だけ見れば険悪な様子も、ライナーがメンタルをやられている様子もないが、問題は撮影を始めてからであるためアクア達はまだ安心出来はしない。

 

「すげぇ……本物だ」

 

 ライナーを見て、思わずそうつぶやいてしまうメルト。

 そう思ったのはメルトだけではなく、アクアとルビー以外の役者たち、その場にいるスタッフ全員がそう思っていた。

 

 演じるにあたってメンバー全員がウィッグや衣装を身に着け、メイクや小道具で役の格好をしている。

 彼らも充分本物と納得出来る姿であるが、ライナーは格が違った!!

 

 元々ライナーは作者がライナーをモデルに、というかそのままの姿で描いている。

 そのため、ライナーは衣装を着るだけで作中の姿になることが出来る。

 ライナーはさらに食事制限などでマーレ編のやつれた姿を完璧に再現。

 

 そうすることで、姿、声、雰囲気などの全ての要素が本物であるパーフェクトライナーが誕生したのであった!!

 

「みなさん、お待たせしてしまってすみません」

 

「あ……いえ、時間までまだあるし、大丈夫ですよ!」

 

「それより……私達よりパパの方は大丈夫なの?あの人と一緒にいたんでしょ?」

 

「何か変なこととか言われなかった?」

 

「お前ら、あいつのことをなんだと思っているんだ」

 

「パパをモデルにしたキャラのメンタルをボロボロにしたヤバい人」

 

「声優じゃないお父さんを声優にしたヤバい人」

 

「いや……まぁ、それは……」

 

 遅れてしまったことを謝るライナーをフォローしつつ、聞こえないようにメンタルを心配するアクアとルビーに呆れるライナー。

 しかし、理由を言われてしまえばそれを否定することは出来ないのであった。

 

「でも……本当に大丈夫なんですか?声優の時も大変だったのに……本当に演じるなんて……」

 

 そして冗談抜きでライナーのことを心配するメルト。

 ライナーが声優をしてメンタルがボロボロになったことは有名である。

 声だけでもヤバかったのに、本当に演じたらライナーのメンタルがどうなってしまうのか心配になるのは当然である。

 

「精神を病んでいた私が言っても説得力なんて無いと思います。ですが、1度声優をやったことでけじめがついたというかなんというか……ほんの少しだけ許されたような気がしたんです。だから、声優をする時より精神的には楽だから大丈夫ですよ」

 

「いや……それって……本当に大丈夫なんですか?」

 

「まだ役が抜けきってないんじゃ……」

 

「やっぱり、やめた方が……」

 

 ライナーは大丈夫だと説明するが、進撃がライナーの前世だと知っているアクアとルビーは許されたような気がしたというライナーの言葉に少しだけ安心するが、知らないメンバーからは逆に心配されてしまう。

 知らないメンバーからしたら許された気がしたという発言は、ライナーがまだ役から抜け切れていないとしか思えなかった!!

 

「いや、あの!本当に大丈夫なんで!!むしろ演じられない方が罪悪感があるというか!!」

 

「大丈夫なんですかそれ!?」

 

「これさせるべきなのかさせないべきなのか!?どっちがいいんだよ!?」

 

「監督はどうするつもり?」

 

 大丈夫と説明しようとすればするほど、逆に心配されてしまう状況になってしまったところでフリルが五反田に確認する。

 ライナーがどうなってしまうのかは、すべては監督である五反田の判断にゆだねられた!!

 

「はぁ……メンタルが心配なのは俺もそうだが、SNSでも話題になってる。これだけのメンバーのスケジュールも抑えておきながら今更出来ませんなんて無理だからな。やるしかねぇだろ」

 

 役者たちのスケジュールもスタジオも抑えている。

 今更出来ませんとなってしまえば、再びメンバーを集めるためのスケジュールの調整は困難を極めるだろう。

 何よりもそれらに掛かった費用が無駄になってしまう。

 それだけは何よりも避けたいため、今更ライナーの出演を無かったことには出来ないのだ。

 

「監督、ありがとうございます」

 

「言っておくが、ヤバいと判断したら問答無用で撮影は中断させるからな」

 

「あ、はい」

 

 監督として与えられた仕事はしつつも、ヤバいと感じたら撮影は中断させる。

 それが五反田が監督として出せる当然といえば当然の判断だった。

 

「パパ、辛かったら絶対に言ってね!私達のことは気にしなくていいからね!!」

 

「むしろ俺達のことを気にして手遅れになるのが1番困るから、マジで辛かったら言ってくれよ!」

 

「わかったよ、ありがとう」

 

 自分のことを思ってくれるアクアとルビーに、思わず微笑んでしまうライナー。

 これからとんでもない撮影をするとは思えない、和やかな空気が漂う。

 

「んじゃ、これで役者は揃ったな」

 

 五反田のその言葉で和やかさは掻き消え、糸が張り詰めた空気が現場を支配する。

 だが、ここに集まったのはプロの役者たち。

 その空気に呑まれることはない。

 唯一素人であるあゆみが緊張に呑まれかけたが、そんなあゆみの肩にライナーがそっと手を添える。

 それで緊張がほんの少し和らいだのか、緊張しつつもあゆみの目にはしっかりとした決意が宿る。

 

 監督、カメラマン、照明、美術、スタイリスト、メイク、役者たち。

 それぞれの役割は違えど、彼らは共に戦場へ向かう。

 

「進撃の巨人、実写動画の撮影を始める」

 

 

*1
実際は違う名前




裏話として、映画ではなく短編動画という形になったのは、呪術廻戦27巻の実写動画の影響だったりします。

さらに裏設定で、実写版進撃の巨人はアイとおかあさんの和解の前に書こうとしていたんですが、私の中のガビ山先生が待ったをかけて『アイとおかあさんの和解を先に書けば、アイのおかあさんをライナーのおかあさん役に出来るよ!!』と言われましたのでこうなりました!!

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