【推しライナー】   作:チェシャ猫もどき

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おそくなってすみません!
いろいろ書いていたら遅くなりました!

全然詳しくないから適当に書いたけどマネージャーの仕事ってこれでもいいんですかね?

まぁ二次創作なんで大目に見てもらえたらと思います。

あと、ライナーをマネージャーにするというアイディアはアリナミンとのコラボ動画を見たからなんですが、ライナーのぶっ壊れ具合に脳が焼かれたので初投稿です。



がんばれ!マネージャーライナー!

 

俺の名はライナー・ブラウン。

 

 日夜、事務所のため上司とアイドルの狭間で戦う中間管理職、マネージャーだ!

 

 

★トレーニング編

 

 

 アイドルは体力作りに歌にダンスと日々のトレーニングが欠かせない。

歌もダンスも専門のトレーナーに頼むためマネージャーである俺が力になることは出来ない。

しかし、だからといってやることが無いかといったらそうではない!

 

「「「「ありがとうございました!!」」」」

 

「みんな、お疲れさん!」

 

「あ、ライナー!」

 

「おつかれ様です!」

 

「ライナーお疲れ!」

 

「どうも」

 

トレーニングが終わったタイミングで部屋に入ると俺に気付いたB小町のメンバーが集まって来る。

さっきまで歌やダンスの練習をしていた彼女たちは汗をかき、呼吸は少し荒い。

そんな彼女たちのために持ってきたスポーツドリンクを渡してやる。

 

「お前ら水分補給して、風邪なんか引かないように汗はしっかりと拭くんだぞ!ストレッチもしっかりな」

 

「ありがとうライナー!」

 

「いつもありがとう!」

 

「気が利くねライナー!」

 

「ありがとうございます」

 

各自スポーツドリンクを受け取って飲んでいく。

軽く見ただけだが、誰も体のどこかを痛めた様子はないのでホッとする。

 

ダンスをするアイドルにとって怪我はなにより恐ろしいことだ。

まだ誤魔化せる程度の怪我なら無理じゃない程度に抑えてダンスさせることも出来るが、例えば捻挫のような怪我はどうしようもない。

完治するまで安静にしないといけないが、安静にしていると当然トレーニングは出来なくなる。

そうなると体力は落ちるし、ダンスの振り付けも練習し直しだ。

それ以上に何も出来ないことに対する焦りが身も心も蝕んでいく。

 そうなると怪我をした本人も他のメンバーにもいい影響なんてない。

 

 だからアイドルのフィジカルケアは欠かせない。

 

「みんなのど飴を舐めてのどのケアしておけよ」

 

今日は新しい曲の歌と振り付けの練習をしていたからみんなにのど飴を配る。

 歌を歌うからのどのケアも欠かせない。

 のどを痛めて歌えなくなってしまえば、ライブで歌えなくなりレコーディングも遅れてしまう。

 しかものどを治すためには日常の会話から食事にも影響してくる。

 

 だからアイドルののどのケアも欠かせない。

 

 くそ!思った以上にアイドルの体調管理が大変すぎる!

 

「ありがとうライナー!」

 

「あ、これ期間限定?」

 

「ああ、コンビニでたまたま見つけてな。試しに買ってみたから食べてみてくれ」

 

 ただののど飴かもしれないが、期間限定やいろいろなメーカーを試したりしてみんなの好みを把握していく。

 のど飴の好みなんて些細な影響しかないと思うが、がんばっている彼女たちのために出来ることはしてあげたくなるのは当然だろう。

 

「私この味好き!」

 

「そう?私はちょっと微妙かな?」

 

「私はどっちでもいいけど……」

 

「私はいつものがいい……かな?」

 

「ま、ただののど飴だからあんまり気にすんな」

 

 期間限定だから試しに買ってみたが、評判はいまいちか。

 次買うのど飴は一旦、いつもののど飴にしておくか。

 さっき差し入れしたスポーツドリンクも今ののど飴も会社の経費で落ちるから気にしないで買える。

 というわけではない!

 

 経費というのは会社の金だ。

 会社の金からアイドルの子たちや俺の給料が支払われる。

 つまり、会社の経費から落とすと給料が減るということである。

 

 俺だけの給料が減るならいくらでも経費で落とすが、アイドルの子たちの給料を減らすようなことはしたくない。

 それにいちいち経費で落とす手間もある。

 スポーツドリンクものど飴も毎回差し入れするわけでもないし、たいした金額じゃないから問題ない。

 

 それに

 

「アイこの味イケるの!?」

 

「そう?おいしくない?」

 

「おいしくないとは言わないけど」

 

「味覚は人それぞれだし……」

 

 この子たちの笑顔が見られるなら金額なんて関係ないだろう。

 

 

★交通費編

 

 

 アイドルは移動が多い。

 東京はライブハウスなどの会場が集まっているし、交通の便も豊富だがそれでも費用がかかる。

 それにB小町は東京だけでなく、地方のイベントなどにも参加している。

 そうなると当然費用以外の問題が発生してしまう。

 

「どうする?エコノミーなのは当然として便を一本遅い便でもいいか?だが、トラブルがあったら困るし、着いても向こうで迷ったりして遅れるのは絶対に避けたい」

 

 問題は地方への移動。

 東京なら会場同士が近いこともあり間違えても間に合うこともあるが、地方だとそう簡単にはいかない。

 イベントやライブ会場が離れていることも多いし、土地勘がないから迷ってしまい遅れてしまうこともある。

 出番に間に合わなかったら大勢の人に迷惑をかけるだけでなく、遅れたことが広まってしまい仕事が減ってしまうことも充分ありえる。

 だから、時間には絶対に遅れないようにしないといけない。

 

「それに早くついて余裕があったら、ほんの少しくらい観光が出来るかもしれないからな」

 

 地方営業はイベントやライブに出たあとは自由に観光を出来ると思われがちだが、小さな事務所のうちにそんな余裕はない。

 それなりの費用を払うのだから出来るだけ色々な場所を回って費用の回収や知名度の向上をしたいのだ。

 だから観光は全然出来ないが、それでも少しでも観光させてあげたいと思う。

 

「だが、早すぎても朝が辛いし」

 

 朝が早いと起きれなくて遅刻しそうになるし、毎日の生活リズムが狂ったりするかもしれない。

 

 そうやってメリットとデメリットを天秤にかけて決める。

 

「よし、早い便で行くか」

 

 イベントへの遅刻は絶対に避けたいし、ほんの少しでも観光するチャンスが生まれて欲しい。

 

 そう願いながら俺は早い便を取るのだった。

 

 

★あいさつ回り編

 

 

 地方営業を終えて東京に戻りB小町のメンバーは少し休んで体を休めているが、マネージャーの俺に休みはない。

 いや、休んでいいのだが自主的にやっていることがある。

 

「お疲れ様です!いつもお世話になっています!」

 

「ライナーか今日はどうした?」

 

「この前にイベントで福山に行ったのでお土産です!」

 

「いやぁ、いつも悪いな」

 

「いえ、いつもお世話になっているので!」

 

 いつもB小町をライブさせてもらっているライブハウスのスタッフの人たちへお土産を配っている。

 こうやって少しでも印象を良くして次も呼んでもらえるように根回ししているのだ。

 

 当然、これも経費ではなく自費だ!

 

「B小町は評判いいから次も頼むよ!」

 

「ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!」

 

 挨拶が終わり、次の会場へ向かう。

 

 これらの小さな努力がB小町の成功へ繋がると信じて!

 

 

★体育祭編

 

 

「どうしてですか、どうして体育祭に参加しちゃダメなんですか!」

 

 俺は社長へ直談判している。

 B小町は中学生のユニットであるため体育祭などのイベントがある。

 毎日リハやレッスンで学校生活を犠牲にしている彼女たちを体育祭に参加させてあげたいのだが。 

 

「わかっているはずだライナー。彼女たちを体育祭に参加させるメリットがない」

 

「しかし!」

 

 わかっている、体育祭に参加させてもメリットがない。

 体育祭の練習などでレッスンの時間が減るし、怪我のリスクもある。

 だから、体育祭に参加させたくないのは俺だってわかる。

 

「あの子たちはそれを承知の上でアイドルになったはずだ」

 

 スカウトはしたがアイドルになることを選んだのは彼女たち自身。

 なら、俺たちがサポートするのはアイドルとしての彼女たちであり、学生としての彼女たちではない。

 

「体育祭に参加することがB小町のメリットになるなら認めてもいいが、あるのか?メリット」

 

「……それは」

 

 たしかにメリットは彼女たちの思い出作りくらいだ。

 怪我するリスクがあり、応援でのどを痛めることになってしまえばアイドル活動に支障が出てしまう。

 

「ないなら体育祭には参加させられない」

 

「はい……わかりました」

 

 すまないみんな!

 

 俺は無力だ!

 

 

★宿題編

 

 

 B小町は中学生のアイドルグループ。

 学校に通いながら活動しているが、だからといって学業が免除されるということはない。

 大手の事務所ならあるだろうが、うちではそんなことは出来ない。

アイドル活動を認める条件に勉強をしっかりとするという子もいる。

 だから普段から勉強はしているし、中学だから追試なんてものもないが、学生だからこそ毎年襲い掛かってくる困難がある。

 

「どうして普段から少しずつでもやってなかったんだ!」

 

「だって毎日ライブやレッスンで忙しいんだもん!」

 

「それは本当にすまない!」

 

 そう、夏休みと冬休みに出される大量の宿題が!!

 休みもあとわずか、なのに残ってしまっている大量の宿題を片付けるためにみんなで集まって勉強している。

 本来なら自分自身でやった方がいいのだろうが、毎日ライブやレッスンで忙しくさせてプライベートを犠牲にさせている自覚があるからこうして俺も宿題の手伝いをしている。

 だが、それでも多い!

 

「ライナー!ここの問題全然わかんない!」

 

「教科書を見ながらやってみろ!どうしてもわからなかったら、飛ばしてわかるところからやっていくんだ!」

 

「よし、理科終わった!」

 

「いいぞ!あと手がついていないのはなんだ!?」

 

「英語!」

 

「なら英語を頼む!」

 

「わかった!」

 

 みんなで協力して各自の得意な教科を進めていき、怪しまれない程度に出来たらそれをみんなで写す。

 写すのは本人のためにならないとかそんなこと言っている場合じゃないんだ!

 

「ライナー!指定図書の本とリンゴ買ってきたぞ!」

 

「ありがとうございます社長!リンゴは4等分にして砂糖水や塩水なんかに漬けて時間経過を写真に撮っておいてください!読書感想文はあとで俺が本読んで感想書いてみんなに送ります!」

 

「いいのか!?内容全員同じになるぞ!」

 

「全員学校違うからバレやしませんよ!」

 

 よし、これで自由研究と読書感想文は解決した!

 あとは5教科の問題集と絵だけだ!

 

「絵は家で適当なもん描いとけ!今はとにかく問題集を駆逐する!」

 

「「「「わかった!」」」」

 

 本来休みだったはずの1日は地獄の勉強会となったが、なんとか宿題は片付いた。

 しかし、この地獄が毎年の恒例になってしまうことをこの時はまだ誰も知らなかった。

 

 

★学園祭編

 

 

 体育祭の時に断られたが、学園祭にあの子たちを参加させてあげるために俺は社長と向き合う。

 

 体育祭の時に言われたメリットの有無。

 それを今回は用意してきた。

 それでも文化祭に参加の許可が取れるかどうかはわからないが、マネージャーには引けない状況がある。

 今がそうだ!

 

「B小町をゲストとして学園祭に参加させます」

 

「ほう」

 

 俺が用意した作戦、それはB小町をゲストとして学園祭に参加させることだ。

 

「自分と同じ学校の生徒がやっているアイドルグループが学園祭でパフォーマンスをするとなれば学校中で話題になります。それにB小町の歌もダンスもレベルが高いから間違いなく生徒たちの心を掴めるはずです!」

 

「だが、1学年を仮に100人として3学年で300人だ。それならライブハウスとそう変わらない」

 

 社長の言う通りライブハウスの収容人数はそれくらいあるし、それ以上の人数が入るライブハウスも少なくない。

 人数だけなら学園祭に出るメリットはそうない。

 

「ですが、親近感はこっちの方が上のはずです」

 

 アイドルとファン。

 その関係は素晴らしいものだが、それでもアイドルとファンの間にはたしかにフィルターのようなものがある。

 ファンはアイドルに綺麗な夢を求めていて、アイドルはそれに応えて綺麗な夢を見せる。

 その綺麗な夢というフィルター越しでアイドルとファンはやり取りをしているのだ。

 

「同じ学校、同じ学年、同じクラス。そんな身近な存在がアイドルをやっていてそのパフォーマンスを見られるとなればアイドルに興味のない子でも気になってしまうはずです」

 

 普段はアイドルに興味のない子も、興味があってもライブハウスまで行こうと思わない子でも、学校でライブがあるとなれば見に行くハードルは格段に下がる。

 それに学園祭のゲストで出るから生徒が見る料金なんて発生しないからなおさら行きやすいはず。

 

「なにより女性ファンの獲得の絶好のチャンスです!」

 

「……たしかに」

 

 B小町に限らず女性アイドルのファンは男性が多い。

 男性をターゲットにしているのだから当然なのだが、女性のファンもいれば知名度の広がり方ももっと上がるはず。

 しかし、男性客ばかりのライブハウスに女性は行きづらいだろう。

 だから、女生徒もいる学園祭は女性ファンを増やす絶好の機会になるはずだ。

 

「パフォーマンス以外の時間はメンバーにB小町の宣伝しながら学園祭を楽しんでもらえばいい。そうすれば宣伝とファンとの交流、なにより彼女たちの思い出作りのすべてをすることが出来ます!」

 

 これが俺の用意したB小町が学園祭に参加するための作戦だ。

 俺の作戦を聞いた社長は腕を組んだまましばらく考え込み、そして

 

「ま、何事も挑戦か」

 

「じゃ、じゃあ!」

 

「ああ、B小町のメンバーが学園祭に参加することを許可する」

 

「ありがとうございます!」

 

 よし、これでみんなが学園祭に参加することが出来る!

 

「参加することは認めたが、学校側がB小町のライブを認めてくれるかどうか、認めてくれても結果が出なかったらあの子たちが学園祭に参加することは二度とないと思えよ」

 

「問題ありません!あの子たちなら絶対に最高の結果を出します!」

 

「それもそうだな」

 

俺の言葉に社長は納得したように笑う。

あの子たちの才能を、そしてそれ以上の努力を俺たちは知っているからだ。

 

「参加は許可したが、学校側の許可が取れなきゃ意味ないぞ」

 

「大丈夫です!必ず学校の許可を取ってみせます!」

 

いつもアイドル活動をしている彼女たちの数少ない思い出作りのチャンス。

メリットがあるとはいえ、彼女たちのために学園祭に参加することを許可してくれた社長の心意気。

 

それらに応えるために、何がなんでも学校の許可を取ってみせる!

 

「任せたぞライナー!」

 

「はい!」

 

社長から許可はもらった!

さっそくそれぞれの学校へ交渉だ!

待ってろみんな!

必ず学園祭に参加させてやるからな!!

 

 

★修学旅行編

 

 

修学旅行。

それは学校生活最後のイベントと言ってもいい行事だ。

旅行だけなら休みを取れば行けるだろう。

だが、3年間一緒に過ごした友人たちとこれだけの大人数で旅行することなんて学校を卒業したらまず不可能だ。

だから一生の思い出として絶対に行かせてあげたいのだが。

 

「ダメだ許可出来ない」

 

「しかし!」

 

 社長から修学旅行へ参加の許可が下りない。

 それはわかっていたことだ。

 修学旅行に参加するメリットが少ないということは。

 

「修学旅行は学校のスケジュールに沿って行動するから旅行先でライブするなんてことが出来ない。旅館に泊まるから歌とダンスの練習も周りに迷惑をかけるかもしれない。そうなったらB小町の評判が下がるどころか学校にも迷惑をかけてしまいかねない。だから無理だ」

 

 そうだ、社長の言ったことは正しい。

 団体かつ学生以外の観光客も訪れる修学旅行ではアイドルとしての活動はかなり制限される。

 それでも無理してアイドルとしての活動を行った結果、B小町の評判が悪くなるだけならまだしも、学校にまで迷惑がかかってしまえば来年の修学旅行に悪い影響が出かねない。

 そんなのは俺たちだけじゃなく、あの子たちだって望んではいないだろう。

 

「……ですが」

 

 わかっている。

 わかってはいるが、それでもいつもがんばっているあの子たちに何かしてあげたい。

 それなのにどうすればいいかわからない。

 

「俺だって行かせてやりたいさ。だがなライナー、俺は社長だ。事務所のトップに立つ人間として少女としてのあの子たちじゃなく、アイドルとしてのあの子たちのことを考えないといけないんだ」

 

 そうだ、社長だってあの子たちのことが嫌いなわけがない。

 むしろ、大切に思っているからこそ社長として辛い決断を下さないといけないのか。

 

「すみません社長、俺が間違っていました」

 

「そんなことないさ。誰もがアイドルとしてあの子たちを見ているんだ。少しくらいアイドルなんかじゃない、ただの少女としてのあの子たちを見ている人間がいたっていいだろ」

 

 今回の俺はほとんど感情だけで動いてしまっていた。

 アイドルとしてあの子たちのことを考えていなかった。

 ただ、思い出作りのためだけにあの子たちを修学旅行に参加させようとしてしまった。

 

 本当にあの子たちのことを考えるなら、アイドルとしてのあの子たちとただの少女としてのあの子たち、その両方のことを考えなければいけなかった。

 

「社長、俺もっとがんばります」

 

「期待してるぞ、ライナー」

 

 あの子たちを修学旅行に参加させてあげることは出来ないが、それでも何かあの子たちにしてあげられることがあるはずだ!

 

 俺もマネージャーとしてまだまだ未熟だ!

 アイドルとして成長していくあの子たちに負けないように、もっともっと頑張るぞ!

 

 

★メンタルケア編

 

 

 社長の言った通り、アイにはアイドルとしての才能があった。

歌とダンスも出来て、それ以上にファンの望むアイドルという綺麗な嘘に完璧に答えていたように思える。

 

そのおかげでライブやイベントの出演回数は増えてきたし、CDの売上だって伸びた。

それに少しずつだがテレビのオファーだって来ている。

B小町は確実にアイドルとして人気になっている。

 

だが、それはアイの力がほとんどだ。

 

アイを見たいからファンはB小町のライブに来ている。

アイの歌声を聞きたいからファンはB小町のCDを買っている。

視聴率が欲しいからテレビ局はアイのいるB小町に出演のオファーをする。

 

B小町はアイを中心に回っている。

 

もちろん、他のメンバーにファンがいないわけじゃない。

アイよりも好きだと言ってくれるファンだって当然いる。

それでもアイが圧倒的だった。

そんな現状を変えるために他のメンバーだって努力しているが、当然アイだって努力しているのだから差は縮まらない。

最初はあの子たちもアイを応援していた。

 

『おめでとう』と

 

『次は負けない』と

 

抱いていたはずの様々な思いを押し込めてアイを祝福し、悔しさをバネにして努力していた。

それでもアイ中心の状況がいつまでも続いてしまえば耐えられなくなってしまう。

今のB小町は表面上は仲がいいが、楽屋裏やファンのいないところではギスギスとした空気になりつつある。

 

それを俺ならなんとか出来るなんて思っていない。

なにより俺は彼女たちを苦しめている元凶の1人だ。

俺に言われたところで解決どころか逆に悪化しかねない。

 

それでも、俺はB小町のマネージャーであり、なにより彼女たちのファンでもある。

なら、彼女たちのために俺はマネージャーとしての責任を果たさなければならない。

 

 

★

 

 

「みんな、いま大丈夫か?」

 

「……ライナー」

 

 トレーニングが終わって、体を休めているとライナーが入ってくる。

 

 ライナー・ブラウン。

 

 B小町を結成した時からのマネージャーで仕事だけじゃなく、プライベートの面倒だってよく見てくれる私たちにとってお兄ちゃんみたいな存在。

 

「トレーニング終わったから大丈夫だよ」

 

「疲れているのにすまない。お詫びと言っちゃなんだが、水分補給しっかりしておけよ」

 

「いつもありがとうライナー」

 

「ありがとうございます」

 

「ありがと」

 

 渡されたスポーツドリンクを受け取る。

 ライナーはトレーニングの様子を見に来ては必ずドリンクやのど飴を差し入れしてくれる。

 B小町のみんなにとっていつも通りの光景。

 

 ただ、アイがいないことをのぞいたら。

 

「ライナー1人?アイは?」

 

「アイは仕事だ。ここにはいない」

 

 私たちはトレーニングなのにアイは仕事をしている。

 その事実に胸の奥にドロリとしたものが湧き上がる。

 

最初はみんな一緒だったのに。

みんなで一緒に頑張っていたのに。

もうアイには追いつけないくらい差が開いてしまった。

 

「ライナーは一緒に行かなくていいの?ア(・)イ(・)の(・)マ(・)ネ(・)ー(・)ジ(・)ャ(・)ー(・)なのに」

 

こんなことを言ってしまう自分が嫌だ。

アイ1人が売れ始めて、ライナーはアイのサポートに回ることが多くなってしまった。

それは仕方ないことだと思っても、みんなのマネージャーだったライナーを取られたみたいで、私たちのことなんてどうでもいいと言われてもいるみたいで嫌だった。

 

本当はそんなことなんてないってわかってる。

ライナーは仕事の合間や休みの日だって差し入れをしてくれたりして、私たちのことを気にかけてくれている。

それでも私たちは結構限界に近かったのかもしれない。

 

「俺はB小町のマネージャーであってアイ専属のマネージャーじゃないんだが、お前らにそう言われても仕方ないよな」

 

ライナーは困ったような、だけど仕方ないというような顔になる。

 

まだB小町がみんなで頑張っていた頃。

私たちはよくわがままを言った。

休みが欲しいや、人気になりたい。

新作のスイーツが食べたいなんてそんな小さなわがままを。

それを言われたライナーは今みたいな困ったような、だけど仕方ないというような顔で『あまり期待するなよ』なんて言いながら私たちのわがままを叶えようとしてくれた。

わがままは叶ったり、叶わなかったりといろいろだったけど、それよりもライナーが私たちのために頑張ってくれるのが何より嬉しかったのに。

 

「今日はお前たちと話がしたくてな、アイの方はミヤコさんに代わってもらったんだ」

 

 話がしたい。

 そう言われて、ついに来たと思ってしまった。

 アイだけが売れ始めて、B小町の空気は悪くなっていった。

 今はまだひどくはないけど、アイのことを悪く言ったり、嫌がらせみたいなことをしてしまったこともある。

 だから、そのことについて注意をしに来たんだと。

 身の程をわきまえろと。

 

「お前たちはアイのことは嫌いか?」

 

 だけど、ライナーの口からはそんな言葉が出てきた。

 

「え……と」

 

「嫌いなわけ……ないよ」

 

「うん、嫌いじゃない」

 

 予想していたのと違う言葉で少し戸惑ったけど、みんな嫌いなんて言わない。

 そんなこと言ってしまえば冷遇されるのは目に見えているし、最悪卒業という名のクビにすらなりかねない。

 

「このことは絶対に誰にも言わない。もし仮に誰かにもれたとしてもお前たちを絶対に守るから信じてくれ」

 

 そんな綺麗ごとをライナーは私たちをまっすぐに見ながら言った。

 

 普通は嘘だって思う。

 本当は私たちを騙してクビにするんじゃないのって。

 

 でも、ここで本心を誤魔化すことが出来ないくらい私たちにはいろいろと汚い感情が溜まっていたし、なによりライナーが騙すわけがないと、そう思ってしまうくらい私たちはライナーのことを信頼してしまっていた。

 

「嫌い……だよ。アイのこと」

 

 私が言ったのか、それとも他の誰かが言ったのかわからなかった。

 それくらいみんなアイのことが嫌いになりつつあった。

 

「だって、アイばっかりだもん。アイだけがセンターで歌って、アイばっかりファンから応援されてて、アイばっかり仕事が増えてて、アイばっかり人気になっていくもん!」

 

 少し言い出しただけで、どんどんと溢れ出してくる。

 いつも思っていた不満。

 アイへの嫉妬。

 汚い感情がどんどんと。

 

「アイが頑張っているのは知ってるよ。歌もダンスもすごく努力してるの。でも、私たちだって頑張ってるの!頑張ってるのにどうしてアイばっかりなの!?」

 

 アイが頑張っているのは知っているけど、私たちだって頑張っている。

 それなのにアイだけがセンターで歌って、どれだけ頑張っても私たちはアイの引き立て役にしかなれない。

 

「わかっているよ!B小町がここまで人気になったのはアイのおかげだって!アイがいなかったらテレビに出たりすることなんて出来なかったってわかってるよ!」

 

 CDの売り上げがランキングに載ったのも、音楽番組に呼ばれたりするのもアイのおかげだって。

 B小町が私たちだけだったらしがない地下アイドルのままだったってわかってる。

 わかっているけど、だからといって感情が納得しない!

 

 私たちも頑張ってる!

 私たちだってセンターで歌いたい!

 誰か私たちを見てよ!

 

 そんなことを思っても我慢するしかない。

 アイの変わりはいないのに、私たちの変わりなんていくらでもいるんだから。

 

「アイなんて……嫌いだよ」

 

 そう、アイのことなんて嫌い。

 

「アイなんて……いなきゃよかった」

 

 アイがいなければ、何度もそう思った。

 

「アイと……会わなきゃよかった」

 

 アイと会わなければ、きっと私たちは部外者としてすごいアイドルがいるなんてのんきなことを考えながら生きていけたのに。

 

「アイのことなんて……嫌い」

 

 そう、アイのことなんてきらい。

 

「でも……そんなこと思う自分がもっと嫌い」

 

 私が言ったのか、それとも他の誰かが言ったのかわからなかった。

 それくらい自分のことが大嫌いだった。

 

「こんなこと思いたくなかった」

 

『みんなで一緒にがんばろうね!』そう言ったはずなのに。

 こんな汚い感情を抱いた自分が嫌い。

 

「アイのこと……応援してあげたいのに」

 

 頑張っているアイのことを同じB小町のメンバーとして応援してあげたいのに、最低な私たちはアイのことを憎んでいる。

 

「前みたいに……みんなで仲良くしたいよ」

 

 B小町を結成したばかりのように、みんなで頑張って、みんなで笑いあって、みんなで仲良くしたい。

 本当はアイのことを嫌いになりたくないのに。

 本当は前みたいにみんなで仲良くしたいのに。

 

「みんな、教えてくれてありがとう」

 

 ライナーの優しい声がする。

 いつも私たちのために頑張ってくれる優しいお兄ちゃんみたいなライナーの声が。

 

「アイは悪くないし、お前たちが悪いわけでもない」

 

 優しい声で、私たちのことを心から思ってくれているのに。

 

「悪いのは俺なんだ」

 

 なのに、どうしてそんなことを言うの?

 

「お前たちが苦しんでいるのは知っていた。それでもB小町が売れるためにお前たちをアイの引き立て役にし続けた」

 

 私たちが苦しんでいるのを知っていたのなら、どうして助けてくれなかったの?

 

「アイがお前たちと仲良くしたいと思っているのを知っていた。それでもB小町が成功するためにアイを贔屓し続けた」

 

 そうなの?

 アイも私たちと仲良くしたいと思ってくれているの?

 それなのに、どうして助けてあげなかったの?

 

「B小町が成功するためにアイを贔屓することも、お前たちを引き立て役にすることも俺は受け入れた。アイやお前たちのせいじゃない……悪いのは俺なんだよ。お前たちが苦しんでいるのは俺のせいだ」

 

 どうしてそんなことを言うの?

 私たちだって悪いのに、全部自分のせいみたいなこと言わないでよ。

 

「だから……お前たちが」

 

「やめてよ」

 

 ライナーの言葉をさえぎって言った。

 ライナーが何を言おうとしたのかなんてわからないし、わかりたくもない。

 ただ、その先の言葉は聞きたくなかった。

 

「ライナーにも悪い所があるのかもしれないけど、私たちだって悪いんだよ」

 

「全部自分のせいみたいに言わないでよ」

 

「ライナーを嫌いになって、それでみんなが仲良くなっても辛いだけだよ」

 

 ライナーが悪者になって、ライナーを憎んで、そんな方法でみんなと仲良くなんてなりたくないよ。

 

「そうか……そうだよな。急ぐ必要なんて……なかったのにな」

 

 何かを思い出しているような様子で、ライナーは後悔している。

 私たちのこともそうだけど、きっと昔に何か間違いをしてしまったのかもしれない。

 だから、こんな自分が悪者になるようなことをしようとしてまで、私たちの仲を取り戻そうとしてくれたのかもしれない。

 

「ライナー、私たちもう大丈夫だよ」

 

 そう言った。

 本当はまだ苦しいけど、でもいつかは決めなければいけないことだったから。

 

「もうアイのこと嫌いとか言ったりしない」

 

 B小町はアイを中心に活動していく。

 私たちはアイを輝かせるための引き立て役でいい。

 

「アイやライナーの邪魔なんてしないから」

 

 アイの邪魔をして、それでライナーを苦しめたりしない。

 これからずっと、アイの引き立て役として活動していく覚悟を決めるんだ。

 

「だから……もう、大丈夫だよ」

 

 アイと一緒に頑張ることはやめる。

 これからはアイを輝かせるために頑張る。

 

 だから、心配しないで。

 

 私たちのことなんか気にしないでいいんだよ、ライナー。

 

「……お前たち」

 

 ライナーは辛そうにするけど、でもなにか決心したような顔になる。

 

「この世界にはいろんな奴らがいる」

 

「ライナー?」

 

 まるで何かを懐かしむようにライナーが言う。

 

「勉強が得意な奴に、運動が得意な奴」

 

 誰かを思い出しながら、ライナーが言う。

 

「便所に入るなり、どっちを出しに来たのかを忘れるバカだったり、自分のことしか考えてねぇ不真面目な奴に、人のことばっかり考えているクソ真面目な奴」

 

 きっと私たちの知らない大切な人たちのことを。

 

「突っ走るしか頭にねぇ奴に、何があってもついて行く奴ら……」

 

 懐かしそうにしているのに、それなのにライナーは何かを耐えているように感じた。 

 

「それに……いろんな奴らが」

 

 ライナーはその人たちと一緒にいたんだと思う。

 きっと、ライナーにとって大切な人たちと。

 

「いろんな奴らがいるからこそ、どうしても合わなくて、時にはぶつかり合うことだってあるはずだ」

 

 その時のことを思い出しているのかライナーは少し微笑む。

 

「でも、ぶつかり合ったからこそ、わかり合うことが出来た。そんなことだってあるはずだ」

 

 懐かしみながら、後悔している。

 ライナーは大切な人たちに何かしてしまったのかもしれない。

 

「だから、アイとケンカしてやってくれないか?」

 

「けん……か?」

 

「……いいの?」

 

 ケンカなんてするなじゃなくて、ケンカしてくれってライナーは言った。

 

「ああ、イジメや嫌がらせなんかはダメだが、ケンカは違うからな」

 

 嫌がらせをしてしまっていた私たちに刺さる。

 けど、ケンカは違うってどういうことだろう。

 

「お前たちがアイのことが嫌いならアイのどこが嫌いか言ってあげてくれ。アイに怒っているなら怒ってあげてくれ。遠慮なんてしないであげてくれ。お前たちは同じB小町のメンバーなんだから」

 

 同じB小町のメンバー。

 その言葉が少し嬉しかった。

 もうB小町はアイだけのものになってしまったと思っていたから。

 

「アイはアイドルだから、マネージャーの俺とは対等になれない。社長やファンのみんなも立場はちがうがアイドルであるアイとは対等になんてなれない」

 

 ライナーはマネージャーだし、男性で年上だからアイと友達みたいな近い関係にはなれない。

 社長は事務所のトップだし、ファンとアイドルがその関係を超えることは出来ない。

 

 だから、対等になれるのは私たちだけなの?

 

「アイのことをアイドルとしてのアイじゃなくて、1人の人間のアイとして接してあげられるのは、もうお前たちだけなんだよ」

 

 そうだ、アイだって私たちと同じ1人の女の子なのに。

 みんなアイドルであることをアイに求めてしまっていた。

 アイが1人の女の子だってことを忘れてしまっていた。

 

「いいの?私たち結構うっぷん溜まっているよ」

 

「ああ、そのうっぷんをアイにぶつけてやってくれ。それで、アイがため込んでいるうっぷんをお前たちが受け止めてやってくれ」

 

 ああ、いいんだ。

 この気持ちをぶつけても。

 アイの気持ちを受けとめても。

 

「そっか、じゃあお言葉に甘えていろいろぶつけちゃおうかな?」

 

「そうだね、アイだけテレビ出すぎとか、私たちも出せとかいろいろ言いたかったし!」

 

「思えば今までケンカとかしたことなかったよね。よく我慢したよ私たち!」

 

 あれだけあった胸の奥のドロドロがすごく軽くなった。

 会いたくなんてなかったアイに、今はすごく会いたい。

 

「はは、ちょっとは加減してやってくれよ」

 

 ライナーが少し困ったような顔で嬉しそうに笑う。

 それがアイもいたころのB小町みたいで嬉しかった。

 

「よし、それじゃあアイに負けないようにレッスン頑張るか!」

 

「社長のひいきはすごいけどアイの努力は本物だもんねぇ」

 

「本当、才能ある人間に努力されると凡人は辛いよ」

 

 アイは圧倒的だけど、だからといって努力することをやめたらアイとの差はどんどん開いていくだけだ。

 そうなったら、いくら同じB小町のメンバーといっても対等なんかじゃなくなってしまう。

 

「お前たちもあまり無理するなよ。みんな揃ってB小町なんだからな」

 

 アイがB小町の絶対的なエースだけど、私たちにだってファンはいるんだ。

 アイはすごいけど、そこに私たちが加わればもっとすごくなるに決まってる!

 だけど、その前に

 

「ライナーも無理しちゃダメだからね!」

 

「そうだよ!ライナーの方がやばくない!?」

 

「ライナーもちょっとは休んだほうがいいよ!」

 

 思えばライナーはマネージャーの仕事に、休みの日だって私たちの様子見に来てくれたりしてる。

 アイドルとマネージャーだから単純に比べられないけど、冷静に考えたら私たちより仕事多いんじゃない?

 

「わかったわかった。お言葉に甘えて少し休ませてもらうよ」

 

 仕方ないみたいな様子でライナーが言う。

 もしかしてライナーってワーカホリック?

 自分のことで精一杯だったけど、これはアイも含めた全員で1回話し合う必要がありそうだ。

 

「ライナー!」

 

「ん、どうした?」

 

 休みにいくライナーを呼び止める。

 いろいろと言いたいことはあるけど、まずはこれを伝えないと

 

「「「ありがとう!」」」

 

 ありがとう。

 

 ライナーのおかげで私たちもアイも救われた。

 これだけは絶対に伝えたかったからみんなで伝える。

 

 ライナーは少し驚いて

 

「お前ら……ありがとうな」

 

 嬉しそうに笑った。

 

 

★

 

 

「ねぇ……ライナー」

 

「どうしたアイ?」

 

「ありがとね」

 

「……なんのことだ?」

 

「さぁ……わかんない」

 

「そうか……わからないか」

 

「なぁ……アイ」

 

「どうしたのライナー?」

 

「ありがとな」

 

「……なんのこと?」

 

「さぁ……わからないな」

 

「そっか……わからないんだね」

 

 わからないけど、ありがとうと言いたかった。

 

 ただそれだけの話だ。

 

 





この話のラストは完成間近のタイミングで思いつきました。

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