【推しライナー】   作:チェシャ猫もどき

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ようやく5話まで来ました。

自分で書いておいてなんですが、アイとライナーの相性が思いのほか良くてびっくりしています。
世界観とか全然違うのにどうしてだろう?

書き始めた時はこんなことになるとは思わなかったのに。

アイとライナーの相性の良さに脳を焼かれたので初投稿です!


欲張りな一番星

 

「あ、ライナー!」

 

「どうしたアイ。今日はオフだっただろ?」

 

事務所で仕事をしていると突然アイが来た。

売れっ子のアイにとっては久しぶりのオフなのに、わざわざ事務所に来る理由がわからない。

何か悩みでもあるのかと思ったが、かなりご機嫌なアイにそんな悩みのようなものは見られない。

 

「しかし、ずいぶんとご機嫌だな。何かいいことでもあったのか?」

 

「うん、あった!すっごくいいことがあったよ!」

 

どうやらいいことがあったらしいが、俺には心当たりがない。

メンバーとの仲が改善した時もしばらくはこんな調子だったが、ここ最近は落ち着いて来ていた。

あれほどの嬉しいことがそうそうあるとは思えない。

考えてもわからないからさっさと聞いてしまおう。

 

「何があったんだ?教えてくれよ」

 

「いいよ!ライナーに1番最初に教えてあげたかったから!」

 

「ほう、そいつはありがたいな」

 

まさか、1番最初とは。

付き合いが長いからおかしいとは言わないが、それでもやっぱり嬉しいもんだ。

ここまでご機嫌になっているアイに何があったのか楽しみにしていると。

 

「ライナー私、赤ちゃん出来た!」

 

「……………………は?」

 

まさかの情報に頭の中が一瞬で真っ白になった。

え、何?

赤ちゃん?

誰の?

 もしかしてアイの?

 

「すまないアイ。うまく聞き取れなかったからもう1回言ってくれないか?」

 

「うん、いいよ!」

 

 たぶん俺の聞き間違いだろう。

 きっと何か別の言葉を言ったのに俺が聞き間違えたせいで、アイに赤ちゃんが出来たなんてありえないことになってしまった。

 

「赤ちゃん出来た!」

 

「………………………マジかよ」

聞き間違いなんかじゃなかった。

 

 アイが赤ちゃん出来たって言っている。

 どうすればいいんだ?

 俺はどうすればいいんだ!?

 

 パニックになりながらも俺は気付いた。

 

「これ……ドッキリか」

 

 部屋に仕掛けられているであろうカメラを探す。

 そうだ、ドッキリだ。

 アイドル、しかも未成年が妊娠なんてそんなことドッキリしかあり得ない。

 きっとマネージャードッキリなんだ。

 ドッキリに決まっている!

 

「ドッキリじゃないってば、ほら」

 

 ドッキリだと疑う俺の手を取り、お腹に押し当てる。

 

「ポッコリ……してる」

 

 ポッコリしていた。

 肥満とかそんなのじゃない、妊娠っぽい膨れ方をしている。

 

「俺は……どうすれば」

 

 どうすればいいのかわからない。

 何をするのが正解なんだ?

 

「そうだ、まずは社長に連絡を!」

 

 俺だけじゃ判断出来ない。

 ここは社長に報告をして指示を仰ごう!

 

「もしもし、俺だ」

 

「あの……すみません社長。どうしてもお伝えしたいことが」

 

「どうした?何かあったのか?」

 

 社長に連絡をする。

 数コールのあとに社長が出るが、正直なんて伝えればいいのかまだ迷っている。

 

「その前に社長、今1人ですか?」

 

「そうだが……それがどうした?」

 

「周りに誰もいませんか?」

 

「ああ、誰もいない」

 

「大声上げても大丈夫そうですか?」

 

「大丈夫だが、何かあったのか?」

 

 このことが誰かにバレないように何度も確認をする。

 万が一にも誰かにばれたら、アイだけじゃなくてB小町も苺プロダクションも全部おしまいだ。

 

「あの……多分勘違いか、あるいはテレビのドッキリだと思いたいんですが」

 

「いや……本当に何があったんだ?」

 

 言わなければいけないが、すごく言いたくない。

 今もアイの勘違いか、テレビのドッキリだと思いたい。

 だが、いつまでも目を背けているわけにもいかない。

 

 意を決して社長に伝える。

 

「アイが妊娠しました」

 

「……………………は?」

 

 ま、そりゃそうなるよな。

 普通は信じられるわけがない。

 

「すまん、俺の聞き間違いかもしれないからもう一度言ってくれないか?」

 

「アイが妊娠しました」

 

「………………………マジかよ」

 

 俺と全く同じ反応だった。

 普通は信じられない。

というか信じたくない。

 アイドル、おまけに未成年が妊娠したなんて。

 

「あ、これ、あれか!ドッキリだろ!テレビのドッキリだよな!ドッキリって言え!」

 

「俺もドッキリだと思いたいですが、たぶんドッキリじゃないです」

 

「嘘……だろ」

 

 スマホの向こうでものすごく深いため息が聞こえる。

 悲しいことに社長の気持ちが痛いほどわかる。

 

「とにかく、すぐに戻るからこのことは絶対にバレないようにしろ!誰にもだ!わかったな!」

 

「はい!わかりました!」

 

 その言葉を最後にスマホが切れる。

 本当に妊娠したかどうかまだわからないが、妊娠していなくてもこのことを悪用しようとする人間は芸能界に大勢いるだろう。

 苺プロやB小町、なによりアイ自身を守るためにもこのことは絶対にバレないようにしないといけない。

 

「社長はなんて?」

 

「すぐこっちに戻るから絶対にバレないようにしろってさ」

 

「あはは、やっぱり?」

 

「やっぱりって……お前なぁ」

 

ことの重大さをわかっているのかいないのか、アイは楽しそうに笑う。

 少し呆れながらも社長が来るまでに俺に出来ることをしておくか。

「なぁ……アイ。もし本当に子供を妊娠しているとして、お前は本当に産むつもりか?」

 

「うん、産むよ」

 

 一瞬も迷うことなくアイは答える。

 

「それはアイドルをやめるってことか?」

 

「ううん、アイドルはやめない。この子たちを産むためにアイドルは休むことになると思うけど、アイドルをやめないよ」

 

「それじゃあ」

 

「妊娠のことは公表しない」

 

 普通は諦めなければいけない。

 アイドルとしてのアイか。

 母親としてのアイか。

 

「大変だぞ、どっちもは」

 

「大変なのはわかってるよ。でも大変なのを隠してステージの上で楽しそうに歌って踊るのがアイドルでしょ?」

 

 そうだ、辛いことはたくさんあった。

それでもアイもあの子たちもそんなのは微塵も感じさせずにみんなを笑顔にしていた。

なら、きっと何があっても大丈夫だろう。

 

「アイ、お前が子供を産むつもりなのも、子供を産んでもアイドルを続けるつもりなのはわかった。お腹の子を無理矢理中絶するような真似は出来ないし、したくない。だから、お前が産むと決めたら俺は全力でサポートするつもりだ」

 

「本当!?」

 

「ああ、本当だ」

 

認められたことで嬉しそうにするアイだが、どうしても確認しておかないといけないことがある。

それ次第では、無理矢理中絶することすら考えないといけないほどの。

 

「だけど最後にどうしても確認しておきたいことがある。それ次第じゃ、たとえお前に恨まれることになったとしても子供を中絶させることも考えている」

 

「え……なにそれ。嘘だよね……ライナー」

 

「嘘じゃない。本気だ」

 

アイが怯えた様子で子供を守るようにお腹を手で覆う。

怖がらせてしまったことに罪悪感がわくが、アイとその子のためにもこの程度で引き下がるわけにはいかない。

 

「こんなことを言われて本当のことなんて言えないかもしれないが、それでも正直に教えて欲しい」

 

 中絶させるなんて言われたら本当のことなんて言わずに、都合のいいことを言うだろう。

 アイが嘘をついたら俺にはわからない。 

 それでも聞いた後で、やっぱり反対するなんて裏切るような真似はしたくなかった。

 

「アイ、その子は誰かに無理矢理されて出来た子なのか?」

 

 それだけはどうしても知りたかった。

 

 きらびやかな芸能界だが、その裏側はひどくドロドロとしている。

 嫉妬や妬みは当たり前、金のことしか考えず他人を使い捨ての道具のように扱うやつ。

 権力を振りかざして、他人を思うがままに振り回すやつ。

 もちろん、素晴らしい人だっているが、最低なやつだって多い。

 

 そんな最低なやつの中には自分の力を利用して肉体関係を迫ってくる、いわゆる枕営業を求めてくるやつだっている。

 

 俺にもB小町のメンバーの体を差し出すように言われたことがある。

 もちろん、そんなことは断ったがいつもあいつらのそばに俺がいるわけじゃない。

 むしろ俺がいない時を見計らって、仕掛けて来ることの方が多いはずだ。

 

 だから、もしもアイがそういったことを無理矢理されてしまっていたら。

 そのせいで出来てしまった子供だとしたら。

 俺はその子を産むことを認めることは出来ない。

 

 それを聞いたアイは安心したように微笑む。

 

「大丈夫だよライナー。無理矢理なんてされていない。この子が出来たことも、この子を産みたいって思っていることも、全部私が自分の意志で決めたことだよ」

 

 やさしい顔で、安心できるようにやわらかな声でアイはそう言った。

 嘘なんかじゃない、心から出た言葉だった。

 

「そうか……ならよかった」

 

 本当によかったと、そう心から思った。

 

 誰にも言えず、たった一人で苦しんではいなかったのだと。

 産まれて来る子供のことを、心から祝福してもいいのだと。

 それがわかったから。

 

「さっきはあんなこと言って悪かったな」

 

「本当だよ!すごく怖かったんだからね!」

 

「いや、本当に悪かった」

 

 子供を殺すと言われたようなものだったのだから怖くなるのも仕方ない。

 ここは素直に謝るしかない。

 

「お詫びと言っちゃなんだが、出産も育児もしっかりサポートするから許してくれ」

 

「言ったよ!ちゃんとサポートしてね、約束だよ!」

 

「ああ、約束だ」

 

 もともとアイが産むと決めた以上は手伝うつもりだったし、無理矢理されたわけではないから心置きなくサポート出来る。

もう迷うことはない。

 

「でもライナー、私が無理矢理されてたとしても赤ちゃんを中絶するのはおかしくない?赤ちゃんに罪はないのに」

 

 アイの言うことはもっともだ。

 たとえ、親が罪人だろうとその罪が子供にまで及ぶなんてことは本当ならあってはならない。

 

「アイの言う通りだが、世の中そんなに簡単じゃない。頭では違うとわかっていても心が納得できるとは限らない。たとえ個人どうしでわかり合うことが出来たとしても、周りがそれを許してくれないことだってある」

 

 周囲が、時代が、歴史が、環境が、そして世界が、わかり合うことを許してくれない。

 人と人がわかり合うことが出来たとしても、周りがそれを否定する。

 間違っているとわかっていても、周りに合わせないといけない。 

 そうしないと、世界から排除されてしまう。

 だから俺は、あいつらのことを。

 

「俺だけじゃなくて、B小町のみんなや社長にミヤコさん。みんながお前のことを大切に思っている。だから、もしお前が無理矢理そういうことをされていたら、俺たちはそんなことをしたやつを絶対に許さないだろう。そして、そいつと血の繋がりがある子供も無関係ではいられないんだ」   

 

 どれだけ頑張っても、どれだけ耐えていたとしても。

 悪魔の末裔だから。

 それだけですべてを否定される。

 

「会ったこともない人間を、顔も名前も知らない普通の人たちのことを……俺たちは悪魔だと決めつけることが出来るんだよ」

 

 悪魔だと思っていた。

 だから、悪魔を皆殺しにして世界を救えば、英雄になれると俺は心の底から信じていたんだ。

 悪魔なんていないと思いもしなかったから、たくさんの人を殺した。

 殺しておきながら、悪魔なんていないと、彼らも俺たちと同じ人間なんだと気付いて勝手に被害者面をした。

 

「だから、お前が無理矢理されたわけじゃないってわかって、本当に安心したんだ」

 

 アイが一人で苦しんではいなかったこと。

 お腹の子を憎むようなことにならないとわかったから。

 自分のしていないことで苦しまなくてよかったから。

 

「ライナー……ごめんね。誰にも相談しないでこんなことしちゃって」

 

「全くだ、何もなかったからよかったものの、下手したら流産していた可能性だってあったんだからな」

 

 妊娠のことについてあまり詳しいわけではないが、安静にしておかないといけない妊婦が歌って踊っていたらお腹の子を流産していたかもしれない。

 そうなったら、アイもお腹の子も、誰も幸せになれないんだから。

 

「だがまぁ、何事もなかったんだからあまり気にするな。アイは赤ちゃんを無事に出産することを一番に考えろ」

 

 過ぎたことをグチグチ言っても仕方がない。

 今は気持ちを切り替えて、赤ちゃんを無事に出産することを考えないと。

 

「ライナー、ありが」

 

「今戻った!大丈夫か!?誰にもバレてないか!?」

 

「大丈夫です社長」

 

「本当か!?よかった……本当によかった」

 

 アイの言葉をさえぎって社長が入って来る。

 かなり慌てていたが、バレていないという俺の言葉に安心して、床に座り込む。

 

「これ!妊娠検査キット買ってきたから!これ使え!」

 

「そんなことしなくても本当に赤ちゃん出来たのに」

 

「いいから!」

 

「はーい」

 

 妊娠検査キットを無理矢理渡されてアイは事務所から出ていく。

 たしかにアイは赤ちゃんが出来たと言っていたが、勘違いの可能性もまだある。

 そんなことにも気付かないくらい俺は動揺していたらしい。

 

「どうするライナー。本当に妊娠していたら」

 

「一応説得はしましたがダメでした。アイは産むつもりですよ」

 

「……マジかよ」

 

 産むつもりだと知って社長が頭を抱える。

 ここでさらなる事実を伝えなければいけないのは申し訳ないが、先延ばしにしても何もいいことはないから伝えよう。

 

「あと、アイは子供を出産してもアイドルをやめるつもりは無いみたいです」

 

「は?……どういうことだ?」

 

「子供のことは公表せずにアイドルを続けるつもりです」

 

「……本気で言ってるのか?」

 

「アイは本気ですよ」

 

 疑うのも無理はないが、アイは本気だ。

 本気で母とアイドルを両立させるつもりだ。

 

「アイドルをやめられるのは困るが……でも産むのはなぁ」

 

 アイは順調に最高のアイドルとしての階段を登っている。

 当然、妊娠なんてバレたらアイドルなんて続けられる訳がないから諦めて欲しいのだろうが、アイが諦めたりしないだろうことを社長も理解してしまっている。

 だから、こんなにも悩んでいるのだろう。

 

「これはもう、俺たちも覚悟を決めるしかありませんよ」

 

「それしか……ないよなぁ」

 

 未成年のアイが妊娠して出産したことがバレた時のデメリットは計り知れないが、それでもアイを失う方が大きいと思ってしまった。

 

 それほど、アイという存在は輝いている。

 

「アイは当分の間、活動は休止だろうな」

 

「お腹の子になにかあったらいけませんからね。ですが、B小町なら大丈夫ですよ。あの子たちが頑張ってくれます」

 

「そうだな、アイがいない間も今のB小町ならやっていけるだろうな」

 

 絶対的エースのアイがいないことで影響は出るが、俺も社長もそこまで心配していない。

 

アイとB小町のメンバーが話し合いをしたらしく、仲は以前のようにとはいかないまでもだいぶ良くなった。

前のギスギスした空気はなくなり、互いに仕事やプライベートのことを話したりしているみたいだ。

 

メンバーの仲が改善されたからだろう、B小町の人気はますます上がっていった。

もともとアイだけの力で人気になりつつあったところに、他のメンバーもアイに追いつこうとさらに努力をするようになったからだ。

そうすれば他のメンバーのパフォーマンスのクオリティは上がり、アイを目的としていたファンの中からも他の子のファンになる人も増えてきた。

 それに影響されてアイもトレーニングなどをさらに頑張るようになり、B小町全体のレベルが上がっていくという好循環が起こっている。

 

 だから、アイが抜けたことで人気が下がったとしても、B小町は大丈夫だと俺も社長も信じている。

 

「お待たせ!結果出たよ!」

 

「よし、見せろ!」

 

 戻ってきたアイの検査キットを半ば奪い取るようにして社長が見る。

 

「ほらね、ちゃんと妊娠してるでしょ!」

 

 アイが見せてきた検査キットの反応は陽性。

 

 つまり、妊娠していた。

 

「嘘……だろ」

 

 社長はまるで亡霊のようにふらつきながら俺の両肩を手で掴み。

 

「やってくれたな……ライナー!」

 

 砕こうとするかのように、ものすごい力で握り締めだした。

 

「ちょ、痛いです社長!何をするんですか!?」

 

「それはこっちのセリフだ!マネージャーのくせにアイドルに手を出すとか何を考えているんだお前は!」

 

まさかの言葉に頭がフリーズする。

社長は……何を言った?

マネージャーのくせに?

たしかに俺はマネージャーだ、間違っていない。

アイドルに手を出す?

 

もしかしてアイが妊娠したのは、俺のせいだと思われているのか!?

 

「ちょっと待ってください!どうして俺がアイに手を出すんですか!?」

 

「どう考えてもお前だろ!同じ施設で一緒に生活していて、高校を卒業したらマネージャーとして仕事もプライベートも支えていたんだ!どう考えてもずっと一緒に頑張ってきたお前以外にいないだろ!」

 

たしかに説得力はあるかもしれないが、俺は絶対にアイに手を出してなんかいない!

「本当に俺は違うんです!アイからもなんとか言ってくれ!」

 

「あはは、ライナーすごい必死だね!」

 

「アイ!」

 

アイに助けを求めるが、アイは楽しそうに笑っている!

思わず声を荒げてしまったが、仕方ないだろ!

 

「社長、ライナーはこの子のお父さんじゃないよ!」

 

「そう……なのか?」

 

違うというアイの言葉を聞いて、社長の手から力が抜けていく。

よかった、これで俺は解放されると思った瞬間。

 

「じゃあ、逆に誰なんだよ!!」

 

再び手に肩を砕かんばかりの力が込められる。

 

「ライナーだったら百歩譲って納得出来るのになんでライナーじゃねぇんだよ!誰だよ!未成年のアイドルに手を出しやがったクソ野郎は!」

 

「社長!気持ちはわかりますが、手を離して下さい!めちゃくちゃ痛いです!」

 

 社長の気持ちはものすごくわかるが、まずは手をなんとかしないと。

 冗談抜きで本当に肩の骨が折れかねない。

 

「ああ、すまんライナー」

 

「大丈夫ですよ、俺も気持ちは同じですから」

 

「俺も冷静を失っていた」

 

「本当、佐藤社長は慌てすぎだよ」

 

「斉藤だよこのクソアイドル!」

 

 ようやく手を離されて、肩が開放される。

 社長も落ち着きつつあったのに、アイのせいでまた荒ぶってしまう。

 このままだったら話が進まないから何とかしないと。

 

「とにかく話を進めましょう。活動を休止するのは当然として、問題は病院ですね。都内じゃ絶対にバレるから地方の病院にしないと」

 

「病院は俺の方で探しておく。ライナーは他のメンバーに説明しておいてくれ。理由は体調不良でいいだろ。ここ最近はアイ一人の活動が多かったから、そのせいにすれば納得出来るはずだ」

 

 アイが産むと決めた以上、俺たちもアイが無事に産めるように全力でサポートをしなければならない。

 アイが再びアイドルとしてステージに立つために。

 アイが母親として幸せになるために。

 

「アイ、ライナーが父親じゃないとして、相手の男は誰なんだ?アイドルか?役者か?それとも一般人か?」

 

「それは……内緒!」

 

「……だろうな」

 

 念のために確認したであろう社長だったが、アイは当然言わなかった。

 まぁ、さっきの社長見たら言いたくないのは仕方ない。

 社長も自覚していたのか、あっさりと諦める。

 

「この際、父親のことは後回しです。まずはアイの活動休止の日を決めないと」

 

「それに各所への説明もだな。あと、出来れば活動休止の日にファンにお詫びの意味も込めてライブをしておきたいから、その日程と体に負担の少ないパフォーマンスも決めないとだな」

 

 わかっていたことだが、やることが多い。

 おまけに妊娠がバレないようにしつつ、お腹の子に影響が出ないようにもしないといけないからいつもの何倍も負担が大きそうだ。

 

 でも、仕方がない。

 斉藤さんは社長で、俺はマネージャーだ。

 アイドルを守るのは当然だ。

 

 なにより

 

「斉藤さん!ライナー!」

 

「ありがとう!」

 

 

 俺たちはアイのファンなのだから!

 

 

 





出産までいくと思っていたのに、妊娠発覚だけで話が終わりました。

本当にこの作品、全然話が進まない。
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