インターネットが壊れるという世紀の大事件があってパソコンから執筆出来なくてやる気が削がれていました!
スマホでポチポチ書いていくので付き合っていただけたら幸いです!
★社長
「先生が……殺された?」
ライナーに呼び出されて言われたことに思わず耳を疑った。
死んだならまだしも殺されたなんてそう簡単には信じられない。
「はい、間違いないです」
「とりあえず教えてくれ。話はそれからだ」
ライナーがどうしてそう思ったのか聞いてみないことにははじまらない。
「アイが復帰してからだいぶたって落ち着いて来たから先生にお礼を言おうと思ったんです。だけど、病院に聞いたら先生はアイがあの子たちを出産する日から連絡が取れなくなっていたそうで」
「それで先生を捜すために宮崎に行ったのか」
内心でため息を吐く。
普段から働いてばかりのライナーが自分から休みが欲しいと言ったから喜んでいたんだが、先生を捜すために行っていたとは。
結局休めていないことに文句の1つも言いたくなるが、誰かのために行動するのがライナーらしいというかなんというか。
「病院や近所の人に聞いてみたんですが、何もわからなくて。それで試しに山の中を捜してみたら先生が」
「山の中にねぇ。事故じゃないのか?」
「先生の遺体は祠の裏に隠されていたので殺人だと思います」
山の中で見つかったから事故だと思いたかったが、祠の裏に隠されていたのなら誰かが関わっているのは間違いない。
「警察に連絡は?」
「まだしていません。したら俺が犯人だと思われると思って」
「だろうな。取り調べは受けるだろうし、アイも取り調べされて変な噂が流れたりするかもしれない。先生には申し訳ないが、もうしばらく待ってから匿名で警察に連絡するべきかもな」
「……はい」
もしアイが取り調べを受けて妊娠していたことがバレたら。
バレなくても警察に取り調べを受けたことが知られたら、あることないことを言われるに決まっている。
さんざん世話になっておきながら先生を放置するようなことになってしまうが、これもアイやB小町のためだ。
先生もアイのファンだったから許してくれると思いたい。
「それで……それだけじゃないんだろ?」
「そうなんですが……これは俺の妄想みたいなもので」
「構わない、まずは聞かせてくれ」
ライナーとの付き合いも長いから言いたいことがこれだけじゃないとわかった。
ライナーが先生の死を知って何を思ったのか聞かないといけない。
「もしかしたら……犯人はアイを狙ったんじゃないかって思うんです」
なるほど、ライナーが言いたいことはわかった。
「アイの妊娠、さらに言えば未成年のアイドルを妊娠させたことがバレたら困る奴が主治医の先生を殺すことで出産を失敗させようとしたと」
「そう思っています」
未成年アイドルが出産する当日に主治医がトラブルに巻き込まれて殺害される。
偶然が重なったと考えるより、ライナーの言うように出産を失敗させるために先生を殺したと考える方がいくらか自然かもしれない。
「だが、出産は成功した」
犯人にどんな思惑があったのであれ、アイはアクアとルビーを無事に出産した。
アイの入院先を突き止めることが出来るのなら、出産が成功したことくらい簡単に知ることが出来るだろう。
そもそもアクアとルビーの存在はSNSにアップしていて一般の人間でも簡単に知ることが出来るんだからな。
「なので、もしかしたら次はアイやあの子たちに危害がおよぶかもしれません!」
先生を殺しても出産が成功した以上、次はアイたち本人を直接殺すと考えてしまうのも仕方ないだろうが、ここはちょっと落ち着くべきだ。
「気持ちは分かるが落ち着けライナー。アイたちなら大丈夫だ」
「……どういうことですか?」
なんの確証もないがライナーを安心させるためにも俺の考えを話す。
「アクアとルビーは俺とミヤコの子供としてSNSにアップしてる。犯人がアイを妊娠させたことが知られたくないなら、このままアクアとルビーが俺たちの子供ということが広まっていく方が犯人にとっても都合がいいはずだ」
アイが2人といてもおかしくないようにとライナーが考えた作戦だったが、これのおかげで2人が俺たちの子供ということで世間に広まれば犯人が父親だと思われることが少なくなり狙われにくくなるかもしれない。
「それでも絶対に安全ってわけじゃないからな。あいつらには念のため防犯グッズを持たせておこう。B小町が人気になったからって言えば疑われることもないだろ」
今までのB小町は知る人ぞ知るアイドルってところだったが、生放送の歌番組に出たことで普段はアイドルに興味の無い層にも認知されて一気に人気になった。
だから防犯グッズを持たせることに疑問を抱かれる心配はない。
「アクアとルビーはどうしますか?もし狙われるとしたらアイよりあの子たちだと思いますが」
アイドルとして有名になったアイに危害を加えて大ごとになるよりも、赤ん坊であるアクアとルビーを狙うほうが簡単だ。
赤ん坊だから襲われても抵抗出来ないし、弱い存在だから何があってもおかしくないと思われかねない。
「アクアとルビーはテレビ局は無理だろうが、ライブやイベントなら連れて行く方がいいかもしれないな。俺たちの子供ってことをもっと広めたいのもあるが、アイがまたウチの子とか言っても大丈夫なようにしたい」
「……あれですか」
「……あれだ」
復帰した時のアイのウチの子発言。
今思い出しても頭が痛くなる。
あの時はなんとか誤魔化せたが、正直俺たちは終わったと思った。
「ぶっちゃけ、アクアたちが狙われるよりアイが2人は自分の子供だって言う可能性の方が高いだろ」
「そんなこと……ありませんよ」
ライナーもアイを信じてやりたいのだろうが、実際にやらかしているからな。
そんな反応にもなる。
「まぁ、アクアとルビーがB小町と一緒にいるのをSNSにアップするの結構評判がいいからな。アイたちの親子関係を誤魔化すのと、B小町の人気アップのためにも続けていくぞ」
「わかりました」
B小町とアクアたちのやり取りはファンの間でも評判がいい。
アクアたちがかわいいのもあるし、アクアたちを可愛がるB小町のライブじゃ見られない表情が見られると好評だ。
B小町のメンバーをママと呼ぶファンが現れるのは予想外だったが、これも1つの愛され方だろう。
「B小町はこれからもっと人気になる!アクアとルビーも守ってやらなきゃいけない!大変だと思うがあいつらのこと頼んだぞライナー!」
「はい!」
話が済んで、ライナーが部屋から出たのを確認して大きく息を吐き天井を見上げる。
「これでいいのか……ライナー」
部屋を出て行ったライナーのことを思う。
出会いはアイをスカウトした時、一度は考えたいと言ったアイが再び話を聞く際に連れて来たのがライナーだった。
外国人で年齢は高校生くらい。
2人の様子を見て頼れる兄貴分のような存在だから連れて来たのだろうと、その時は思っていた。
それは俺が説得している時に言った言葉。
『それにみんなに愛してるって言っているうちに、嘘が本当になるかもしれん』
それを聞いたライナーの様子は明らかにおかしかった。
何かを思い出したような様子で、心ここにあらずだった。
アイが声をかけたからすぐに元に戻ったが、ライナーが何かを抱えていることがわかってしまった。
そのあとにアイがライナーを誘ったからそれに乗じてマネージャーに誘ったが、その判断は間違っていなかった。
アイのサポートとして信頼されているライナーを誘ったのだが、施設で子供たちの面倒を見ていたからかアイ以外のメンバーのこともよく見てくれた。
実際、アイと他のメンバーとの仲が拗れたのが解決したのはライナーのおかげだ。
ライナーがいなかったら、俺は他のメンバーに容赦なく処分を下して無理矢理解決していただろう。
アイがいるからB小町は間違いなく成功しただろうが、今のB小町のような全員が輝いているようなグループにはならなかったはずだ。
ライナーには俺だけじゃなくて、みんなが感謝している。
だから、もしライナーが困っているのなら力になってやりたいと思っている。
「ライナー……お前は何を抱えているんだ」
初めて会った時のあのライナーの顔が頭から離れない。
誰かを傷付けてしまったようなあの表情。
それは初めて会った時だけじゃない。
B小町のメンバーと一緒にいる時もときどきライナーは誰かを思い出したように、遠くを見る。
もう二度と会えない誰かを思い出しているみたいに。
それとなくアイに聞いてもライナーは赤ん坊の時から施設にいるらしいからアイでも知らないことの方が多い。
アイがいない時にライナーに何かあったのなら俺たちにはどうしようもない。
「嘘が本当に……か」
俺がアイをスカウトした時に言った言葉。
それにライナーが反応したということは、ライナーは誰かに嘘を吐いたということなのか?
それで誰かを傷付けてしまって、いまだに自分を許せていないのか?
俺がどれだけ考えたところで真実はライナーしか知らない。
無理矢理聞き出したところで、それはライナーを苦しめることになるかもしれない。
「……どうすればいいんだよ」
ライナーが苦しんでいるのなら力になってやりたい。
それは俺だけじゃない。
アイやB小町のメンバーにミヤコ、アクアとルビーだってライナーのことを大切に思っている。
いつものライナーを見ていればきっと幸せなのだと思える。
B小町のみんなに慕われ、アクアとルビーを可愛がっている。
面倒見がいいからそれを苦に思っているようにも見えない。
みんなと一緒に努力して、みんなと笑いあっているのを見るとライナーは幸せだと思えるのに。
どうしてもあの時のライナーが頭から離れない。
みんなと笑いあっていても、心の中では傷付いているのではないかと思ってしまう。
「ライナー……お前は」
幸せなのか?
その言葉を言うことが出来ないでいる。
★ミヤコ
替え終わったオムツをゴミ箱に捨てる。
ベビーシッターの経験なんかないのに、どうして私がこの子たちの面倒を見ないといけないのかと思わなくもないけど、外部の人間に任せてこのことが世間にバレた方が問題だから我慢するけど。
「なんで私がこんな仕事」
やっぱりそう思わずにはいられないのに我慢するしかない。
だって未成年アイドルの子供だなんて誰にも言えるわけないじゃない!
ソファに倒れ込んで休んでいるとチャイムが鳴る。
「あーはいはい、今行くわ」
ソファから起きて玄関に行ってドアを開けたらそこにはライナーがいる。
「お疲れさまです、ミヤコさん」
「お疲れさまって……ライナーの方が疲れているでしょ」
「そんなことないですよ」
B小町のマネージャーのライナー。
アイが復帰するまではB小町のマネージャーをしながら双子の世話をしていた。
アイが復帰してからは2人の世話は私がしていたからそれを気遣ってライナーが来てくれたのは嬉しいけど。
「本当に大丈夫?今日だって本当は休みだったでしょ?」
ライナーは休みだったのに代わってくれようとしている。
気持ちは嬉しいけど、働きすぎじゃないのかと心配になってくるんだけど。
大丈夫?
倒れたりしない?
「大丈夫ですよ。この子たちはおとなしいんで、結構休めているんですよ」
「そうかもしれないけど……」
「それに……癒しが欲しくなるんですよ」
「ああ……芸能界だもんねぇ」
B小町の仲は改善されたけれど、それでもみんな向上心の高い子たちだから結構気を使う。
それに芸能界なんてかなりドロドロした世界。
同業者の嫉妬や妬みに嫌がらせ、おまけにアンチやちょっとおかしなファンだっているからそんな奴らからあの子たちを守るためにもいろいろしなくちゃいけないから、肉体的にも精神的にもキツイ。
だから癒しが欲しいと言った遠い目をしたライナーに納得しちゃった。
「あー!あー!」
「きゃー!」
「噂をすればね。ほら、癒しが欲しいなら行ってあげなさい」
「ありがとうございます」
ライナーが来たことに気付いたらしいアクアたちがライナーを呼ぶように声を上げるから行かせてあげる。
ここで休みがどうこう言い合うより何倍もいいでしょ。
「久しぶりだなアクア!ルビー!ほらだっこしてやるぞ!」
「あはは!」
「きゃー!」
まだ赤ちゃんとはいえ、2人を同時にだっこ出来るんだからライナーも結構すごいのね。
だけど、2人を可愛がっているライナーを見るたびに思うけど。
「あなたたちやっぱり親子でしょ!」
アイは父親が誰か言わないしライナーも否定しているけど、どう考えてもライナーが父親に決まっているわ!
髪だって3人とも同じ金髪だし、だっこされて喜ぶ2人を見てもライナーが父親で間違いないじゃない!
「何度も言ってますけど違いますって!」
「嘘よ!絶対に嘘!同じ金髪!2人の喜びよう!忙しくても会いに来る!どう考えてもライナーが父親だからでしょ!」
そうよ!
絶対にそう!
これだけ証拠が揃っているんだから、ライナーが父親で間違いないわ!
「誰にも言わないから!週刊誌に売ったりしないから!本当は父親だって言いなさい!」
「だから違いますって!あとそれ絶対に言う人間の言葉ですよ!」
ここまで証拠が揃っているのにまだ否定する!
仕方ないわ、ここはいったん諦めるしかないわね!
「はぁ……そこまで言うなら仕方ないわね。今回は違うってことにしておいてあげるわ」
「今回ってなんですか。ずっと違いますからね」
全く、強情ね。
いい加減父親だって認めればいいのに。
「違うって言っているのに。どうして……毎回父親だって言うんですか」
「どうして……ねぇ」
ライナーにだっこされているあくとルビーを見る。
どうしてって言われても証拠はいくらでもあるわよ。
「同じ金髪だし、2人ともすごくなついているし、マネージャーとしてアイとずっと一緒にいるんだから隠れていくらでも会うことが出来るじゃない。どう考えてもライナーが父親でしょ」
なついていることは別にしても、2人とも金髪だからライナーの遺伝の可能性が高いし、それ以上にずっと一緒にいるってことが何よりの証拠。
同じ施設で生活していた、アイドルになった自分を支えるためにマネージャーになってくれた人。
ただでさえ恋愛に興味が湧いてくる思春期の女の子がいろいろと大変なアイドル活動の中で支えてくれる頼れるマネージャーを意識してしまうのは仕方ないわ。
頼れるお兄ちゃんみたいな存在から頼れる男性に気持ちが変化して、恋愛対象として見たとしてもおかしくないのよ!
もっとも、ライナーはアイのことを妹のように思っていて恋愛対象じゃないからここまで否定しているのかもしれないけど。
「本当に違うんですけど……」
「本当かどうかは別にして、私たちとしてはどこの馬の骨ともしれない男よりライナーが父親の方が安心出来るんだけどね」
腐っても芸能界。
売れていなくても顔だけはいい男なんていくらでもいる。
あるいは名前を出しちゃいけないくらいの売れっ子や大物である可能性だってあるけど、そんな奴らよりB小町の結成の時からいてずっとみんなを支えてくれたライナーが父親の方が納得も安心だって出来るのに。
「安心って言われても。違うから違うと言っているだけなんですが……」
「まぁ、いいわ。本当に父親じゃなくたってアクアとルビーにとってライナーは父親みたいなものだしね」
アイの出産をサポートして、2人が産まれてからも仕事の合間に育児を手伝いながら可愛がっている。
今日だって休みなのにこうして2人のお世話をしに来ているんだから、いくらライナーが否定したってアクアとルビーからすれば父親同然でしょ。
「俺が……父親?」
まるで思いもしなかったというような顔をしている。
わかってないみたいだから言っておいた方がいいのかも。
「あなたアクアとルビーが大きくなっても面倒みるでしょ?」
「え、そりゃ……まぁ」
普段からこの子たちだけじゃなくて、B小町のみんなや私たちのサポートをしてくれていること。
それにB小町がいろいろと大変な時でも逃げたりせずに力を貸してくれたこと。
そんなライナーがこの子たちが大きくなったからってもう面倒は見ませんなんて言うはずないのよ。
「赤ちゃんの頃から大きくなるまで面倒みてくれるならこの子たちにとって父親、まではいかなかったとしても家族同然の存在よ」
今の調子で面倒を見続けるのならそれはもう父親と言ってもいいレベルの存在になるわ。
仕事が忙しくて会えないことがあるかもしれないけど、ライナーのことだからどうせ時間を見つけてはちょくちょく会うでしよ。
「でも……俺なんかが父親なんて」
「ちょっとライナー、そういうのはやめなさい」
「……そういうのって?」
「俺なんかがってやつよ」
ライナーのその言葉にカチンと来て言ってしまったけど、これは仕方ない。
きっと私じゃなくてもこうなったわ。
「あなたがみんなのことを大切に思っているのはわかるわ。でもね、だからって自分を下げるようなことを言うのはやめなさい」
「……ですが」
「いいから」
前々からライナーは自己評価が低い方だとは思っていたけど、こんな風に言うなんて。
いい機会だから言っておくべきかもね。
「ライナー、あなたがみんなのことを大切に思っているように、私たちもあなたのことを大切に思っているの。だからライナーのことをそんな風に言われるのは嫌なの」
ライナーは普段からかなりの量の仕事をしているし、休みの日だって何かと理由をつけて働いている。
それはライナーが頑張り屋だからだと思っていたけど、それは違っていた。
ライナーが自分を大切に思っていなかったからだった。
「ですが……俺は。俺はみんなから大切に思われていい存在なんかじゃないんです」
ほんの少し泣きそうな顔でそう言ったライナーに言葉を失った。
自己評価が低いとかそんな問題じゃない。
もっとひどい状態じゃない。
「本当なら……俺は。……俺は」
遠くを見るような目で、罪を告白するように話す。
一体いつからなの?
アクアとルビーが産まれたとき?
アイが妊娠した時?
B小町の仲が悪かった時?
B小町を結成した時?
それとも、それよりももっと前から?
私たちとB小町のことについて話し合っている時も。
アクアとルビーのお世話をしている時も。
B小町のみんなと頑張っている時も。
みんなで笑いあっている時も。
もしかして、ずっと苦しんでいたの?
「……ライナー」
「……っ!」
しまったと思った時にはもう遅かった。
名前を呼んでしまったから、ライナーが正気に戻ってしまった。
「すみません……ミヤコさん。どうやら俺……思った以上に疲れていたみたいです。だから……こんな、訳のわからないことを」
困ったように笑いながら、ライナーは拒絶する。
きっともうダメ。
もう本当のことを話してはくれないのね。
「すみません……ミヤコさん。今日2人の世話を代わるって言いましたけど、それ無かったことにしてもらえませんか?疲れているみたいだから休みたいんです」
「え、ええ……いいわよ。もともと休みだったんだから気にしないで」
「……ありがとうございます」
アクアとルビーをベッドに置いて出て行くライナー。
その姿がまるでここから逃げようとしているみたいで、ここまま行かせたらいけないと思った。
「ライナー!」
ライナーが止まって私たちを見る。
「ゆっくり休んでね。何かあったら私たちに言いなさい。私じゃなくても、苺やB小町のみんなに、アイにアクアとルビーもいるんだからね。無理しちゃダメよ」
「はい……ありがとうございます」
私たちを安心させるためにライナーが優しく笑ってくれるけど、それはいつもと違って今にも壊れてしまいそうな笑顔だった。
「大丈夫よライナー。あなたは1人じゃないからね」
「……はい」
玄関のドアを開けたライナーの背に言った。
ライナーが何を抱えているのかわからないけど、みんながいることを教えてあげたかったから。
ライナーは絞り出すようにそう言って、振り返ることもせずに出て行ってしまう。
ほんの少しの時間しかたっていないのに、全身に重い疲れがどっと押し寄せる。
立っていられなくなってソファに横になる。
目から涙が溢れて来てしまったから、誰にも見られないようにクッションに顔を押し付けて、ライナーに聞こえてしまわないように声を押し殺して泣いた。
悔しくて仕方がなかった。
ライナーが苦しんでいたことに気付いてあげられなかったこともそうだし、あの時ライナーの名前を呼んでしまったことを。
ライナーは何かを言おうとしてくれていたのに、私のせいでやめてしまった。
それはきっと私に負担をかけないようにするためだったのかもしれないけど、私はライナーに頼って欲しかった。
ライナーの抱えているのかもしれない重荷を、少しでも軽くしてあげたかった。
だけど、もう無理だ。
ライナーはもう私にそれを言ったりしない。
もしかしたら他の誰かにも。
ライナーは自分の存在を否定しているから。
ライナーは誰かのために頑張れる人だから。
だから自分のせいで誰かに迷惑をかけることなんてきっとしない。
誰も迷惑だなんて思わないのに。
むしろ頼ってくれたことを嬉しく思うはずなのに。
みんなと笑い合いながら、ライナーは誰にも言わないで1人で苦しみ続けるのかもしれない。
「……ライナー」
それであなたは幸せなの?
聞いたとしても、きっとライナーは幸せだと言うに決まっている。
それが何より悲しかった。
この作品短編にしているんですが、連載にした方がいいのでわないかと思い始めた今日このごろ。