私に銀の弾丸を、貴方に百合の花束を   作:山本珈琲

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EP_009 祝言

 

 響の爆弾発言に対して色々言いたいことは有ったが、流石にこれ以上は入学式に本格的に間に合わなくなる為、一先ず許可して問題を先延ばしにして零たちは急いで入学式が行われる会場に急いだ。

 

 そうして足早に目的地に着いた俺たちの前には、これまた巨大なドーム型の建物があった。ここはこの学園の中でも巨大な建造物の一つらしく、学園関連の大きな行事が行われる時は大体ここで行われるそうな。(配られたデータを見たら大体そんな事が書いてあった)

 片や小さな都市で育ち此処まで大きな建造物を見た事が無かった少女と、片や記憶喪失でそもそも比較対象が無いながらも圧倒されている少年二人でボケーっと建物を見上げていたが、ほとんど同時に正気に戻った二人は顔を見合せると急ぐか、うん、と言い合いそそくさと中アへと入っていった。

 

 中は外見の大きさに違わぬ広さで、天蓋は真上を見上げるほど高く室内と感じさせない程に高く、奥行きに関しても反対側の人間が米粒サイズに見えるほどに広い。ハッキリ言って一学園の所有物ではなく、国立の世界的に見ても大きい会場と言われた方が納得できるほどの巨大さを誇っていた。そんな会場は遠くからも見えるようにとドームの外側に行くほど高くなるよう設計されており、真ん中のこれまた広大な大きさのステージがあった。

 近場に丁度2席空いている席があったので2人していそいそと座った時だった。

 演説をするための舞台に丁度に立っていた人物が「これより入学式を始めます、まず当学園の理事長 ローレンス・J・楯無 様から皆様へのお言葉なります」と言い壇上から降りたのだ。

 

 

 ──-side 零──-

 

 その言葉を聞き2人して中央に注目した。すると、ステージ中央の壇上に俺の身元保証人であり、俺がこの学園に入るキッカケでもあり、ついこの間、大衆食堂での飲み比べ大会で酔いつぶれ、秘書に引き摺られるように帰って行った楯無さんが壇上に上がるのが見えた。

 

 その瞬間、会場が、爆発した。

 

 そうとしか表現出来ないレベルで、会場全体が拍手喝采の嵐でもって彼の登場を迎えたのだ。勿論そんなの予見していなかった俺はいきなり辺りから鳴り響いた轟音に驚きの余りが飛び上がりかけた。

 響は大丈夫かと思い横を確認すると、驚いた事にそれはもうお目目をキラッキラさせながら彼女も拍手しているではないか。ならばこの歓迎の理由も知っていると考え彼女に話しかけた。

 

「なぁ響、何でみんなこんなテンション上がって出迎えてるんだ?」

 そう言うと此方をギョッとした様子で見ながら思わずと言った感じで答え始めた。

「何でってそりゃ'あの'楯無さんが出てきたんだよ? 当たり前じゃない」

「そんなに敬われてるのあのオッサン?」

「おっさっ?! 零君! 何て言い方してるの!?」

「エッ、そんなマジで怒られる程の事?」

「当たり前だよ! もしかしてホントに何も知らないの?!」

「え、うん。なんも知らない」

 そういやあのオッサン自分の事余り話さなかったなぁ、何て考えてながら急に静かになった響の方を見ると、正に絶句という感じで此方を唖然とした表情で見ていた。

「嘘でしょ、楯無さんを知らないなんて.今までどんな生活をしてたの.?」

「どんなって言われると、まあ簡単に纏めると事故に巻き込まれてここ最近まで昏睡状態だったけど」

 そう、これが俺のカバーストーリだ。大規模な事故に昔巻き込まれ、冷凍状態になってここ数年まで眠っていたというものだ。適度に嘘と真実を混ぜて俺の一般常識の欠如を補う為に、今話題に上がっているローレンスが考案し、作り上げたものだ。詳しく言えばもっとちゃんと作られているが、ここでは割愛させて頂くが。

 その返答を受けて、俺の態度からも嘘では無い(真実でもないが)を聞いてバツの悪そうな顔をしていた為、すぐさま気にするなと伝えたが先程までの覇気が嘘のようにしゅんとなってしまったので、一先ず楯無さんとやらな有難いお話を聞こうぜと言い意識を中央に向けさせた。

 頼むぜローレンス(本人の希望でそう呼ぶようお願いされた)にかつてないほど意識を集中させた。横のワンコがしょぼくれてるからそれをなんとかするような話し合ってくれと願いながら。

 そうして見ているとローレンスは徐に右手をあげた。それを見て拍手が静まり始め、静かになったところで口を開いた。

 

「まず、話始める前に感謝を。心温まる万雷の拍手による手厚い歓迎ありがとう。

 さて、まずは厳しい試験を乗り越え、入学式が行われる今日この場に集まった皆さんに祝言を。おめでとうと

 さて、ここで1つ老人の長話をしようと思う。

 今日この場に集まった諸君は、様々な思いを胸にこの学園を志望したのであろう。例えばそう、過去の英雄達のようなストライカー成りたいと思うもの、ストライクノヴァという人類の英知に携わりたいと思う者、自身の将来の為に泊付するのを目的とした者、自身よりも周囲の期待や意識を背負ってここに来た者、そして、ここに来る以外に選択肢が無かった者」

 

 そこで1度区切ると、此方を確かに見たのだ。どうやってかは知らないが俺の動向をチェックしていたらしい。毎度思うが心配し過ぎでは無かろうか。

 

 そうして1度呼吸を整えるように息を吸った後、先程よりも強い意志を秘めた声で会場を震わせた。

 

「この学園はかつて起こった戦争、「星辰戦争」の頃から続く組織が紆余曲折を経て今の形に変化したものなのは皆も良く知る所だろう。

 この学園はそんな旧世紀から新世紀に変わった今でも残り続け様々な経験を経て変化してきた此処は、形を持った歴史と言えると私は考えている。では歴史とは何か? これも私の持論だが、歴史は云わば人の歩み、人類が歩んできた全てだと考えている。

 では人の歩みとはなんぞや? 偉人が残した輝かしい功績か? 否、では国や組織が出来上がった成り立ちか? それも否。

 私が考えるものはズバリ、'総て'である。そこには偉人も凡人も、ましてや人数も関係ない。誰もが持つ人と人との関わり、その繋がりだと私は考える。

 歴史とは、誰かが偉業をなしたとしてもそれだけでは伝わらない。そこには必ずそれを目撃し、後世に語り継ぐ誰かが居なければならないからだ。それがいなくなり、消えてしまった幾つかに旧世紀の文化がその1例であろう。

 そして何より、語り継がれるのは成功だけでは駄目なのだ。何故なら人は成功ではなく、失敗を経て成長する生き物だからだ。それが分かっていたからこそ、過去の大戦を生き延びた先人達は空からの侵略者だけでなく、その前に起こっていた人類同士の戦争についても語り継いできたのだと私は思っている。

 君たちが入学するこの学園は、そんな先人達が紡ぎ、連綿と繋げてきた1つの歴史という名の縄なのだ。この縄は数多の成功と失敗、栄光と屈辱、喜びと哀しみが織り込まれた未来への祈りなのだ。

 そして今日、ここに君たちが新たな糸として新たに織り込まれようとしているのだ。

 故に私は此処で宣言しよう! 

 君達がどのように学園という縄に織り込まれていくのかは諸君にも、勿論私にも分からない。

 だが、君達という糸がどの様な意志を持って縄に織り込まれようとしていても、新たな歴史を紡ぐ存在であり諸君を、私は大いに歓迎しよう! 

 私のような老人が言いたかった長話はコレでお終いだ。

 あぁ、ただ最後にもう一つだけ。

 

 改めて、入学おめでとう。以上だ」

 

 そう演説を締め括ると壇上から降りてステージから出ていった。

 暫く無言だった会場はしかし、彼を迎え入れた時とそれ以上の熱量を持って爆発した。

 そうして皆が拍手喝采をする中、チラリと横を確認すると、酷く興奮したように俺に「凄かったね、ね!」と尻尾を振りながらワンコが身を乗り出して来た。

 それに対してあぁそうだなと相槌を打ちながら俺は思った。

 

 取り敢えず、興奮気味に突っ込んでくる響を見て、コイツのテンションが戻って良かった、良かったのか? と。

 

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