ーーside 響ーー
楯無さんの演説が終わり、色んな分野の凄い方達の祝電を伝えられた後、入学式は驚くほどアッサリと終わった。なんでも"長々と説明するよりも、実際に現場に触れさせる"が昔からある学園の一種のスタンスらしく、その影響でこういった式典なんかも無駄を省いたモノになっているらしい。
入学式が終わり、端末に振動を感じ画面を確認してみると学園からの連絡メールが来ており、内容は今後の私たちの行動を指示したもので、「新入生は全員選択した学科に応じて分けられた教室棟にある自分が割り振られたクラスに移動するように」との事。
それを確認した私はレイ君と一緒に、同じ指示を受けて移動を始めた人たちの波に合わせて目的地である教室棟に向かって動き始めた。
ちなみに、この学園にある学科をそれぞれ大まかに分けると、世間一般でもなじみ深いであろう3種類の普通学科・工業学科・情報学科に加えて、私達が所属することになる防衛学科という特殊なモノを合わせた計4種類あり、此処からそれぞれ細かく分類されるのだけど、説明が面倒なので今は割愛する。
そして私達が向かっている場所はさっき特殊といった防衛科、その中でもこの学園を象徴するとされている科"パイロット専攻科"(正式名称が長いのでほとんどの場合この呼び方で呼ばれている)のクラスである。
もう私の気分は最高潮だった。だって、小さな頃に抱いた憧れを胸に、10年近くこの場所に来る事を夢見続けてきたのだ。これで落ち着けというのが無理だと思うの。
そんな風に1歩1歩ワクワクしながら歩いていると、隣を歩いていた零君が「ホントに分かりやすいなお前さんは」と苦笑混じりに揶揄ってきた。それに対して「だって小さな頃からの夢だったんだもん!」と応えると、何故か羨ましいそうにした後、その表情を緩ませれると「....そっか!」と言ってからまた前を向いて歩き始めた。そんな不思議な反応をしたツクモ君に関して、出会ってまだ短いがそれでも彼と接していて分かった事が幾つかある。
まず1つ目が、アンバランス感だ。これはさっきの楯無さんの演説前で分かった事で、普通に考えてここの学科を目指してきたなら、現代の英雄とも呼ばれたかつての楯無さんの事を知らないのは余りにも不自然だ。なのにツクモ君の口ぶりはまるで楯無さんを知っているかのようだった。
それだけじゃない、彼は渡された端末を触っていた時、最初はどう起動させれば良いのか迷っている様子だった。(これに関しては私の勘違いの可能性も大いにありえるケド)
恐らくだけれど、この知識の偏りはさっき彼が言っていた昏睡状態だった弊害だと思う。あの時、何かを隠そうとしているように感じたけど、それは嘘でも嘘は言っていなかった様に思う。
二つ目が、なんで私がこんな短い時間で、此処まで気を許しているのかだ。
大前提として、私は決して、決して!顔が良いだけの男の人に擦り寄るような人間ではないということだ。自慢だが私には兄と姉がいるが、二人ともとても、そうとても外見が良いのだ!もちろん中身も!自慢の家族です。なので、私は世間一般の美形を売りにしているアイドルや俳優を見ても、「へぇー、確かにかっこいいかも」位しか感じないのだ。
それを踏まえて今の状況を冷静に分析したところ、一つの天啓とも呼べる答えにたどり着いたのだ!
その天啓とはズバリ!「彼がお兄ちゃんやお父さんに似ている」からです!!!
うんまぁ字面だけ見るとアレかも知れないが本当にそうとしか言いようがないのだが違うんです本当に。(高速自己弁護)
いやツクモ君の隣にいると落ち着くと言いますか安心するというかそれこそ大樹の木陰に入って幹に寄り添っているような謎の安心感が有るんです第一初めて会った時の出会い方が良くなっかたと思うんです私だって自分のミスのせいでいろんな人に迷惑かけて一人くらい路地裏で蹲って自己嫌悪で泣きそうになってたらそこを見つけて手を差し伸べて迷惑かけた方々に代わりに連絡して根回ししてとどめに問題の遅れそうになってたことも含めた全部を解決してくれたんですよ?そりゃあ年頃の乙女なら好感度だって上がったって仕方ないじゃないですかでも違うんです恋とかそういうのじゃなくてこの人なら何かあっても頼れるっていう私がお兄ちゃんやお父さんに抱いてるような親愛なんです分かってますあって1時間くらいの人にそのくらい信頼度向けてるのは重いって事は自覚してますけど男との接し方なんて中学の時に居た男子はみんないわゆるヤンチャ坊主ばっかりで異性との接し方なんてバカなことを一緒にやる悪友みたいな接し方以外知らないんですだから家族に接するのに近い距離感で接しちゃうのも仕方ないと思うんですよだから私は悪くない悪いのはそんな安心感を醸し出してるツクモ君だと思う(脳内高速詠唱)
それにツクモ君から私を膝上に乗せる(レイからではない)何て事をしたんだから距離が近いのは今更だと思う。ただ、私も流石に恥ずかしいので気を付けようと思う。
そこまで考え、私はハッとした。急いでいたせいで未だちゃんとお礼が言えていなかった事に気づいたのだ。そこまで考えた瞬間、私は隣を歩いていた彼にしっかりと誠意を伝えるために呼びかけた。
「あの、九十九君」
そう呼びかけ、此方に顔を向けたのを確認した私は頭を下げながらお礼を伝えた。
「今回は見ず知らずの私を助ける為に動いてくれて有難う御座いました」
そう伝えると頭上から困ったような声音で
「だからそんな気にしなくて良いっての。大体俺が響を探してたのも皆を手助けするためだったし、万が一見つからなくて遅れそうになったら切り上げて俺だけ送って貰うつもりだったし。それにココだと目立つから早く頭を上げてもらえるとありがたいんだけども...」
そう言われた私は頭を上げ、しっかりと彼の目を見ながら続けた。
「たとえツクモ君がそう考えていたとしても、結果的に動いてくれたから、ずっと憧れていた学園の入学式がある今日に、私は無事に間に合ったんだよ。だから、改めてお礼を言わせてください。助けてくれて 本当にありがとう、九十九君」
そう彼の目をしっかり見ながら伝えると、彼は顔を少し赤くすると「どういたしまして」と言いながら顔を背けた。彼はどうやらお礼を言われるのに慣れていないらしい、少し意外だった。
そうしてお礼を伝えた後、私とツクモ君は互いの身の回りで過去に起きた話題になりそうな話をしながら歩いた。
そうして暫く歩いていると、遂に私たちの目的地である教室棟とその周辺の施設群が見えてきた。
あらかじめ端末に入っていたデータで見たが、やはり圧巻の光景だった。
私たちの所属する防衛科は、この学園で一番最初に作られた学科であり、この学園を象徴するモノだ。だからか、やはり掛ける金額や熱意などの力の入れ具合は他の学科に比べて圧倒的に強いというのが一目見て分かった。
まず、自身が通っていた学校の校舎がみすぼらしく思える程の教室棟本体は、白く美しい色で機能美を備えた建築で写真で見た他の教室棟に比べて大きな差は無いように思えるが、説明によると万が一、何らかの大きな事故が起こった際にでも問題ないよう途轍もなく頑丈に作られているそうだ。だが、最も目を引くのはソレではない。
それは、教室棟付近に建てられている建造物達だ。先ほどの入学式が行われたドーム状の建物より少し小さい位の、それでもなお巨大な建物が幾つも並び、それらの付近にも大きな四角い倉庫のような建物が並んでいる。
少し遠くに目を向ければ、さっきのドームよりかは小さな、けれど校舎よりも大きな建物が見えた。昔この学科について調べた時、”テーマパークのような巨大さがある”と書かれていたが、やはりただ文字や写真で見るよりも、本物を見るのでは迫力やその巨大さは分からないモノなのだと改めて痛感した。
そう感じていたのは私だけではないようで、隣の九十九君も小声で「おぉ...」と圧倒されたような反応を示しており、周りからも口々に、「すげぇ」とか「此処に来てよかった」なんて声が挙がっていた。
そうやって殆どの生徒が感動や興奮で止めた足を再び動かし移動する事暫く。端末に示された目的地に到着すると、この学校の先生と思われるスーツを着た女性が立って待っていた。
私達二人はそこから少し離れたろ所に立つと時間を潰すべくまた談笑を始めた。そうして待っていると、スーツの女性が端末を手に取って画面を確認すると私達が固まっている方に向けて大きな声で話し始めた。
「初めまして、新入生の諸君。私は今日から君たちの担任の一人を担当する長谷川というものだ」
「諸君の多くは、ここに来るまでに在った様々な施設を見て大いに驚愕しただろう。私もそうだったからその気持ちは良く理解できる」
「そんな諸君は今からこの学園所属の一年生となった!そして、この学園所属の生徒であれば今までに見た施設を、許可さえとれば幾らでも使用することができるのだ」
「故に私は!ここから3年間をここで過ごす諸君に初めに伝えておこう!」
「存分に励み、青春を謳歌したまえ!!!私から伝えたいことは以上だ!」
そう長谷川と名乗った私たちのクラスの一つを担当する担任の先生は、胸を張り高らかに告げた。その数秒後、私とレイ君を含めたあちこちから拍手が向けられた彼は、酷く満足そうであった。
長谷川先生はその拍手を区切る様に大きく咳払いをすると、手を上げてから声を大きくし言った。
「これから君たちの学びの場となるクラスへ案内する。それぞれのクラスは配られた生徒証に記載してあるので改めて確認するように!教室前に到着後、すぐさま君たちを学生寮へと案内する、そこに君たちが送った荷物が既に運び込まれている為、部屋に到着後すぐさま確認をするように!何か問題があれば端末のコールセンターに自身の学年とクラスを告げ、内容を報告するように!!全員2列で並ぶように!・・・準備は良いか?では移動開始!」
そう告げると長谷川先生を先頭とした列は移動を始めた。そうして先ほど遠くに見えていた教室棟に入り階段を上がり、目的の場所に到着した。
教室は自動ドアで、教室も少し大きめに作られており、講堂のような作りになっていた。教室の中を見せた後、先生は手早く教室の位置を確認すると移動を開始した。少し名残惜しくも感じたが、これから幾らでも中に入るのだからと割り切り後に続いて動いた。
そうやって移動を開始する事20分程度、先ほど少し遠くに見えていたと思った建物はどうやら、そこそこの大きさの建物が近くに在ったのではなく、遠くに巨大な建物があったのだと理解できた。その事実に未だに慣れない驚きの連続から、巨大な建造物を呆けたように見ていると長谷川先生が注目!と呼びかけるのが聞こえた。
「ようこそ、ここが今日から君たちが生活することになる学生寮だ。」
なんと!この大きな建物は学生寮だったのか!!と驚くと同時に、この学園は建物を大きくしないと気が済まないのだろうか?という、割と失礼な考えが頭をよぎった。
「さて、諸君らの中には何故これだけ巨大なのか疑問に思う者も居るだろう。それは歩き実際に中を見せながら説明しよう」
そう言って動き始めた長谷川先生の後に続いて、皆動き始めた。
そうして案内された学生寮は何というか凄かった、そんな語彙力が無くなってしまう程のものだった。
まず、何故こんなに大きいのか?という考えの答えはすぐに判明した。その答えは単純明快で実に納得できるものだった。
この場所には凡そ何でもあるのだ、本当に何でも、だ。
10階建ての建造物で建物の構造としては大きな正面玄関から見て凹のような形状になっており、それぞれの両端の部分に男子寮・女子寮と別れておりこの2つを合わせて男子フロア・女子フロア・中央フロアと呼ばれるらしく、ここ2つは最後に案内されそれが終わったら各自の部屋まで案内し解散、その後明日以降の予定を配布される端末のデータで確認し就寝時間まで自由時間との事だった。
そうして最初に案内されたのが中央フロアだったけど、この時点で私はもう唖然茫然としていた。
何せ其処に数百人が入ってもまだ余裕がある巨大な学生食堂(しかも個別で食べたい生徒は部屋まで料理が運ばれるそう、しかもタダで!)にもはやスーパーと言って良い程の大きさの売店という何か(申請すれば自分で料理を作る事も可能らしくその為に生鮮食品もかなりの品数が用意されていた)、更には最新の機器や設備が完備されたトレーニングルーム(やはり先輩の皆さんも向上心が高いのか、かなりの数の利用者がいらっしゃった)に紙の本が大量に置かれた図書館(現代では電子データが一般的で紙の本を置いた図書室は世界的に見てもかなり珍しい)といった自己研鑽を促すモノも在ったが、中にはレクリエーションルーム(最新ゲームから旧作のテレビゲームまで置いてあった。男子生徒人から感嘆と喜びの声が挙がっていた)と呼ばれる生徒の娯楽の為だけに作られた部屋など様々な部屋があり、そのどれもが一般の学校では考えられない程巨大で、お金の掛かったモノたちであった。
此処まで充実しすぎた設備を見せられ、流石に普通じゃないと思ったのか九十九君は「成程なぁ。そりゃあこんだけ至れる尽くせりで、更には卒業後は絶対に就職先に困らないと言われれば皆この学園に入りたがる訳だわな」と零していた。
そうなのだ。これがこの学園が難関校と云われる原因を作っている一つとされている。だが、その難易度は学力的な難易度というよりも、本人の性格や資質・熱意が本物であるかを歴戦の面接時に見抜かれ、学力が幾ら優れていようと其処で容赦なく落とされていくからだそうな。
努力はしてきたが、私はお世辞にも頭が良いとは言い切れない人間だったので熱意に関して気にする余裕もなく努力は続けてつもりだったが、それを見抜いていたのか今思い出せば私を担当してくれた面接官の方々の視線が妙に優しかった気もする...
そんな事を考えながら列に合わせて移動していると、長谷川先生が「注目!」と号令をかけた。
その声に合わせ彼方此方を見回していた目線と意識を其方に向けると、白衣を纏った綺麗な大人の女性が長谷川先生の横に立っていた。
その女性はその薄く開いている目を隣の長谷川先生に向けるとゆったりした口調で話しかけ始めた。
「此処まで案内ご苦労様、長谷川ちゃんも疲れたでしょう?」
筋骨隆々の30代男性に、年下と思われる教師の一人と思われる女性の「長谷川ちゃん」呼びに心の中で驚愕していると(ツクモ君に至っては背後に宇宙を背負ったような表情で「長谷川ちゃん...?」と声に漏れていた)、呼びかけられた長谷川先生は背筋を伸ばして女性に向き直りハキハキと答えた。
「いえ!御心配には及びません静音教員!!確かにかなりの距離を往復しなければ行けませんが、何より私はこうして新入生にこの学園を伝える事を一年の始まりとして楽しみにしているほどですから!」
「そう?ならよかったわ。新入生の皆を待たせての立ち話も可哀そうですし、この子達に紹介お願いできるかしら?」
「はい!承知しました!」
そうして二人は此方に向き直ると、咳ばらいをした後に皆に聞こえるように大きな声で説明した始めた。
「全員良く聞け!この方はこの学園において衛生管理や生徒の身体的健康のチェックやカウンセリング、更には有事の際には即座に対応できるように常に学園に常駐していらっしゃる生徒の安全管理全般を担当していらっしゃる先生方のお一人、静音 エリス教員だ!皆、静音教員は君たちの安全管理を担当して頂いている方々の代表だ!一層敬意いを持って接するように!」
「彼はこんな風に他の教員の方を過大に言うけれど余り気にしなくて良いわよ~?私は此処、君たち一年生の学生寮を担当する事になった先生で、分かりやすく言うと保険の先生かしら?気軽に静音先生や何なら貴方たちの先輩方みたいにエリちゃん呼びでもOKよ~。困ったことがあったら気軽に相談してね」
「エリちゃッ?!...静音教員、流石にそれは怒った方が良いのでは?」
「え~?別に私は構わない処か寧ろバッチコイなのだけれど~」
そんな風に話が脱線しかけていたが、此方を見てソレに気付いたのか長谷川先生はもう一度大きく咳払いすると説明を再開した。
「これから君たちには男女に分かれて貰い、それぞれのフロアに案内する事になっている。男子は私に、女子は静音教員に続いて移動するように。くれぐれの失礼のないように!」
「というわけで女の子は皆コッチに付いて来てね~。楽しく女子トークでもしながら移動しましょう?」
私はツクモ君に「またね!」と告げ、彼が「おぅ、またな」というのを背に聞きながら女子生徒の集まりに混じっていった。
そうして静音先生に続いて移動し始めた私達だが、道中の短い間に私たちは静音教員がフレンドリーかつ、とても話し上手なのが直ぐに分かった。長谷川先生の説明が第三者からの視点によるものに対し、静音先生は女性ならではの観点からの説明や使い心地などの説明によるものだった。
長谷川先生が説明下手なのではなく、単純にこの人の説明が分かりやすく面白いのだなと感じながら移動していたが、そんな思考もも直ぐにこの学園の異常さに塗りつぶされた。
まず、これから私達が過ごす部屋となる部屋の案内をされたが、この時点でもう色々と可笑しかったのだ。その部屋はお高いホテルのような大きさと清潔感をしており、部屋の奥にはベットが二つに大きなテレビが一つに少しの小型の冷蔵庫が完備されていながらも空間は広々としていたし、トイレとお風呂は別に作られておりお風呂は湯銭を張って良いとの事。そしてその反対側の場所には他の部屋に比べれば小さいが、それでも調理器具や大きな冷蔵庫が揃えられている立派な炊事場が用意されており、此処で料理する際には基本的な調味料や一部の料理酒は学園に申請を出せば無料で支給されるらしい。
それだけでは飽き足らず、何と申請すれば此処より手狭になるが一人部屋も空いていれば変更可能との事。
この時点でもう色々と可笑しい気がするがこれだけでは終わらなかった。
この学園には時間が決められているが、ジェットバスやサウナ、果ては露天や檜に硫黄まで完備されたソレはソレは立派な大浴場が男女両方のフロアに併設されているのだ。
自室にしっかりとした風呂場があるにも関わらず、だ。
私は建設と維持に掛かる金額を想像し眩暈がした。が、他の人たちもこれには驚いたのかザワザワガヤガヤと話し始めた。
そんな私たちの反応を見て、静音先生は悪戯が成功した子供の様に嬉しそうにしながら話し始めた。
「前もって学園について調べてた子も、こんな情報何処にも載ってなかったから驚いたでしょ?それもその筈よ~。だってこの大浴場はね?少し前に学園長が此処を作ろうって言い始めて建設されたものなのよ♪」
そう言って静音先生は、唖然とする私達に対して面白そうに笑いを堪えながら続けた。
「学園長が自ら建設費用は全額自腹で負担して造ったのよ~。私達も最初は驚いたけど、学園長が「何、心配はいらんよ。この施設は教師も利用可能にするつもりであるし、建設費用に維持費その他諸々は全額自腹で支払うから問題は無いさ」なんて言ってコッチに確認採る前に勝手に書類通して造り始めちゃってね?こうなったあの人は止まらないのは先生皆が良く知ってたから、学生のみならず教員も自由利用にするなら、せめて維持費は学園から出す!ってこっちから無理やり決めてね?なのに学園長ったら、その影響で浮いたお金で当初予定してたよりも更に設備が豪華にしたのよね~」
そこまで言い切ると遂に堪え切れずに笑い出し、一しきり笑った後静音先生は続けた。
「あの人、基本的に真面目で誠実な人なんだけど~、たま~に面白おかしい人になってこういうことするのよね~。特に最近はその頻度も遥かに多くなったし~昔よりも遥かに明るく、何なら若返ったんじゃないかと思うくらい元気なのよね~。ホントに何があったのかしら~?」
まるで楯無学園長と親しいかのような言い方に思わず「あの!」と手と声を上げた。
「えーと、確か響ちゃん...で良かったかしら?何か聞きたいことが有るのね?」
「エッ!なんで私の名前を...?」
「そりゃあ勿論この学園に在籍する子だもの。みんなの名前と顔はちゃんと覚えてあげないとね♪」
サラッとこの人とんでもないこと言ってないかな?とは思ったが聞きたいのはそれでは無いのでまたの機会に聞くことにして質問した。
「その、静音先生...いえ、エリちゃんは楯無学園長と親しい間柄だったりするんですか...?」
そう私が聞くと、とてもうれしそうにしながら質問に答えてくれた。
「響ちゃん!エリちゃんって呼んでくれてありがとー!新入生の皆はやっぱり緊張するのか最初は中々そう呼んでくれないのよね~。それで学園長との間柄だったかしら?一言で言うと腐れ縁って奴かしらね~。若かった頃に色々あって、彼を治療することが何回かあってね?その腕を買われてこの学園にスカウトされたのよ~」
「えっ?でも先生ってまだ20代後半ぐらいにしか見えませんけど「ヒ ビ キ チ ャ ン」ハイッ!?」
「分かる思うけど女性に年齢の話は厳禁よ~♪」
「イエスマム!!」
怖かった、すっごく笑顔だったけどコワカッタ...
そう思いながら震えていると静音先生が距離を離した後、「怖がらせてゴメンね~。でも20代に見えるって追うのは嬉しかったな~♪」と言いながら皆に向き合うように位置を変えて、先生はほうっすらと空いていた目をしっかりと開き、切れ長ののその眼の中に確かな優しさを籠め私達を見渡しながら言った。
「ここまで案内されたから皆も流石に分かると思うけれど、貴方たちストライカーパイロットを育成する為のこの学園は、必死に生きた過去の人々から託され続け、そして今も沢山の人たちの協力の元で莫大な金額を使って運営されていているの。だからこそ、貴方たちはこの恵まれた環境に甘えて堕落するのではなく、この学園の生徒としての与えられた権利に付随する"責任"、それを背負う"覚悟"について忘れないで欲しいの」
そこまで言うと先生はパンッと手を叩き張りつめていた空気を霧散させると、さっきと同じようなゆったりした雰囲気で続けた。
「でもね?貴方達は学生でそんな事を言われてもピンとこないと思うの。だから私なりに分かりやすくまとめると"悔いの無いよう、目一杯青春を謳歌してね"っていう事なんだ~」
そう言って静音先生は私達をまっすぐと見つめた。
そうだ、私は、此処でこれから学んでいくんだ。
夢を夢で終わらせない為に、理想を現実にする為に少しずつでも学んでいく此処が、私の新しい家なんだ。
なんて少し大げさに決意を固めたりもしたが、この後の学園施設の説明をされ、長旅の疲労と精神的疲労もあってあまりの情報量に頭がパンクしてしまい案内されたベットに飛び込み倒れこむと、最後の力を振り絞ってレイ君に一緒に見学できない事と謝罪を短くまとめた文を送ると、気絶するように眠ってしまった。無念...
ナ☆ン☆ザ☆ン