sideアメリア・葛城
彼の意見を少し聞くつもりがつい私が熱くなって語ってしまったせいで予定よりも大幅に遅れてしまったのもあり、今後何かあれば頼ると言いとだけ伝えて私は足早に廊下を足早に歩き階段を下りて行く。
かなり長い時間話し込んでしまったからねぇ、チーちゃん許してくれないだろうなぁ...帰りたくないなぁと思いながらチーちゃんを中心にわちゃわちゃと集まっている集団に声をかけた。
「いやぁー御免ねぇ!おねぇさん後輩君とすっかり話し込んじゃったよぉ~w」
おどけてそう言うとチーちゃんが此方をゆっくり振り向き私に小言を言いながら悪魔の両手(チーちゃんの細腕からは凡そ予測できない怪力によって行われる無慈悲な処刑方、俗に言うアイアンクロー。ちなみに命名はこの私さ!)をする際の雰囲気を醸し出し、周りに「失礼」と言ってから人波を避けて此方に早歩きでやってきた。これから責任を持って時間内に作業を終わらせるから出来れば優しくしてくれるよう嘆願する事を心に決めながら私は彼女を迎えた。
「チーちゃぁん?お顔が怖いよぉ?可愛いんだからもっとスマイルスマイル!んね?」
「そうですね、確かに笑顔でいられるなら其方の方が良いのでしょうが、生憎私は周りを巻き込み仕事を増やすような方に対して笑顔を浮かべて迎えられるほど聖人ではありませんので」
「そっかそっかー!!!...この後頑張るから優しくしてね....?」
自分よりも背の高い一つ年上の妹を見上げながら嘆願すると、彼女は大きなため息を吐いた。
「はぁ...今回は特別に見逃しますが今後同じようなことをした場合、最低でも30分ほど立てないようにしますのでそのおつもりで」
「私を殺す気かい?!って今回は許すって今言ったかい???」
私は信じられず思わず聞き返した。才能の怪物などと言われる私に昔から周りに比較され中には妬み僻みをぶつけられてきた彼女だが、今ではこの姉にしてこの妹アリと言われるどころか最近では私の方が下に見られるほどに優秀なパーフェクトな妹だ。
そしてそんな彼女だが特にルールには厳格で、なんやかんや私には甘いがそれでもしっかりと罰を与えてくるのが彼女のスタンスだったし、今まで例外はたった一度を除いて無かった。そんな彼女が許すといったのか?今までどんなに逃げても地の果てまで追ってきて、私のプリティフェイスかつ人類の宝とも言われる頭脳の入った頭部をなんの容赦も慈悲も手加減も無しに胡桃割り人形のごとく圧縮していた罰をやらないと言ったのか??
余りに現実離れした事に私が思わず目の前に居るのは偽物ではとまで考えていると、彼女はすぐ傍までやってきて、周りに聞こえないように小さな声で私に云ってきた。
「今日見たお姉ちゃん、今まで見た姿よりも生き生きしてたから特別にね」
やめてくれ妹、その術(普段の数段優し気な声でのお姉ちゃん呼び)は私に効く。
「千尋から見てそんなに楽しそうだったのかい私は?」
「うん、凄く楽しそうだったよ?少なくとも私が驚きで暫く固まったくらいには」
そんなに分かり易かっただろうかと思案していると「普通の人は分からないだろうけど、何時もなら考えられないくらいに素が出てたからね」と教えていた。そんなに私の事を理解しているとは流石準一級アメリア理解度資格の保有者であるラブリーシスターである。お姉ちゃん嬉しくなっちゃう。
そんな風に一人悶えていると、彼女は数歩私から離れ普段通りの態度に切り替え接してきた。
「今は時間が惜しいので許しますが、今後このようなことが無いように。でなければ下の者たちに示しがつきませんし、何より今年から入る新一年生の方々の教育に悪影響が出ます」
うーん流石我が妹、切り替え速度が鬼速い!
「悪かったねぇ、代わりといっては何だが遅れた分の仕事も今日中に終わらせるから許しておくれよチーちゃん」
「チーちゃん呼びは辞めてくださいと何度も言っていますがまぁ今は良いでしょう。それに元よりそのつもりですからお早く。特にコアの様子が少々おかしいので其方をまずお願いします」
”コアの様子がおかしい”その言葉を聞いた瞬間に私は残りの言葉を聞く前に観測モニター周辺の人込みをどけ画面の情報を読み込んだ。
正直に言うとかなり焦っていた。何せコアの動力源となるアストラ鉱石は、元の性能より遥かに劣化したコピーまがいの代物こそあるが、其れですら未だに把握仕切れていないという体たらくぶりである。扱いを一歩間違えれば嘗て周辺地域一帯を巻き込んだ史上最悪の災害、アストラ災害と呼ばれるものすら引き起こす危険極まりないモノであるにも関わらず、だ。
超優秀である我が妹がそんな事も分からないような愚鈍では無い事は百も承知だが、それでも条件反射とも呼ぶべき反応でモニター前に噛り付いた私は思わず首をひねった。
「なんだい?この反応は...?」
幾つもの画面が此方を向いて波形や数字を用いて情報を伝えてくるが、私はその写された情報を前に困惑してしまった。
一言でいえばちぐはぐとでも言えばよいのだろうか?そこそこ長い間コアの研究をしてきた私ですら見た事の無いような反応が示されていたのだ。
例えばコアのエネルギー生成量、此処に居る機体のコアに使われているのはニル・アステラ、先程言っていた模造品の事だが、これは純正物であるノヴァ・アストラやモースド・アストラとは違い、此方から何らかの行動を起こさない限りエネルギーを生成することは本来有り得ないのだが、驚くべきことに此処にある全てのコアがエネルギーを微弱ながら生成しているのだ。誰も何もしていないに関わらず。この部分だけの情報であれば私はすぐさま近辺の人間を退避させ対処に当たったのだが、問題はそれ以外であった。
「最初は自分達でなんとかしようとしてたんですけど、余りの事態に困惑してて...その後こっちの様子が可笑しいことに気づいた千尋さんが戻ってきて直ぐに対処してくれたんですが、彼女でも首をかしげる状態でして...手のつけようが無いので丁度ついさっきにリーダーを呼びに行こうと話していた処だったんです」
そう困惑したように言う動力源整備担当の彼は此方を見ながら自分の力不足を嘆くように言った。
「安心したまえ動力源整備班第23班のラッチェ君、君の腕は確かだし自信をもって良い。なにせ私も正直に言うとこんな状況は初めてでこう見えて君が思っているだろう以上に困惑の極みに達しているからねぇ...」
そう諭すように優しく伝えると、彼はひどく驚いたような顔になり此方を慌てて見てきた。
「リーダーでも原因が分からないんですか?!?!?」
その言葉に対し私は優しく諭す様に云った。
「あぁそうとも!恐らく危険はないだろうという事以外全く理解できなくて一番困惑しているとも!!」
そういって高笑いすると周りに居た人間含めて呆然とした様子であった。なにせこれを作ったのは私であり、その運用の基礎を設計したのも私とマイエンジェル千尋との共同作業で作り上げたこの私ですら、否!私たちだからこそ最も困惑しているとも!
なにせ困った事に、機体にエネルギーが回っていないのである。
通常であれば一大事である。稀ではあるがコアを一切の休みなくフル稼働させるとエネルギーの供給が間に合わずパワーダウンするのだ。普通であればそこでエネルギー切れでお終いなのだが、贋作とはいえアストラ鉱石、その真価と恐ろしさはその先に踏み込んだ先にあるのだ。
なんとこの鉱石物質、それでも無理矢理にエネルギーを生成させようと過剰稼働させると、なんとエネルギーが生成されるのだ。これだけでも信じ難い出来事だしここだけ聞けば夢の物質その物!
で終わるのだが、それで終わらないからこそコア、正確に言うとアストラ鉱石の扱いには最も人員が配備され慎重な運用が求められるのだ。
最初はエネルギーを大量に生成し始めてラッキーと思うかもしれない、だが問題はその量である。ハッキリ言って異常な量が生産され始めるのだ。簡単に言ってしまえば普段の出力が一般的な水道の蛇口の勢いだとすれば、こちらはウォーターカッターの様なレベルで吐き出されるのだ。
これがまだ初期段階であれば何とかカバーも出来るが、一定レベルを超えるともう如何しようもなくなってしまう。最後は甲高い悲鳴のような獣の雄たけびのような音を上げ始め機体の心臓部ともいえるコアであるジェネレータが暴走、異常な発熱を初め機体温度が上昇し辺りに極めて危険なアストラ汚染と呼ばれる汚染を始める。
それでも稼働させると機体内部が溶解、今では昔の惨劇の一つから取ってメルトダウンと呼ばれる現象が起こる。勿論今作られているような機体が熔けるような温度なぞに生身の人間が耐えられる筈も無い。パイロットは死亡するがそれでも暴走は止まりはしない。
その後はコアであるアステラ鉱石が異常な発熱を起しながら汚染をばら撒き、最後には辺り一面を巻き込む大爆発を引き起こして終了である。重篤な環境汚染を周囲にばら撒くというオマケ付きで。
そういった事故、災害とも呼べる出来事を起こさぬよう最も重要視されるのがコアの整備・調整である。とはいえそういった事故は今では殆ど起こっておらず、また私たち星辰大戦以降の人間の生活、特に学園都市アルファに住む人間にとっては非常に身近な存在であるアストラ鉱石に対し私のように常に注意している人間なぞ殆ど居ないが。
話がそれたが目の前の不思議現象について戻ろう。
機体を起動させていないにも関わらず、何故か独りで起動し機体に動力を伝えていない、所謂アイドリング状態で動き始めたのが異変その1。これだけでも充分有り得ないと言える異常だがそれ以上の問題がまだあり、それが私を困惑させているのだ。
動力部で一切の異常を感知していないのだ。それも一機だけなら未だしもすべての機体で、だ。
ここまで来ると最早ホラーの領域であるし、我々技術者としてならいるかどうかも分からない妖怪だの幽霊だのより、異常が起こっているのにデータ上の数値でも機械のアラートでも一切異常が確認できない目の前の現象のがよっぽど恐ろしい出来事だ。実際気の弱い何人かは既に半泣き通り越して本気泣き一歩手前といった惨状だ。普段なら鼻で笑うが今はその気持ちに全面的に同意できるし、なんなら専門分野であり現状の有り得なさを一番実感している私が泣きたい気分だ。
そうやって私が表面上は笑いながら心の中で泣きながらデータ収集と解決法と対策を脳をフル回転させ考えていると、その原因であるジェネレータ達は急激にエネルギー生産量を落としたかと思えば、次第にゆっくりと機能を停止し始め暫くすると普段の状態に戻った。
正直この時点でその場にへたり込んで良かった―!とでも叫びたい所ではあるがそうは問屋が卸さない。人が乗るモノでありそのコアに危険物を使用している以上原因不明の動作をしたが、異常が出てなかったからオッケー!とは口が裂けても言ってはならないし、何より私自身が許さない。
そう思い何時の間にか傍らにまで移動してきた千尋に無言のまま目配せした。それだけで彼女はこちらの意図を全て察したのだろう、一つ頷くとそれぞれに指示を出し始めた。優秀な妹だ、私と同じようにひどく焦っていただろうにそれをおくびにも出さず涼しい顔をしながら皆の前に立っている。私の功績だけを見て責任者などに強引にに任命した上の連中の見る目の無さを実感しながら作業を再開した。
暫くすると全員に指示を出し終わった彼女が近づいてきて私に耳打ちしてきた。
「一先ずお姉ちゃんに任せようと思ってた仕事は、無理言って他の人に任せておいたからね」
全く。この優秀な彼女は、本当に私にはもったいない程の自慢の妹だ。
「ありがとう千尋、お陰で作業に専念できるよ」
「やっぱりお姉ちゃんでも原因は今のところ思い当たらないの?」
「残念ながら全く。なんなら此処に居る子達が運び込まれた際に軽い点検もしたし、此処を離れる前に全てのコアに問題が無いか本格的に確認したのも私だ。だからハッキリと言い切れるが、その時にはジェネレータ含め全てオールグリーン、なんなら製造された時よりも安定させていたと自負できるレベルにまで仕上げたさ」
「そこまで言い切るほどにしっかりと点検するなんて珍しいね」
「そりゃあ今日は新しい若者が此処で新たな一歩を踏み出す記念すべき日だからね?万が一にでも問題が、しかも彼らの寮に最も近いこの場所で何か起こった場合全部台無しになりかねないからね」
「やっぱりtっやんと覚えてたんだね...」
「勿論だとも。だから久しく忘れていた本気の状態に近いレベルで作業をしたんだがねぇ。今回に関しては私の名前に誓っていうが、パーフェクトな仕事をしたと言い切れるよ」
「そんなに...」
「あぁそうだとも!だと云うのに...ハァ...」
「「今回の異変が起こった」」
そこまで言い切ると肩の力を抜くために一度モニターから目を離し、キーボードを打ち込んでいた両手を顔にかざして大きなため息をもう一度吐いた。
「正直に言うと、今回はお手上げに近いね」
「そんな...」
「これがまだ私がチェックしていなければ、ヒューマンエラーの可能性も考えられたんだがねぇ...」
私自身己の技術という一点に対しては絶対の信頼がある。妹も私のミスを欠片も疑っていないし、妹の技術に関しても二人とも同意見だ。実際ジェネレータに関して言えば世界中の誰よりも進んでいる二人だと自己評価ではなく世界的にも認められていたのだ。そんな二人が一切のお手上げである。
「此処まで摩訶不思議な状態だと荒唐無稽な考えも頭を過るねぇ...」
「例えば?」
「そうだねぇ、この子たちが新入生が見てきたから張り切り過ぎて動いちゃった!とかかな?」
「フフッ、確かに荒唐無稽ですね。でも、そう考えたくなるのも分かります」
「だよねぇ...」
「アッハッハッハ!」
「フフッ!」
「「ハァ....」」
そういって二人同時に溜息を吐いて現実を直視した。これらは暫く真面に寝られそうにないと二人揃って確信しながら作業を再開した。千尋も隣に椅子とケーブルを持って横に来て持っていた端末を立ち上げホログラムの画面とキーボードを投影させると、持ってきた椅子に座りケーブルを使い此方の機器と端末をつなげた。
「私も手伝います。ほかの場所では特に問題は確認できませんでしたし、多少の遅れはありますが其方も残ってしまったとしても、休憩代わり私たち二人で作業すれば直ぐに終わらせられるものでしたから...」
そういって乾いた笑いを浮かべながら慰めにもならないような事を云う我が妹。普段なら嫌がるところだが、今この瞬間だけは終わりがる作業という言葉だけでも救われるようなものだ。何せ眼前で何食わぬ顔をして浮かんでいるデータ達を解明する作業は、私たち二人をもってしても終わりが見えないのだから。
「お姉ちゃんに聞きたいんだけど、帰ってくるのが遅かったけど何かあったの?」
モニターから視線を反らさずキーボードを入力しながら聞いてくる彼女。この行為も普段の彼女であればとても珍しい行動ではあるが余り驚きはしなかった。何でもいいから気を紛らわせたいのは私も一緒だったからだ。
「まぁ少々あってね。簡単に言えば彼と話している内に私が勝手にヒートアップして愚痴を垂れ流すという体たらくを晒しただけだよ」
そう言うと彼女は「ふーん...」と答えて数舜、此方に向かってバッと音がするほど勢いよく振り向いた。
「お姉ちゃんが他人に対して愚痴を言ったの?!」
辛うじて叫ばなかったものの、その声には今日一番の驚きが含まれていた。
「私自身でも自分の行動に驚いたよ。今日あったばかりの赤の他人、それも一つ下の男子高生相手に、だ。凡そ信じられないかも知れないが純然たる事実だよ」
そう言うと驚いて固まっていた彼女は一先ずは飲み込んだのか言葉を返してきた。
「ちょっと想像つかないけど、お姉ちゃんが言うって事は本当なんだね...って事は相手のあの子、九十九君だったけ?彼、怒ったり怖がったりして別れて此処に来たんだ...」
そういって残念そうに言う妹に、私は思わず笑いながら答えた。
「ところがそうはならなかったんだよねぇ」
そう言うと彼女は再度驚いた様に此方を見た。手元でキーボードを操作しながらだが。
「ならなかったって...お姉ちゃんの考えをパイロット科に入るような子が聞いて...?」
言外に信じられないと言いながら聞き返してきた彼女に、私はその時を思い出しながらまた笑い転げそうになり、その様子を胡乱な目で見ている妹の問いに答えた。
「凡そ信じがたいが事実だし、それ以上に彼は私以上にぶっ飛んだ考えをした後輩だったよw」
「お姉ちゃんよりも....?」
少し吹き出しながらそう答えると、さらに疑わし気な顔になる千尋。だがその様も次の一言で吹き飛ぶことになる。
「だって彼、私の考えを否定しないどこか肯定した挙句、ッファヒw、ストライカーについてどう思うか尋ねクフッw尋ねたら何て言ったと思う?彼曰くストライカーは唯のデカいロボだとさ!」
そこまで何とか言い切ったが限界を迎え噴き出した私はまた大笑いし始めた。辺りで作業をしていた何人かがギョッとした様子で見てきたが、普段の私の行動もあってすぐさま作業に戻っていった。よく訓練されているねぇ。
そうして笑っている様子の横では千尋が驚きの余り固まっていたが、絞り出すようにして声を出した。
「本当にそう云ったのですか...?パイロット科に入学しようという少年が...?」
「あぁ言ったとも!さらに愉快なのは彼曰く色々あってパイロット科に入学する事になっただけで、その前まではストライカーに殆ど興味すら無かったらしいよ!」
そう言うと今度こそ絶句してしまった千尋の横で、椅子に座ったままお腹を抑えて体を左右に揺らしながら笑い続けた。そうして二人ともそれぞれ別の理由で手を止めていたが、動かなけばいけないと頭の冷静な部分が命令を下しほぼ同時に作業を再開し始めた。方や笑顔、方や困惑といった表情の差はあったが、その手の動きはシンクロしているようにすら見えるほど差が無かった。
「彼自身、かなーり特殊な状況に立たされている様らしくてね?本人から余り周りに云わないようお願いされているから詳しく言えないが、あえて言うなら彼も私たちと同じ”こっち側”の人間だよ。二重の意味でね」
他人から聞けば意味の解らない言葉だがそこは長く共にいる姉妹、正確に理解下でありう彼女は一瞬だが手を止めたが、先程のように手を止めることは無かった。
「そう、ですか。だからあそこまで気に掛けるのですか?」
「んー?んー...いやぁ?そもそも彼に近づいたのだって一年の集団がいたからちょっかいを掛けに行った時にあっちから声をかけてきたからだし、最初絡んだのだってこっちの存在に物怖じせずにいたから興味が湧いただけだったしねぇ」
とはいえ流石に飛び降りそうになった時は本気で焦ったけどねぇと笑ってから一息入れ続ける。
「此処まで干渉するのはやっぱり彼の事に興味が湧いたからかなぁ?」
「興味...ですか?お姉ちゃんがアストラ鉱石以外の事、とりわけ他人に興味が湧くとは俄に信じ難いけど...ッ!まさかお姉ちゃんあの後輩の事を」
「あぁ違う違うw別に異性的なあれこれで惹かれてるわけじゃあないさ。確かに彼自身の人柄も接しやすいし顔もそこそこ良いけどねぇ」
「なら何故...?」
そう問われ私は一度手を止め両手の指を組んで掌を上に向けるようにして頭の上に向けてんーッと言いながら伸びをした。
椅子の上で仰向けになるような体制で脱力しながら、千尋の質問に対して自分の考えを整理しながら答えた。
「繋がりだってさ」
「えっ?」
「繋がりだよ、それが彼のストライカーに対する思いみたいなもの。本人でもまだ整理が出来て無いようだったけど、多分それが本人の中でもっとっも答えに近いんじゃないかと私は思うよ?」
「繋がり、ですか...その、余り要領を得ないというか...」
「本人も言ってたからバッサリ意味が分からないって言っても良いと思うよ?私も他人から聞いたら余りの意味不明さに鼻で笑いかねないモノだしねぇ」
だが、決してこれは質の悪い冗談や狂言ではないと確信”させられた”のだ。
そう、確信したのではなく確信させられたのだ。齢高々16,7でありながら大人たちに畏怖を込めて才能の怪物と言われた彼女が、その名に恥じぬ精神性を持った彼女があの一瞬だけ彼の放つ形を持った圧とでもいうべきモノに屈したのだ。
たかが一瞬だと思う人もいるだろう、だが考えてほしい。大人の世界の中でも、互いに権利という名の皮を被った欲望の為に互いを蹴落とし騙し騙され裏切りあう、そんな魑魅魍魎渦巻くストライカーというモノに群がる悍ましいモノたちを以てして尚”怪物”と恐れられる彼女の精神性も常軌を逸しているのだ。
そんな彼女をたった一言、それも相手を威圧する為ではなく自身の中にある不定形であやふや思いを口に出して整理する、たったそれだけの行動で。本人の様子から見ても全く気付いた様子もなく、ただ口に出して何とか言葉で表そうとしている、ただ本当にそれだけを考えていたのだろうがそこに込められてあ重さは桁違いだった。
それ程までに、その言葉には目には見えない重さが確かにあった。きっとそれは、覚悟や決意と呼ばれるものが含まれていた言葉は、無意識化で込められた意志を受け入れる形を持ったものであり、その中に込められた重みだけで怪物と呼ばれた彼女を圧倒するほどの圧として発される程だった。
その圧を間近で受けたからこそ彼女は彼の言葉を笑わずにその言葉を自然に受け入れることが出来た大きな理由であり、それを理解しているからこそ彼女は経歴の不振さや見た目といった色眼鏡を通さぬ”九十九零”という独自の感性を持った個人に対し惹かれているのだ。
「私から見ても不可解な人間だけど、それも断言できることが一つあるよぉ?」
「断言出来る事?それは一体...?」
「間違いなく彼が入学してからの生活は面白くなる...!!絶対にだ!!」
そう言って空を見上げていた顔をストライカーに向ける。
そうして彼と同じように手を伸ばした私の顔には酷く獰猛な、獣のような笑みが浮かんでいた。
「そういえば変った事と言えば、彼の様子が可笑しくなった事が正に異変じゃあないか?」
「確かに、でもそれと今回の異変を、お姉ちゃんならどんな形で無理矢理繋げますか?私なら、そうですね...彼が死にかけたのに人類の守護者として守ろうとした...とかどうです?」
「良いねぇ私たちがその理屈を言うのは最高に皮肉が効いてて笑えるよ!なら私は彼に特殊な力があって、その力に反応して動き出した~とかどうだい?」
「荒唐無稽すぎて有り得ないのが良く分かる法螺話で良いですね!」
「だろう?まぁこっちとしては現状そういう馬鹿みたいな理由でも良いから原因が解明したい所なんだけどねぇ」
「そうですね....」
「まさか、な」
可笑しいな?本作のメインヒロイン兼主人公よりも出番も多い・文字数多い・主人公に近いポッとでの作者も最初考えて無かった重要キャラがいるんだが...何故...?