私に銀の弾丸を、貴方に百合の花束を   作:山本珈琲

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EP_002 出会い

 まず落ち着いて状況を整理しよう私、「難しい局面に直面して困った時は、焦らずまず現状の把握をして考えを整理するといい」ってお兄ちゃんが言ってったし! 

 まずなんでこうなったか一つずつ分けて考えようそうしよう。

 

 今日ここに着いたのが少しでも早く行きたいからって朝の5時に着く車両便に乗ってここに来て、自分の生まれ育った町が、小さな集落に思えちゃう位の建物と街全体の大きさと、技術の違いに圧倒されてウロウロし始めたのが5時間近く前の出来事で.

 


 

 

 入学式受付開始が9~10時で式の開始も10時半と時間に余裕があり、いろいろ見て回っているとまだ空が明るくなり始めた位に早い時間なのに、いくつかのお店がもう開店していて、空には配達用の静音稼働型ドローンが飛び周り荷物を届け先に運んでいた。

 

 大通りには私以外の人もそこそこ居て、道の先のその奥にはこの都市最大の特徴かつこの最先端の都市が建設された理由である建造物、「オプティマス・レンジャー・アカデミー」の建物が見えるその光景に私は、自分が生まれ育った故郷を離れ自分の道を歩き出したことを改めて実感して、しばらくその場に立ち止まってその風景を見ていたんだ。

 

 そうやって立ち止まっていると横から「今年から入学する新入生さんかい?」って声を掛けられたんだ。

 声をかけられた方を振り向くと私より一回りほど小柄な体にビックリする程沢山の荷物を持った柔和な笑みを浮かべるおばちゃんがいた。

 私は先ほど掛けられた問に元気よく「ハイ!」と答えた。

 そんな私の返答に「最近の子にしては元気だねぇ」と朗らかに笑いながら答えてくれて会話し始めたんだ。

 

「ここ最近の子は頭のいい子がよく入学してくるんだけどいかんせん体が細かったりして」

「そうなんですか? パイロットになるためにここに来るならてっきりみんな体がガッシリしてるのかと思ってましたけど」

「おや、お嬢ちゃんはストライカーパイロットになりたくて此処に来たのかい?」

「はい! 昔お母さんに呼んでもらった絵本の中の人たちに憧れて此処に来ました!!」

 そう私が答えるとおばちゃんは少し考えるように手を顎に当て、暫くすると「あぁ」と声上げてから続けて「絵本っていうと"銀の光"かい?」と続けた。

 その言葉にひどく驚いたやら嬉しいやらで私は思わず「どうして分かったんですか?!」と大きな声を上げて詰め寄った。

 それに「元気良いねえ」とニコニコしながら答えてくれた。

「今に比べて私が学生の時は、そういう昔の物語とか伝説の存在に憧れて入学してくるのが結構いたからねぇ、私もその一人で小さな頃は色んな物語を読んだものさ」

「てことはおばちゃんも昔、此処の学生さんだったんですか?」

「そうさ、まっ今から40年以上前の事だけどね」

「そうだったんですね! ていう事は私の大代々先輩に当たる方だったんですね!」

「まぁそうなるのかねぇ、そういえばお嬢ちゃんの名前はなんていうんだい?」

「はい! 私、今日から此処に通う事になった”朱羽 響”って言います!! よろしくお願いします!!」

「響ちゃんかい、言い名前だねぇ。私の事は気軽に”サキさん”とでも呼んでおくれ」

 そうおばちゃん改めサキさんは頷きながら答えた。

「分かりました! 所でサキさんはなんでこんな朝早い時間からそんなに沢山の荷物を持って歩いてるんですか?」

 

 そう始めから疑問に思っていた事を率直に聞いた。

 そうなのだ、此処では荷物のやり取りは基本的に空輸ドローンで行うのが一般的だというのを学園都市について調べた時に書いてあり、ひどく驚いたこともありよく覚えていた。

 

 そう思いながら質問した私に、

「響ちゃんも不思議に思うかい? これは自分で出来る事は可能な限り自分でやろうとしてるからなのさ。

 ウチはここから少し離れた所で定食屋をやっててね、いつも行ってる朝市の帰りだったんだけど、今日の商品はいつもより安くて新鮮なモノが多くあってちょいと多めに買ってしまったのさ、いやはや年を取るのは嫌だねぇ、昔みたいに体が動かなくなっちまう」

 

 そう少し苦笑いしながら自嘲気味にサキさんは答えた。

 その答えを聞いて私は次に行動することが決めサキさんに

「サキさん、もしよかったら運ぶの手伝いましょうか?」と聞いた。

 それを聞いて少し驚いたように眼を瞬かせ

「こっちは助かるけど響ちゃんはいいのかい? こんな朝早くから此処にいるって事は此処を見て回るのを相当楽しみにしてたんじゃないのかい?」と聞いてきた。

「勿論! 確かに見て回るのを楽しみにしてましたけど此処で見て見ぬふりをしたら心の底から楽しめませんから! それに、サキさんのお店も気になりますし、昔の学園の様子とか授業の内容とかも聞けたら良いなって考えてたんです。だから気に病む必要はありませんよ!」

 と私は笑いながら答えた。

 サキさんは何故か眩しそうにしながら「ありがとうね、じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかね」と答えた。

 そう言って荷物の7割を受け取って「重くないかい?」「パイロットになるためにこれでも鍛えてますから」なんて言いながらサキさんのお店に向かって歩き始めた。

 これが今から4時間くらい前の出来事だった筈.

 それからサキさんのお店に到着して(私が思っていたより二回りほど大きなお店で吃驚した。メニュー表を見せてもらったが地元のお店より少し割高ぐらいの差しかなくてさらに吃驚した!)からせっかくなので朝ごはんを頂こうとしたら「代金は要らないからまた来て年寄りの話し相手になっておくれ」と言われ日替わり朝ごはん定食(この日の献立は、白いご飯・アサリの味噌汁・アジのフライにキャベツの千切り・お漬物の豪華で美味しい上に、毎日食べても飽きないであろうとてもほっこりする味だった。しかも白米・汁物はお代わり自由!!!)をご馳走になった。

 そうして私が舌鼓を打ってお代わりしながら食べていると、お店に続々とお客さんが入ってきてサキさんと親しげに会話しながら席に着き始めた。大体30代~60代だろうか? 中には私より少し歳上ぐらいの人もいるな〜なんて思いながらご飯を食べ続ける。あっご飯が無くなっちゃった、けどこれ以上お金も払わないのにお願いするのも.えっ気にしなくても大丈夫? たんと食べなって、じゃあご厚意に甘えさせてお味噌汁も一緒に頂きます! 

 

「おかみさん機嫌よさそうだね」「そうかい?」「そうだぜサキさん、なんか今日はちょっと機嫌よさそうだぜ?」「もしかしてあそこで幸せ一杯って感じで定食食ってる嬢ちゃんが理由じゃねえか? にしてもよく食うなあの子.」「なんか昔飼ってたハムスター思い出すなぁ、あいつもあんな感じで餌を口に詰め込んでたっけか」「でも新しい常連客獲得! って喜んでる感じでもないよな」「しかしホントによく食べるなあの子w医者から食生活見直せって言われてたけどちょっとぐらいなら良いだろ」「お前そう言って前の定期検診でも引っかかってなかったか?」「いいだろ別に。それにお前だって定食頼んでんじゃん」なんて会話が聞こえて来た。

 

 するとお盆を持ったサキさんが戻ってきてこんな朝早くから見る限りお上りさんの新入生の私がここに居る理由を掻い摘んで話し始めた。

 すると周りの常連さんらしき人達が口々に「なるほどなぁ」「そりゃあのサキさんが気に入るわけだ」「話聞いても思ったけどあの子相当お人好しだぜ」「バッカお前サキさんがここまで気に入るって事はあの子多分相当芯が強いってことだぜ」「こりゃ今年が楽しみだな」なんて言い合っていた。サキさんに気に入られると何が凄いのだろう? それに私はただ子供の頃からの憧れだけでここ迄来ただけの人間で芯が強いなんて事もないと思うけれど。

 なんて思いながら折角なので私は立ち上がって自己紹介する事にした。

 

「先程サキさんが説明した朱羽響です! ひとまずの目標は地元の皆に誇れる立派なストライカーパイロットになる事です! ここのお料理がとっても美味しかったので今後も利用するつもりです。よろしくお願いします!」

 そうハキハキと言い切るとおぉ〜とい反応と共に「若いっていいねぇ」とか「おじさんちょっと感動したよ」だとか「頑張れ〜」なんて言われながら拍手なんかされるものだから思わず照れくさくなって返事もそこそこに渡されたお代りを座ってまた食べ始めた。

 

「いやはや久しぶりに良いもん見せてもらったよ〜」「今後を応援したくなったね〜」「サキさんも面白い子を見つけてきたもんだ」なんて会話と一緒に何やら雛鳥を見るような目線を送られている気がするが気の所為だ。気の所為ったら気の所為なのだ。

 その後もう一度お代りを頂いた後にサービスの餡蜜まで頂いた後暫くの間サキさんや常連の人とも楽しくお喋りに興じた。

 これが大体2時間程前の出来事だった。

 その後この付近は個人経営のお店が立ち並ぶ場所で「アルファの下町」なんて呼ばれている場所だと教えて貰い、折角だから色んな店を見ていかないかい? と常連のお客さん達に言われサキさんに見送られ回り始めたのが3時間程前の出来事だった。

 

 そう、ここまでは何も問題なかったのだ、この時までは。

 問題はその後だった。

 いくつかのお店を回った時に折角なので何か買おうと思って荷物を漁った時だった。

 

 無い、無いのだ入学許可証を入れておいた財布が。

 鞄の奥にあるのかと思って探ってみるもない。

 血の気がサッと引いていくのを感じて慌ててその場で鞄をひっくり返して探すがどれだけ探したって見つからない。

 慌ててさっきまで回っていたお店を回ってみるも見ていないという。

 私はもう半ばパニックになりながら一言「落ちてないかもう一度探してきます」とだけ言って1人で動き始めたのだ。

 見知らぬ始めてくる場所に独りで。

 控えめに言って馬鹿である。

 そうして現在.

 


 

 そして今、私は何処ともしれぬ夢中で探している内に入り込んでしまった路地裏で座り込んでいます。

 ごめんなさいお兄ちゃん、貴方の可愛がっていた妹は折角の兄の助言を何一つ生かせない愚かな妹です。なんて考えながら蹲っていた。

 ついさっき見た時計の針は、今からなんとか頑張って此処から出られたとしても、もう入学式に間に合わない時間を指していた。

 

 小さな頃からの夢で、ずっと努力して超難関と言われる試験も死ぬ気で勉強してなんとか入った学校の、人生に1度しかない入学式に出られない大ボケをしてしまった私は、自分のやらかしとそれに付き合ってくれている今日会ったばかりのサキさんや常連さん達を巻き込んでしまっている事と、送り出してくれた家族や皆にも、もう情けないやら悲しいやらで感情がぐちゃぐちゃになって泣きそうになって蹲りかけた時だった。

 

「あ、やっと見つけた」

 そんな声が聞こえて顔を上げると路地の奥から誰かが近づいてくるのが見えたが涙でボヤけてよく見えない。

 そんな私のすぐ側に来たその人(声からして男性だとおもう)は私に声をかけた。

 

「そんな所に座り込んでどうし、って泣いてるじゃん!? どうした? どっか怪我したのか?」

 

 そう私の身を案じて焦っている人に私は咄嗟に

「大丈夫、です。怪我とかじゃなくて、その、自分が情けなくて.」

 と言ってしまった。初対面の人に、それも優しく声を掛けてくれた人に何を言っているんだろう私は。

 なんて、また自己嫌悪しそうになっていると目の前に手を差し伸べられた。

 

「赤羽 響さん...で合ってるかな? お、僕はサキさん達から連絡が来て探しに来たんだけど間違いないかな? あと、一人で立てる? 君の事心配して皆探してるよ?」

 

 そう優しく声掛けられ私は「はい...」と言いながらおずおずと手を取ると相手の人は体格に見合わない強い力で、けれども決して乱暴ではない力加減でグイッっと一気に立たされ、そのあと顔を布で拭かれた。

 

「見つかって良かった。君の財布だと思われるのは俺がさっき見つけたんだけどコレかな?」

 

 そう言いながら相手が出したのは間違いない、私の財布だった。

 受け取りながらありがとうございますと言うと相手は少し笑って、「良いよ気にしなくても。拾ったのもたまたまだったし」と答えた。

 それどもお礼を言っているとサキさんから連絡を受けて探していたと聞き、改めてお礼を言っているとふと気がついた。

 

 相手も自分と同じ制服を着ているのに気づき私は慌てた。

 今頃新入生を含めた在校生各員はもう学校で受付を済ませているか遅くてももう学校に着いている頃だろう。

 そんな時に此処に居るということは、私のせいで遅れさせたようなものだ。

 

 それについて謝罪しようとすると彼は「大丈夫、俺は哲さんのバイクで送って貰えば間に合うから。君も一緒に行けば間に合うと思うけど、どうする?」と言われ、藁にもすがる思いでお願いしますと言った。

 そう答えると彼は「分かった、じゃあ1度サキさん所に道すがら連絡するから、ひとまず一緒に此処から出ようか」と言われ今し方彼が来た道を指さした。

「何から何までありがとうございます!」と言って彼の後に続いて歩きなから、ふとまだ名前を伺ってない事に気づいた。

 

 路地裏の出口付近に近づき明るくなり始めたところで私は改めてお礼を言いながら名前を尋ねる事にした。

「本当にありがとうございます。このお礼はいつか必ずします! 所でまだ名前を聞いていなかったのですが良かったら教えてくれませんか?」

 そういうと彼は「そういえば名乗ってなかったな」と言いながら此方が正面になるように改めて身体ごと振り返った。

 

 先程とは違い明るいのもあって姿がよく見えた。

 背は私より大きく恐らくだが175cm以上はあり、身体は一見細身のように見えるがさっき握った手や、その時引き上げられた力の強さから見た目によらずかなり鍛えているのだろう。

 髪は灰色に近い黒に、所々白が混じっていて、目の色は少し暗い赤色だった。

 顔は元々線が細いのか中性的にも見えるが、恐らく鍛えているのか女々しい印象は受けず、顔立ち自体も整っており「あっ、ちょっとカッコイイな」と思う顔をしていた。

 

 そんな彼はどこか苦笑気味に口を開いた。

「改めまして赤羽 響さん、俺は一応君と同じ今年入学の新入生の九十九 零。同じ学年同士よろしく」

 そう笑いながら応えたのだ。

 

 この出会いが私の人生全てを大きく変える出会いだとは、この時は思ってもみなかった。

 けどここがすべての始まりだったんだと思う

 

 ここは、物語で言ったらきっと始まりの第1話。

 

 私と貴方が出会った総ての始まりの日。

 




思った以上に長くなっってしもた...
でもこの話はなんとかこの1話に纏めたかったんですよ...
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