それがきっと、物語の開始点
何処までも残酷で、破滅へ向かう物語の始まり
人の暖かさと、世界の美しさを綴る物語の始まり
緩やかに終わりへ向かうお話の始まり
身体を真面に動かせる様にすると決めた翌日、早速自分の担当医であるゴートン氏にその旨を告げた。最初は驚かれ流石に早すぎるのではと渋られたが、早く動けるようになりたい事を熱意を込めて語り、リハビリの際に補助する看護師以外にもう1人医師が着く事を条件とされたが、なんとか此方の要求を飲んで貰った。ただ、その際にもまだ上手く喋れておらず、そちらのリハビリも同時進行で始める事にした。
現状自分の身体が思うように動かない理由は、筋肉量によるものでなく、余りにも長い期間身体を動かさなかった事で、自身の身体へ脳の電気信号を上手く送れていない、受け取れていない事(簡単に言うと、右腕を上げようと考えたら何故か左足が上がるような状態に近いらしい)が原因では無いかと言われた。
そうして始まったリハビリ生活だがコレが予想以上にキツいものとなった。確かにそれ相応の覚悟はしていたが、まさかベットから起き上がりことも出来ない程だとは思いもしなかった。
それでも格闘する事3日間、遂に1人でベットから出る事に成功したのだ! が、出来たのはそれだけ。すぐさまそのままベットから落ちた。
そうして次に始まったのは立つ訓練であったが、意外にもこれはスムーズに進み、ほんの数日で1人で立てるようになった時は酷く驚かれた。当初の見立てでは1週間程掛かる見込だったらしい。
次は歩く訓練になったのだが、ここで予想外の問題が起きた。ここにきて左腕が無い事の問題が浮き彫りになったのだ。
詳しく説明すると2つの問題が出たのだ、1つ目の問題は体を支えるために腕を使う事が片腕でしか出来ない事。もう一つの問題は、唯でさえ身体が上手く動かないというのに左腕が無い事により僅かにだが重心が傾くのだ。これは予想されていた事らしかったが、リハビリを実際にやっているこちらとしては中々にキツイものとなった。
それでも何とかリハビリを続け、同時進行でしていた話す訓練によって真面に喋れるようになった頃、次に頼んだのが現状把握の為の勉強だった。
これを頼んだ理由としては単純で、話によると自身が入学させられる事になう「O.R.A」は、そもそも相当学力がなければ入れない場所で、自分が入れられる学科のパイロット専攻科に至っては「ストライク・ノヴァ」とやらに乗るための特別な素質が無いと入れないような狭き門らしいのだ。
自分は幸いな事に、その特別な才能とやらは有るらしく、学園全体で見た際だと並みよりちょい上かな? 程度らしいが入学するには十分らしい。となれば残る問題は純粋な知識・学力面である。
そもそもの話、100年以上眠っていたという事情が事情なだけに裏口入学させる話も合ったらしいがこれには断固反対した。これは正義感とかでは無く、単純に保身の為である。唯でさえ物珍しさで世間から注目される可能性があるというのに、政府の支援を受けて入学した奴が明らかに入学できるレベルの学力が無かったら? 十中八九調べられるだろし、それを揉み消せたとしても己に対して不信感が募りかねない。
現状、自身の身分が保証されているのは偏に利用価値が有るからだ。だというのにその利用価値が揺らぐ様な事が在ったら? 確証はないが恐らくロクな事にはなるまい。なら己がとるべき行動は一つであった。
そうして始まった学力訓練は幸いな事に歴史に苦戦する以外は大きな問題も無く進んだ。ゴートン氏から聞かされた自身の過去の状況を鑑みて学力に対して不安が大きかったのだが、当初予想されていたよりも自身の知識量や学力はかなりしっかりしたモノだったらしい。これには疑問を覚えたが、余り考えても意味がないと切り捨てる事にした。
こうして努力した結果、目覚めた当初の計画では入学は再来年以降になるとされたものは、自身の運動能力と学力を確認した政府上層部からの要請によってかなり前倒しされ、半年後にある来年の入学でも問題ないとされたのだった。これには周囲の医師たちは驚き、一部の人は「余りに早すぎる」と怒りを露わにしたが、自身が感じたのは焦りだった。
それは入学が早まったことによるモノではなく、そうせざる負えない状況に対してであった。ゴートン氏の予想が正しければ自身は世論を動かすための駒であるのだが、ハッキリ言って実際どこまで効力があるのか、予想されている反応になるのかはハッキリいって未知数だ。そんな不安定なモノに頼らなければならない程状況がひっ迫しているという事なのでは? というのが俺の予想であった。
ただこれに関してはいくら考えてもしょうがないので一旦考えるのをやめ、更にリハビリと練習に励むことにした。
暫くそうやって過ごしていると病院の人だけでなく、此処に通っている人とも面識ができ、中には仲良くなれた人も数名いた。
日常生活を一人で過ごすのに問題が無くなり始めた頃、病院をウロウロしている時に出会った「サキさん」と名乗るおばちゃんがその一人だ。(この時病院に来ていた理由は、孫娘に念の為に定期健診に行くように言われておりその為に来ていたからだそうな)
ここが自分が入学する予定の学園がある都市「アルファ」であるのは知っていたが、サキさんは元々そこの卒業生で、今は個人経営の大衆食堂をやっているらしく医師から許可が出たら今度足を運ぶことを約束した。
ゴートン氏にその事を伝えると、始めは「無理をしているのではないか?」と心配され難色を示されたが、最終的に現在自分たちの予測を遥かに上回って回復した俺の身体は特に問題無しとの事で幾つか条件が付けられたモノの許可が下りた。
こうして許可の下りた俺は早速出かける事にした。
まず最近の大きな変化である自身の機械の腕(難しい手術とかは特に必要とせず、どういう訳かは分らないが左腕の先端に付けると完璧にフィットし思った通りに動かせる代物である。科学の進歩ってスゲー)を装着し、政府から支給されている資金(なんでも此処に支払われているモノとは別枠で、食費や娯楽資金として此方も無償で出されているのだが、確認したところとんでもない額が書かれていた為、最初見たときは目を疑った)を少し引き出し手から出発した。
地下鉄とバスをいくつか乗り換えながら(乗り変え方は教えて貰った)教えて貰った場所に着くと、そこには年期を感じる大きな木製の看板で「大衆食堂 咲」と達筆で描かれた看板が掛かった店を発見した。
昼時を聊か過ぎた時間だったが店内には幾人かのお客さんを確認でき、その誰もが寛ぎ慣れ親しんだ様子から恐らく常連であることが伺えた。そうして入口付近に立っていると、丁度奥の調理場から出てきたサキさんと目が合った。
「お久しぶりですサキさん、約束通りやってきましたよ」
そう言うと少し驚いたような顔をした後、笑いながら答えてくれた。
「おや、こんな婆との口約束を律儀に、しかもこんな早くに守ってくれるとは思わなかったよ」
「自分もまさか此処まで話がサクサク進むとは思いませんでしたよ、もう少し時間が掛かると予想してたんですが」
「そんだけ身体が良くなってってる証拠じゃないか。言っとくけどあそこの医者連中はその辺りはかなり厳しく見るからねぇ……ほら、これがメニュー表だよ、ゆっくり選ぶと良い」
「ありがとうございます.へえ、和洋中と結構なんでも有るんですね、店の外観的に和風のみかと思ってましたけど」
「あんた、随分詳しいねぇ。今時和洋中なんて言い方知ってる奴の方が珍しいってのに」
「へぇ~、そうなんですか? あ、注文なんですけどコレとコレ、それからココ~ココまでのやつ下さい」
「あんた見た目の割に頼むねぇ……言っとくけどウチは持ち帰りは有るけどお残しは許さないからね」
「あはは、安心して下さい。これでもかなり食べる方なんですよ自分」
「そうかい? なら分かったよ。飲み物は水と緑茶があるけど、どっちが良いかね?」
「なら緑茶で」
「あいよ、悪いけど量が多いで少し時間が掛かるで暫く待ってな」
「えぇ、お構いなく」
そう会話してからサキさんが厨房に戻ると、少し離れた席の40代位だろうか? 作業服を着た男性に声を掛けられた。
「坊主、ここに来るのは初めてか?」
「えぇ、何ならこういった店に来るのも(覚えてる限り)初めてですね」
「(生まれて)初めて? 珍しい奴もいたもんだ、坊主、お前名前は何て言うんだ?」
そう問われた俺は
「レイ、九十九 零と言います。年は15歳になります」
と答えた。
この名前に関してだが、俺の名字の「九十九」だが身元引受人の名付けで、なんでも今は改名されているが昔のその家の名字だったらしくそこに読みがレイと読む数字の零を合わせて「九十九 零」となった。
「15!? にしては雰囲気が大人っぽいな」
「そう、ですか?」
「あぁ、ところで坊主、お前さん初めて此処に来た割には何やらサキさんと親し気だが何でだ?」
「(坊主呼びはそのままなのか)少し前に病院で会いまして、その際話し相手になって貰ったんですよ」
「病院? 確かにお前さん体がひょろいがどっか良くないのか?」
そうどこか心配するように聞いてきて”あぁ、この人顔は厳ついけどいい人なんだな”と割と失礼極まる事を考えた。とは言え何処まで話して良いか分からない以上ある程度ボカシて伝えることにしながら口を開いた。
「特にそう言った訳ではなくて、所謂昏睡状態って言ったら良いんですかね? まぁそれでかなり長い間眠ってしまってて」
「昏睡状態?! そりゃまぁ、何というか大変だったなぁ。悪い、余り聞かれて気分の良いもんじゃなかったわな」
「いえ、自分としてはもう割り切ってますから気にしなくて大丈夫ですよ」
そう告げると少し驚いた顔をしてから彼は口を開いて
「まさか15のガキンチョに気を使われるとはな……。おし! k時此処で知り合ったのも何かの縁だ、今度困ったことがあったら俺に相談しな、できる限り力になっちゃる!!」
そう威勢よく告げてきた。
それを聞いて俺はお礼と共に質問を投げ掛けた。
「ありがとうございます、もし何か問題があったら頼らさて頂きますね。ところでまだお名前を伺っていないのですが……」
そういうと彼は”しまった”といった表情をした後、自分の頭の後ろを搔きながら苦笑いしながら口を開いた。
「そういえばそうだったな、悪い悪い。そいじゃあ改めて自己紹介させてもらおうか。オレは長屋 哲郎、よく40代に間違われるがまだ27の独り身だ、以後よろしく」
そう言って頭を掻いていない手をこちらに出してきた。
「こちらこそよろしくお願いします、哲さん」と言いながら”20代に見えねえ”とこれまた滅茶苦茶失礼な事を考えながら手を握り返した。
「哲さんかぁ、良い呼び方してくれるじゃねえか坊主、おめえさてはノリ良いな?」
「どうでしょう? 自分では何とも……。ただ何となくそう呼んだ方がいい気がしたんです、何となくですけど」
「ほ~ん、なるほどな.こりゃこの辺りにいるジジババ連中に気に入られそうな奴が来たもんだ(ボソッ」
「何か言いました?」
「ん? いや、何でもねえよ。気にすんな。それよりオレはオメエに興味が湧いてきたんだがよ、色々聞かせてくれよ」
「色々と言われましても……話せる事なんて殆どありませんしこれと言った面白い話も無いと思いますよ?」
そう二人で会話していると、お盆に大量の料理を乗せたサキさんがやってきた。あの年であの量を運んでても重心がブレてないんだがどうなってんの?
「ハイハイ話をするのも結構だが飯は温かい内に食べるのが一番さね。一先ずこれ食って待っててくれるかい? 残りももう直ぐ出来るからねぇ」
「うぉっ、スッゲェ量だなこりゃあ。坊主、お前さん本当にそんなほっそい身体なのに食いきれるのか?」
「えぇ、予想よりちょっと量が多いですけどこの位なら普通に食べれますよ」
「マジか?! いや冗談抜きでマジで言ってんのか,?」
「えぇ、大マジですよ? ではでは温かい内にいざ」
「頂きます」
そう言ってから時折独り言で”うまっ”や”イケるなコレ”と漏らしながらも食べていると、途中で横で見ていた哲さんが「マジで食えてるよコイツ.いや、エッマジでその体の何処にそんなに入るんだよ」と言っていた気がするが余り気にしない事にした。
それからはリハビリや勉学により一層注力しながら、暇があれば「大衆食堂 咲」やその近辺の店に足を運ぶようになり、その影響で哲さん以外の常連客にも良くしてもらい始めた頃だった。先日受けた入学用特別学力試験を受け、見事合格判定が出たのだ。
これを食堂の皆に伝えると、祝宴を挙げると言って自分の面倒を見てくれている医師であるゴートン氏や看護師のケレンさんを含めた病院関係者数名と、己の身元引受人である”ローレンス・J・楯無”さん(後に知ったのだが彼は己が入学することになったO.R.Aの学園長であり、オメガ・レジスタンス代表者の血筋だったらしい!)を呼び、そこに普段仲良くしてくれている常連客20数名を加えた総勢30名以上による「大衆食堂 咲」を貸し切りにした大規模な打ち上げが為された。
この宴会は俺に秘密で計画され、夕方ごろ来るように言われた俺が店に入ると一斉に「合格おめでと~」という声と共に歓迎された。それに驚いて目を白黒させていると「主役はコッチ」と言われ手を引かれ皆の前に立たされ開始の音頭をするよう言われた。そうして皆の前に立つと全員此方を暖かい目で見ている事がハッキリと分かった。
それを感じて自分は、此処に居ていいのだと、皆に受け入れられているのだと、己を祝うためだけにこれだけの人が集まってくれたのだと理解し思わず笑いながら泣いてしまった。
そのせいで集まった全員が心配し始めるといったハプニングは有ったものの、その後は全員サキさんの「今日はハメを外してよし!」という言葉を皮切りに飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎだった。
そうやって皆に祝福され、一層気を引き締めて入学に向けて準備を進めた。
そして今日、遂にその日がやってきた。
そう、入学式当日である.
「そろそろ哲さんが来る頃かな?」
そう独り言ちり空を見上げる男、それも青年と呼ぶべき年頃の男が一人、道の端に一人立っていた。
その男の懐からpipipiと呼び出し音が鳴り、男は素早くその音の発生源である端末を手に取り耳に添えた。
「哲さんから連絡って珍しいですね、何かあったんですか? うん、うん、なるほど。纏めると自分と同じ新入生が落とし物を探してたら迷子になったぽくて、今その子を探してるんですね? 分かりました、予定通り哲さんに送って貰うならまだ時間に少し余裕もありますし自分も手伝います。取り合えずどっち方向に向かったのかと、外見特徴を出来る限り教えてください」
青年はそう言いながら歩き出した。そうして歩きながら道行く人に探し人の外見を簡単に伝えながら歩くこと暫く、ふいに立ち止まり誰もいない路地裏をジッと見つめたかと思うと突然そこに入り込んだ。
暗い道を男が歩き角を曲がった少し先、暗くてよく見えないが誰かが座り込みうつ向いているのが見えた。
青年はそこにゆっくり近づきながら声を発した。
「あ、やっと見つけた」
そう言いながら青年は座り込んでいる人影のそばまで行き、その人影に語り掛けた。
「そんな所に座り込んでどうし、って泣いてるじゃん!? どうした? どっか怪我したのか?」
そう途中から焦ったように声を出した。
その問いかけに座り込んでいた人影は、
「大丈夫、です。怪我とかじゃなくて、その、自分が情けなくて」
少女の涙声はたどたどしくも顔を上げながらすぐさま答えたが、また顔をうつ向かせようとした。
その返答に対して青年は小さな声で「そっか」と言った後、相手が顔を下に向け切ってしまう前に素早く手を前に出しながら質問を続けた。
「赤羽 響さん.で合ってるかな? お、僕はサキさん達から連絡が来て探しに来たんだけど間違いないかな? あと、一人で立てる? 君の事心配して皆探してるよ?」
そう相手に確認するように優しく問いかけた。
それに対して「はい」と小さな声で返答しながら手を取った相手の身体を痛みを感じない様に気を付けながら素早く引き上げると、涙と路地裏の汚れで汚れた顔を素早くふき取った後、懐から少し大きめの財布を取り出しながら少女に問を投げ掛けた。
「見つかって良かった。君の財布だと思われるのは俺がさっき見つけたんだけどコレかな?」
そう言って相手に渡すと予想は正しかったのだろう、少女は「ありがとうございます!」と先ほどの弱った様が嘘のように元気よくお礼を告げてきた。それを受けた青年は「良いよ気にしなくても。拾ったのもたまたまだったし」と朗らかに答えた。
そう答えた直後、こちらを見た少女が顔も見えない暗さなのに慌てながら「もしかして私と同じ新入生の人!? どうしよう?!?!」と本人的には自覚は無いのだろうが口から洩れていた。その後謝罪しようとする少女を止めてから「大丈夫、俺は哲さんのバイクで送って貰えば間に合うから。君も一緒に行けば間に合うと思うけど、どうする?」と青年は少女に問うた。
それに対し少女は藁にも縋る思いといった感じで「お願いします!」と食い気味に反応してきた。
その返答に青年は「分かった、じゃあ1度サキさん所に道すがら連絡するから、ひとまず一緒に此処から出ようか」と伝え、少女は「何から何までありがとうございます!」と答え親鳥に続くひな鳥のように彼の後を追って歩き始めたのだった.
運良く素早く見つかって良かった~。
俺こと九十九零は、そう思いながら暗い路地を出口目指して来た道を戻っていた。幸いな事に現在時刻から学園に着く時間までに掛かる時間を算出すると、ここから出てすぐさま哲さんと合流して出発すればまだ十分間に合う時間であり、それはつまり、俺と、その後ろをヒヨコの如く付いてくる彼女が何とか入学初日から遅刻するという大ボケを何とか回避できるという事であった。
自分でも、探し物をしている少女がこんな薄暗い路地に居るとは思わなかったが、ただ何となく、けれど何故か”此処に居る”という謎の確信があったのだ。我が事ながら本当に謎である。
後ろから大きな声で「あの!」と声を掛けられたのは、そんな風に色々考えながら歩き遂に出口が見え、辺りが明るくなり始めた時だった。
その声のした方に体ごと振り向くと、明かりに照らされ後ろから付いて来ていた少女の姿をハッキリ見る事が出来た。
パッと見で見える手足の肌は程よく焼けた白色で、若さだけでなくしっかりケアもしているのだろう肌はツヤもあり、健康的なその身体の背丈は自分の177cmより一回り以上小さく、目測だが大体160に少し届かない位だと思われるそれは少し小柄な印象を受けるが、若く健康的な女性らしく出る所は出て細いところは細いその体は、彼女が幼い子供ではないと主張していた。
髪の毛は黒色だが、先端に行くほど鮮やかな赤色になっており、その黒の中に毛先と同じ様な赤い毛がメッシュのように混じっており美しいグラデーションを作っているそれは、一目見た瞬間に分かる彼女の明るく溌剌としながらも純粋無垢な様子から、恐らく染めたのではなく元からそういった色なのだと予想できる。
その顔は少し丸みを帯びた童顔で、リスを思わせる大きくクリッとした赤い目に小さな鼻と、女性らしさを持った健康的な色をした唇に小さな耳という小動物を思わせる大きさのパーツで構成されているそれらはしかし、彼女の明るく、それ以上に強い意志を秘めた瞳とキリッとした表情によって、女性らしい可愛い顔立ちという印象と共に、強靭な意思を備えた女性特有の凛々しさを醸し出していた。
長々と彼女の外見を語ったが、まぁ簡単に纏めると「お、可愛い子だな」というのが総評である。己が知ってる比較対象の総数が少ないから何とも言えないが、外見のカーストで言ったら多分かなり上澄みに位置するんじゃなかろうか?
そんな益体もない事をボーっと考えていると何やら意を決したように「よしッ」とつぶやいた後、此方に
「本当にありがとうございます。このお礼はいつか必ずします! 所でまだ名前を聞いていなかったのですが良かったら教えてくれませんか?」
と告げてきた。
それを聞き、そいえば自己紹介を未だしていないことを思い出した俺は居住まいを改めてから口を開いた。
「改めまして赤羽 響さん、俺は一応君と同じ今年入学の新入生の九十九 零。同じ学年同士よろしく」
そう、出来る限りにこやかに笑いながら応えたのだ。
きっと此処が総ての始まりだったのだと今なら分かる
俺と君が出逢った始まりの日
己の破滅と世界の救済に向かって終わりに向かう物語の始まり
その歯車がゆっくりと、しかし確かに回り始めたのだ
はい、なんとか書けました
書いてるうちに当初の予定の3倍以上の文字数になったけ、トリアエズヨシッ!
いや良くねえわ、これ書くのに2時間以上掛かったんだから何も良くないわ。
どれもこれもフワッフワッのプロットを元に書いてる山本珈琲ってやつのせいなんだ!