転生科学者は悪意を貫く。   作:田中滅

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今回の見所!アークさんの理想は!以上!


第三十七話 夢からの世界

「ミリ子の次は獅子王(ビーストマスター)だと……?あのわらびもちはどれだけの魔王と知り合いになれば、気が済む……阿呆を通り越しているな…終いには魔王にでも名乗りを挙げるのではないか?彼奴は」

 

魔国連邦(テンペスト)の第二の街である《デイブレイク》に聳え立つ〝タワー・オブ・アーク〟。愛刀を手に今日も今日とて、時の流れを気にする事もなく、流れ行く雲が浮かぶ青い空を見上げ、眠りを知らない体を愛用の椅子に委ねていた彼は耳を疑いたくなるホロビからの報告に呆れていた

 

「何でも、我々がヘルネストなる者と対話していた折に獅子王(ビーストマスター)が姿を現し、リムル様に謝罪をした後、互いの国との間に不可侵協定を結び、使者を派遣することとなったと聴き及んでおります」

 

「なるほどな、不可侵協定か……彼奴にしては、考えた方だ。確かに、互いの国に不可侵となれば、争いを避けることは造作もない……更に互いの利益並びに相互理解等も生まれる……と言ったところか」

 

事の顛末の後に確約された不可侵協定を聞き、冷静に思考を巡らせたアークはリムルの成長に僅かな喜びにも似た笑みを見せ、互いの国が如何なる立場に置かれているかを把握する

 

「流石の御慧眼にこのホロビ、感服致しました…。つきましてはリムル様より、言伝を預かっております」

 

「許す」

 

自分の報告から、答えを瞬間的に導き出す姿に主人に対する尊敬を更に深めたホロビ。その気分が良い内に今ならばと決意し、リムルからの言伝を伝えたいと願い出た

 

「近々、獣王国(ユーラザニア)に旅立つ使節団を見送る式典を催されるらしく、その使節団にイカヅチを筆頭にソルドを幾らか派遣してほしいとのこと……如何なさいますか」

 

「………承諾すると伝えろ。しかし、条件がある」

 

「条件ですか?」

 

僅かに渋りはしたが、更なる発展に幾分の対価は支払うべきだと考えたアーク。嫌々ながらも要求を受け入れ、その対価に見合った条件を立てる。主人の意図が理解出来ないホロビは困惑したような素振りを見せ、その視線をアークに向ける

 

「ソルドは赤子同然の感性を持たぬ意志亡きモノだ。それは魔国連邦(テンペスト)の中ならば、ある程度の融通が効き、俺の管轄下にあるということ……しかしだ、他国に出向き、外界との関わりを持つとなれば、何時如何なる状況で、技術が外界に漏れる可能性も無きにしも非ずだ。其れが利用されたとなれば、魔国連邦(テンペスト)の信用は地に落ちる……其れを理解しての申し出だろうな…?」

 

「はっ……心得ております。それにリムル様も、アーク様ならば、そのように仰られるだろうと…」

 

「ほう……少しは俺に対する理解を深めたか……あのわらびもちは…」

 

以前までのリムルならば、一から順に説明しなければならない程に理解力に乏しかったが、盟主の役回りを正式に引き受けた現在は、僅かな粗は目立つが多少也に物事に対する理解力を深めたらしく、アークが考えそうな事を事前に予測し、ホロビに指示を降していたようだ。それには流石のアークも予想をしていなかったらしく、興味深いと言わんばかりに微笑した

 

「あら、学べるべき時に学ぶのは大事なことよ?アーク様」

 

刹那、優しくも妖艶な声と共にアズは程良い感触の胸を背中越しに当てる

 

「……離れろ」

 

「あら?照れてる?アーク様」

 

相も変わらずに顔色一つ変えないアークに対し、悪戯っ子のように笑うアズ。心が存在しない体とは思えない感情に身を任せた行いは日常の風景と化している

 

「はんっ……まーた……鼻の下を伸ばしてやがるんですか?このポンコツは」

 

「アズ…我が父への過剰な触れ合いに対する説明を求めます」

 

「ふふっ…ナキもロゼッタ様も相変わらずのやきもち焼きね」

 

悪態を吐くナキ、僅かばかりの嫉妬を燃やすロゼッタ。両極端の反応を見せる二体に悪戯っ子のように笑うアズ。三人寄れば姦しいとはよく言ったモノで、彼女たちが現れると真剣な雰囲気が一気に崩れ去る

 

「おお!アーク様!ユーなんたらかんたらに行くことになったからよ、何体のソルドを連れてくぜ?問題ねぇよな」

 

「だからね、何度も説明したけど、アーク様は技術が漏洩する事を良しとしないから、ソルドを連れ出すのはダメだよ」

 

「お前には聞いてねえよ!ジン!俺はアーク様に言ってんだ!カミナリ落とすぞ!」

 

「ああもう……また振り出しに……」

 

言い合いをしながら、姿を見せた二体の影。如何やら、使節団に関する議題で揉めている様子だが、馬の耳に念仏状態のイカヅチにシズは頭を痛めるかの素振りを見せ、呆れた様子を見せている

 

「騒がしい奴等だ……」

 

その光景を見ていたアークは騒がしさを増す自らの周りを見守り、僅かに笑みを見せているかのように見える

 

「なんですか急に……笑うとか回路がショートしたんじゃないですか?そうでなければ、堅物と鬼畜を絵に描いたようなアナタ様が笑顔を浮かべるなんてことは有り得ません」

 

馬鹿犬(ナキ)。本当に…解体(バラ)し、スクラップにするぞ」

 

「落ち着いて、アーク様。ナキにはジンの御説教二時間コースが待ってるわ」

 

「二時間!?地獄じゃないですか!」

 

相も変わらずなナキであったが、ジンの名を聞いた瞬間に震え出し、更に説教の時間が設定されていると知り、今から来るべき生き地獄に蒼白とまでは行かないが明らかに絶望したモノに変化していく

 

「どうかした?ナキ。二時間くらい平気だよね?」

 

「…………あっ!イカヅチがなんかしてますよ!」

 

「苦し紛れに話を逸らしたか……馬鹿犬」

 

「見苦しいわね」

 

「まぁ、ナキの気持ちも分からなくないですが……というか、イカヅチは本当に何をしているんだ」

 

話題の転換を狙ったナキの見苦しさに白けた視線を向けるアークとアズ、ホロビは同情しつつも視線の先にいたイカヅチが本当に何かをしているのに気付き、問いを投げかける

 

「あ?ジンがうるせぇからよ、俺の配下からちったぁマシなソルドを厳選しようと思ってな」

 

「分かってたなら、最初からそうしてくれる?何度も説明したのはなんだったの……」

 

「アーク様。イカヅチのヤツ、完全にアーク様の意志を無視していますがよろしいので?」

 

結局のところ、反論していただけで実は全てを理解していたイカヅチにシズは疲れ切ったように突っ込みを放つ。主人の意志を無視していることに物申したいホロビは傍観者に徹するアークに問う

 

「それもまた進化の影響だろう……お前たちが従うべきは確かに俺の意志…。だが、自分が正しいと思う道

を歩むのも、それはそれで構わん…。光を歩むことは許さないが、闇に生きるのならば、如何なる道を歩もうと俺は咎めはしない。異論はあるか?」

 

その呼び掛けに応え、五体の魔人が大地に愛刀を突き立てる金髪の少年の前に傅き、頭を垂れる

 

「「「「「全てはアーク様の意志のままに…」」」」」」

 

その日、アークは久方振りに心という概念に触れた。しかし、彼がそれに気付くことになるのは今はまだ先の話だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「諸君、是非とも頑張ってくれたまえ!」

 

瞬く間に時は過ぎ、使節団出立の日。壇上に上がり、挨拶をするリムル。しかし、湧き立っていた筈の民衆は一瞬で沈黙する

 

「その芸を何時まで続ける……芸の一つも真面に学習(ラーニング)出来ないのか?お前は。流石の俺も冷却機能の故障かと思いたくなるレベルの寒さだ」

 

見覚えのある光景にアークは舞台裏で凭れ掛かりながらもため息にも似た息を吐いた

 

「なにおうっ!?だったら、お前がやってみろよ!!威厳を保つのは難しいんだからなっ!」

 

「生憎だったな……売り言葉に買い言葉で、出しゃばるような愚鈍な真似はしない」

 

「う、うどん……?何を言ってるんだ」

 

「その耳は飾りか?わらびもち」

 

「おう?ケンカか?なら、買うぞ?このボロット!」

 

「………貴様。新しい罵倒の種類が増えたからと、調子に乗るなよ?」

 

使節団を送る式典中であるにも関わらず、何時も通りに歪み合い、悪態を吐きあう。国を起こし、魔王と国交を結ぼうとも、変わらない関係が其処にはあり、日常の風景が存在していた

 

「リムル様、アーク様。今は喧嘩よりも優先なさるべきことがあるのではありませんか?」

 

「そうよ、シュナ様の仰る通り。今やらなければならないのは使節団出立の為に御言葉を掛けることよ」

 

「う、うむ…そうだな。こんなボロットと喧嘩してる場合じゃなかった」

 

「斬られたいのか?貴様は」

 

愛刀を手にギロっと睨みを効かせるアーク、それをアズが咎め、シュナは「急いでください」とリムルを再び舞台上に送り出す

 

「今回の目的は、相手と今後とも付き合っていけるかを見極めることだ。我慢しながらじゃないと付き合えそうもない関係なら必要ない。お前達の後ろには俺、アーク、それに仲間達がいる。恐れずに自分たちの意思はきっちりと伝え、その眼で友誼を結べるか否かを判断してくれ。頼んだぞ!」

 

「「うぉぉぉぉ!!!」」

 

一斉に湧き立つ国民達、その様子を見るだけで如何にリムルが信頼されているかが理解出来る。その様子を見守っていたアークの側に近付く影が一つ、気配に気付き、振り返るとベニマルが立っていた

 

「カリオンが信頼できる人物かを見極めてきます。ついでにイカヅチのお守りも任せてください」

 

「ああ……精々、悪意の的にはならないことだな」

 

意味深に告げるアークに、返事を返した使節団は星狼族(スターウルフ)の引く馬車?に乗り込み、見聞を広める為に獣王国(ユーザラニア)に旅立っていた

 

「ふぅ……ようやく、旅立ったか。う〜ん……なんというか、静かになったな」

 

壇上から降りてきたリムルは背伸びし、静かになった街の中を見渡す。その姿にアークは指を鳴らし、銀色の幕(オーロラカーテン)を出現させる

 

「俺は帰る。お前が居ない世界の方が静かだ」

 

「おーおー帰れ帰れ。あー……一つ聞いていいか?」

 

銀色の幕(オーロラカーテン)を潜ろうとするアークを追い払うように手を振っていたリムル。刹那、待ったを掛けたと思えば、罰が悪そうに頬を掻く

 

「なんだ……百済んことを言うつもりなら、俺は聞くつもりはない」

 

振り返ろうとする素振りすら見せないアークは、彼が紡ぎ出すであろう次の言葉が耳に入るよりも前に自分の領域に戻っていこうと歩み出す

 

「人類は本当に滅ぶべき悪(・・・・・)だと思うか?」

 

漸く、捻り出された質問に歩みを止めた。その質問はアークが掲げる信念であると同時に目的、其れはリムルが目指す世界には不必要なモノ、故に彼は問う。その真意を、アークの中で何かが変わっていると信じ、問う

 

「…………いずれ、お前も理解する。悪意あるところに争いが生まれ、その度に絶望するのが世界だ」

 

しかし、考えとは簡単に変わらない。かつて、世界そのものを敵に、人類滅亡を実現させた男の壊れた心には何も響かない。夢は絶望に変わり、人類は滅び、世界は地獄となり、悪意のみが彼の存在意義。故にその考えは揺らがない

 

「アーク……俺はお前が笑える世界を創る。それが俺の叶えたい願いだ」

 

笑える世界を創る。絵空事と笑われようと、叶えたい願いの為には、自分の力を惜しまない、其れがこの世界に転生した日からの付き合いである相棒に対する唯一の恩返し。常に闇を歩み、群れを嫌い、必要のないモノは斬り捨てるしかやり方を知らない機械仕掛けの友に手向ける彼也の恩返しなのだ

 

「やれるものなら……やってみろ。闇は光を歩まない……俺の理想はお前の掲げる世界には存在しない……それでも構わないなら、見守ってやる……足掻け、リムル=テンペスト」

 

そう告げると、アークは銀色の幕(オーロラカーテン)を潜り、自らの領域である《デイブレイク》に姿を消していく

 

「お前の理想を打ち砕いて、その世界を実現してやるよ。吠え面かくなよ?アーク=プロフェッサー」




世界を創る、それを聞いたアークは何を想い、何を成す……?

NEXTヒント 武装

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