MD次元ではカードの精霊はありふれたもの   作:春山乃都

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買い出し当番の『空牙団の剣士 ビート』とお肉問題

 遊戯王マスターデュエル。通称『MD』

 

 

 

 

 言わずと知れたデュエルモンスターズをより手軽に、より気軽に、そしてより幅広い世代の人々が楽しめるようにと生み出された今となっては世界の中心とも呼ばれるようになったコンテンツ。

 

 その発展が精霊たちとの交流を生み、その結果凄い力を持つ精霊たちも案外人間と変わらない様な事で悩むののだと知られる事となった。

 

 

 

 これは一人のデュエリスト『稲田遊賀』と彼と共に在る精霊が、買い物に出かけると割とよく出会う精霊と何てことは無い世間話をする様子を描いた物語である。

 

 

 

「うむむむむ…」

 

 それは何時も利用しているスーパーに訪れた時の事、今日は豚肉安いし豚丼にでもするかーなんて事をシェイレーンと話しながら精肉コーナーに来たら、唸る精霊『空牙団の剣士 ビート』が並ぶ肉とにらめっこしていた。

 

「んー…ん? あ、稲田さんシェイレーンさん! こんにちは!」

「こんにちはー」

「こんにちは…また随分と悩んでるみたいね?」

「えぇそうなんですよ」

 

 と、世間話を始める。そう実の所彼とは知り合いなのである。と言っても特に何か特別な事があって知り合ったとかではなく単にいつも利用するスーパーが一緒で、何となく話をする程度には仲良くなったと言う感じである。

 

「今日は主たちから好きなお肉を買ってきていいと言われたのですがね。豚肉と牛肉のどちらを買おうか迷ってしまっているんですよ」

 

 はぁ困ったと頬をむにむにと揉むビート。

 

「主と我らが叡智たるウィズが何でもいいが一番困るといつも言っているのはこういう事なのでしょうね、あぁとても迷う」

「まぁ確かにそれ言われると困りますよねー」

「確か貴方の所は他の『空牙団』の精霊も居たわよね。何が食べたいかとか聞かなかったの?」

「聞いてませんよ、いえ聞けないと言うべきですかね。今夜のお肉何が良いかなんて聞いた日にはもう豚肉派と牛肉派に分かれてお肉大戦勃発して空牙団が空中分解してしますよ。そうならない為に主とウィズ以外には内緒で買い物に出て来たのです。その結果こんな悩んでいる訳ですけど」

 

 言って、また唸りながら頬を揉む。成程なと頷きながら並んでいる肉を見て思う、こういう時好みが違う複数の精霊が居る所は大変なんだろうなと。

 

「じゃああれだ、夕食に何を作るかで選ぶ肉を決めるとかどうです?」

「だめです、買ってきたお肉で夕飯どうするか決めると言っていたので…因みにお二人は今夜何を作る予定で?」

「豚丼、今日は結構豚肉安めですし、それに……あとなんか理由があった気がする、なんだっけ?」

「米の量が微妙だから消費しきっちゃおうとか何とか言ってなかった?」

「そうそうそれだそれ。てかそうだ米も買うつもりだったんだ思い出した。ありがとうシェイレーン」

「どういたしまして。お礼はプリンで良いわよ」

「はいはい」

「豚丼…」

 

 そんな二人の会話を横目に考え事をする様にわずかに上を見るビート。少ししてタラリとよだれが垂れ、正気に戻り慌てて拭った。

 

「良いですね豚丼! 僕も食べたいですよ‼」

 

 よしそれじゃあ決めたと豚肉に手を伸ばし…ぴたりと止まる。如何したのかと思っていたら、ビートの視線が牛肉に注がれていた。

 

「ぶ、牛丼も美味しそう…っ‼」

 

 どうやら抜け出し難い沼に飛び込んでしまったようだ。あわあわと視線を牛肉と豚肉とを行ったり来たりさせながら頬を揉む。

 

「うぬぬぬぬ。ど、どうしようっ」

「それに関しては完全に好みの問題だから俺からは何も言えませんよ…あれシェイレーン?」

「居るわよ? ちょっとお米取りに行ってただけ」

「おぉありがとう」

「お礼は豚丼のお肉ちょっと多めでいいわよ?」

 

 と、会話している間にも彼は悩む。

 

「牛丼…いやとんかつも捨てがたいあぁでもそれならぎゅうかつだって美味しそう…は、焼き肉丼というのも犯罪的、でもそれで言ったら生姜焼きだって」

「ねぇそんなに悩むなら両方買って行けば良いんじゃないの?」

「あ、それは前にやって牛肉派が牛肉を独占し、同じように豚肉派が豚肉を独占、その上で牛肉も食べたかった豚肉も食べたかったの不毛な争いになりまして…結果今はお肉を買うときはどれか一種類だけと決まったんです」

 

 本当に精霊が沢山いると大変そうだなと思いながらふと気になった事を口にする。

 

「じゃあ鶏肉は?」

「…⁉ そうでした、鶏肉がありました‼ 牛肉と豚肉に夢中ですっかり忘れてました⁉ ここで脅威の第三勢力が出てくるなんて…鶏肉と言ったら照り焼きにチキン南蛮に」

「あたしはあれが好きね、あれ」

 

 遊賀の背中に引っ付き溶けるようにだらけるシェイレーンはそのままいう。

 

 

「唐揚げ」

 

 

 店内に『サンダーボルト』が落ちる音がした。直撃したのは目の前に居る『空牙団の剣士 ビート』。その視線は先ほどまでとは違い牛肉でも豚肉でもなく鶏肉に固定されていた。如何やら献立が決まったようである。

 

 

「……ねぇマスター」

「なんだ?」

 

 何となく何が言いたいのかを察しながら訊く。

 

 

「やっぱりプリンじゃなくてシュークリームにしていいかしら?」

「良いんじゃないか?」

 

 全然違ったわ。と、本来の目的の豚肉ではなく鶏肉を見ていた彼は、苦笑を浮かべながら豚肉を手に取った。




めちゃ雑人物紹介こーなー


『稲田遊賀』

 明日は唐揚げにしようと心に決めながら豚丼作った。しいて言うなら豚肉が好き。


『ティアラメンツ・シェイレーン』

 マスターが作るものは何でも好きな好意を隠そうともしない子。豚丼は美味しくいただいた。そして勢い付け過ぎてシュークリームの反乱にあった。割と鶏肉好き。


『空牙団の剣士 ビート』

 大量の鶏肉を掲げながら唐揚げ食べたいと高らかに宣言した瞬間、その時だけは『空牙団』にとっての英雄は彼だった。お肉は全部好き!


『空牙団の英知 ウィズ』

 好きなの買って来いとか言っといて実はお使いメモに牛肉としっかり書いといた牛肉派閥の刺客。のちにばれて主と『空牙団の懐剣 ドナ』率いる豚肉派に処された。


『空牙団の夕食』

 皆、完全に油断していた。出てくるのは唐揚げであり、肉も鶏。であれば争いなど起きないと油断していた。それが覆されたのは運ばれてきた巨大な二皿の上に乗った塩味と醤油味の唐揚げの山を見た時だ。皆の瞳が鋭く輝くのと同時に。

 大皿の唐揚げにレモン汁を直接かけると言う大罪を『空牙団の参謀 シール』が犯した結果それどころでは無くなった。

 皆で囲んで参謀を処している光景を見ながら唯一の魚派の『空牙団の大義 フォルゴ』は静かにため息を吐いた。
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