遊戯王マスターデュエル。通称『MD』
言わずと知れたデュエルモンスターズをより手軽に、より気軽に、そしてより幅広い世代の人々が楽しめるようにと生み出された今となっては世界の中心とも呼ばれるようになったコンテンツ。
世界中のデュエリストたちを繋いで見せたMDは、それだけにとどまらず別世界とも、『精霊界』に住まうカードの精霊とデュエリストたちを繋いで見せた。
これは、一人のデュエリスト『稲田遊賀』とそんな彼と共にある精霊との何気ない日常を描いた物語である。
なお、それだけの物語なのでデュエル描写は手札から墓地に送られる‼
「そういえばお前この前ティアラメンツデッキが嫌いだか鬱陶しいだか言ってたよな」
「そうね、相手がそれを使うと分かった時点でサレンダーしたくなる程度には嫌いよ」
「極まったところまで行きかけてねぇかお前?」
パック牛乳を飲みながらデッキ構築を考えていた俺。やっぱり墓穴抹殺の二種は入れて置かないと落ち着かないなぁなんて思いながらふと視界に映った画面上に映し出された『ティアラメンツ・シェイレーン』のカードを見て、何気なく思ったことを口にしたら即答された。
思わず振り返ってみれば、いつもと変わらない様子で電子書籍『それ行けスプリガンズ‼ ~大砂海に眠る謎~』と言うカードの精霊『スプリガンズ・キット』が自らの体験談を元に描いたなんやかんやあって最終的にスプリガンズが合体変形からのエクシーズチェンジして『天霆號アーゼウス』が全て薙ぎ払って毎回終わる事で有名な漫画を読みながら宙に浮かんでいる。
「それがどうかしたの?」
「え、あぁいや大した事は無いんだがそこまで嫌ってると友人関係は大丈夫なのかなと」
「別に何の問題もないわよ?」
「そうなのか? 見た目とか名前とか同じだから気にするもんだとばかり思ってたけど」
「そうねー」
電子書籍と閉じつつ軽く腕を組んで考えるシェイレーン。暫くして顔をあげて答えた。
「別になんともって感じかしらね、カードの方は引きちぎってばら撒きたい位嫌いだけど精霊としては特に何も、完全に別の存在な訳だし…ほら、マスターだって苗字や名前が友達と同じってだけの赤の他人が犯罪起こしたって知ってもへぇーって感想しか出ないでしょう?」
「あぁーそういう感じなのか」
「そういう感じなの」
成程なぁ。
「って事は別にMDが原因でメイルゥやハゥフニスとの関係が悪くなったって事は無いのか」
「そんな事にはならないわよ。メイルゥとは相変わらず仲い良いし。まぁハゥフニスに関しては会った事無いからこれと言った感想は無いけど」
「え、会ったことないのか?」
「無いわよ? 寧ろ『ティアラメンツ・ハゥフニス』って言うカードの存在をMDで知ったし、実際に会った事はさっき言った通り無いし……あ、でもマスターの買い物についていった時に遠目にそれっぽい子は見たわねって、これじゃ結局会った事あるとは言えないわね」
「ほーん」
あれか、同じ町に住んでいるけど別に会ったことは無いって感じの距離感。確かにそれなら仲が悪くなるも何もないか。
「ん? じゃあお前は誰には会ったことがあるんだ?」
「それって『ティアラメンツ』の中で?」
「ま、そうだな」
そうね、と言いながら近づいてきて開いていた画面をのぞき込んでくるシェイレーン。暫くしてから軽く指さして見せた。
「とりあえず、さっきも仲が良いって言ったけど『ティアラメンツ・メイルゥ』とは知り合いと言うか友達ね。住んでいた場所が一緒で昔から良く一緒に遊んでいたのよ」
「所謂幼馴染的な感じか?」
「まぁ間違ってはいないわね。あとあたし以外の『ティアラメンツ・シェイレーン』も居たわね」
「それ要するに自分以外の自分って言ってるけど違和感とかないのか?」
「別に? まぁマスターたち人間にはちょっと納得し辛い所ではあるかも知れないわね。取り合えず別に同じ見た目同じ名前存在が居てもそこまで気にするようなものでは無いのよ、流石に奇行とかされてたらちょっとあれだけど」
「そういうものか」
「そ、あと居る人と言えば『ティアラメンツ・レイノハート』とも割と話をする程度には仲が良いわよ。あぁあと『クソ女』も居るわねそういえば」
「へぇレイノハートとも仲がいクソ女⁉ どうした急に⁉」
「え?…あぁ、そっかそれじゃあマスターには伝わらないわよね。『ティアラメンツ・キトカロス』って言えばわかるでしょう?」
「お前『ティアラメンツデッキ』は嫌いでも精霊は別にそんなことは無い的な事言ってたよな」
「えぇ関係ないわよ? そういうの関係なく嫌いなだけ」
「余計悪くなってないかそれ⁉」
一体何があったと反射的に言ってから、あまりこういう事は言うべきではなかったと思うがすでに遅く、目の前のシェイレーンは虚無顔で答えた。
「MD始めたばかりで初期デッキしか持ってないあたしに対して『イシズティアラメンツ』持ってくる様な奴クソとしか言いようがないでしょう」
「想像以上の畜生具合だった⁉」
嘘だろ? え、嘘だろおい⁉ デュエリストとしてと言うか人としてやって良い事と悪い事があるだろ。完全に心に傷負ってるよ、と言うかシェイレーンが『ティアラメンツデッキ』嫌いなのそれが原因じゃねぇのかおい?
「それだけじゃないわ。頑張って初めて自分で組んだデッキは『ロンゴミアント』だされて何もさせてもらえなかったし友達と相談して組んだ『エクソシスター』を持っていったら『ふわんだりぃず』持ち出してくるし……あたしは絶対あの女を許さないわ!」
「う、うわぁ…」
絶句である。カードそのものとカードの精霊は完全に別物とは聞いたしそんなような事彼女も言っていたが、そこまで悪い意味で違うとは思いたくなかった。
「ま、あの女は今『S-Force』の世話になってるから暫く会う事は無いでしょうけどね‼」
「え、なに精霊界でも制限とか食らってるのか?」
「そういう訳じゃなくてレイノハートに突き出されたのよ。ついこの間『寿司屋オベリスク』で食べるだけ食べた後に、レイノハートを特殊召喚して自分は墓地に逃げるみたいな感じで奢らされた所為で堪忍袋に限界来たみたいなのよね」
「普通に性格が悪い…‼」
なんか精霊がカードに書かれてる効果と同じような事が出来る事にちょっと感動したい気もするけどそれ以上に性格が! 悪い!
「ちょっと待ってくれ、え? 『ティアラメンツ・キトカロス』ってみんなそうなのか?」
「そんな訳ないでしょう⁉ 少なくとも人間界であった他の『ティアラメンツ・キトカロス』は尊敬すべきお人だったわよ‼…ただ」
「ただ?」
「あの人たちの笑顔見てるとどうしてもあの女に満面の笑みで『ドライトロンデクレアラー』で盤面制圧された時の気持ちが蘇って苦い顔浮かべてしまうのよね…」
「おぉ、もう」
申し訳なさそうな表情を浮かべるシェイレーンに思わず顔を覆う。とりあえずそのシェイレーンの知っているキトカロスは他の『ティアラメンツ・キトカロス』に全力で土下座でもして謝った方が良い。主に風評とかそういう意味での被害に対して。
「そのなんだ、菓子でも食べるか?」
「……マシュマロ食べたい」
「じゃあ買いに行ってくる…あぁいや一緒に行くか?」
「…行く」
「よし、で帰ってきたらデュエルしようデュエル。こう、良い感じの奴で、な? 楽しくデュエルしよう」
「…うん」
その後、マシュマロを美味しくいただいた後行われたデュエルは、『ディメンション・アトラクター』をぶん投げられて俺のデッキが機能不全に陥りその結果ボコボコにされた。
いやぁ……遊戯王楽しいなぁ‼
ま、シェイレーンが楽しそうだったからそれで良いんだけどさ。
めちゃ雑人物紹介こーなー
『稲田遊賀』
・一応主人公、なんか何時も牛乳飲んでる鳥みたいな髪型をした少年。現在絶賛一人暮らしに挑戦中のMDランク『プラチナ』の中堅デュエリスト。主に『芝刈りウィッチクラフト』『空牙団』などを普段使いしており、最近『儀式ドラグマ』も組み始めた。MDはルールを守って楽しくデュエルする主義。
魂のデッキ『■■■■■』
『ティアラメンツ・シェイレーン』
・主人公遊賀と共に在る精霊。普段水中を泳ぐかの様に宙を漂っている、漂いながら菓子を食し零して汚す為結構良く怒られる。デュエリストとしての腕は悪くないが微妙に運が悪い。主に『儀式ドラグマ』『エクソシスター』を良く使用している。
何故お前たちの様なカードが生まれたのだと疑問を投げかけられた、その問いの答えを彼女は持たない、というか彼女が一番知りたい。せめて墓地融合するなら除外されろと今日も画面越しに怒り狂う。
『ティアラメンツ・キトカロス』
・名前だけ登場の精霊。実は使用したという『イシズティアラメンツ』は制限も何もない状態だったそうで色々なやばいカードが三枚積みされていたらしい、なんて事が後に語られた。控えめに言ってこの世の邪悪では?
現在『S-Force』でお世話になっているらしい。