MD次元ではカードの精霊はありふれたもの   作:春山乃都

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『スプライト・エルフ』とカードの自分

 遊戯王マスターデュエル。通称『MD』

 

 

 言わずと知れたデュエルモンスターズをより手軽に、より気軽に、そしてより幅広い世代の人々が楽しめるようにと生み出された今となっては世界の中心とも呼ばれるようになったコンテンツ。

 

 そのコンテンツによって人々と繋がった精霊たちもまた楽しんでいる様だが、どうにも納得できないこともあるようだ。

 

 

 

 これは一人のデュエリスト『稲田遊賀』と共に在る精霊が喫茶店に訪れた精霊とちょっとした雑談をする様子を描いただけの物語である。

 

 

 

「これを見た時から思っていたんだ」

 

 バチバチビリビリと『ティアラメンツ・シェイレーン』の隣に立つ精霊から音が響く。音からしてとても危なそうだが、意外と害はなく。触れても少しぱちぱちとした面白い感覚が走るだけ。なのだが。

 

 

「自分は何故まだ禁止になっていないのだろうか?」

「いや知らないわよ」

 

 

 彼、或いは彼女とそのカード、『スプライト・エルフ』は自分自身そう思う程度には、酷い有様の様だ。

 

 

 目の前で互いのマスター達がデッキ構築のあれこれ話し合って盛り上がっているのを見ながら『スプライト・エルフ』は己自身ともいえるカードをシェイレーンに見せながら続ける。

 

「ほら、見てくれ。何処を読んでも強い事しか書かれていない…これがなぜ許されているんだ?」

「言ってる事は分かるけど本当に知らないわよ」

「宣告者サマステキ」

「うーむ、まぁそうなのだが……所で彼女は、その、なんだ?」

「気にしなくても良いわ。唯の壊れた人形みたいなものだから」

「宣告者サマステキ」

「えぇ…?」

 

 困惑している様だが、実は自分自身が一番困っていたりするシェイレーン。仕事に来てみたら何故か『ティアラメンツ・キトカロス』が居たのでとても驚いていた。その状態を知って更に驚き、ちょっと憐れんだ。

 

「ふぅ、三番テーブル空きましたー‼ あ、キトカロスさん調子はどうですか?」

「宣告者サマステキ」

「流石ですキトカロスさん‼ 信者の鏡ですね‼ さぁ共に『宣告者』さまへの信仰を世界に広げましょう‼」

「宣告者サマステキ」

「……本当に大丈夫なのか?」

「はっきり言って大丈夫ではないけどあれに関わりたくないのよ」

「それは、まぁ……そうだな」

 

 二人してすっと瞳孔が開ききっている『ティアラメンツ・キトカロス』から視線を逸らす。なんというか初めて会った時から瞳孔が開きっぱなしだった『宣告者の神巫』と違って前はそうでなかっただけに、少し憐れである。

 

 なお、客であるデュエリストたちも最初は驚いていたがなんだかんだまぁそういう奴なのと順応して今では彼女とデュエルを楽しんで居る程である。なんでも典型的な『ティアラメンツデッキ』だから調整に丁度いいとかなんとか…ティアラメンツ相手にそれ言えるのやばいのではと思うシェイレーンだった。

 

「まぁ、どうしようもないのは確かか。さてそれでは話を戻してもいいだろうか?」

「あ、戻すのね」

「あぁ、時間を取らせて申し訳ないがこんな話をする機会が中々なくてな」

 

 良いながら軽く肩を竦める。まぁでしょうねと思う、傍から見れば自分否定している様なものだし。

 

「そもそもの話なぜこのカードの自分はこんな効果になっているんだ? 色々と書き間違えたと言われても納得できるのだが?」

「でも実装されてるって事は間違いではないって事でしょう?」

「そうなのだがなぁ、この蘇生効果絶対間違えてるだろう。自分ターンに一体好きなレベル2モンスターを選べるだけで間違いなく可笑しいが相手ターンでもそれが出来るのは明らかに過剰だ」

「それは大体のデュエリストが思ってる事よ」

「だろう? それに加えてリンク先のモンスターに耐性付与だ…必要かこれ? 本当に必要だったかこれ?」

「個人的な意見になるけどいい?」

「構わない」

「絶対に要らないわ」

「だよなぁー、これ完全に過剰だよなぁー」

 

 思わずと言った様子で頭に手をやる『スプライト・エルフ』。その拍子にバチリと電気が弾けるが気にする様子はない。

 

「そもそも、レベルランクリンクのどれでも2モンスターなら素材にできるのは可笑しいだろう。効果的にそれできちゃだめだろうこれ」

「まぁレベル2モンスター採用されてるデッキなら取り合えず入れとけって感じよね」

「もう少し制約なりなんなりあった方が良かっただろこれ?」

「一応リンク素材にできないって書かれてるわよ?」

「召喚されたターンだけだし、大体『ギガンティック・スプライト』の素材にできるからあまり関係ない気がする…いや、無かったらなかったでもっと酷い事になっていたのだろうが」

 

 本当になんで禁止になっていないんだ? と首を捻る『スプライト・エルフ』に、シェイレーンは優しく肩を叩いた、少しびりっと来た。

 

「まぁ言いたい事は分かるわ」

「そうか」

「だってあたしだって同じような事思ってるもの」

 

 主に『ティアラメンツ』というテーマ全体に対して、何故ティアラメンツ融合モンスターしか召喚できない的な制約が書かれていないのか、書き忘れただけと言ってくれと。というか融合時にデッキに戻るな除外されろよと毎日の様に思っている。

 

「……なんで、こんな効果になっちゃったのかしらね?」

「……なんでだろうなー」

 

 二人は唯々、首を傾げるばかりであった。




めちゃ雑人物紹介こーなー

『稲田遊賀』

 今日はデュエルしてただけ。語る事無し。


『スプライト・エルフ』

 MDに触れるまでカードとしての自分がどんな効果なのかを知らなかった。知ってドン引きした。というか『スプライト』全員が自分のカードの効果にドン引きしてた。そしてそれと同等か以上にやばいテーマがあると知って更にドン引きし。

 そんな奴らがトップ層には通用しないと知って愕然とした。


『ティアラメンツ・シェイレーン』

 常々、何故『ティアラメンツ』などと言うテーマが生まれてしまったのかと考えている『ティアラメンツ』否定派。MDマスターランクの化け物どもを見てこいつらをどうにかしようと生み出されたのではと最近思い始めた。この次元に置いてはあながち間違いでもないかもしれない。


『宣告者の神巫』

 今日も良い信仰と布教でしたねキトカロスさん‼


『ティアラメンツ・キトカロス』

 宣告者サマステキ。


『客のデュエリストたち』

 なんか変なキトカロス居るなと思いながら普通に順応した。なんだかんだここまでテンプレな『ティアラメンツデッキ』といつでも戦えるの良いなと調整中デッキの調子を確かめる為にデュエルを挑むようになった。全体的な勝率は大体4割である…調整中のデッキを使っての勝率としては狂っているの一言である。


『筑波店長』

 流石にやりすぎたかなと思ったのか『宣告者の神巫』の操り人形もどき状態のキトカロスが元に戻るまで保護する事にした。と思ったら『宣告者の神巫』が引きずって来たものだから吃驚。正直帰せる状態じゃなかったからとりあえずちょっと手伝ってもらう事にした。手伝い自体は出来てるが果たしてその判断が正解だったのかは謎である。


『崇高なる宣告者』

 頭を抱えている。本当にもう、どうしようこれ。取り合えず『宣告者の神巫』を全力でしばく事にした、というかしばいた。喜ばれて更に頭を抱えた。



『ティアラメンツ・レイノハート』

 シェイレーンに呼ばれた人。またあいつ何かやらかしたのかと思いながら仕方なく来たらなんかぶっ壊れてた。なに、この…なにこれ? え、こわ。
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