MD次元ではカードの精霊はありふれたもの   作:春山乃都

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休日の『ドラゴンメイド・ティルル』の料理

 遊戯王マスターデュエル。通称『MD』

 

 

 言わずと知れたデュエルモンスターズをより手軽に、より気軽に、そしてより幅広い世代の人々が楽しめるようにと生み出された今となっては世界の中心とも呼ばれるようになったコンテンツ。

 

 その広がりが生んだ精霊との交流だが、超常存在の様に思われる彼らも人並みと言える程度には努力していて…それが報われるとは限らないのも、また人と同じなようだ。

 

 

 これは一人のデュエリスト『稲田遊賀』と共に在る精霊が出くわした精霊との大したことない会話を描いただけの物語である。

 

 

 彼女、『ティアラメンツ・シェイレーン』には朝食前に軽く散歩をすると言う日課がある。少し前からなんか変な事に巻き込まれたりしてやめようかとも思ったこともあったが、なんだかんだ朝の雰囲気と噴水での水浴びが気に入っているから続けているのだが。

 

「「よろしくお願いします」」

「どういう訳よ」

 

 目の前で真剣な表情を浮かべながら正座している二人の精霊、何時ぞやの『ドラゴンメイド・ティルル』と『ドラゴンメイド・ラドリー』を見てやっぱりやめておけばよかったかもなんて思った彼女だった。

 

「あぁー、取り合えずまた試食って事で良いの?」

「です‼ 今日は『ティルル』が頑張って作った料理の評価をお願いします‼」

「頑張ったので評価ください」

「あぁ、そう」

 

 言いながら、やっぱり二人の前に置いて在る四角い箱に目を向ける。だから何で箱? 今回のは文字も書いて無いし。いやそもそもだと気になった事をティルルに問いかける。

 

「貴女、今日はちゃんと休みなの?」

「です‼」

「えぇはい。ちゃんと二人とも休みです」

 

 ですのでどうぞ遠慮なくと、頭を下げられる。そうは言われてもと思いながら視線を彷徨わせてから、仕方がないと溜息一つ。置かれている小さな箱を指さした。

 

「じゃあ…もらおうかしら」

「かしこまりです‼」

 

 勢いよく箱を掴み蓋を開けて取り出されたのは…明らかに箱よりもでかい一本のフランスパンだった。

 

「え、それどうやってその箱に入れてたのよ?」

「メイド流収納術の賜物です」

「です‼ どうぞ‼」

「やっぱりすごいのねメイド」

 

 と、食べやすい大きさに切られたフランスパンを受け取る。そう言えば何で普通に試食する事になっているのだろうかと今更疑問に思いつつ、一口。

 

「どうですか⁉」

「んー…普通ね」

「ンファァー…‼」

「ティルルー⁉」

 

 なんか前に見た気がする二人の反応。いやでもそうとしか言えないしと思うシェイレーン。というかどうやったらこんな普通以外の感想が出てこないパンが出来るのか気になって仕方がない。

 

「なんかこう…工夫とかはしてるの?」

「いえ、取り合えずレシピ本に書いてある通りに作ってます…」

「だから普通になってるって事?」

「いえ、そう言う訳ではないと言いますか」

「こちらをどうぞ!」

 

 と、やっぱり小さな箱から取り出された二本目のフランスパンを切り分けたものをラドリーに差し出される。と言っても見た目は殆ど同じなのだが、なんて思いながら一口。

 

「あ、美味しいわねこれ…こっちはアレンジしてあるの?」

「いえ同じ時間帯に同じレシピと材料でパルラに作ってもらったフランスパンです」

「あ、そうなのね…同じ? え、同じなのこれ⁉」

「です‼」

「…はい」

 

 どういう事なのそれ。本当にどういう事なのそれ⁉ 材料からなにから全部同じなら同じ味になるものじゃないの⁉ 駄目だ料理を普段していないから実際どうなのか分からない、助けてマスターと愛しき己の主に助けを求めるシェイレーン。

 

「もう、だめよ。こんな普通の料理しか出来ないなんてメイド失格だわ。『ドラゴンメイド』で居られないわ‼」

「辞められるものなのそれ?」

「そんなティルル⁉ ドラゴンメイド辞めちゃうの⁉ ティルルが辞めたら誰がご主人様の朝ごはんのパンを焼くの⁉」

「なに見せられてるのよあたしは?」

「私なんかが焼いたパンよりも他の子が焼いたパンの方が美味しいのだから私が焼く必要なんて‼」

「でもご主人様は朝はティルルの焼いたパンに限るって、このパンが大好きだって言ってたよ‼」

「え、マジ?」

「あー…」

 

 キョトンとした表情を浮かべるティルルを横目に、ラドリーの言葉に思わず頷くシェイレーン。確かに食べたフランスパンでどちらの方が美味しかったかで言えばパルラが作ったと言う方が美味しかったが…毎日食べるならどちらかと言えばティルルが作ったと言うフランスパンの方だと思える。

 

 なんというか、典型的な食べてて飽きが来ないタイプの味だなと。

 

「え、本当にそう言ってたの?」

「うん! 毎日やっぱりこれだって言ってたよ‼」

「マジか、マジかぁ! そっかぁー‼」

 

 心の底からうれしいのだと口にせずとも分かる。というか尻尾が凄い事になってるから見るだけで分かる。シェイレーンだって同じような事をマスターから言われたあんな感じになるだろうと思った…ちょっと料理勉強しようかなとも。

 

「よし、良し‼ 自信ついた! ありがとうラドリー‼ それから貴女も、ありがとうございますシェイレーンさん‼」

「いえあたしただパン食べただけなのだけれど」

「いえいえそんな事は在りませんよはっきりと思った事を言っていただけてとても感謝しています」

 

 これはお礼ですと、残りのフランスパンを箱に入れて渡してくる。またかと思いつつもまぁ貰えるならばと受け取っておく。それではと頭を下げるティルルと手を振るラドリー。その場に立っているシェイレーンは、なんか嵐みたいだったなと歩いてく二人を見ながら思う。

 

「あら、おはようございますわシェイレーンさん」

「ん? あ、ラビュリンスじゃない。おはようってその恰好」

 

 そう挨拶してきた『白銀の城のラビュリンス』の格好を見る。分かり易く釣り人スタイルであった。

 

「また釣りから返ってきたところ?」

「今日はこれから向かう所ですわ‼ 何時もの如く『激流葬』で海まで行ければよかったのですが今日は上手く近くの川に流れついてしまったのですわ」

 

 『激流葬』の使い方を致命的に間違っている気がしてならない。そう思っている去っていく二人のドラゴンメイドを見て、あらとラビュリンスは反応する。

 

「彼女、ティルルさんですの? この時間にここに居るのは珍しいですわね」

「え、知り合いなの?」

「ですわ‼ 良く一緒に釣りを楽しむ仲ですわ!」

「意外な繋がりね」

 

 本当に、意外としか言いようが無い。

 

「彼女はすごいですわよ‼ メイド流釣り術なる技を用いてクロマグロを一本釣りしたときは流石のわたくしも度肝を抜かれましたわ‼」

「…メイド流」

「? どうかしましたの?」

「あぁいえ大したことじゃないのだけど」

 

 ただちょっと思った事があるだけ。それはなにかと言えば。

 

 

「やっぱり、メイドって凄いのね」

「ですわね‼」




めちゃ雑人物紹介こーなー

『稲田遊賀』

 散歩から帰って来たシェイレーンがなんか貰ってきてまたかと思った人。美味しいとか不味いとかではなく唯普通でしかないフランスパンに驚いたがなんか結構食べやすいから朝食にピッタリだなと思った。この後シェイレーンと一緒にお菓子作りをする事になる。


『ティアラメンツ・シェイレーン』

 やっぱり朝食にぴったりだなと改めて思った子。料理がしたいとマスターに言ったら一緒に作る事になってなんか違う気がすると思いながらもそんな事どうでもいい位一緒にする菓子作りを楽しんだ。思ったほどうまく作れなかったが、まぁ最初はこんなもんだと笑う彼を見れたからそれでよし。


『ドラゴンメイド・ティルル』

 料理は乾パンと羊羹以外は何を作っても普通になるメイド。今回、普通以外の何物でもない料理が好まれているとラドリーから教えて貰えて自信が付いた。実は彼女たち『ドラゴンメイド』の主人に一番重宝されている事にはまだ気が付いていない。何をどう作っても平均値であると言うのはそれはそれで便利なのである。

 普段の休日は釣りに出かけている。量は常識的範囲内なのだが何故か異常に質が良いものを釣ってくる。釣りに出かけると結構な頻度でラビュリンスと出会い、一緒に釣りをする。



『白銀の城のラビュリンス』

 『激流葬』を間違った使いこなし方をしてる姫様。ドラゴンメイド・ティルルとはよく釣りをする仲である。普通の魚から普通で無いものまで種類問わず只管量を釣る。


『漁師』

 何時来ようとティルルとラビュリンスを乗せてくれる優しい人。別に関係は無いが二人が来るようになって金銭的余裕が出来た。



『ドラゴンメイド・パルラ』

 名前だけ登場。朝起きて部屋を出た直後にキッチンまでさらわれパンを焼かされた。意味が分からず宇宙猫みたいになった。趣味は家庭菜園でトマトの出来が良いとの事で、最近は米作りも始めたとか。今日も田んぼの様子が良い感じでご機嫌である……家庭、菜園?
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