MD次元ではカードの精霊はありふれたもの   作:春山乃都

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買い物中の『ゴーストリックの魔女』は苦労人

 遊戯王マスターデュエル。通称『MD』

 

 

 言わずと知れたデュエルモンスターズをより手軽に、より気軽に、そしてより幅広い世代の人々が楽しめるようにと生み出された今となっては世界の中心とも呼ばれるようになったコンテンツ。

 

 それが齎した人と精霊との交流だが、やはり人と精霊は違う存在。時には彼らもやり過ぎてしまう事があるようで。

 

 

 

 これは一人のデュエリスト『稲田遊賀』と彼と共に在る精霊が買い物に出掛けた際の出来事を描いただけの物語である。

 

 

 

 それは柔軟剤がもう無い事に気が付き、それを買いに何時も利用している店に訪れた際の事。

 

「ほぉわちょ⁉」

 

 なんて声が聞こえたのは何が足りなかったかな、なんて遊賀とシェイレーンが話しながらいつも利用している店をうろついていた時だ。何事だと好奇心から声のした方へと向かう二人が見たのはふわふわと浮いている箒に状態で必死に倒れて来たのだろう商品を抑えている『ゴーストリックの魔女』だった。

 

「ふ、ぐぉおおお…‼ あ、ちょ、そこの二人、その助けてくれないかしら⁉」

 

 徐々に下へ下へと落ちていく箒の上の彼女は二人の存在に気が付きそう言葉を口にする。二人はお互いを見て。

 

「……取り合えず助けてくるわね」

「あぁ、頼むわ」

 

 無視するのもなんなので、そうする事になった。

 

 

 

「ありがとうね‼ いきなり倒れてくるわ体勢が酷いわでどうしようかってなってたのよ」

「まぁあのままでもすぐに店員が来てた気はしますけどね」

「ふ、それまでに商品ごと引っ繰り返ってた自信があるわ」

「それは胸張って言うような事なの?」

 

 まぁ違うわねとシェイレーンの言葉に返しながら、箒に引っ掛けてある買い物かごの中を確認する『ゴーストリックの魔女』は、少ししてから良しと頷いた。

 

「結構揺らしちゃったけどぐちゃぐちゃにはなってないわよ、良かった」

「なんか随分と沢山レトルト食品を買うみたいだけどどうかしたの?」

「ちょっとねー。マスターが腕怪我しちゃったのよ」

 

 チラリと彼女の買い物かごを覗いたシェイレーンの言葉に思ったより重い言葉が帰って来た。

 

「それは…その、ごめんなさい」

「怪我は酷いんですか?」

「そうでもないみたいよ? 私は医者とかじゃないから分からないけど取り合えず安静とかなんとか言ってたけどそれだけね。まぁ怪我したのが利き腕で料理できないからこうして買い物に来たわけだけど」

「そうなのね」

「まぁその怪我をした理由が笑えないのだけどねー」

「というと?」

 

 誰かに話したかったと言わんばかりに彼女は促されるままに続ける。

 

「悪戯よ悪戯。あれほど気をつけなさいって言ったのに本当にもう、前と同じ様に悪戯してもう本当にもう‼」

「どういう事よ。いえ、悪戯云々は『ゴーストリック』だからって言うのは分かるけど」

「……あぁ、もしかしてあれですか。来たばかりの子がやらかしましたか」

「は?……あ、成程」

「そう、そうなのよ‼ あの子ったらマスターは精霊じゃないからって言っておいたのに悪戯として床を凍らせて凄い滑るようにしたのよ⁉ そしたらまぁ見事にマスターがスッテーンで手をグキーってしちゃったのよ‼」

 

 私怒ってますよ全身で表現する『ゴーストリックの魔女』を見ながらやっぱりかと彼は思った。意外と多いのだ、そう言った精霊が加減を間違って起きる事故が。特に子供の様に無邪気な精霊や、ドラゴン族の様なそもそも精霊の中でも強力な存在が起こすことが多い。軽いじゃれ合いのつもりでってやつだ。

 

 そう言った怪我を作る事は無くても文化の違い的な感じで騒動になる事はまぁ珍しくはない。

 

「正直しょうがないはしょうがないのよ。私たちにとって悪戯はおもてなしの様なものだし、あの子にしたってマスターに喜んでほしくてやったみたいだし……まぁ一番は自分が楽しかったからだろうけど」

 

 頭痛いと言わんばかりに額を手で押さえる『ゴーストリックの魔女』。まぁ確かに、しょうがないと言えばしょうがないか。

 

「でも実際問題、そう言った…常識のずれ?とでもいえば良いのかしら、それってどうすればいいのかしらね? 幸いあたしはそこまで酷くなかったけど」

「いやお前も割と酷かったぞ?」

「え…え⁉ あ、あたしマスターの事傷つけてたの⁉」

「いや怪我云々は無かったけど何度か部屋水浸しにしただろ? あとレンジぶっ壊したりとか」

「……あー」

 

 そう言いながら彼女は視線を逸らした。思いっきりやらかしていたことを思い出したのだろう。そう怪我はなかったが割と苦しかった…主に財布が。

 

「はぁ、やっぱりどこもそう変わらないのね」

「ですね。何処も一度や二度はそれ関係の苦労はするものですから。結局問題の解決も時間をかけて慣れてもらうほかないですし」

「そうね、そうなるわよね。そう考えると言ったからそれで良しと思ってた私にも悪い所があったって事かしらね」

 

 そう言って彼女はよいしょと箒に座りなおし、二人を見る。

 

「ありがとうね、助けてもらっただけでなくこんな愚痴まで聞いてもらって」

「お気になさらず」

「そうよ、愚痴って定期的に吐き出さないと大変な事になるもの、あたしとかそれだし」

「そうよね。ならまた会う事があったらその時も愚痴を聞いてもらっちゃおうかしら」

「流石に毎回に愚痴を聞くとなると場所を気にすべきだと思いますけどね…あぁ、丁度いい場所と言うか喫茶店あるんですよ『デュエル喫茶ついばみ』っていう店なんですけど、行ってみたらどうですか?」

「あ、良いわねそれ。甘いものとかあるかしら?」

「えぇ、美味しいですよ?」

「じゃあ今度行ってみようかしら」

 

 良い事聞いたと嬉し気に改めてありがとうと言ってから去っていく『ゴーストリックの魔女』を見送り、何か言いたげなシェイレーンを見る。

 

「で、どうかしたか?」

「いえ…宣伝とかするのね」

「そりゃまぁ、店長にしてほしいって言われてたし」

「……店長そんな事いうなんて、意外ね」

「なんか紹介されてきたって言う客が来るシチュエーションに憧れてるんだって」

「あー」

 

 そういうと、なんか意外でも何でもないなと思うシェイレーンだった。




めちゃ雑人物紹介こーなー

『稲田遊賀』

 この後無事柔軟剤を買い、自宅一歩手前まで帰ってきてから絆創膏がもうすぐ無くなる事を思い出した人。シェイレーンと一緒に暮らし始めた最初の頃は良く水浴びした彼女に部屋を水浸しされていたが、水族魚族の精霊と一緒に暮らしてる人のあるあるだったりする。


『ティアラメンツ・シェイレーン』

 自分は大丈夫と思ってたけど別にそんな事は無かったと思い出して少し恥ずかしかった子。レンジに関しては単純な力加減を間違った結果である。その時の反応は猫みたいだったとマスターに言われてたり。


『ゴーストリックの魔女』

 この後帰宅した直後上から落ちて来た黒板けしが直撃しぶちぎれる事になる。こいつら絶対許さねぇ‼

 実はMDが配信される前から今のマスターと一緒に居る古株だったりする。


『ゴーストリックの雪女』

 精霊界から人間界に来て二日目。ただマスターを驚かせたかっただけで怪我はさせるつもりなかった。大好きなマスターが怪我してしまって顔面真っ青。これに反省してか暫く悪戯をしなくなった……五時間位。
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