遊戯王マスターデュエル。通称『MD』
言わずと知れたデュエルモンスターズをより手軽に、より気軽に、そしてより幅広い世代の人々が楽しめるようにと生み出された今となっては世界の中心とも呼ばれるようになったコンテンツ。
その広がりが生んだ新たな友である精霊たちは、しかし精霊によっては夏の暑さは厳しい様で。
これは一人のデュエリスト『稲田遊賀』と彼と共に在る精霊が出かけて先で出会った精霊との会話を描いただけの物語である。
切っ掛けは大したものでは無く、家でだらけながら遊賀が口にした何気ない一言だった。
「…なぁシェイレーン」
「なにー?」
「なんかソフトクリーム食べたくないか?」
「分かるわ」
と言う訳でやって来たのが家から程々の距離にある道の駅。なんかやたらとソフトクリームの味が良いと評判のここで目的のソフトクリームを買うために並んでいるマスターを椅子に座って待ちつつ、何となく辺りを見回した時にそれに気が付いた。
なんか隣に溶けてる精霊が居る事に。
正確には溶けてるみたいに三人の精霊が隣のテーブルに突っ伏していてその周りをこれまた三人の精霊がわちゃわちゃしてるって感じ。
「あー、ちょっと良いか? 水は何処で汲めるか教えてほしいんだけど」
「んぁ? 水ならあそこよ」
「あー、あれか。ありがとうね」
と、話しかけてきたのは溶けている精霊の周りで動いていたうちの一人である『灼熱の火霊使いヒータ』で、彼女はシェイレーンが指さした方向を見て、あっちかと頷いて礼を言いながら歩いて行く。
彼女が歩いて行くのを見送り、すっと視線を横のテーブルに向けて未だにどうしようかと言った具合に慌てているなんかこう…対暑さ特化のフル装備的格好をしている誰かと何故か無表情でピースをし続けている『蒼翠の風霊使いウィン』を見る。
「で、何があったのよ?」
「ん、人間界に来たばかりのみんなを連れて美味しいものを食べに出掛けたけど暑さにやられてここ逃げ込んできた」
「あぁー」
そのウィンの言葉に成程と頷きながらふと外へと視線を向ける。居心地の良い室温が保たれている店内と違い猛暑日の言葉がふさわしい地獄のような気温が広がっている。暑さに強い、もしくはそもそも暑さを感じない種族以外は精霊でもうんざりする様な暑さだ。
これと言って暑さに強くない精霊ならそれこそ簡単に熱中症になるだろう。
「つまり、夏の洗礼を受けちゃった訳ね」
「うん」
「そうそう、出かける前に散々気をつけろって言ったのにこのざまだよ」
と言いながら水の入ったコップをお盆に載せて戻ってくるヒータ。ほいとテーブルにコップを置くと同時に溶けていた物体が動き出しコップを掴むと同時に一気に飲み干した。そして三人の内の一人『照耀の光霊使いライナ』は若干割れないかと心配に成程力強くコップをテーブルに置いた。
「――――はぁ! なによこれこの世の地獄⁉」
「だからそう思う位に暑いって出かける前に言っただろう」
「唯の比喩表現だと思ったのよ‼ もっと強めに言っておいてよダルク‼」
「いや言っただろう、俺もヒータも」
と、顔を隠していた誰か、『暗影の闇霊使いダルク』は隙間から顔を覗かせつつそう返した…誰なのかとは気になっていたけどダルクだったのかと密かに思ったシェイレーンだったり。
「確かにヒータに割とシャレにならないとは言われてたけど…正直甘く見てたなー僕」
「まぁ来たばっかりだと大丈夫だろうとは思っちゃうわよね」
と、変わらずテーブルに突っ伏しながら言う『崔嵬の地霊使いアウス』に同意するように言葉をかけるシェイレーン。いや本当に、幾ら夏は暑いと言っても精霊は人間に比べれば頑丈だからそこまで気にする事はないとシェイレーン自身も最初は思っていた。実際は軽く死にかける羽目になった訳だが。
丁度虚空を見つめ続けている『清冽の水霊使いエリア』の様な感じで。
「って、なんかそっちの死にかけてるけど良いの?」
「みずぅ…もっとみずぅ」
「はいはいっと、あぁウィンはエリアに風当ててやっといて」
「もうやってる」
言いながらやっぱりピースをするウィン。そう言えばなんかエリアだけ髪がなびいている事に気が付く。同じく気が付いたアウスがそう言えばと彼女に向かって言う。
「それ、外歩いてる時もやってくれればもう少しましだったんじゃ」
「外でやるともれなく熱風だけど、よいか?」
「それはー…うん、嫌かなー」
「あ、でもエリアと協力すれば涼しい風が出せたんじゃないの?」
「いやそれは無理だと思うぞライナ。一番暑さにやられてたのがエリアだったからそれを行い続けるだけの集中力が持つとは思えない」
「そう言えばそうだったわね…なんであんなにすぐへばったのよエリアは」
「それはこの馬鹿垂れが美味しいもの一杯食べたいからとか言って朝食抜いたからだよ」
「あぁそれは無理ね」
ほらとコップを目の前に置きながら言うヒータに同意するように頷く。ただでさえ暑い上にご飯迄抜いたとなれば持つわけがない。
「ん…んぐ、ぷはぁ! でもお寿司一杯食べたかったんだもん」
「復活して最初の言葉がそれかよ」
「いや倒れたら寿司を食べるも何も無いだろう」
「ばーか」
「ウィンに凄い直球で罵倒言われた⁉」
「いやこれに関してはあたしもウィンと同意見だわ」
なんて、わいのわいのと先ほどまでテーブルに溶けていたとは思えない程元気に会話する六人。
「待たせたなー、確かお前はミックス…なんだこの状況」
「いや何って言われても」
「あ、この子のマスターさん? いえーいピースピース」
「取り合えず帽子かなんか売ってないか見てくる」
「分かった、エリアは…取り合えず何か食べておくか?」
「うぅー…‼ 今食べたらお寿司沢山食べられないィ‼」
「いやもう私ここから動きたくないんだけど」
「あ、カレー美味しそう」
「…どういう状況なのかしらねこれ?」
「分からないのか…」
何故か肩を組んでピースをやっぱり無表情のまましているウィンを無視しながら考えて、出てきた答えをそのまま口にする。
「…夏って怖いわよね」
「それは確かにそうだがそれが何でこの状況になるんだ?」
聞かれても、あたしには分からないともうこの道の駅で昼食を済ませてしまう事になりこれでもかと悲しみの籠った叫びをあげるエリアを見ながら、シェイレーンは思った。
めちゃ雑人物紹介こーなー
『稲田遊賀』
この後少ししてから来た霊使い達のマスターと一緒に昼食を楽しむことになった。勿論、デュエルも存分に。相変わらずここのソフトクリーム美味しいなと思う彼はアイスはミルク派。
『ティアラメンツ・シェイレーン』
なんか知らないけど軽く話してただけの霊使い達とそのマスターと昼食を食べる事になった。なぜかずっとウィンにウザがらみされてた。いえーいじゃないのよいえーいじゃ。かき氷にはブルーハワイをたっぷりと。
『霊使い達のマスター』
七個のソフトクリームを苦戦しながら運んで来たらなんか愉快な事になってた人。まぁこの際だからと遊賀たちに一緒に食べないかと提案した。なお一番の目的は彼とのデュエルだったり。エリアの嘆きは聞き流した。
『灼熱の火霊使いヒータ』
最近他の霊使い達におかんと呼ばれ始めて頭を抱えている人間界2年目の精霊。あたしはあんたらの母親じゃないと言いながらも世話を焼く。最近の悩みはアウスが意外と食べ物に好き嫌いが多い事…母親では?
最近抹茶アイスにはまってる。
『暗影の闇霊使いダルク』
暑さ対策がガチすぎる系男子。ライナにそこまでする必要あるのかとからかわれたがあるんだよと返し逆に忠告した…大丈夫の一言で叩き落とされたが、なお結果は見てのとおりである。
チョコミントの事を歯磨き粉と言ったやつを許さない。
『蒼翠の風霊使いウィン』
良く分からないテンションの子。いえーい。ヒータの様に暑さに強い訳でもダルクの様に準備した訳でもないのになんか大丈夫だった子、多分何かやってる。ぴーすぴーす。
シロップを凍らせたものを豪快に噛み砕くのが爽快だと言っている。
『照耀の光霊使いライナ』
もう動けないわと言いながら蕎麦を啜る。硬めのアイスをゆっくり食べるタイプ。
『崔嵬の地霊使いアウス』
あ、やっぱりカレー美味しい。ほうじ茶アイスが地味に気に入っている。
『清冽の水霊使いエリア』
おぉ寿司ィぃいいいいいいいいい――…っ‼