MD次元ではカードの精霊はありふれたもの   作:春山乃都

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お隣さんの『白銀の城のラビュリンス』とトラップハウス

 遊戯王マスターデュエル。通称『MD』

 

 

 

 言わずと知れたデュエルモンスターズをより手軽に、より気軽に、そしてより幅広い世代の人々が楽しめるようにと生み出された今となっては世界の中心とも呼ばれるようになったコンテンツ。

 

 世界中の人々だけなく精霊と人々ともを繋ぎ合わせて見せた故に。人々と精霊とが共にありクラス事が日常と化していた。

 

 

 これは一人のデュエリスト『稲田遊賀』と共にある訳ではない隣に住んでいるカードの精霊とのちょっとした出来事を描いた物語である。

 

 

 

 

 

 なお、本当にそれだけの物語なのでデュエル描写はコストとしてリリースするぜ‼

 

 

 

 

 

 デュエリスト『稲田遊賀』の朝は早い。何時もの如くクリボー型目覚まし時計が鳴る5分前に起床、タイマーを切ってからキッチンに向かい牛乳を一杯。そして。

 

 

 

―――ガゴシャァーンッ‼

 

「キィイャァァッァァァァ―――⁉」

 

 

 

 お隣さんから響く、女性の悲鳴が彼の朝を告げる。慣れてしまった自分がちょっと嫌になる遊賀であった。はぁと思わずため息を吐いて、コップを置いて振り返ると…そこに何時もの朝とは違うものが目に映り込む。

 

 それは美しい女性であった。豪奢なドレスを着こなし、立派な角を持つカードの精霊。

 

「あら、おはようございますわ遊賀さん!」

「なにやってるんすかラビュリンスさん」

 

 『白銀の城のラビュリンス』が渾身のドヤ顔を浮かべながら壁に突き刺さっていた…いやなんでぇ?

 

「……また、自分の仕掛けたトラップに引っかかったんっすか?」

「ですわ‼ わたくしとした事が昨晩設置した『強制脱出装置』に引っかかってしまったのですわ‼ 我ながら素晴らしい設置位置だったと誇らしくなりますわね‼」

「あっはい、そっすか」

 

 それでそんな状態なのにドヤ顔浮かべてたのか。良かったですねとでもいえば良いのかこれは? いやまぁ、そういうのは置いといて取り合えずだ。

 

「……そこから出るの手伝いましょうか?」

「えぇお願い致しますわ‼」

 

 

―――そして10分後。

 

 

「ふぅ、感謝したしますわ‼」

「えぇまぁどういたしまして」

 

 と、ドヤ顔で礼を述べるラビュリンス。正直割と朝っぱらからの行動としては重労働だったので雑な返しになってしまった。それが何となく申し訳なく思っている、彼女は無いにやらある方向を見つめていることに気が付いた。いったい何がと同じ方に視線を向けてみれば、『ティアラメンツ・シェイレーン』が居たが、それだけだ。彼女に対して何か気になる事でもあるのだろうか。

 

「……うちのシェイレーンがどうかしたんすか?」

「あぁ、いえその、不思議な格好で固まっているから気になったもので」

「あぁー…」

 

 改めて見る。相も変わらず宙に浮かびながら右手を突き上げ空を仰ぎ見た状態で固まっている。割と俺は見慣れているが他の人から見たら確かに何やってるんだ?って疑問が出てくるか。

 

「別に大した事は起きてませんよあれ、単に喜びを全身で表現してるだけなんで」

「喜びを…何かありましたの?」

「あぁー、最近MDの新レギュレーション発表されたじゃないですか」

「されましたわね。『闇のデッキ破壊ウィルス』が規制されることになって悲しみに暮れたのは記憶に新しいですわね。もっとも‼ それはわたくしの新衣装バァージョンが実装されるかもしれないからと知って全て喜びに変わりましたけど‼」

「あ、そっすかおめでとう…ございます? で、えぇっとそれで発表された新レギュレーションをさっき確認した結果、『壱世壊に奏でる哀唱』が制限行きになった事を知ったからすごい喜んでるんですよ」

「それ確か彼女と同テーマのカードだった様な…? いえまぁ確かにあのカードは少々効果が過剰ではありましたものね、妥当と言えば妥当ですわね」

「っすね。これで少しは『ティアラメンツ』も落ち着く…いやでもどうだろ」

 

 正直、あのテーマはどのカードも効果過剰な所あるからな。実際に新レギュレーションになってからじゃないと分からん。

 

「ふ、ふふふ。良いわよ運営、このまま『ティアラメンツ』という邪悪の手足を切り落としていくのよ…っ‼」

「彼女も『ティアラメンツ』の一員でしたわよね?」

「まぁ、色々あったんです」

 

 喜びを表現しきれないとばかりにその場でクルクルと回転し始めたシェイレーンを見ながらそういうラビュリンス。いやほんと、色々あったんです、はい。

 

「っと、流石に長居し過ぎましたわね。突然だったのにも関わらず脱出の手伝い改めて感謝いたしますわ」

「あぁいえお気になさらず」

「それではきちんとした謝礼は後程。これでわたくしは失礼いたしますわ、それではごきげんよう遊賀さん、シェイレーンさん」

「お気をつけてーって隣だから気を付けるはなにか可笑しいか」

「ふふふ…ってラビュリンス?! いつの間にマスターの部屋に⁉」

「今気が付いたのかよお前⁉」

 

 と去っていくラビュリンスに驚くシェイレーンに俺は驚いた。あれだけ壁から抜け出すためにドタバタしてたのに気が付いて無かったとかどれだけ嬉しかったんだよ。いや嬉しかったんだろうな何回も『壱世壊に奏でる悲唱』で展開止められてたもんなお前。

 

「どうしよう、あとで謝りに行くべきかしら…そういえばなんでこんな朝早くからラビュリンスは家に来てたの?」

「自分の設置した『強制脱出装置』踏み抜いて家に突撃してきたらしい」

「えぇ、それ…あたしよりよっぽどいえでも無視しちゃったこと変わりないからあとで謝りに行くとするわ」

「まぁお前がそうしたいならいいと思うぞ」

 

 けどそれは今すぐではなくの方が良いだろう。と言う訳でここからいつも通りに戻って朝食の準備。

 

 

―――ガゴシャァーンッ‼

 

 

「………」

「………」

 

 双方、無言。なんとなく何が起こったのか察しつつ音のした方、玄関方向に向かう。そして見たのは先ほどと同じく壁から『白銀の城のラビュリンス』が突き出ていて。先ほどと違う点と言えば浮かぶ表情がドヤ顔ではなくスンッとした虚無顔である点か。隣で宙に浮いているシェイレーンも同じような表情を浮かべていた…多分、俺も同じような表情浮かべてると思う。俺は再び天井を見上げる。

 

 しばしの沈黙。

 

「……とりあえず、手伝いますよ」

「………お願いいたしますわ」

 

 

 救出、からの何があったかかくかくしかじか。

 

 

「えーっと、詰まりお隣さんは用事があって何日か家を空けてて貴女は留守番中。それで普通の人の来訪や泥棒とかの招かれざる客の対応は兎も角、精霊の不埒ものに対しての対策が不十分だと思いそれ用のトラップ大量に設置しておいた…と」

「ですわ」

「で、完璧な配置に満足して就寝して、朝起きた時寝ぼけて『強制脱出装置』を踏み抜いてマスターの部屋に吹っ飛んで来た訳ね?」

「ですわ」

「その結果、お隣さんは精霊にとって文字通りトラップハウスと化した訳ですか」

「ですわ」

 

 ふむ、成程とシェイレーンと顔を見合わせてから。

 

「つまり家に入れない…と」

「入れない訳ではありませんわよ、入った瞬間トラップの餌食になるだけですわ‼」

「それ表現としては悪化してるわよね」

 

 確かにとお隣さんの玄関の前で頷く三人。傍から見れば怪しさ満点だが取り合えず気にしない方向で。

 

「…まぁ、ここで話し合っててもどうにもならないから行動するか。あ、中に入ってもいいですかね?」

「構いませんわ。あぁ遊賀さんはわたくしたちの後ろに、設置したわたくしが言うのもなんではありますが何が起こるのかわかりませんもの」

「いや、さっきの話聞く限り大丈夫だと思うというか俺一人の方が」

「何言ってるのよ、人と精霊なら人の方がもしもの時危ないのだから一人でなんて駄目に決まってるでしょう?」

「それはまぁ、そうだな」

「と言う訳でわたくしが先頭で行きますわ」

 

 言って玄関を『白銀の城のラビュリンス』は大きく踏み込んだ。

 

 

 

 

 直後に床が抜けて落ちていった。見事なまでの『落とし穴』であった。

 

 

 

 

「…入った直後に『落とし穴』かぁ」

「玄関から入るのって召喚・特殊召喚判定なのね…」

 

 と、二人して固まってる間に階段を上ってラビュリンスが戻ってくる。

 

「……普通の『落とし穴』を設置した昨日のわたくしの理性に感謝しないといけませんわね」

「まぁ『底なし落とし穴』とか『硫酸のたまった落とし穴』だったら洒落にならなかったわね」

「というか今更だけどこれ設置されてるトラップを何とかする手段あるんですか?」

「勿論、抜かりなくですわ。居間にきちんとトラップ無効化用のスイッチを設置してありますもの」

 

 なら取り合えず玄関から廊下通って行くだけか。ある意味寝室とかプライベートエリアに設置されてなくてよかったと思うべきか。

 

「他に廊下にはどのくらいのトラップが設置されるの?」

「そうですわね。例えばこの辺りには」

 

 言いながらラビュリンスが踏み出し、直後良く分からない機械が壁から生えてきて彼女を飲み込み…吹っ飛ばした。

 

―――ガゴシャァーンッ‼

 

「『強制脱出装置』って横にするとこんな感じになるんだな」

「知識としてはあまりに役に立たないわね」

 

―――助けてくださいましー。

 

「…行くか」

「そうね」

 

 三度目の救出は手慣れて来たのかすぐ終わった。こんな事手慣れてもあまりうれしくないと思う俺だった。

 

「とまぁこの様にここまでは割と穏便に侵入者にはお帰り頂けるようなトラップを設置しておいたのですわ」

「穏便…これ穏便なの?」

「まぁ引っかかってるラビュリンスさんは怪我らしい怪我はしてないから穏便と言えば穏便なんじゃないか?…いやでもここまではって事はここからはそうじゃないって事ですよね? なに設置したんですか?」

「そうですわね、位置は兎も角種類自体は割と適当に選んだから全ては覚えていませんが…『万能地雷グレイモヤ』に『破壊輪』と『D・D・ダイナマイト』、それに『仕込みマシンガン』も設置したのは覚えていますわ」

「分かりやすい殺意の具現化」

 

 え、怖。幾ら対侵入者用とはいえなにが彼女をここまで駆り立てたのか。そう思いながら視線を向けると、彼女は胸を張ってドヤ顔を浮かべて言った。

 

「とある人間界の映画からインスピレーション得ましたの‼」

「どんな映画よそれ」

「俺何となくわかったわ」

 

 いやでも俺が思い至った映画はここまで殺意丸出し…だった気がするわ。設置物の危険度は兎も角殺意自体はそう変わらない気がするわ。

 

「取り合えずとても危険って事ですか」

「ですわ」

「……今更なんだけど、設置されてるのってトラップ『カード』なのよね?」

「ですわ」

「という事はこれで全部解決するわよね?」

 

 デュエルウィンドーを展開し一枚のカードを見せるシェイレーン。そのカードの名前は『ハーピィの羽根箒』である。

 

「あー成程」

「確かにそれを使えばすべて解決ですわね‼…あれ最初からそれを使っていればどうにかなったのならわたくし落ち損飛ばされ損では?」

「でもこれを使うと設置されてるトラップ全部壊れてしまうのよね」

「構いませんわよ‼ 壊れたものはまた設置しなおせばよいだけの事ですわ‼ 寧ろ今以上のものに仕上げて見せますわよ‼」

「そこは逆にもう少し自重した方が良いと思うわよ?」

 

 言いながら、彼女は『ハーピィの羽根箒』を発動。出現した箒はファサリと振るわれ、設置されていたトラップを破壊していく。砕けていくトラップの中には先ほどラビュリンスが口にしたもの以外にも様々なものが見て取れた。ぱっとわかる範囲でも『魔法の筒』に『ディメンション・ウォール』や『激流葬』まで見て取れる。

 

 他にも床に設置された落とし穴系のトラップにバリア系のトラップ、そして『やぶ』が羽根帚によって吹き飛ばされ破壊され――――

 

「ん? やぶ?」

「え?」

「……あ」

 

 三人の視線が自然と吹き飛ばされていく藪から飛び出て飛んでい行く蛇…つまり『やぶ蛇』へと注がれ、そのまま不自然に何故か未だに残っている小さなやぶへ向けられ…そして俺とシェイレーンの視線がラビュリンスに向かう。

 

 視線を向けられた彼女は胸を張って言葉にする。

 

「わたくしは藪からファルコン派ですわ‼」

「そこは重要だけどそうじゃないしょぉぉぉおおおぉおぉ―――――⁉」

「きゃあっぁぁぁぁぁぁぁ――――⁉」

 

『キィイイィ――――――ッ‼』

 

「うおぉお⁉」

 

 小さなやぶから飛び出したにしては明らかに大きすぎるラビュリンスの言うファルコン、即ち『RR-アルティメット・ファルコン』によって吹き飛ばされたシェイレーンとラビュリンス。そのまま空中で『RR-アルティメット・ファルコン』に咥えられて天高く飛んで行ってしまった。

 

「……とりあえず、トラップ無効化するか」

 

 飛んで行かれてしまってはどうすることも出来ないので、出来る事をする事にした。と言う訳で家主には申し訳ないがずんずんと廊下を進み範囲の問題だったのか『ハーピィの羽根帚』によって破壊されずに残っていたトラップを踏みつけ…発動する事のなかったそれを無視して進む。

 

 居間に到着し解除用スイッチですわ‼ と書かれているそれを押し込みながらやっぱりかと思う。精霊の不埒な者と言っていたからもしかしては思っていたが、やはり設置されていたトラップは全て対精霊用のものだった様で人間である俺には無反応だった。

 

 

 まぁ要するに今回の問題、俺一人でお邪魔してこのスイッチ押せばそれで解決するものだったという事である。

 

 

「なんか、凄い疲れたな」

 

 

 今日何度目かも分からない空の仰ぎ見。何時もと同じように空は青く、いつもと違って大きな機械仕掛けの隼が舞っていた。

 

「トラップカード『メタル化・魔法反射装甲』を発動しわたくしに装備‼ さぁおくらいやがりませ‼ 必殺‼ アルティメット越えパーフェクト・わたくし・メタルアタック‼」

「もうちょっと名前なんとかならなかったの⁉」

 

 

 あ、叩き落した。すげぇ




めちゃ雑人物紹介こーなー


『白銀の城のラビュリンス』

 今回やらかした精霊。『稲田遊賀』のお隣さんと共に在る精霊。留守を任されたことから張り切り過ぎて今回の事態が発生した。朝に致命的なまでに弱く毎朝自分の設置したトラップに引っかかっては悲鳴を響かせている。

 朝食はごはんとみそ汁派、そこに焼き魚があれば完璧ですわ‼


『稲田遊賀』

 今回の被害者その1。朝っぱらから滅茶苦茶疲れる羽目になったかわいそうな男。失礼承知で無理やり踏み込んで解決すればよかったかもと少し後悔した。

 朝食は最近クロワッサンとポタージュに凝っている。


『ティアラメンツ・シェイレーン』

 今回の被害者その2。最初に感じてた申し訳なさは吹き飛んで消えた。しかし徐々に『ティアラメンツ』の規制が行われている事に対しての喜びは消える事無く残っている。そのまま手足と頭もがれてしまえ。

 朝食は遊賀と同じものを食べている。




『白銀の城の魔神像』

 描写は無かったが実はずっと居た。寝て起きたら『白銀の城のラビュリンス』がやたらめったらにトラップを仕掛けまくっていた所為で身動きが取れなくなっていた今回一番の被害者。この後また大量のトラップを仕掛けようとしたラビュリンスに対して滅茶苦茶しかりつけた。

 朝食は2枚のトーストとカリカリに焼いたベーコンとオムレツに限ると心から思っている。
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