MD次元ではカードの精霊はありふれたもの   作:春山乃都

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ある意味、MD次元の成り立ち


里帰り祭り巡りは『ティアラメンツ・シェイレーン』と共に 【中編】

 己の主の実家が燃えていると言うシェイレーンにとって衝撃的で、他の人的には何時もの事な出来事から大体数分。大原と言う人物の家まで来たわけなのだが。

 

「おぉう久しぶりだなぁ稲田の坊主、元気だったか」

「元気元気、大原のじっちゃんは…相変わらず元気そうで」

「当たり前じゃい、体壊してたら畑仕事できんじゃろて」

「確かに」

「さてと、先ほども言ったが今回も世話になる事になった。申し訳ないな大原のじっさま‼」

「なぁに気にするこたぁ無い。どうせ儂とうららしか暮らしてない無駄に広い家だ。こういう時位騒がしいのが丁度いい‼ それでそっちの娘は?」

「あぁ俺の精霊の『ティアラメンツ・シェイレーン』。シェイレーン、この人は『大原源治』さん」

「あ、はい。シェイレーンです、よろしくお願いします」

「あぁ源治だ、よろしくなぁ嬢ちゃん。儂のこたぁ好きに呼んでくれや」

「わ、分かりました…ねぇマスター」

「なんだシェイレーン」

 

 首を傾げる遊賀を横目に、大原源治と言う老人見上げながらシェイレーンは疑問を口にする。

 

「この人、精霊か何か?」

「いや人間だよ」

「まぁた初対面の人に言われてんねぇじっさま」

「ぬぅ、やはり儂の顔が強面過ぎるのがいけないのかのぉ?」

 

 違うそうじゃないとシェイレーンは思った。のだが、なんかもう首から下が『ダイナレスラー』みたいな体してる目の前の人物にそういう事が出来なかった、なんか怖くて。ほらもう彼の着てる甚平から悲鳴が聞こえる。

 

 服に対して可哀そうと言う感想が出て来たのはシェイレーンにとって初めての事だった。

 

「さてさて、それじゃあさっさと荷物置いてうちと将棋しよう将棋、夕飯のおかず賭けて勝負しようぜぇい」

「それはおかずの内容次第だなー、それじゃあおじゃましまーす…ってあれ、なんか静かだけどじいちゃんとばあちゃんは?」

「二人ならゲートボールしに出かけてるぞ」

「あの二人も変わらず元気な事で」

「まぁ元気がないよりはいいじゃろうて」

 

 言いながら家に入っていく彼らに続いてシェイレーンもお邪魔しますと言い、屋内へ。よいしょと持っていた荷物を置くと早速と言わんばかりに最初に入っていたうららが将棋取りに行ってくると言いながら小走りして奥へと向かい…それを見ていた源治がふと遊賀に問いかける。

 

「そいや坊主、お前さんもう神社には顔出して挨拶してきたんか?」

「いや本当にさっき着いたばっかりだからまだ」

「そうか。んーじゃあ少し休んだら行ってくるか?」

「そうします」

「ん、それが良い…とういう事だうららぁー‼ 将棋はまたあとだぁ‼」

「んえぇー⁉ 良いじゃん休憩しながら将棋すればさぁー」

「おめぇの将棋は長考が過ぎんだよ‼ 休憩のついでにはむかねぇだろぉが」

「それ言われたら言い返せないじゃーん」

「…そうなの?」

「そうだなー、正直ちょっと休む所じゃ無くなるだろうな」

 

 そうなる事が自分でも分かっているのか将棋盤片手に戻って来た『灰流うらら』は仕方がないと言いたげに肩を竦めた。

 

「ま、そう言う訳だから少し休んだら稲田と一緒に神社に顔出してきなよ。勿論帰ってきたらちゃんと将棋の相手してもらうけどねー…おかずのトンカツを賭けてなぁ」

「なんでよ」

「あ、それともデザートの牛乳寒天の方が良かった?」

「それなら受けるわ」

「おいシェイレーン」

 

 基本、甘いものに対しての欲望に忠実なシェイレーンであった。

 

 

 

 

 さて、そんなこんなで少し休んだ後に二人は神社にやって来たわけだが。

 

「…なんか、思っていたより大きな神社ね」

「そうだなー、そこそこ古くからあるからなここは」

 

 ワイワイと参拝客とは違う祭りの準備している人たちを避けながら進む。そこそこ長い階段を前に、シェイレーンは疑問に思った事を口にする。

 

「で、ここどういう場所なのよ?」

「どういう場所って、そうだなー…この国版デュエルの発祥の地?」

「結構な場所ね⁉」

「まぁ実際はそれっぽい事をしてた場所ってだけでやってる事は今やってるデュエルとは似ても似つかないんだけどなー…っと、やっぱり長いなここの階段、いやまぁ神社の階段って大体長いけど」

 

 そうぼやく彼を浮かびながら進んでいるシェイレーンは少し申し訳なく思いながら話に耳を傾ける。

 

「はぁ、なんでもこの町が昔まだ村だった頃にずっと雨が降り続いてた事があったそうだ」

「雨?…梅雨とかそういう」

「いやそう言うのとは関係なく。んで、あんまりにも雨が続くは降りも強いは村が一部の高台以外溢れた川に呑まれる事態になったんだと」

「思ってたよりやばい事態になってたのね」

「みたいだな。で、それで困り果てた住人たちがきっと神様が怒ってるからこうなってるんだって結論付けた訳だ」

「あるあるね」

「あぁあるあるだ。それじゃあ荒ぶる神を沈めるには捧げものが必要、でも雨続きで捧げられるものなんぞ限られてる…まぁ、生贄だわな」

 

 シェイレーンの表情が露骨に強張る、一言で言えば不快と言った所か。まぁ残念な事に創作ではなく実際に昔は何処も多かれ少なかれやっていた事だ。まぁ歴史や文化の専門家ではない遊賀は断言できないのだが。

 

「それで、どんな人が犠牲になったのよ」

「いや、誰も犠牲になってないぞ?」

「はぁ?」

「正確には生贄自体は捧げようとはしてたらしいんだがな、その生贄に選ばれた幼子が、大人にこれからお前は神の怒りを鎮めるために捧げられるって説明された結果」

 

 

「神様と遊べば良いと思ったらしい」

 

 

 階段を上り切り少し疲れた様子で汗を拭く彼を見ながらシェイレーンが一言。

 

「いやどういう事よ」

「流石にそこまでは知らんよ。つづけるぞ、そう判断した幼子は最近村の子供たちの間で流行ってる遊びに使う手のひら大の板束片手に飛び出して空に向かってこう言ったそうだ」

 

 

 かみさま かみさま おいでください 

 

 どうか どうか いっしょにあそんで たのしみましょう

 

 

「ってな。そしたら本当に神が降りてきて幼子と遊び始めたらしい」

「降りて来たんだ…」

「そ、それで幼子との遊びに満足した神が空に帰ると同時に振り続いた雨は止んであふれていた川は引いていったそうだ。で、それがきっかけで生まれたのが」

 

 ここだと本殿を眺めながら彼は言う。

 

「因みにその降りて来たって言う神様あそこに居るぞ」

 

 なんて指さしながら。それに対してシェイレーンは呆けたようにへぇーとだけ呟いて。

 

「…え、居るの⁉」

「いるぞ、というか話したこともある。多分、町に居る人間なら大体一回二回は話した事ある筈だぞ」

「あ、もしかしてさっきの話て」

「本人、本神? 本精霊? どれだ? まぁに聞いたからだな」

「成程…あ、それで大原さんが挨拶して来いって言ったのね」

「そ、神社に行って神様に挨拶して来いって事だ」

 

 そういう事かと、彼女は頷いて…少し冷たいものが背筋を流れる。それって詰まり、この先に居るのは神と呼ばれるだけの力を持った精霊という事なのではと。いや流石にさっきの話が何から何まで本当とは限らないが、しかし。

 

「おーい神様ー」

「ちょっと―⁉」

 

 なんて思考を巡らせていたシェイレーンを置き去りに堂々と上がり込む遊賀に思わず頭を抱えながら急いで追いかけて、彼女は確かに神を見た。

 

 

 

 

 具体的に言えば見事に輝く黄金の巨大な玉、つまり『ラーの翼神竜-球体形』を。

 

 

『―――――クアァー……』

「あ、寝てたのか」

「思ってたの違う⁉」

 

 いや確かに神様だけど、確かに精霊だけども。いやでもとシェイレーンは思った。目の前の存在が降りて来たならさっきの話は納得行くと言う物だ。そりゃ太陽神降りてくりゃ雨雲位一発だろうと。そう、気持ち良さそうに寝息を立てるラーの翼神竜を見ながら思い、肩から力が抜ける。

 

「あぁー…流石に寝てる神様起こしてまで挨拶するもんじゃないな。仕方ないまたの機会にするか」

「そうねー」

「どうした妙に疲れてるみたいだけど」

「いやなんと言うか、力が入り過ぎてたのが抜けただけだから大丈夫」

「お、おうそうか…じゃあ帰るか」

「分かったわ」

 

 と、歩いて行く遊賀を追い、ため息一つ。せめて起きていたら無駄にはならなかったろうにと意味も無く振り返り。

 

 

 

 

 

 

「あらあらあらららららぁ?」

 

 

 なにか、どろりとしたものが立っていた。

 

「―――――ぁ?」

 

 息が詰まる。目の前に、何か、良くないものが立っていて。

 

「止めろや」

「あふん」

 

 それを己のマスターが引っ叩いた。

 

「…は、あ?」

「大丈夫か?」

 

 ぐらぐらと揺れる視界の中にマスターが、遊賀の顔が映り込み少しづつ落ち着きを取り戻していく。一体、何がと未だ定まらない視線を懸命に彷徨わせて…一人の精霊を見つけた。

 

 それは、『ヴァリアンツの巫女-東雲』は先ほどまで何かが居た筈の場所に優し気な笑顔を浮かべながら立っていて。先ほどまで目の前に居た筈の何かは何処にも見当たらない…見当たらないが。

 

「貴女…精霊なの?」

「あら、正真正銘の精霊ですよワタシは? そんな怯えた表情を浮かべながら見られたらワタシ、傷ついてしまいますよ?」

 

 言いながら、シェイレーンに手を伸ばし。またペシリと彼に手を叩かれた。

 

「だから止めろって、シェイレーンに関わろうとすんじゃねぇよ」

「あら酷い言い草ですね稲田遊賀さん? ワタシはただ彼女がカミサマであるか確かめようとしただけですよ?」

「その神様がお前の事見てるぞ?」

「あらら?」

 

 彼が指さした方へと視線を向けると、先ほどまで寝ていた筈の『ラーの翼神竜』が本殿からのそりと顔を出して三人を、いや『ヴァリアンツの巫女-東雲』の事をじっと見ていた。

 

 と、ふいに視線がずれて遊賀とシェイレーンへと向けられ、軽く顔を動かした。さっさと行けと言わんばかりに。きっとその通りだったのだろう、彼は軽くラーの翼神竜に頭を下げると、東雲を視線を向けて。

 

「それじゃあ俺たちはこれで、変な事するのも程々にしろよ?」

「ふふふ、えぇえぇその積りですよ稲田遊賀さん。貴方に余り関わり過ぎると食べられてしまいますからね…残念ながら彼女もカミサマではないようですし」

 

 それではと笑顔で見送る彼女を背に彼は帰路につく、シェイレーンを抱きかかえながら。道中、絞り出すように彼女は言葉を零す。

 

「ねぇさっきの人…本当にカードの精霊なの?」

「まぁ、お前的に残念だろうが…正真正銘カードの精霊だよ」

「…そう」

 

 そう、呟きながら思う。

 

 

 心の底から、あれが自分と同じ精霊で合って欲しくないと思ったのはシェイレーンにとって初めてだった。

 

 

 

 

 

「お、おかえりぃー…どしたの? 顔真っ青だけど?」

「あぁー、あれがちょっかい掛けて来たんだよ」

「はぁ? 最近おとなしかったのに…初めて見る精霊だったからかな? しっかしこの状態じゃ将棋は無理かね? いや逆に将棋して気を紛らわした方が良いか」

「かもな。あぁそうだ」

「なにぞぉ?」

「勝った負けた関係なく牛乳寒天をシェイレーンに少し分けてあげてくれないか?」

「それはやだ、寧ろうちが全部むしり取ってやんよ」

「何でだよ」

 

 で、結局どうなったかと言えば嬉しそうに牛乳寒天の山を頬張るシェイレーンが答えである。




めちゃ雑人物紹介こーなー

『大原源治』

 デュエリストではない一般人、いや逸般人。よく精霊と見間違われるが純粋な人間である、どっかで精霊の血が混ざってるとかそういう事は一切ない。本人曰くよく食ってよく働いてよく遊んでよく寝てたらこうなってたらしい、んなわけあるか。もし仮に彼がデュエリストであったならばランニングデュエルが出来てたと思う。


『灰流うらら』

 将棋にぼろ負けし牛乳寒天全部むしり取られた。


『稲田遊賀』

 神様に挨拶しに行ったらやばい奴に出くわして割と焦ってた。取り合えず何事も無くて一息ついた。


『ティアラメンツ・シェイレーン』

 生まれて初めて本気で拒否反応が出た。暫く血の気が引いたままで夏であると言うのに真冬の外に放り出されたかのように震えも止まらなかった。

 牛乳寒天食ったら治ったけど。


『ラーの翼神竜』

 遊賀が知る中で一番古くから人間界に居る精霊。なんとなく人間界覗いてたら幼子に遊びに誘われ、まぁ断るのもなんだしと誘いに乗った神様。OCGやMD使用ではなく原作版のパーフェクト太陽神である。色々とあって精霊界に帰らず今も人間界に留まっている。




『ヴァリアンツの巫女-東雲』

 遊賀が知ってる中で二番目に古くから人間界に居る精霊であり、もっとも壊れているとも思っている存在。一言で言えば闇落ち精霊。

 慈愛、憎悪、憐憫等々あらゆる感情がどろどろに煮詰まった結果全てを救ってくれる全知全能のカミサマを求めて人間界を彷徨い、その果てに人間界と精霊界の境界線を壊してあらゆる命を使ってカミサマを生み出すなんて言うラスボスみたいな計画を立て、行動。

 力を貸してくれると言う人形から齎された力を使って暗躍し、計画の要にしようとしてた場所を破壊した人物を部下を惑わし操り裏切らせて殺したり、国を一つにした人物を時間を掛けて堕落させ狂わせたりとやりたい放題し、あと一歩と言う所で『ラーの翼神竜』によって彼女とその裏に居た人形事焼き払われた。

 今現在、そこに居るのは精霊としての力を全て焼き払われただ死にぞこない、何かしようとしても出来ることなど無い…何てことは無くラーの翼神竜がどっか行こうものならすぐまた動き出そうとしてる危険人物である。

 MD次元が人間界と精霊界が行き来し放題だったりよくわからん外の存在がのぞき込んだり入りこんでくるのは大体こいつの所為。


『黒幕的立ち位置だった筈の人形』

 一体何シャドールなんだ…。当然、カードの精霊ではない。精霊界と人間界の両方に手を伸ばそうと小さな穴を利用して内部の存在に接触し、いいように動かして外への穴もしくは道を作ろうとしていた。

 が、なんか接触した奴が色々がんぎまりしてた所為で能力は奪われるわ部下は尖兵として使い潰されるわ自分は都合の良いエネルギータンクにされるわ、挙句の果てに激おこラーの全力ゴットフェニックスに巻き込まれて死にかけるわで散々な目にあって逃げ出す羽目になる。

『最果ての宇宙』に呑まれてたり『アンデットワールド』もどきに迷い込んで弄ばれてない限りまだ生きてる。
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