MD次元ではカードの精霊はありふれたもの   作:春山乃都

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里帰り祭り巡りは『ティアラメンツ・シェイレーン』と共に 【帰りの話】

「…なんか、あっという間だったわね」

「どうした急に?」

 

 主である遊賀の実家…いや地元と言うべきか、そこに帰省して三日目。休日の終わりも近くもう帰る準備をしている所だ…いや帰る? 彼的に実家と言うか地元から出るのだから行く? どっちだ、なんて一瞬考えてまぁどうでもいい事かと浮かんだ疑問を頭から放り出すシェイレーン。

 

「おぉーっす、準備進んでるー?」

「おぉ順調順調。今忘れ物ないか確認してる所」

「そりゃよかったよ、それじゃこれ、頼まれてた何時ものお土産とお釣り」

「あぁーありがとう。シェイレーン受け取っといてくれ」

「はいはい」

 

 言いながら立ち上がりはいよと遊賀が『灰流うらら』に買ってきてくれと頼んでいたお土産とお釣りを受け取り、そういえばどんなの頼んだのか知らないなと思い、チラリとのぞき見。

 

「…なにこれ?」

「何って…『精霊返し紙煎餅』と『太陽面子饅頭』だよ」

 

 素直に思う、なんか何処も煎餅とか饅頭はお土産になってるものなのね…と。

 

「シェイレーン、ちゃんとあるかー?」

「え、あ、うん。あるわよ…けど、お土産これで良いの? 割とありふれてるけど」

「お土産はありふれてる物位が丁度良いんだよ。変なものとか渡されても困るだろう?」

「それはまぁそうね…なんか店長なら喜びそうだけど」

「……それは、まぁそうだな」

 

 思い浮かぶのは友人からもらったと言いながらよく分からないポーズを取っている木彫りのラッコを見せて来た喫茶店の店長の姿。多分、良く分からないお面とかかっこいいだけの剣のキーホルダーで喜ぶタイプである。

 

「まぁ…うん、でもやっぱ饅頭と煎餅で良いだろ。お隣さんもお土産は何が良いか訊いたらこれが良いって言ってたくらいだし」

「あ、そうなんだ…というか訊いたの?」

「あぁ、お前が散歩に行ってる間にな。丁度ラビュリンスがまた頭から突っ込んできたからついでにな」

「そういう事ね。しかしこれそんなに美味しいの?」

「まぁ伊達に三百年続く店の看板商品やってないよ」

「結構な老舗の商品なのねこれ」

 

 へぇー、なんて声を零しながら仕舞う。少し味が気になるななんて思いながら。すると、すっとうららから差し出される手、その上には…饅頭が一つ。

 

「気になるだろうから家にある奴の一個あげる」

「……貴女凄い良い人だったのね」

「人じゃなくて精霊だけどね‼」

「あと良い人と言うかいい性格してるって感じだよな」

 

 その通りだねとけらけら笑ううららから手渡された饅頭、それを少し眺めてから一口。

 

 

 後にシェイレーンは言う。今まで食べた饅頭で一番美味しかったと…。

 

 

「おし、忘れ物無し。大丈夫だなっと…シェイレーン、おいシェイレーン帰ってこいシェイレーン」

「…マスター」

「なんだ?」

「これあたしたちの分も買って帰らない?」

「買ってきてもらった奴の内一つがうちのだよ」

「やった」

 

 心底嬉しいと言わんばかりのシェイレーンを横目に、彼はよいしょと立ち上がる。

 

「さて、それじゃあ行くか。えぇーっと、挨拶は…じいちゃんとばあちゃんにはしたし。父さんにも昨日の夜出るってんでその時したから問題なしで良いか。じゃあ大原のじっちゃんにしてか」

「はぁ―…あ、あ? でもあの人今朝から見てないわよ?」

「……そういえばそうだな。というか昨日の夜から見た覚えがないな。どこ行ったか知ってるかうらら」

「んー? いや具体的に何処に向かったかはうちも知らないかなー。うちもじっさまはなんか熊と一緒に居るのを見たっきりだし」

「熊って…あぁあれか」

 

 どいう事かと一瞬首を傾げそうになって、すぐに思い出す。昨日『大原源治』と衝突して見事な『拮抗勝負』をぶちかまし辺りを更地にした熊の様な何か。最終的に、決着がつかずなんか仲良くなっていたのは覚えているが。

 

「彼に関しては挨拶は必要ないだろう。寧ろ待たず探さず早急に出立するべきだ」

 

 と、急に『聖魔の大賢者エンディミオン』がそんな事を言いながら姿を現した。

 

「え、いやどういう事?」

「詳しい事は私も知りえないが、あの熊の姿をした何かと共に出かける前に彼は『明日帰る稲田の坊主たちへの土産でも取りに行くか』と語っていた。そしてその土産がお前たちにとって余り良いものでは無いと占いで出ている。故に、早急に出立すべきだ」

「え、いやでもそれは」

「あー…そういう事か。じゃあそうするか」

「え、良いの?」

「良いの良いの」

 

 結構世話になったのにそれは失礼ではと流石に思うシェイレーンにうららは諭すように良いながら彼女の肩に手を置いて。

 

「熊の剥製」

「…は? どうしたのよ急に」

「それが去年の正月に稲田への土産としてじっさまが持ってきたものだよ。多分今回もおんなじ様な物用意しようとしてるんだと思うよ」

「えぇ…」

「あの時は滅茶苦茶困ったなー…今でも思い出せるわ」

 

 遠くを見つめる彼と困惑するシェイレーン。それは、普通に困るものだと。

 

「まぁそういう事だから、じっさまが帰ってくる前にさっさと出ちゃいな。じっさまにはうちから都合が如何タラとか言っておくから」

「申し訳ないけど、そうさせてもらうか。行くぞシェイレーン」

「わ、分かった」

 

 言って、少し申し訳なく思いながら荷物を持ち。ふとエンディミオンが声を掛けた。

 

「あぁそうだ『ティアラメンツ・シェイレーン』」

「? なによ?」

「先ほどの占いなのだが、どうにもお前にとって良くないことが起きる様だ。気を付ける事だな」

「えぇ、なによそれ。具体的な時期とか内容は無いの?」

「無い、分かる事と言えば精々そう遠い出来事ではないという事と気分が命に関わる重大な出来事ではないという事ぐらいだ。だから、気をつけろとしか言えん」

「…まぁそうするわ」

 

 どうしようもない気がするけど、なんて思いながら頷き。それじゃあと手を振って今度こそ家を出る。

 

 

 本当に、あっという間の里帰りだったなと思いながら。

 

 

 

 

 まぁそんな思いもなんか満面の笑みを浮かべながらクソでかい猪担いで帰って来た『大原源治』と熊の姿が見えた時点で消え失せて全力ダッシュする事になるのだが。

 

 いや本当に、凄い申し訳ないけど…あれは、無理だとシェイレーンは思うのだった。




めちゃ雑人物紹介こーなー

『稲田遊賀』

 この後追いつかれて捕まった。そしてクソでかい猪見せられ剥製にして送るから楽しみにして居ろと笑顔で言われた…いや、どうしろと。少ししてから追いついたうららとエンディミオンと一緒に何とか説得して剥製は回避して猪肉を送ってもらうだけにしてもらった。

 後日、送られてきた肉の量に軽く絶望する事になる。


『ティアラメンツ・シェイレーン』

 暫く饅頭の美味しさが消し飛ぶレベルの猪肉を食べる事になる。エンディミオンが言っていた事ってこれかと白目を剥きながら思う。

 なお、その占いが示した良くない事と言う物が全く別の物である事を後日知る事となる。


『うららとエンディミオン』

 めっちゃ頑張って送られる猪肉を減らしてくれたとてもやさしい精霊。なお、送るの事態は止めなかった…いやだって、無理だしあれ、消費しきれないよあれ。


『大原源治』

 若いしこれくらいは食えるだろうと大量の肉を善意で送った。そして送った以上の肉を食ってるハイパーおじいさん。本人曰く猪狩りは久しぶりに死にそうになったと笑っていた…笑う事かそれ?


『熊』

 大原に『熊伊平三郎』と名付けられた唯の野生の月輪熊。体長2m30cmで53年生きているが普通の熊である…んな訳あるか。実は10年ほど前に精霊界に迷い込み、その際辿り着いた『ナチュルの森』でそこに住まうあらゆる精霊を叩きのめしボス熊として君臨していた事がある。

 今は静かに人間界の山でひっそりと暮らしているのだが、なんか人間に苛められたと泣きついて来た子分熊が居た為仕方がないと様子を見る為に山を下りた。

 そして、彼は初めて宿敵と呼べる存在と出会った。


『猪』

 なんかくっそでかい猪。実は精霊食いだったり人食いだったり大原と熊の一人と一匹を相手取って死闘を繰り広げたり真の力を開放したりと色々やったが最終的に打ち取られた。

 その肉は大変美味であったが…単純に量が多い、とにかく多い。
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