MD次元ではカードの精霊はありふれたもの   作:春山乃都

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近所の『Evil★Twin キスキル』と世間話

 遊戯王マスターデュエル。通称『MD』

 

 

 

 言わずと知れたデュエルモンスターズをより手軽に、より気軽に、そしてより幅広い世代の人々が楽しめるようにと生み出された今となっては世界の中心とも呼ばれるようになったコンテンツ。

 

 精霊と人とがより深く交流する切っ掛けとなったものだが、案外なんで人間界で生まれたそれが精霊界で広く広がる事となったのかを知る人間は割と少ない。

 

 

 

 これは一人のデュエリスト『稲田遊賀』と彼と共に在る精霊が、ただ知り合いと話をしている様子を描いただけの物語である。

 

 

 

 それはある日の昼下がり。家に響くインターホンに自分の方が近いからと来客に対応するために玄関に向かうシェイレーン。まぁ宅配とかそういうのだろうとか宗教関連のあれこれだったらどうしようとか脳裏に一瞬浮かんだ『宣告者の神巫』の姿を頭から追い出してから確認。

 

 と、そこにはシェイレーンも知る精霊が立っていた。のだがあれと軽く首を傾げ乍ら取り合えず扉を開けた。

 

「やっほーシェイレーンちゃん、元気?」

「まぁ元気だけど…どうしたのよ急に」

 

 と、答えつつ首を傾げ乍ら訪ねて来た近所に住んでいる精霊『Evil★Twin キスキル』に問いかけた。正直、そこそこ交流はある方だろうがこうやって家まで訪ねて来る様な用事は無かったはずだと思ったから気になったのだ。もしかして何かあったのかと。

 

 すると彼女は手に持っていた鞄を持ち上げて見せて。

 

「いやさ、昨日マスターとリィラの三人で遊びに行ってきたからそのお土産。マスターに持っててくれって頼まれたから持ってきたのよ」

「あー、そういう事」

「結構評判の店のクッキーだから気に入ると思うわよ?」

「クッキー‼」

「相変わらず嬉しそうに跳ねるわよね貴女」

 

 なんだそれ、まるであたしがうさぎみたいとでも言いたいのか。なんて思いつつはいこれと差し出されたクッキーの箱に飛びついてしまったシェイレーンは間違っても無い気がして少ししょんぼりした。

 

「どうしたーシェイレーン。なんかあったかってキスキルさんだ」

「お、やっほー遊賀。そっちもシェイレーンちゃんと同じで元気そうじゃん」

「えぇまぁ、それで何かありました?」

「いんや? 単にお土産持ってきただけ。なんだかんだ世話になる事も多いからねー。そうい訳でー…なんだ、日頃のお礼ってやつ? それよそれ」

「成程ど、それじゃあありがたく頂きますね」

「じゃ、私はサエちゃんにもお土産渡しに行くからこの辺で」

 

 じゃあねーと軽く手を振るキスキルに、遊賀が何気なく言葉を口にする。

 

「あ、永守さんたちは今旅行に行ってるから居ませんよ?」

「え、まじに?」

「まじですよ」

「そういえばそんな事言ってたわね」

 

 旅行に行ってきますわーお土産楽しみにしておいてくださいまし―。なんてラビュリンスが言っていたのを思い出すシェイレーン。改めてまじかーと言いながら自分の持っている鞄を見るキスキル。

 

「って事は渡すのは無理かぁ。仕方ないっちゃ仕方ないけど」

「まぁこればっかりは…あ、どうせだからお茶でもどうですか?」

「良いの? じゃあお言葉に甘えちゃおうかなっと。お邪魔しまーす」

「ねぇマスター、やっぱりクッキーには紅茶が良いのかしら?」

「もう食うつもりなのかお前…」

 

 

 と言う訳で、ちょっとしたお茶会の始まりである。

 

 

「てな感じで、相変わらず電子レンジを万能調理器具だと思ってるわけよリィラは。いやまぁ確かに大抵の料理は作れるけどさぁ。レンジに入れて温めるだけじゃ何でもは作れないって学んでほしい訳よ」

「あぁいうのってきちんとした手順に沿って作るからちゃんとしたのが作れるものですからねー」

「そうそう、なんでこっちの方が良い気がするとか言って変なアレンジしちゃうのかねー。普段の段取りの良さどこ行ったって感じよ」

 

 ほんとなんでだろ、なんででしょうねーなんて首を傾げる二人と遊賀の横に座って無言でクッキーを食べているシェイレーン。浮かぶ満面の笑みから見て、如何やらかなり気に入った様子で。

 

 と、ふいに視線が手元のクッキーからキスキル、正確には彼女が来ている衣服に向けられる。

 

「そういえば貴女何時もと違う服着てるわよね、どうしたの?」

「え?…あぁこれ?」

「そういえば何時もの格好じゃないですね、なんか見たことある気がするけど…あぁそうかあれか『Live☆Twin キスキル』の衣装、いや細部は違うみたいだけど」

「せーかい! マスターが作ってくれたのよこれ。良いでしょ?」

 

 見せびらかす様に立ち上がりその場で一回転してポーズを決める。おぉー、なんて声を零しながら思わず拍手する。やはり着ている服が違うと結構印象が変わるものだ。

 

「ぱっと見ただけでもこだわりが見える…いや本当に凄いわねそれ」

「でしょー? いや本当にさ凄いのよ私のマスター。この服着て見せびらかしながら只管マスターを自慢する動画でも出そうかと思った位だもの」

「そんな動画出してもろくに評価なんてされないでしょそれ」

「良いの別に、自慢したいだけだし。別に私たちマスターライブツイン目指してるわけじゃ無し」

 

「待って」

 

 と、遊賀が言うとどうしたのかと二人は首を傾げて視線を向けてくる。話の腰を折る事になったがどうしても気になる事が彼にはあった。

 

「その、なに? マスター…なんて?」

「なにって…あー、もしかして知らない? マスターライブツインの事」

「初耳」

「そっかー…あぁっとなんて言えば良いかな」

 

 ふーむと腕を組んで少し考えるキスキル。

 

「そうねー…私って『Evil★Twin キスキル』でしょ? で、当然だけど『Live☆Twin』でもある訳よ」

「はい」

「でも別に『Evil★Twin キスキル』は私だけって訳じゃなくて他にも『Evil★Twin キスキル』が居て当然そのキスキル達も『Live☆Twin』でもある訳よ。となると何が起こるかと言えば」

 

「電脳精霊界が『Live☆Twin』であふれる訳よ」

「…あー」

 

 要するにキャラ被りしちゃった人が大量に出た訳か。なんていえばまぁ大体そうと彼女は頷いた。

 

「で、最初の頃はまぁ揉めた訳よ。当然だけど、ネット上で誰もかれもが同時に『Live☆Twin』として活動できる訳でもないし。それこそ誰が『Live☆Twin』として正式に活動するかって戦争になりかけた位よ」

「え、戦争⁉ そんなやばい事になりかけてたの?」

「なりかけてたのよ。まぁそうはならなかったけど」

「さっきのが関係していると」

「そういう事。どうするんだって一触即発状態の中で『Live☆Twin リィラ』の内の一人がぼそっと誰が『Live☆Twin』と名乗るのかを決める戦いを動画にしたら受けるのではって」

 

 瞬間、遊賀は思う。あ、なんかわかったわ…と。

 

「まぁ当然それ良いねとなった訳で。そうして始まったのが『Live☆Twin』襲名動画大会。半年間の動画の再生数や登録者数、或いは単純ないいねの数を競ってもっとも優れていたキスキル・リィラが『Live☆Twin』の中の『Live☆Twin』…通称『マスターライブツイン』として1年間『Live☆Twin』の名前を使って活動できるって訳」

「はー成程…こんな事聞くのもなんだけどマスターライブツインって名前で良いので?」

「分かり易くて良いでしょ? 因みに今の『Live☆Twin』は人間界産のゲーム実況配信がメインね。ま、本人たち曰く前回優勝者の最高再生数を超えられなくて悔しいって言ってたけど」

 

 ま、無理もないけどと彼女は言う。

 

「なにせ初めて精霊界でMDでデュエルが行われた動画だし。そう簡単には抜けないわよ」

「成程…初めて?」

「待ってそれあたしも初耳なんだけど」

「あ、そうなの?」

 

 そう聞くキスキルに、シェイレーンは頷いた。

 

「え、もしかして精霊界にMDが広がった切っ掛けってそれなの?」

「そうよー。色々と衝撃だったのよ、こんな簡単に人間とデュエルが出来るなんてって…まぁ動画事態も普通に面白かったし。三連続満足展開からの蹂躙とか反応含めて同じキスキルとして嫉妬するレベルだったわ」

「普通に見てみたい」

「で、その後自分もやりたいって言う精霊が続出したからサイバース族とか魔法使い族が協力して今みたいにみんながMDを楽しめる環境になった訳で…そうなる切っ掛けであるその動画は当然他キスキルリィラの動画をぶっちぎって優勝。ぐうの音も出ないどころか自分たちもそれが切っ掛けでMD遊んでたから納得の方が強かった位よ」

「は―…成程、前々から精霊界になんで人間界生まれのMDが広がってるのか地味に気になってたけど、そういう理由だったのか。というか精霊界から人間界のインターネットに繋げれるんですね」

「えぇ割と普通に。寧ろ物理的な精霊界と人間界よりもネット上の方が近い位よ? まぁそこらへんもさっき言ったMD配信したキスキルリィラが切っ掛けなんだけどね」

「もう伝説と言って良いわね」

「実際、そういう扱い受けてるわよ」

 

 

 まぁ尤も、と何故かニヤリと笑みを浮かべたキスキルが…こういった。

 

 

「その本人たちは未だにマスターが見つからないって嘆いてたけどね」

 

 そうなのかと思いながら牛乳を一口。そして気が付く。

 

「…さっき言ってた只管自慢する動画云々ってもしかして」

「そういう事‼」

 

 満面の笑みでサムズアップするキスキルに、二人は思う。悪魔みたいだなと。

 

 

 

 

 

 あ、いやそういえば悪魔族だったわ。




めちゃ雑人物紹介こーなー

『稲田遊賀』

 この後例の動画を視聴して、面白いと言うより純粋に参考になるなと思った。キスキルとは料理を教える側と教えられる側と言う関係である。料理はかなり出来るタイプである。


『ティアラメンツ・シェイレーン』

 この後三人一緒に料理をする事になる最近割とちゃんとした料理が出来るようになってきた子。今回も良い感じに焼けた卵焼きに満足げである。今度、シュークリームに挑戦する予定…なお、うまく焼けず悔しがることになる。


『Evil★Twin キスキル』

 近所に住んでる怪盗系リンクモンスター、まぁ最近は盗みは全然してないらしいが。理由はマスターに迷惑が掛かるから。元々料理が目玉焼きが作れる程度だったのだが他二人がひどすぎて結果的に料理係になった。遊賀とはとある日に、どうしようかとスーパーで悩んでいる時に出会い、そこから交流が始まった。その出会いが『Evil★Twin』とそのマスターの現在までの健康的生活に繋がっている。心の底から彼に感謝していたりする。


『マスターとEvil★Twin リィラ』

 パックご飯を温めてその上にバターを乗せて料理というタイプと電子レンジを爆弾に変えるタイプな二人。今日も雑にこれでいいやで済ませようとしたり、頭は良いのに何故か変なアレンジを加えたり謎時短をしようとして家電を爆裂させている。キスキルは頭が痛そうである。
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