MD次元ではカードの精霊はありふれたもの   作:春山乃都

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『ティアラメンツ・シェイレーン』とプレイングミス

 遊戯王マスターデュエル。通称『MD』

 

 

 

 言わずと知れたデュエルモンスターズをより手軽に、より気軽に、そしてより幅広い世代の人々が楽しめるようにと生み出された今となっては世界の中心とも呼ばれるようになったコンテンツ。

 

 精霊も人間も楽しんでいるそのコンテンツだが、どうにも両種問わずミスと言う物は良くあるご様子。

 

 

 

 これは一人のデュエリスト『稲田遊賀』と彼と共にある精霊がこれと言った事が起こらない日常風景を描いただけの物語である。

 

 

 

「あ、間違った」

 

 なんて声が聞こえたのは遊賀が洗濯物を畳んでいた時の事。彼はいつも通りぷかぷかと浮かびながらMDでデュエルしているシェイレーンへと視線を向けた。

 

「どうかしたか?」

「いやちょっと『無限泡影』の置く場所間違っただけよ」

 

 まぁ仕方ないかと諦めたようにため息を吐く彼女に、あぁ成程と頷く。デュエリストなら一度は経験してるだろう置き間違いだ。遊賀だって偶にやらかす。

 

 と思ってから暫く経っての事。今度は声ではなくボスンとなにかが落ちる音がして、視線を向けると浮かんでいたシェイレーンがソファーの上に落ちていて、なにかもぞもぞと動きながら呻いている。

 

「…どうした?」

「……相手」

「が、どうしたんだ?」

 

「相手が『エンディミオン』使いだった!」

 

 ガバッと起き上がり苛立ちを発散するようにその場で手足をばたつかせるシェイレーン。もっとも苛立ちを感じているのは相手に対してではなく自分に対しての様で。

 

「これ絶対あたしが『無限泡影』置く位置間違ってなかったら勝ってたー! 何してるのよ少し前のあたしは! もう少し気を使ってプレイしなさいよもー‼」

 

 ばたばたごろごろドスンとついにソファーから落ちた彼女はぐえーなんて声を出しながら止まり、視線を遊賀へと向けた。

 

「ねぇマスター、どうやったらミスなくデュエル出来るの?」

「え、無理だろそれは」

「凄いバッサリ。なんで?」

 

 何でって。

 

「それはお前、今回は相手が『エンディミオン』…というかペンデュラム使いだったからミスしたと思うだけでそれ以外だったら別にミスとも言えないだろう?」

「そう、ね…あ、もしかして無理ってそういう?」

「そういう事。状況によって変わるからそういう系のミスを無くすのは無理だ」

 

 場合によっては『増殖するG』を使われても展開しきった方が良いなんてことがあるのだ。本当に場合に寄るとしか言いようが無い。

 

「あと置き間違いとかそういうタイプのミスはあれだ。気を付けるしかない」

「それ言ったらお終いじゃない」

「でもそれ以外言いようが無いだろ? 置き間違いだったり…お前の場合あれか、『ドラグマ』で墓地に落とすEXモンスターを間違えないようにするには本当に気を付けるしかない。もしくは休む」

「休む?…それって疲れると云々って事?」

「そうそれだ。実際疲れてるとまじでミスが多くなるからちゃんと休むのは本当に大切だ。なんだかんだ言ってデュエルって体力に集中力をかなり使うから自分が思ってる以上に疲れるからな」

 

 実際、アカデミアとかでも割と体育の授業を本格的にやってる所も多いと聞く。プロデュエリストとかMDのマスターランクとか、そこら辺の人たちが結局最終的には体力勝負になると言ってたから間違ってはいないのだろう。

 

「ま、あとはあれだな。予習とか復習も普通に為になるぞ?」

「勉強みたいに?」

「勉強みたいに」

 

 例えばこれだと遊賀は自分のMDを起動し、前に行ったデュエルのリプレイ画像を出す。

 

「これ、この前俺が思いっきりミスしたデュエルなんだけどさ。ほらここだここ」

「ここって言われても、普通にモンスターの効果をうららで止めてるだけじゃない」

「そうなんだけどさ、この後…ほら魔法カードでサーチされた。手札に『無限泡影』があったんだからモンスターのはそっちで止めればその後の魔法カードも止められてた訳だ」

「確かにそうね…復習って本当に大切なのね」

「そりゃそうだ」

 

 言いながら完成した盤面を突破できずに自分が敗北する様子を見る…いやこれあれだな、魔法カードを使う順番を考えればもう少し粘れたな。また一つミスを発見しつつ次同じような事態になったら試してみようと軽くメモを残す。

 

「まぁ俺から言えるのはそんな感じだ。取り合えず今回は休んだらどうだ? 確か結構長い事MDやってたよな?」

「いやそこまで長い時間はやってないわよ…多分、二時間位?」

「それだけの時間デュエルしてりゃ集中も続かなくなるわ。少し休んだらどうだ? 冷蔵庫に作っておいたチーズケーキあるぞ」

「チーズケーキ! 食べる‼」

 

 やったー‼ と、跳ね起き器用に宙に浮かびながらスキップしつつ冷蔵庫に向かうシェイレーン、ふと立ち止まって振り返る。

 

「あ、マスターはどうするの? 一緒にケーキ食べる?」

「ん? あぁそうだな。洗濯物しまったら食べるか」

「それじゃあ用意するわね」

 

 なんて言いながら手慣れた様子で準備をするシェイレーン。鼻歌まじりの彼女を見て本当に楽しそうだなと思う。

 

「お前、本当に菓子好きだよな」

「勿論‼ 『ティアラメンツ』を何もさせずにボコボコにする事と同じくらい好きよ」

「お、おぉそうか」

 

 偶に出てくるそれは闇属性ゆえの物なのだろうか。遊賀にはちょっと、判断出来ない事だった。




めちゃ雑人物紹介こーなー

『稲田遊賀』

 体調管理に気を使ってる系デュエリスト。予習復習を欠かさないタイプ。まぁそれでもミスはどうやっても出て来るよなー、と若干諦め気味でもあったり。それでもデュエリストの中ではかなりミスが少ない方である。


『ティアラメンツ・シェイレーン』

 体調管理をマスターに任せっきりにしてる系精霊。この日は五回程『ティアラメンツ』に何も出来ず負けた結果、意地になってずっとMDしてた。ケーキを食べたのもそうだがその後にマスターにへばりついていた事が最高の気分転換になった。

 そして休んだ後に行ったデュエルでは『ティアラメンツ』をボコボコにできてその日一番の笑顔を浮かべる事になる。
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