遊戯王マスターデュエル。通称『MD』
言わずと知れたデュエルモンスターズをより手軽に、より気軽に、そしてより幅広い世代の人々が楽しめるようにと生み出された今となっては世界の中心とも呼ばれるようになったコンテンツ。
その広がりが精霊と人との交流を生んだのが、言葉の壁と言う物はそこにも存在していた様で…まぁそれは精霊同志でも変わらない様だが。
これは一人のデュエリスト『稲田遊賀』と共に在る精霊が散歩中に出会ったある精霊との出来事を描いただけの物語である。
「きゅーきゅーふきゅー」
「なんて?」
一言で言えば、『ティアラメンツ・シェイレーン』は今とても困っている。
それは何時もの朝の散歩の途中。公園に設置されているベンチの上を陣取る一人の、いや一匹の精霊『メルフィー・ラビィ』が何かを伝えようともこもことした体を必死に動かし鳴き声を上げている。のだがシェイレーンには何かを伝えたというのは分かるのだがそれがなんであるのかさっぱりなのである。
「ふきゅー…」
と、なんと言っているのか伝わっていないと理解したのかラビィの耳が垂れる。
「えっと…取り合えず何かをあたしに伝えたい。というかしてほしいの?」
「きゅ、きゅ!」
その通りだと言う様に激しく頷いて耳を揺らし、ばっと立ち上がって両手を広げる。さぁ頼むと言わんばかりだ。なのでとりあえずシェイレーンは。
「おりゃおりゃ」
「きゅきゅきゅきゅーふきゅー!」
ラビィも体をわしゃわしゃと撫でてみた。見た目通りのふわふわもこもこ具合に思わずシェイレーンは笑顔になる。撫でられているラビィもとても楽し気だし気持ち良さそうで。
「ふきゅー‼」
「うわ吃驚した」
って違うわーと言わんばかりに飛び上がる。そして着地すると耳を少し弄った後にまた両手を広げた。これは深く考えず簡単に考えればいいのかと思い言葉にする。
「抱っこしろって事?」
「きゅっきゅー‼」
喜びようを見るにどうやら正解の様だ。さてどうしようかと少し考える、なんかまた変な事に巻き込まれてる気がしたからどうしようかと。尤もすぐにまぁもう手遅れかと諦めたように首を振ってご所望の通りラビィを抱き上げる。
抱き上げられたラビィは妙に誇らしげである。
「で、どうすれば良いの?」
ふわふわの毛となんかもちもちしているラビィの体をこっそり堪能しつつそう聞くと、鼻を動かし辺りを見渡した後、手を動かしてビシッと前を指さす。そちらに行けという事かと思い進んでみれば、やっぱり大喜びした。如何やらあっていたらしい。
そして少しの間、忙しなく耳を動かし鼻をひくつかせ辺りを見渡しているラビィを抱えたまま進んでいる。
「きゅ? ふきゅーきゅ!」
「どうしたのよ?」
と、急に声を出し動くラビィ。懸命に手を動かしある方向を指さしている。一体何がと視線を向けるが見えるのは植えられた何本かの木だけ。まぁラビィの様子からなにからあるのだろうと思ったシェイレーンは素直にそちらに向かってみると。
「あ」
「きゅーふきゅきゅー!」
なんか木の上に居た。具体的に何がかと言えば『メルフィー・キャシィ』が枝の上で気持ち良さそうに眠っていた…なんか凄い体勢で、つらくないのかなあれと密かに思うシェイレーンの腕からラビィが飛び降り鳴きながらぺちぺちと木を叩く。すると眠っていたキャシィが少し動いてから目を開けた。
「…んな―?」
「きゅきゅきゅきゅー‼」
「なー」
手をばたつかせ必死に何か言っているラヴィにキャシィは仕方ないと言わんばかりに欠伸をしてから立ち上がりその場で伸びをする。そして少し辺りを見渡してから…また寝た。
「ふきゅぁぁ―――っ‼」
これが怒髪天を衝くと言う奴かと思うシェイレーンに見られながら己許しておけぬと言わんばかりに木を駆け上がり、半分も行く前にずるりと滑り落ちた。
悔しそうに地面を叩くラビィの手足は木を登るのにあまりに適していなかった。
「きゅ…きゅー‼」
「ここん」
「きゅきゅー」
「…ん? あれ?」
そんな言葉にするなら畜生とでも言ってそうなラビィの事を慰めるように背中を軽く叩く『メルフィー・フェニィ』に、何時の間に居たんだと驚く。いやと言うかよく見れば続々と他の『メルフィー』たちが集まってきているのが見えた。
「ふきゅきゅー、きゅー」
とラビィが鳴くとそれに続く様に枝の上で寝ているキャシィに向かって一斉に声を上げ始める『メルフィー』達。多分、早く降りて来いとかそういった感じの事言っているのだろう、多分。シェイレーンには『メルフィー』の言葉が分からない。
そして呼びかけられたキャシィはと言えば流石に目が覚めたのかむくりと起き上がり。
「なー…」
更に上に登って行った。多分、五月蠅いとかそんな感じの事言いながら。
「ふきゃー!」
なんでだよと言わんばかりに再びぺちぺちと木を叩き上り始め、やっぱりずり落ちるラビィとどうしようかと顔を見合わせる『メルフィー』達。そしてそんな光景を見ながらどう反応すれば良いのか困っているシェイレーン。
「るー」
そんな彼女たちの後ろからのそりと近づく精霊が一匹。声が聞こえてシェイレーンは振り返るとそこには『メルフィー・ラッシィ』を抱っこしながら近づいてくる『メルフィー・マミィ』の姿があった。のそのそと静かにキャシィの居る木へと近づく『メルフィー・マミィ』。
「るー、るぅー」
辿り着くと木を見上げ何時の間にか随分と高い所に行ってしまったキャシィに声を掛けるとぷいとそっぽを向かれる。それを見て仕方ないと言いたげに首を振るとゆっくりと木へと近づき。
神速の張り手を一発、木に叩き込んだ。
ゴンッ‼ と、厳つい音が響き盛大に木が揺さぶられぽろっと落ちて来たキャシィを『メルフィー・マミィ』は抱きとめると、頬ずりした。キャシィは気持ち良さそうだ…が、今叩き落されたがそれは良いのかと思うシェイレーンに『メルフィー・マミィ』はお辞儀をして、周りにいる『メルフィー』達に一鳴きしてから歩いて行くと、それを追う様に『メルフィー』達も動き出す。
と、ふいに『メルフィー・ラビィ』が立ち止まり振り返ると。
「ふきゅー!」
シェイレーンに向かって手をぱたぱたと振って見せ、再び歩いて行った。それを見送ったシェイレーンはぽつりと一言呟いた。
「……結局、なんだったのよ」
何がなんだが分からず仕舞いだったが、何となくほっこりしたシェイレーンであった。
めちゃ雑人物紹介こーなー
『ティアラメンツ・シェイレーン』
これがアニマルセラピーかと思った。実際『メルフィー・ラビィ』の抱き心地は素晴らしいの一言だった。また会えたら抱っこさせてもらおうと密かに思っている。
『メルフィー・ラビィ』
みんなで一緒においかけっこしてたら何時の間にかキャシィが居なくなってたから探している途中だった。手伝ってくれたシェイレーンにとても感謝している。そして心配してたのにのんきに寝てたキャシィにとても怒ってた。これが切っ掛けで木登りの練習を始めた。
『メルフィー・キャシィ』
おいかけっこよりかくれんぼがいいなと思ったから勝手にかくれんぼ始めた挙句眠くなったから寝てた子。みんな事大好きだが眠るの邪魔しないでと思ってた。そして叩き落された。
『メルフィー・マミィ』
こういう事態は何時もの事で手慣れたものだ。シェイレーンが一切目で追えない速度の張り手を繰り出せる。