MD次元ではカードの精霊はありふれたもの   作:春山乃都

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他所の『ティアラメンツ・シェイレーン』とくじ引き券

 遊戯王マスターデュエル。通称『MD』

 

 

 

 言わずと知れたデュエルモンスターズをより手軽に、より気軽に、そしてより幅広い世代の人々が楽しめるようにと生み出された今となっては世界の中心とも呼ばれるようになったコンテンツ。

 

 その広がりが生んだ繋がりは精霊たちの交流も発展させて、その結果同じ姿名前の自分とは違う自分とも出会う頻度が増えた…が、その出会いが望んでいた物とは限らない様で。

 

 

 

 これは一人のデュエリスト『稲田遊賀』と彼と共に在る精霊がとある精霊と出くわした際の出来事を描いただけの物語である。

 

 

 

 『ティアラメンツ・シェイレーン』は『ティアラメンツ』というテーマが大嫌いである。もしも願いが叶うならば効果を全部禁止カード指定してしまいたいと思う位には嫌いである。しかし、だからと言って自分と同じ『ティアラメンツ』の精霊たちに対して何か酷い目に合って欲しいと思った事は例外一名を除いて、無い。

 

 というか、出来れば酷い目には合って欲しくないと思っている位だ。

 

「……おぉ、もう」

「なんだこれ」

 

 そうだからこそ、視線の先。

 

 

 何故か公園の木に引っかかって白目を剥いた状態で気絶している自分とは違う『ティアラメンツ・シェイレーン』をシェイレーンは見たくなかったし、自分のマスターである遊賀に見てほしくも、無かったのである。

 

「…取り合えず、助けるか」

「そうね」

 

 

 そんな訳で、助け出してから目が覚めるまで十数分ほど。

 

 

「ふぅ…助けてくれてありがとう別の私とそのマスター。それにしてもこんな所でまた会うとは思っていなかったわ」

「寧ろそれあたしのセリフなんだけど?」

 

 この場合の所は場所ではなく場面と言うのが正しいけれども。なんて思いながらシェイレーンは目の前の公園のベンチでぐったりとしている『ティアラメンツ・シェイレーン』を見ながらため息を一つ。

 

「それでその…なんであんな事になっていたので?」

「あぁそれはね、これよ‼」

 

 そう言いながらベンチに寝転がりながらバッと手に持っていた物を見せる。

 

「…くじ引き券?」

「そうよ別の私! マスターの友人から頂いたものよ‼」

「それが如何したのよ?」

「当然、頂いたのだからくじを引きに行ったのよ。そしたら途中で風に券が飛ばされて偶々止まってた『ユニオン・キャリアー』に引っかかっちゃったのよ」

「……うん、それで?」

 

 色々と察したシェイレーンは遠い目をしながら続きを促す。

 

「引っかかったくじ引き券を取ろうと上に登ったら『ユニオン・キャリアー』が動き出しちゃったのよ」

「やっぱりかぁ」

「やっぱりって何よ?」

「いや、うん。気にしなくていい事だから…そこまではまぁ良いとしてなんで木に引っかかる事になったのよ?」

「何でって、動いてる『ユニオン・キャリアー』にしがみ付き乍ら何とか券がふと気飛ばされる前に取る事が出来たのだけどこれからどうしようかって考えてたらね」

 

 よいしょと『ティアラメンツ・シェイレーン』は起き上がり、軽く調子を確かめる様に伸びをして。

 

「なんか、『霞の谷の巨神鳥』に掴まれて空飛んでたのよ」

「なんでよ⁉」

「知らないわよこっちが訊きたい位よ‼」

 

 唐突な『霞の谷の巨神鳥』の襲来に思わず突っ込むシェイレーンに、彼女はむすっとしながら答える。

 

「あぁ、成程…つまり木に引っかかってたのは」

「私の事掴んでた『霞の谷の巨神鳥』がポイっと私の事放り出したからよ。おかげで色んな所打って体中痛いのよ」

「寧ろよく痛いで済む程度で済んだわね貴女」

「まぁ慣れてるし」

「な、慣れてる……そっかぁ」

 

 何に如何慣れているのか遊賀はとても気になったが、聞かない事にした。

 

「それにしても、そんなひどい目に在った割には随分と嬉しそうですね」

「それはそうよ別の私のマスター! だってみなさいよこれを‼」

 

 そう言いながら改めてくじ引き券を突き出す『ティアラメンツ・シェイレーン』。それが如何したのかと二人は首を傾げて。

 

「ちゃんとくじ引き券が無事なのよ‼ これは間違いなく偉業よ偉業‼」

「あ、うん…そっかぁ、良かったわね」

「えぇ、我ながら凄い事を成し遂げたわ」

「そうねぇ」

 

 若干投げやり気味に応えるシェイレーンはもうどう反応すれば良いのか分からなくなってきて視線を目の前の別の自分から逸らし、そこでこちらに向かってくる三人の精霊の存在に気が付く。

 

「あれは…あー」

「どうした?…あー、成程」

「どうしたのよ?」

 

 と言いながら首を傾げる『ティアラメンツ・シェイレーン』は二人の視線の先を見ると、勢いよく立ち上がった。

 

「みんな‼」

「シェイレーンちゃん!」

「や、やっと見つけた」

「あぁ本当に良かった、もう会えないのかと思ってたわ」

 

 嬉しそうに『ティアラメンツ・シェイレーン』に駆け寄るのは当然『ティアラメンツ』の少女たち。何故かびしょ濡れ状態で昆布が頭に引っかかってるキトカロスと緑色のペンキがべったりと付いてるメイルゥ、そして足がコンクリートで固まっているとかいう一番訳分からない状態でキトカロスに担がれているハゥフニスの三人だった。

 

「みんなも無事だったのね‼」

「無事…え、マスター。あれって無事って言っていい状態なの?」

「俺に聞くな」

 

 その質問に心底困った様子で互いに無事である事を喜び合う四人を見ながらそう返した。まぁ、そうよねとシェイレーンも納得する様に頷いた。

 

 暫くして、落ち着いたのか四人は改めて遊賀とシェイレーンの方を見て、感謝の言葉を口にしながら頭を下げた。

 

「本当にありがとう、幾度となく私たちと助けてくれて。おかげで再び同胞と無事に出会う事が出来たわ」

「無事…いやまぁうん。貴女たちが無事だって言うならそれでいいですけど」

「というか幾度とか言われるほど助けた覚え無いんだけど。寧ろ今回が初めてなんだけど…」

 

 そう困惑する二人に、改めて頭を下げる『ティアラメンツ・シェイレーン』。

 

「あなた達が助けてくれなかったきっと酷い事になってたわ、ありがとうね別の私とそのマスター」

「まぁ、その…貴女も気をつけなさいよ別のあたし…気を付けて何とかなる事か分からないけど」

「分かってるわ」

 

 言って、良しと四人は顔を見合わせて。

 

「それじゃあ今度こそくじ引きをしに行くわよ‼」

 

 キトカロスの言葉に三人は力強く頷き、最後にまた二人に頭を下げてから去っていく。

 

 その後ろ姿を見ながらやけに疲れたなとシェイレーンは呟いて。

 

「大丈夫なのかしらねあの子たち?」

「さぁ? ま、無事に辿り着けるように祈る位はしても良いんじゃないか?」

「そうね、なんか不憫でならないし」

 

 そう言って、これ以上何も起こりませんようにと祈り。

 

 

 

 ―――スコーンッ‼

 

「あいったー⁉」

「「「シェ、シェイレーン⁉」」」

 

 

 『ティアラメンツ・シェイレーン』の頭部に空き缶が直撃するのを目撃する。

 

 

「…ねぇマスター」

「…なんだ?」

「あたし、こんなに早く祈りが通じなかった事が分かるの初めてだわ」

「奇遇だな、俺もだ」




めちゃ雑人物紹介こーなー


『稲田遊賀』

 只管困惑してた人。なんでそんな事になるのか全く理解できなかった。漫画とか小説に出てくるような事って本当に起こるもんなんだなと遠い目をしていた。一応、再び四人の無事を祈った。それが通じたかどうかは分からないが、まぁ駄目だったと思う。


『ティアラメンツ・シェイレーン』

 密かにあの四人は漫画か小説の中から出て来た存在なのではと疑っている。どこぞのキトカロスと違って彼女たちへの嫌悪感は欠片も無いが唯々疲れるから出来れば関わりたくないと思っている。それでもひどい目に合って欲しい訳ではないので無事である事を祈った。結果はあれだったが。


『ティアラメンツ四人娘』

 三度目の登場、運が悪すぎる四人。あの後更に二回程くじ引き券を吹き飛ばされたり、マジギレしてる『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』と『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』の喧嘩に巻き込まれたりしたが無事目的地にたどり着いた…絶対無事という言葉は表現として正しくない。


『霞の谷の巨神鳥』

 『ティアラメンツ・シェイレーン』を引っ掴んだ鳥。悪戯でも何でもなく純粋な善意から『ユニオン・キャリアー』にしがみ付いて居たシェイレーンを下ろしてあげようとしてただけ、ただ自身の巨体故に問題なく降りられる場所を探してたらすぐ真横を『幻獣機アウローラドン』が通り過ぎ、驚いてシェイレーンを落としてしまっただけ。




『ティアラメンツ・シェイレーンに直撃した空き缶』

 偶々居た精霊が飲み終わった缶をゴミ籠に入れようと投げたら丁度近くで遊んでいた子供が蹴ったボールが、偶々精霊の投げた空き缶に直撃し勢いよく飛んでってそのままシェイレーンの頭部にダイレクトアタックした。

 精霊も子供もその親も何が起こったのか理解できず唖然としていた。
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