結局、公園に居たのは探していたキトカロスでは無かった。その上あまりに意味の分からない状況に二人は困惑し、しかしまぁこの状況を無視して他の場所に向かうのもなと思った二人は慌てた様子でスコップ片手に駆けてきた『教導の鉄槌テオ』と一緒に掘り出すのを手伝うことにした。
そしてしばらくして。
「はぁ、はぁ……あ、ありがとげほ、ござおぇ…ずみまぜん、喉にづぢが」
「いやその…無理に礼は必要ないからな?」
「お水貰ってきました! どうぞキトカロス様!」
「ありがどうメイルゥ」
「それにしてもどうして地面に頭から突き刺さるなんて事に」
「あー、それに関してはおれが説明する」
自分とは違うまた別の自分、恐らく突き刺さっていたキトカロスの連れの方なのだろうメイルゥと受け取った水で口を濯ぐ彼女に、その体についた土を懸命に叩き落としているシェイレーンとハゥフニスを見ながら、同じように手に付いた土を叩き落としながらメイルゥがそういうと、少し申し訳なさそうに頬を掻くテオが説明を始めた。
なんでもちょっとした事で発生した精霊同士の喧嘩に巻き込まれて吹き飛ばされて、急遽設置されることになった為か不具合出て調整中だった『強制脱出装置』に嵌まり込み、そのまま射出されて公園に頭から突き刺さってしまったとか。
因みに目の前にいるテオがそこまで詳しい理由は偶々手が空いていたからと言う理由で『強制脱出装置』の調整を行っていたのが彼だったからだ。射出を止められなかったのは喧嘩が起こったので諌めに向かってたら行きなりそんな事になって反応出来なかったからだそうで。
もう少し早く反応できてたらなと悔やむ彼を横目に、レイノハートは成程と頷いて。
「正直何がどういう事なのかさっぱり分からん」
「まぁ仕方ないよな。おれだって実際に出くわしてなけりゃそういう反応だっただろうし」
説明されたはいいがなんて? としか返しようがないと彼は思ってしまった。
「さて、もう少ししたら救護班が来るし、それに引き継いで取り敢えずおれが出来ることは終わりか」
「おぉ、お疲れ」
「どうも」
「あ、レイノハートさん。どうせなんですから訊いてみたらどうですか?」
「訊くって……あぁそうだった。あまりに意味分からない事態に忘れてた。すまん少し訊きたいことがあるんだが言いか?」
「ん? なんだ困り事か」
「めちゃくちゃって付くくらい困り事だ。ちょっとキトカロスを探してるんだが知らないか?」
「は?…あぁ、そこにいるのとは別のか。おれはあの子以外には見てないな…すぐ見つからないと不味い感じか?」
「あぁ、なにせ俺たち二人の財布を持ってるからな」
「ほんとにめちゃくちゃ困ることだな!? んー、ならまぁ運営テントに行って訊くのが早いな、少なくともおれとか個人に訊いて回るより。案内するから付いてきてくれ」
「え、良いんですか?」
「おれも運営のテントまで行くつもりだったからな。結局『強制脱出装置』直せなくと機能停止するしかなかったって報告しなきゃだし…」
そう言って肩を落とす彼に、二人は思う。あ、駄目だったんだ…と。
そして『教導の鉄槌テオ』に案内されて数分。目的地である運営のテントまで辿り着いた二人は、世話しなく動き回る精霊たちを見ながらいくつかあるテントのうちの一つに向かうテオについていく。
「戻りました」
「む、テオか。報告を頼む」
分かりましたと答えるテオの前にいるのは4人の精霊、最初に反応したのは『教導の大神祇官』で、その横で報告に耳を傾けるのは『教導の大神祇官』、さらにそんな二人を横目に忙しそうに指示を出しているのも『教導の大神祇官』で、そんな三人とは違いゆったりとした動きで書類を纏めている『教導の大神祇官』がいた。
そう、このテントには4人の『教導の大神祇官』が居たのである。そして報告を聞き終わったよく見たら4人の縁の一人、よく見たら胸元にAと書かれたバッチを付けている『教導の大神祇官』は、ふむと頷きながら顎に手を当てた。
「そうか、結局直らなかったか」
「はい、申し訳ありません」
「いいや、気にする必要は無い。そも、我々はあれらのエキスパートというわけではない上に突貫で取り付けたのだ、何かしらの不具合が出たのだろう」
「しかしそうなるとあれだな。他の場所に設置したものも機能停止させるべきではないだろうか?」
そう、少し考えてから発言するのはBと書かれたバッチを付けた『教導の大神祇官』で、彼の発言に同意するようにテオも頷いている。
「うむ、そうだな。仕方がない、参加者に害にしかならないのならば撤去する他無いか。では『マクシムスB』の案を採用しよう。テオ、すまないが何名か部下を付ける、彼らと共に設置済みの『緊急脱出装置』の機能停止と撤去をしてくれ」
「了解しました!…あ、とぉ、そのもう一つ報告といいますか」
「まだあるのか? あぁいや後ろにいる二人と関係している子とか。また迷子か?」
「はい、どうやらキトカロスとはぐれてしまったようで」
「やはりか、これで何件目だ? 確かそれ関係の報告は『マクシムスD』が受けていたな」
と、『マクシムスD』と呼ばれた書類を整理していた彼は少し考える仕草をして、答える。
「今現在報告されているのは32件ほどだな」
「多いな、やはりもう少し案内板を増やすべきか。確か担当は『マクシムスC』だったか?」
「既に対応済みだ。我々だけでは手が足りないだろうと思ったのでな、『ウィッチクラフト』の連中に依頼しておいた。すでに出来上がった分をこちらに運んで来てもらったから後は設置するだけだ」
「そうか、では…確か後少しすれば『教導の天啓アディン』があと少しで休憩が終わるのだったな。戻り次第彼に任せよう」
うむと頷き合う4人。そしてそのうちの一人である『マクシムスA』が二人に向き直る。
「さて、待たせてすまないな。今現在迷子になっているキトカロスに関しての情報はここには来ていない。早急に部下たちに情報伝達する故、すぐとは言わないが見つけることは出きるだろう。それまではこの祭りを楽しみながら待っていてくれ」
「あー、いやその」
「ん? どうかしたか?」
「いやそれは無理ですよ、この人たちの財布持ってるのその迷子になったって言うキトカロスらしくて」
「なる、ほど。確かにその状況で楽しめと言われても困るか」
「では、ここで待っているというのはどうだろうか?」
そう、言いながら会話に混ざってくる『マクシムスD』。彼の手には簡易的な地図が書かれていて、ある箇所を指差していた。
「この場所ではとある事情から無料で提供することが決まった料理を出す屋台が固まっていてな。ここならば財布がなくとも十二分に楽しむことが出きるだろう。ここに君たちが居てくれれば見つけた際の誘導も楽でこちらも助かるのでな」
「そんな場所まで有ったんですか」
「凄いなこの祭り」
「まぁどうせするならみんな楽しめるものにしたいだろう?」
それは確かにと二人は頷き。それじゃあそこに居ることにすると伝え。
誰かが走り込んできた。
「ほ、報告します! 緊急事態です!」
「どうした!? 一体―――」
直後に、衝撃。響く炸裂音と悲鳴に登る土煙。恐らく戦闘音だろうものが断続的に運営テントまで響き咄嗟に誰もが身構える中、報告が続く。
「に、西地区にて突然『クローラー』の軍勢が出現し無差別攻撃を行っています! 現在、現場に居合わせた『スプリガンズ』と協力し迎撃を行っていますが対応が間に合いません! 至急応援を!」
「…はぁ!?」
めちゃ雑人物紹介こーなー
『ティアラメンツ四人娘』
運が悪い子達。今回は偶々くじ引きでドラグマ旅行券を引き当て、偶々何事もなく目的地に到着し、これまた偶々祭りが行われており運が良いとはしゃいでいた……まぁ、そういうことだ。それらの全てが運悪く起こったことである。
『教導の鉄槌テオ』
目の前で想定外の事態が起こってフリーズしてしまった人。普通にいい人である。緊急事態であると発覚し、戦闘音が聞こえた時点で現場に向かって走り出した…が、持っているものが何時もの武器ではなくスコップであることを思い出して戻ってくる事になる。
『教導の大神祇官A』
フルルドリスに大量の食料を見せられながらどうしようかと相談された一番の被害者。キリキリと痛む胃と戦いながらなんとか対応して見せた。問題は多いがなんとかなりそうだと一息付こうとしたところで問題が発生した。その瞬間、戦闘音とは違うなにかが締め上げられる音を己の体の中から聞いた。
『クローラーたち』
突然現れて暴れだした奴ら。原因、理由共に不明。分かってることはただ単純に数が多い事位である。
次回、【それ行けスプリガンズ!! ~やべぇ奴らが大集合で大決戦!?~】
お楽しみに。