MD次元ではカードの精霊はありふれたもの   作:春山乃都

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ほぉ、メイルゥ禁止ですか…割りと厳しめだなと思うのと同時にそっちぃ?!ってなったぞい。


『それ行けスプリガンズ!! ~やべぇ奴らが大集合で大決戦!?~』 【前編】

 それは少し前の事。

 

 多くの精霊が行き交い食べ歩きに適した料理片手に美味しいと笑い合う。そんな光景を見ながら一人の精霊『スプリガンズ・キット』はゴーグルをキラリと煌めかせふっと笑う。

 

「まさかここにこうして来る事になるとはにゃぁ」

「なんかかっこよく決めてる積もりみたいだけど両手に食い物持ちながらそんなこと言っても全然決まってないからな?」

 

 と言いながら『スプリガンズ・ピード』はキットの両手、右手に握られたタコスと左手に握られたアメリカンドッグを見る。言われたキットはといえばなにを言うのかと少しあきれた様子。

 

「別にかっこよく決まる必要なんてないにゃ。今必要なのは単純にこのすんごい祭りを楽しむことだふむにゃむしゃ!」

「せめて喋りきってから食ってくれキットぉ!?」

「いやでもほんとすごいっすよねこれ」

 

 はぁー、なんて声を溢しながら辺りを見渡す『スプリガンズ・ロッキー』は目に写るもの全てが興味深いと言った感じで。

 

「……この規模の祭りが一週間続くってフルルドリスの姉さんどんだけ食料溜め込んでたんすかね」

「知りたいなら教えて差し上げましょうか? うんざりしますよほんとに」

 

 ぼそりと呟かれた言葉に反応するように投げ掛けられた声の方向を見る三人。そこには何人かの部下を引き連れた『教導の神徒』が立っていた。

 

「いやまぁそういわれると知りたくなくなるというか…そのぉ」

「なんでおれらの事つけ回してんだよ?」

「気にする必要は無い、ただ監視しているだけだ」

「むご、もごごごぉ、むごぉ!」

「食べきってから喋ってくれなに言ってるか全く分からんぞ」

「えーっと、なんで監視なんてされなくちゃならないんだって感じか? あ、頷いたよかった合ってた」

「よく分かるな……まぁ良い。なぜ、と問われたならばこう返そう。今までお前たちが『天霆號アーゼウス』で吹き飛ばしてきた建物や地域の数を思い出せ。それが答えた」

「あぁうん、それ言われたらもうなんも言えないわ」

「今回は諦めて監視されながら祭りを楽しむしか無さそうっすね」

「もがー!?」

「いやだって、なぁ?」

「っすねー」

 

 要するに、あなたたちは何かあると周りを吹き飛ばすから監視します、と言っているのだ。でしょうねと深く頷く他無い、寧ろよく祭りから追い出さないものだと思うほどだ。

 

「そう言うわけだ。こちらからなにかをしようと言う積もりはない。単純に祭りを楽しむだけだと言うならば素直に監視されてくれ。そうすれば直ぐに警戒の必要なしと報告するのでな」

「んぐ、むぐ…げふぅ。言っておくけどうちらは自分達の意思で問題を引き起こしてるわけではないにゃ。寧ろ問題の方からすっ飛んでくるからその対処をしてるだけにゃ!」

「なら尚の事放置出来んわ」

「おぉうまいがー!?」

「まぁあれだ、今回は諦めようぜキット。素直に『セリオンズ』の連中と一緒に行動してるバンカーとサルガスに合流しようぜ?」

「っすよ。あんまり離れてうろうろしても…そういえば一緒に居た筈の『スプライト』たち何処行ったんすか?」

「しらんにゃ、いつのまにか居なくなってたからにゃあのビリビリたち」

「待てお前たち『セリオンズ』や『スプライト』の連中と一緒に来てたのか?…え、こわ」

 

 そう言って軽くひく『教導の神徒』と何故かどや顔を浮かべるキット。

 

 

 本当に問題の方からすっ飛んでくる、数分前の会話である。

 

 

 

 時間と場面は戻り、運営テントにて。

 

 そこは先程まで以上に多くの精霊が行き交い、先程以上に焦燥と怒号が入り交じる場と化していた。

 

「報告します! 北地区にて地中より『クローラー・ランヴィエ』と思われる個体の軍勢が出現! 建築物を破壊してまわっています!」

「建物が壊されるのはこの際気にするな! 戦闘能力の無い、あるいは低い精霊たちの避難誘導を最優先とし現地の精霊とも協力を取り付けろ!」

「報告です! 南地区上空に大型の『クローラー』の存在を確認! 我々の攻撃範囲外から『クローラー・レセプター』と思われる個体を送り込んできてますどうしましょう!?」

「今度は空か!? ええい、先程も言ったが無理に撃破しようとするな! 建物が壊されるのは仕方ないと割りきれって―――」

「マクシムスー!? 東地区で『クローラー・アクソン』っぽいのが沢山出てきてそこにフルルドリス突っ込んでいっちゃいましたどうしましょう!?」

「ほっとけエクレシア! あの女なら勝手に敵を殲滅して帰ってくる!」

「あばばばば、じょ、情報が多い!? まず、あーえー、ど、どうする!?」

「落ち着けぇマクシムスB! どうすれば良いのか分からんなら黙って情報整理でもしておけ!」

「マクシムスさまー! マクシムス様が倒れました!?」

「名前の後に記号を付けろ名前呼ぶだけでは誰が誰だか分からんだろうがぁ!」

「マクシムス様Aです!」

「ストレスが限界突破しただけだ転がしておけぇ!」

 

 こういうのを鉄火場、というべきだろうか。そんなことをこの場から離れるタイミングを逸してしまし止まっている『ティアラメンツ・レイノハート』は邪魔になら無い場所で何もせずに佇みながら思う。いやこんな状況でなんでもただ立ってるだけなのかと自分自身も彼は思っている。思って入るのだが。

 

「レイノハートさんレイノハートさん!」

「おう、聞いてるぞ」

「この『クローラー』って言うのすごい殴り心地が良いですよ!」

「オ、ソレハヨカッタナ」

「はい!」

 

 弾けるような笑顔を浮かべながら丁度空か強襲してきた『クローラー・レセプター』を叩き潰しながらそう言葉にするメイルゥ。一緒に迎撃を行おうとして居たスコップ片手に戻ってきて今はちゃんとした鉄槌を持っているテオがドン引きしていた。

 

 まぁそう言う訳でこの場の防衛等に手を貸そうかとも思ったが手が出るのがとても早い戦闘を楽しんじゃうタイプのメイルゥが張り切って突っ込んでいき敵にハンマーを叩き込むので何かする前に戦闘が終わるのである。

 

「なあ、相手殴ったときの感触の良い悪い感じた事あるか?」

「あるわけ無いでしょう」

「だよな」

 

 ひゃっはーと今度は地中から姿を表した『クローラー・ランヴェイ』を次々と叩き潰していくメイルゥを見ながら油断無く武器を構えながら辺りを警戒しているテオとエクレシアがそんな会話をしていた。

 

 と、その時。再び一人の精霊が駆け込んできた。

 

「ほ、報告します!」

「今度はどうした!?」

「すごいの来ました!」

「いや報告はもっと正確にしろ!」

「あ、は、はい!」

 

 そう頷きながらも何処か興奮したようすで言葉を続ける。

 

 

「花の騎士たちが…『フルール・ド・バロネス』たちが駆け付けてくれました!」

 

 

 

 

 

 それはドラグマの北地区での事。戦場とかしたその場はひどく静まり返っていた。今だ次々と地中から『クローラー・ランヴェイ』が姿を表しているというのに、精霊たちの視線はただ一点に向けられていた。

 

「ふむ、成程」

 

 それは豪奢なる鎧纏う十の騎兵。美しき、花の騎士団。十体の『フルール・ド・バロネス』が静かに暴れ狂う『クローラー』の軍勢を睨み付ける。

 

「この空気、この香り、戦場か」

「然り、それもただ狂い破壊を撒き散らすのみの誇り無きものたちが相手だ」

「ならば我らが刃に曇りなど無くか」

「それもまた、然りだ」

 

 九体のバロネスが頷き合い、一体のバロネスはただ無言で武器を握りしめた。

 

「総員、構え」

 

 言葉に、無言で答え。

 

 

「ただ我らの道を遮るものどものを粉砕しようぞ!」

『おぉ!』

 

 突撃。騎馬で踏み潰し盾で粉砕し刃で両断する。その姿はまさしく精霊界にて知られる伝承の如く。

 

 彼女たちが求めるものはただ一つ。それは――――

 

 

 

 

 

 

 コンビニに売っているプリンである。

 

「……なかっただろ」

 

 小さな呟き、無言で武器を握りしめ真っ先に飛び出した一人のバロネスは、言葉をこぼす。

 

「徒歩十分もかからないコンビニに向かうために精霊界に来る必要なんぞなかっただろうが…っ!!」

 

 怒りを表すように叫びを上げながらほかバロネスたち以上に苛烈に敵を攻め立てる。それは危機に瀕している精霊たちを救うために。

 

 

 

 

 ではなく、自分の言葉を一切聞かず勝手に変な道に進んだ挙げ句一週間も彷徨わせやがった己とは違う己たちへの苛立ちをぶつける為だった。人はそれを八つ当たりという。




めちゃ雑人物紹介こーなー

『ティアラメンツ・メイルゥ』

 実はひゃっはーだった子。これもキトカロスの仕業…ということはなく生来のものである。実はキトカロスが居なかったら一番の問題児だったという。今回、クローラーの殴り心地が気に入ったらしくハイテンションである。


『ティアラメンツ・レイノハート』

 連れがひゃっはーしてるのを遠い目をしながら眺めてる。頑張れば『ティアラメンツ・カレイドハート』になれる、が完全にタイミングを逃した。


『教導の鉄槌テオ』

 ひゃっはーしてるメイルゥにひいてる。


『教導の聖女エクレシア』

 ごはんはいっぱいたべるタイプ、で有名な少女。実際沢山食べる方ではあるが大盛りごはんを一回おかわりする程度でまだ常識の範囲内である。今回の祭りが行われるまでは夜の体重計に怖くて乗れない日々が続いていた。そのせいでちょっとフルルドリスの事が嫌いになった。


『教導の騎士フルルドリス』

 今現在『クローラー』相手に暴れまわってるらしい人。純粋な善意からやらかした張本人。エクレシアは沢山食べるタイプと聞いてもしかしてうちに居るエクレシアは我慢しているのでは? と考えてならば我慢せずにすむようにと勝手に大量の食料を溜め込んでた。

 その結果、町一つ埋め尽くす量の食料をエクレシアに見せつけ白目を剥かせ、そんなに食べられないと言われてどうしようかと相談したマクシムスを気絶させた。

 彼女には自重と報・連・相というものが足りなかった。


『マクシムスC』

 他の自分役に立たねぇぇえええええ―――っ!



『フルール・ド・バロネスたち』

 伝承の如く、あるいは物語の様に颯爽と現れた迷子集団。彼女たちがただプリンを買う為に彷徨っている途中であることを殆どの精霊たちが知らない、というか知らない方が良い。

 一人だけ迷うこと無く普通にたどり着けるバロネスが居るのだが、意味の分からない方向に向かって爆走するほかの自分達を放ってはおけず、なんとかコンビニに誘導しようとしたが失敗して一週間、彼女は我慢の限界だった。
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