その日、『ティアラメンツ・シェイレーン』は跳ねた。
喜びの余り体が天井間際まで跳ね上がった。早朝に『ティアラメンツ・キトカロス』がまたやらかしたと知ってテンションが低かったこと等忘れたと言わんばかりの喜び様である。
その様子をどうしたのかと驚きながら見ていた『稲田遊賀』の近くへとシェイレーンは着地すると、興奮しながら言葉を口にする。
「マスター! お祝いしましょうマスター!」
「随分と唐突だなおい、なにかあったのか?」
問いかけるとシェイレーンはぐっと力強く拳を握りしめて。
「MDで『ティアラメンツ・メイルゥ』が禁止送りになったのよ!」
「あぁうん、そう言うことか」
ざまぁないわね! なんて良いながら跳ね回るシェイレーンを見ながら成程と彼は納得した。今日も今日とて彼女の『ティアラメンツ』嫌いは絶好調である。
「まぁ良いか嬉しそうだし。で、お祝いだっけ? をするんだったか。なにか食べたいものはあるか?」
「なにか……あ、美味しいもの食べたい!」
「すげぇ判断に困る回答来たな」
「うぐ、ごめんなさい…」
「いや良いんだけどさ。美味しいものかー…天ぷらにでもするか?」
「あ、食べたい食べたい!」
「じゃあそれで、あでも材料無いな。買ってこないとだから…それから作ってとなると昼には間に合わないな。じゃあとりあえずあれに行くか」
「あれって?」
「外食」
と、言うわけで。
「それでうちに来たと」
「はい。ここら辺で一番料理が美味しいのここなんで」
「嬉しいこと言ってくれるねー」
「店長! フルーツパフェもお願い!」
「うん、分かったよ。確かに何時もよりテンション高いね」
「恐らく『宣告者』さまのお陰ですね!」
何時も通りにゅっと横から生えてきた『宣告者の神巫』の何時も通りな発言。それにシェイレーンは少し呆れた様子で。
「そんなわけ無いでしょ…いやまぁ確かにここ最近寝る前に『ティアラメンツ』滅びます様にって祈ってはいたけど」
「そんなことしてたのかお前」
「いや、祈るだけなら無料だし」
「やはりそうでしたか!! きっとその祈りが『宣告者』さまに届いたのですよ! さぁわたしと同じ『宣告者』さまを信仰する者としていかに素晴らしいかを広めに行きましょう! レッツ布教!」
「しないわよそんなこと! というか貴女と同じって言われるのすごい嫌なんだけど!?」
と、すごい大きな声を上げながら信仰心で濁りきった瞳をこれでもかと輝かせる『宣告者の神巫』に迫られ、抵抗するシェイレーン。と、キッチンから完成したサンドイッチを持って出てきたと思ったらその場で固まってしまった『崇高なる宣告者』。
嘘だろお前、とでも思ってそうな感じでシェイレーンの事を見ていた。どうやら今回の規制と関係ある無しは兎も角として彼女の祈りは届いていたらしい。少し申し訳なくなった。
と、筑波店長が固まってしまった『崇高なる宣告者』の手からひょいとサンドイッチの乗った皿を取り二人の前に置く。
「まぁなんにせよ君たちにとって喜ばしいことがあったなら私からはおめでとう、って言わせてもらおうかな」
「ありがとう店長!」
「うん、元気があってよろしい!」
なんて笑みを筑波店長から向けられながら美味しそうにサンドイッチを食べるシェイレーン。何時見ても幸せそうに食べるなー、なんて思いながら遊賀もサンドイッチを一口。うん、大変美味しい。家で同じものは作れるが、そうではないのだ。喫茶店で食べるから良いんだよな、なんて思いながら。
「おーい、いい加減動いてくれー。二人がサンドイッチ食べきっちゃうぞー?」
「動きを止めた『宣告者』さま…は! もしやこれは何かの啓示!? あるいは試練!?」
「絶対違うわよそれ」
まぁこの店は一般的な喫茶店よりも賑やかだが、それはそれで良し。と言うことで。
さて、少ししてから再起動した『崇高なる宣告者』が手早く、しかしきちんと作り上げたフルーツパフェをやっぱり幸せそうに完食したシェイレーンを連れて喫茶店を出る。
さてそれじゃあ目当てのものでもかいに行こうか、どうせだし少し良いものでも買うか。なんて事を話ながら真っ直ぐスーパーへと向かう。
「…あ、見てマスター! あそこの公園でクレープ売ってるわよ!」
積もりだったが、シェイレーンがとても良いものを見つけてしまった様で。
「食べるか?」
「食べる!」
「まじで元気が良いな」
では寄り道だとクレープを売っているキッチンカーへと向かう。やはりどんな時でもクレープを食べたがる人は結構居るようでそこそこ並んで。さて自分の番だと二人ともシンプルにチョコバナナのクレープを注文し。
「あ、マスター。ここはあたしが払うわよ」
「ん? いや別に俺が出すぞ?」
「良いのよ、さっき払ってもらったし」
「んーじゃあお言葉に甘えて」
「よろしい!」
なんてやり取りをしながらクレープを受けとる二人。それじゃあ何処かで座りながら食べるかとベンチのある場所へと向かい。
「んー! 今まで何となく食べてきませんでしたけどこのツナクレープはこれはこれで美味しいですね! うむむ、これはハムチーズの方も食べてみるべきか。いやでもチョコアイスクレープというのも食べてみたい…全部食べて見れば良いだけですね!」
なんて良いながら両手にクレープを持っている『ティアラメンツ・キトカロス』がベンチに座っていた。
キトカロスが居る事を黙視した遊賀は、何となく隣に居るシェイレーンへと視線を向ける。そこには先程までご機嫌であった筈のシェイレーンが無表情で立っていた。その瞬間、理解する。目の前に居る精霊があのキトカロスだと。
シェイレーンが無表情のまま、キトカロスへと近づき遊賀もそれに続く。
「…なにやってるのよ」
「んぉ? あ、シェイレーンじゃないですか! 奇遇ですねこんな所で」
「えぇそうね、出きれば会いたくなかったけど」
「またまたぁ」
シェイレーンから力強い舌打ちが響く。
「それで、本当になんでこんなところに居るのよ? ドラグマに行ったんじゃないの?」
「はい? ドラグマ? なんで?」
「何でって、ドラグマで祭りがあってそこへ行くって書かれた予定表が貴女の部屋から見つかったってレイノハートが」
「……あぁ! そう言うことですか」
「あれ単に置いといただけですよ? ちょっと悩んでくれれば時間稼ぎになるかなって」
時間がかかればかかるほど色んなもの食べられますし、なんて言いながらクレープを食べるキトカロス。
「…は?」
「いやですねもー! そんなわたしが何処に行くのかすぐ分かるようなもの部屋に放置するわけ無いじゃないですかー!」
クレープが崩れない程度の勢いで手を振るキトカロスは、それにしてもと言葉を溢す。
「あの二人ドラグマに向かったんですねー…本当にただ置いといただけのチラシと予定表見ただけわたしがそこに向かったと思うなんてちょっと心配になる位単純ですよね」
まぁでもと満面の笑みを浮かべて。
「でもそう言うちょっと騙されやすいところもわたし大好きなんですよ。好きなもの食べに行けますし!」
そう言った。
「死ねぇ!」
「え? ごぶへぇ!?」
直後に真横からすっ飛んできた『ティアラメンツ・メイルゥ』に吹っ飛ばされた。
そこからはもう、色々あった。目の前で起こったメイルゥの的確な急所攻めや少し遅れてやってきた『ティアラメンツ・レイノハート』によるキトカロス的に死刑宣告に等しい罰の言い渡しなどなど本当に色々あったが、それよりもシェイレーンと遊賀には気になることがあった。
レイノハートが持ってるバカみたいにでかい鞄は、一体なんなのか…というものであった。
それの正体を知ったのは三人が落ち着いてからで、レイノハートに説明されると同時にされた頼み事に二人はしっかりと頷いた。
そして、その日の夕食。
「美味しい! サックサックでスッゴい美味しいわマスター!」
「そりゃ良かったな。あ、大根おろしここ置いときますね」
「あ、ありがとうございます」
「しかし貰ったときに思ったけどやっぱこれ相当質が良いよなー。このレベルだと結構な値段が…あぁいや、やめよう気が重くなりそうだ」
「うぐ、うぐぎぎぎぃ! ちょ、ちょっとだけわたしも貰ったりは」
「駄目に決まってるでしょ」
「なに寝言言ってんだよお前」
「殺しますよ?」
「ひん!」
そんなやり取りが、稲田宅であったそうな。
めちゃ雑人物紹介こーなー
『稲田遊賀』
言わずと知れたシェイレーンに甘い男。曰くすごい美味しそうに料理食べるから、とのこと。ぼこぼこにされるキトカロスに思うところはあれど、まぁどう考えても自業自得だよなと判断した。レイノハートとメイルゥがなぜか持ってきた大量の食料を使ってちゃんとしたシェイレーンの望むお祝いが出来た、がしかし。MDでのメイルゥ禁止祝いをその精霊であるメイルゥが居る場でするのはどうなんだ? とは、すごく思った。
天ぷらはまいたけが好き。
『ティアラメンツ・シェイレーン』
ここ最近で一番のガッツポーズを決めた。テンションの上がり下がりがとても激しい1日になった。キトカロスが持っていたレイノハートたち二人の財布の中身を見て、とても深いため息が出た。
天ぷらをめんつゆに沈めてから食べるタイプ。
『ティアラメンツ・メイルゥ』
暴力の化身。カードに記されている攻撃力がそのまま精霊に当てはまるものではないと遊賀に知らしめた。夕食を一緒に食べることになり、その際お祝いだと言ったシェイレーンになんのお祝いなのかを聞いた。その結果出てきた言葉は「へぇー」であった。そのとき彼女の考えていたことは一つだけ。殴り心地良かったしまた殴りたいから今度クローラー探してに行こうかな? というものだった。蛮族かな?
天ぷらには大根おろしですと力強く主張する。
『ティアラメンツ・レイノハート』
苦労人。色々と大変だったと遠い目をしてた。大量の食料をもって遊賀にどうすれば言いかと相談し、良い方向へと向かったのでほっと一息つけた。が、夕食をご馳走になった際に、食材の質がとても良いなと改めて思い…余り気がつきたくないことに気がつきなにも考えないことにした。
基本塩で食べるがかき揚げはめんつゆが上手いと言っている。
『ティアラメンツ・キトカロス』
間違いなくカス。目の前で美味しそうに天ぷらを食べている光景を見せられ死にそうになってる。
海老の天ぷらが好き。なのだが、それを食べられたのはその日から大体1ヶ月後の事だった。
『崇高なる宣告者』
ちょっと前から夜になるとティアラメンツ滅べと言う恐ろしく強い邪念のようなものが届くようになりちょっと困ってた。それを発してた存在がまさかの知り合いで割りと本気で思考停止した。が、良く考えたら納得しかなかった。
別に今回の規制とはなんの関係もない。