MD次元ではカードの精霊はありふれたもの   作:春山乃都

54 / 65
仕事中の『鉄獣戦線 キット』は雑談好き

 それは何時ものようにお湯を沸かそうとした時の事。

 

「…ん? あれこれ、あー」

「どうかしたの?」

 

 と、なにやら声を溢す遊賀。どうしたのかと洗濯物を畳み終えたシェイレーンが近づくと、いやなと良いながら手に持っているケトルを見せる。

 

「なんか動かなくなった」

「え、壊れたってこと?」

「のかなー。まぁそこそこ長いこと使ってるからなこれ」

「そういえばあたしが来たときにはもうあったわよねこれ。どうするの? 新しいの買う?」

 

 そう首を傾げるシェイレーンにそうだなーと、少し考えながらケトルの中にある水を別容器に移して。

 

「とりあえず、直るかどうか確認してからだな」

 

 

 

 『修理の大木屋』という店がある。文字通り色んな物の修理を請け負っているそこに二人は訪れ。目の前に居る持ち込んだケトルを軽く見ている『鉄獣戦線 キット』に問いかける。

 

「で、どうですかね?」

「んぉー…あれかな、たぶんあれだなー。うんそだね、この位ならパパッと直せるよ。修理費はー、えっと…これぐらい」

 

 と差し出された額を見て、これならと彼は頷いた。

 

「じゃあお願いします」

「よしきた! それじゃ言った通りパパッと直しちゃうからちょっと待っててねー」

 

 なんて良いながらいくつかの工具を取りだしガチャガチャとケトルを弄り始めるキット。直るようで良かったなと思いながら置かれている済み書かれた紙の張られた家電を眺めていたシェイレーンの方へと向かい。

 

「うぇーい、帰ったぞーって稲田のにーちゃん達じゃん、いらっしゃい」

「あ、お邪魔してます」

「こんにちはー」

 

 その時、よいせと言いながらそこそこの大きさの箱を抱えながら『鉄獣戦線 ナーベル』が入ってくる。

 

「ほい、回収してきたぞキットー」

「ういー。ありがとー、そっち置いといてー」

「あいよー。よっこいせっと、はぁ…でだ。稲田にーちゃん達がうちに来るってことはなんか壊れたのか? またそこのシェイレーンがキレ散らかしてMD用ディスクぶっ壊したか?」

「違うわよ」

「ケトルが動かなくなったから見て貰いに来たんですよ」

「てーと今キットが直してるやつか?」

「そだよー」

 

 成程と頷くナーベル。ふとシェイレーンは気になったことがあったのか声を溢す。

 

「ねぇこれなに?」

「これって?」

「これよこれ」

 

 そう言いながら指差すシェイレーン。その先にあるのは一つの黒焦げた物体で、それを見たナーベルはあーそれかと言って。

 

「確か、電子レンジだった筈だぞ」

「あー成程……え、これ電子レンジなの!? この黒いのが!?」

「その反応良く分かるわ。実際今日これを回収に行った俺も最初見たとき同じ反応したし」

「というかこれ直せるのか?」

「もーちろん。うちとおやじさんの手に掛かればちょちょいのちょいで元通り…って訳には流石に行かないけど、ちゃんと使えるように出きるよ」

「でもこの状態だと流石に新しいの買った方が良い気がするけど」

 

 なんて、思わずと行った様子で言うシェイレーンにあー、なんてキットが声を溢す。

 

「正直それはうちも思うよ。けど依頼主がどうせ新しいの買ってもすぐ壊すから本当の意味でどうしようもない状態にならない限りはこれを使うって言ってるのよ。実際、これうちに持ち込まれたの先月だけでも八回目くらいだっけな? そのくらい持ち込まれてるし」

「滅茶苦茶多い?!」

「え、これそんな頻度で持ち込まれてたもんなのか? 俺も知らなかったんだけど」

「普段はケラスが回収しに行ってそのまま置くに運ばれるからねー。今回ナーベルに頼んだのも単純にケラスがおやじさんと別の仕事行ってたからってだけだし」

「そう言うことか」

「そもそもどうしたらこんなことになるんですかね?」

 

 言いながら首を傾げる遊賀に、確かとキットは少し考えて。

 

「なんでも、金属ボールで物暖めようとしたかららしいよ? 見た感じ完全に燃えてるから多分それだけじゃないだろうけど」

「えぇー…?」

「なんでそんな…あ」

「んあ? どったの?」

「いやちょっと昨日した世間話思い出しただけなんで」

「ほーん?」

「どうしたのよマスター? 急に昨日の…昨日? 昨日って確か…あ」

 

 どうやらシェイレーンも思い出したようで。思わずと言った様子で頭を抱えた。それを見てナーベルはどうしたのかと首を傾げる。別に、なにかあったわけではない。本当に昨日の世間話を思い出しているだけだ。

 

 

 具体的に言えば昨日、家に遊びに来た『Evil★Twin キスキル』の言っていた愚痴の内容を思い出したのだ。なにを思ったのかリィラが金属ボールをレンジに突っ込もうとしたから止めるのに苦労した、的な内容の愚痴を。

 

 

 二人の視線が、再び黒焦げた電子レンジへと向けられた。できれば、頭に浮かんでしまった予想が外れてほしいな、なんて思う。

 

「んー、ん! よっしゃ終わりー!」

「え、もう? すごい早いわね」

「流石ですね」

「それほどでもあるからもっと褒めて」

「褒めると調子乗るから褒めなくて良いぞ?」

「ちょぉいナーベル! あ、ちゃんと直ってるか確かめるからもうちょっと待っててねー」

 

 そう言ってコンセント何処だっけななんて探すキットを見ながら、シェイレーンはボソリと一言。

 

「前から思ってたけど、『それ行けスプリガンズ!!』に登場するキットとは全然違うわよね」

 

 なんて呟きにキットはピタリと動きを止めて、振り返る。

 

「いや、あれに出てくるキットはうちらの中でもかなりの変人だから違うのも当然と言うか……ごめん、ちょっと反応に困る」

「あ、うん。ごめんなさい」

 

 なんとも言えない空気がそこに広がっていた。

 

 

 ちなみにケトルはしっかり直っていた。それに関しては、喜ばしい事である。




めちゃ雑人物紹介こーなー


『稲田遊賀』

 じみに気に入っていたケトルがちゃんと直ってご機嫌。そして後日、家に遊びに来たキスキルの話を聞いて思わず天井を仰ぎ見た。悲しいことに予想が当たってしまっていたということだ。


『ティアラメンツ・シェイレーン』

 実はデュエルディスクを壊したことがある。理由は十回連続で『ティアラメンツ』とかち合い後攻0ターン制圧されてぶちギレて地面に思いきり地面に叩きつけたからである。


『鉄獣戦線 ナーベル』

 割りと墓穴されるタイプな気がする人。主に、小物類の運搬を担当している。結構友達が多く、それもあってか割りと仕事を持ってくる。


『鉄獣戦線 キット』

 とりあえずアーゼウスぶっぱしないタイプのしいて言えばスタンダードなキット。しかし機械弄りが得意なのは同じで、それを有効且つ平和的に使えていて大変満足している。黙って作業するより誰かと喋りながらの方が調子が良いので、出来れば近くに誰か居てほしいなって思っていたりする。

 少し前の友人のエクレシアが訪ねて来たかと思えば「貴女も敵なのですか!?」と叫びながら武器を向けてきたのですごい焦ったとか。因みに彼女的には敵だったようで泣きながら帰って行くエクレシアにただ困惑していた。結局どう言うことなのか分かったのは後日、ダイエット器具は無いかと聞かれた時だったとか。





『Evil★Twin キスキル』

 頭痛い…。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。