MD次元ではカードの精霊はありふれたもの   作:春山乃都

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たまには別のお宅の話でもって事で。


永守家の『白銀の城の魔神像』の日常的な朝の風景

 それは『永守サエ』と彼女と共にある精霊たちの何時もと変わらぬ朝の風景。

 

 

 

「おーい魔神像ー。朝ご飯できたよー。起きてー」

 

 『白銀の城の魔神像』の1日は、そんな声とぺちぺちと己の体が叩かれる感覚から始まる。

 

 ギシッと音を鳴らし、目を開き視線を少し下に向け己の顔を見上げている『白銀の城の召使い アリアーヌ』を見る。

 

「おはよー! ちゃんと起きてるー?」

 

 そう首を傾げるアリアーヌに、サムズアップしてみせ起きていると伝えると彼女はうむうむと頷いて。

 

「それじゃあわたしは姫様起こしてくるから。朝ご飯は残さず食べるよーに!」

 

 じゃっと、軽くを手を振りながら彼女の言った姫様、『白銀の城のラビュリンス』の部屋へと向かっていく。それを見送り『白銀の城の魔神像』はゆっくりと調子を確かめるように体を動かし、問題ないなと頷いてよいせと最近きちんと武器として使った覚えが無く、もっぱら夜寝るときに杖変わりにしてしまっている大剣を仕舞いダイニングへと向かう。

 

「ふなぁー……ん? あぁ、貴方でしたか。おはようございます」

 

 よいしょと扉や壁を傷つけないように気を遣いながらダイニングに着くとティーカップ片手によく分からない声を溢していた『白銀の城の召使い アリアンナ』がこちらに気がつき立ち上がりながら朝の挨拶。それに軽く手を上げて返し、『白銀の城の魔神像』用にと己の主である『永守サエ』が特注してくれた椅子に座る。

 

 見た目相応に重い己の為に態々用意してくれただけでもありがたいというのにベッドは流石に無理だったと申し訳なさそうに言っていたのを今でも鮮明に思い出せる。まぁベッドに関してはその後すぐに筆談して必要ないと伝えたのだが。己は寝そべれないので、こう翼が邪魔で。そこらへん姫様は本当に上手に眠っているなと今でも思う。

 

 

「おはよーござぁー…」

 

 なんて事を考えているとビシッと何時も通りのドレス姿の、未だに夢の中に居ると見て分かる『白銀の城のラビュリンス』がゆらゆらと頭と揺らしながらゆっくりとダイニングへと入ってきて、そのままテーブルへ…ではなく壁に向かってふらりと向かい。

 

 

 ストンと、下に向かって落ちていった。

 

 

 少ししてから彼女の悲鳴が聞こえてきて、しかし誰も慌てた様子はなく己の為にコーヒーを淹れてくれていたアリアンナが姫様が消えた場所に近づいてうんと頷いた。

 

「ただの『落とし穴』ですね。これならすぐ帰ってきますね」

 

 との事。ならまぁ良いかと目の前のテーブルに並ぶ朝食に意識を向ける。

 

 クロワッサンにハムエッグ、サラダとなんか緑色のスープ。うむ、スープがなんなのか分からないが実に素晴らしい朝食である。というわけで取り合えずスープを一口。あ、冷たい。これはあれか、枝豆か。そう言えば昨日姫様が大量の枝豆貰ってきてたなと思い出し、これは枝豆の冷製スープという奴なのかと納得したように頷く。

 

 うむ、実によい。やはり食事は素晴らしい。前に出会った己と同じ『白銀の城の魔神像』は必要ないからと食事をしてないと言っていたが、このスープを飲んで冷静になって考えればどれだけ損をしているか分かる事だろう。

 

 

 

 …冷製スープを飲んで、冷静に考える…これはありなのでは!?

 

 

 

 そう思いながらバッと視線をコーヒーをテーブルに置いているアリアンナに向ける。

 

「…?」

 

 首を傾げられた。ぬぅ反応的に余りよろしくない、少し安直すぎたか? と一人唸る『白銀の城の魔神像』はクロワッサンを一口。うむ、とても美味。

 

「はよー」

「おはようございます主様」

「おー、魔神像もおはよー」

 

 と、欠伸をしながら入ってくる永守エマ。彼女はテーブルの上に並べられている朝食を見てから、部屋を見渡す。

 

「ラビュリンスはー…何時もの?」

「はい、姫様は『落とし穴』によって下へと落ちていきました」

「そっか、ならそんな気にする事ないか。あ、コーヒー頂戴」

「かしこまりました。しかし随分と眠そうですね」

「いやさぁ、ちょっと徹夜で麻雀してたのよ。いやーまたストービーに勝てなかったよ」

 

 なんて言いながらケラケラと彼女は笑う。相変わらず己の主は翌日が休みなるとこれだ。どうやら『白銀の城の竜飾灯』や『白銀の城の狂時計』、そして『白銀の城の火吹炉』と一緒に遊んでいたようだ。というか相変わらずそう言った遊びでは暴れまわっているのだな火吹炉はと思いながらサラダを食べる。

 

「どうぞ」

「ありがとー…はー、苦い。これこれ」

 

 実にカフェインとか呟きながらクロワッサンを手に取り、ナイフでスッと真ん中に切れ込みを入れた彼女は、そこにヒョイヒョイとハムエッグやサラダを挟み食べ始める。

 

 実に美味しそうに食べている。だが気持ちは分かると思わず頷く『白銀の城の魔神像』。己とて主やアリアンナ達の様に表情が分かりやすく変かしていたなら同じような顔を浮かべていたことだろう。

 

 

 その時だ。

 

 

「わたくし帰還! ですわ!」

 

 バンと勢い良く扉を開き『落とし穴』で下へと落ちていた『白銀の城のラビュリンス』が戻ってきた。先程と違ってすっかり目が覚めているようだ。

 

「おー、おかへりー」

「お帰りなさいませ姫様」

「ただいまですわ!」

 

 はっきりと、しかし朝であることに配慮して声量を押さえて返す姫様。と、後を追うように部屋に入ってくるアリアーヌ。

 

「あ、姫様お帰りなさい。洗濯物全部出してくれました?」

「ですわー」

「それじゃあ洗っちゃいますねーってそう言えば狂時計たちは? 何時もだったらもう起きてる筈ですけど。寝坊?」

「あぁー、あの子たちはあたしと一緒に徹夜してさっき寝たところだから寝かしてあげといてー」

「はーい、分かりましたー」

「またなにかしてましたの?」

「うん、ちょっと遊んでたの。ラビュリンスも今度一緒にやる?」

「受けてたちますわ!」

「その言い方は少し違う気がする」

 

 なんて楽しげに話す二人。そのまま今日の予定の話をし始めるのを聞きながら、『白銀の城の魔神像』はスープの最後の一口を口にし、スプーンを置いて手合わせ。そして心のなかで一言。

 

 ごちそうさまでした、と。

 

 さてと食器をアリアンナに手渡しつつ思うのは今日これからの事。一体どんな1日になるかななんて思い馳せる。

 

 

 出来れば姫様が変なの貰って来なければ良いのだが。なんて。




めちゃ雑人物紹介こーなー

『白銀の城の魔神像』

 駄洒落が好きらしい、が姫様以外にそれを知るものは居ない。地味に立ちながらじゃないと眠れない質だったりするが、それを知ることは果たしてあるのだろうが。


『永守サエ』

 ラビュリンスたちの主でゲーム好き。翌日が休みの日は何時も徹夜で何かしらのゲームを楽しんでいる。なお、勝率はあまり気にしないタイプである。


『白銀の城の召使い アリアーヌ』

 実は目が覚めるまで少し掛かるタイプ。彼女が朝食を作るときは大体和食になる。曰く、自分が味噌汁が飲みたいからとの事。


『白銀の城の召使い アリアンナ』

 時間になるとすっと起きられるタイプ。本日の朝食担当。取り合えず朝はさくっと食べられるものをと思い、何時もそうしている。今回のハムエッグは完璧の出来だと密かにどや顔を浮かべていた。


『白銀の城の火吹炉』

 主や仲間と一緒に徹夜した。今回無双していたらしい。






『白銀の城のラビュリンス』

 その日主と一緒に遊びに出掛け、存分に楽しんだ帰り道に偶々何時もお肉を譲ってくれる友人と出会い話が盛り上がり…結果、生ハムの原木を譲られた。
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