何時もの朝、『ティアラメンツ・シェイレーン』の日課と言える何時もの散歩。割と気温も下がってきて過ごしやすくなってきたなと思いながら何時もの公園を歩く、いやまぁ浮いてるから歩くというのは少し違うけれども。
「ふきゅーきゅっきゅー」
「あ、『メルフィー・ラビィ』」
「きゅ? ふきゅっきゅー!」
ご機嫌に走っているのはいつぞやの精霊『メルフィー・ラビィ』の姿を見つけ、相手もまたシェイレーンに気がつき覚えていたのか軽く手を振る。手を振り返せば嬉しそうに鳴き、また走り出す。目指しているのは方向的に乗って居た公園のベンチだろうかと彼女が思っていると正解だったようで、ベンチに辿り着くと楽しそうによじ登り。
「うるぅ?」
「ふきゃ?」
先客がそこには居た。
「ふきゅー…」
「うるるぅー…」
公園に設置されているベンチの上でお互いに睨み合う二体の精霊。
一体は『メルフィー・ラビィ』。このベンチは己のものだと言わんばかりに仁王立ちし堂々と腕を組んでいる…積もりなのだろうが前足が短いためか組むことが出来ておらず体毛に前足が沈み込んでいる。
もう一体は『ピュアリィ』。ふんすと鼻を鳴らしているラビィに対していいやここは自分のものだと唸りながら威嚇するように姿勢を低くしている…のだがどうやら毛量が多いからなのかパッと見、毛玉にしか見えない。
そんな自分達のもふもふっぷりをこれでもかと主張している二体から何気なく視線をずらし右を見るとそこにはラビィの事を応援しているのか各々鳴き声を上げているいつの間にか集まっていた『メルフィー』たちと、それを見守る『メルフィー・マミィ』。
「るー」
「あ、どうも。おはようございます」
見ていたら『メルフィー・マミィ』と視線が合いお辞儀され、シェイレーンも挨拶を返す。
「ふきゅぁー!」
なんて事していたらラビィが力強く鳴き、ピュアリィに突撃する。自分のお気に入りであるベンチから追い出してやると言う確固たる意思を漲らせている、が、しかし。遅い、とても遅い。音として表現すればポテポテっと言った具合にとてもゆっくりである。4本の足で走ればちゃんと早いのになぜ二足歩行で突撃するのか、シェイレーンには全く分からない。
「ふっきゅぁー!」
勢いよく繰り出される一撃、多分パンチであるそれがピュアリィへと叩き込まれ、もふっと拳が毛に沈み込む。
あまりにもふもふのふわふわ。みているだけのシェイレーンですら分かるその圧倒的毛並み。思わずといった様子でラビィは心地よさげに声を溢しながら二度三度と毛を触り、直後にはっとした様子で転げながら後退する。
「ふ、ふきゅー…」
「ふるるー」
危なかったと言わんばかりに汗を拭う様な仕草をするラビィを見ながら誇らしげに毛を揺らすピュアリィ。ふわもふなだけでなくサラッサラでもあるようで。あの子の主は相当に気合いを入れて手入れしているのだろうなとぼんやりとシェイレーンは思った。
「うるぁー!」
今度はこっちの番だとピュアリィが駆ける。先程のラビィと違いその動きは素早くあっと言う間に接近しラビィに体当たりを仕掛ける。
「ふっきゅぁ!」
「るぁ!?」
が、しかしピュアリィの渾身の一撃は弾かれる。そう、『メルフィー・ラビィ』のもふもふな毛並と『餅カエル』も認めるもちもちボディによって。防御力2100は伊達ではないのである。
「ふきゅーきゅっきゅきゅー」
「うるるぅ…!」
その程度では効かんと言わんばかりにお腹を撫でるラビィ。それを受け悔しそうなピュアリィはどうしたものかと辺りを見渡し。
「んなー」
「るぁ!?」
ゆったりと道を歩いている精霊、『エクスピュアリィ・ノアール』の姿を見つける。どうやらピュアリィと知り合いのようでぶんぶんと前足と尻尾を振りながら声を上げる。
「るるらぁ! うるー!」
「ふきゃ!?」
「んなぁー?」
叫ぶ『ピュアリィ』と驚き狼狽える『メルフィー・ラビィ』。反応的に手伝ってくれとでも言っているのかもしれない。鳴き声を向けられた『エクスピュアリィ・ノアール』はゆっくりと視線をピュアリィとラビィの居るベンチへと向け、少し首を傾げてからなにか納得したように頷いてからベンチへと近づき。
「んな」
ペチリと2体をはたき落としベンチの上に寝転がる。
なにが起こったのか理解出来ないといった様子で呆けながらベンチを見上げる二体。
「うぁー!」
「ふきゃー!」
直後に大噴火。絶対許さんとベンチに勢いよく這い上がり寝転がっている『エクスピュアリィ・ノアール』の体を叩く。と、『エクスピュアリィ・ノアール』は鬱陶しげに体を動かし器用に足を使って二体の精霊を投げた、いや蹴ったと言うべきか、ボールの如くポンポンと跳ねるラビィとピュアリィ。
二体の悲鳴が響く。
「きゅーきゅっきゅー!」
「うるぁー!」
尤も、悲鳴と言うにはどこか楽しそうだけれども。いやどこかではなく普通に楽しんでるなあれ、とシェイレーンは判断した。だって跳ねながらポーズ決めてるし。
「ふきゅ!」
「うる!」
一際高く跳ね上げられ、空中でくるりと一回転し綺麗に着地する二体。メルフィーたちの拍手喝采を受けながらお互いに認め合うように握手を交わす。
「きゅきゅふきゅー」
「うるらぁー!」
そして手を振り他のメルフィーたちの所へと走っていくラビィとそれを見送るピュアリィ。こうして端から見ればただじゃれ合っていただけ、しかしあの二体からすれば真剣そのものだったベンチの奪い合いはあっけなく終了した。結局二体が奪い合ったベンチを勝ち取ったのは誰かと言えば。
「…すぴー」
「るるらぁ!」
気持ち良さそうにベンチで寝始めた『エクスピュアリィ・ノアール』である。
ピュアリィに体を叩かれながらも寝息を立てている『エクスピュアリィ・ノアール』。それを見ながら彼女は密かに思う。
…頼んだらもふらせてくれるかしら?
割と本気で葛藤しているシェイレーンだった。
めちゃ雑人物紹介こーなー
『ティアラメンツ・シェイレーン』
久しぶりにかわいいのを見て癒された。今度からカメラ持ち歩こうかなんて事少し考えてる。マスターに相談してみよう、そうしよう。
結局頼んでもふらせてもらった。とても気持ちよかったと満足げにマスターに語ったという。
『ピュアリィ』
ふわもふの化身。相当気合いを入れて手入れされているその毛並みは間違いなく世界クラス。あまりにスゴすぎて散歩に出るといろんなものが引っ付いてくる。今回新しい友達が出来た。個人的に強敵とかいてともと読むって感じに思ってるつもり、らしい。
近くに居た精霊に撫でて良いかと聞かれたので頷いたらもふられた、なんかひんやりしてて気持ちよかった。またあったら撫でてもらおうと思ったとか。
『エクスピュアリィ・ノアール』
実はめっちゃ眠かった。朝の散歩に行くから着いてきてとピュアリィに叩き起こされて若干不機嫌、でもまぁ主だけに任せるわけには行かないから仕方ないと着いてきた。が、結局眠気に負けて寝た。
『メルフィー・ラビィ』
お気に入りのベンチに居た知らんやつと遊んだ。とても楽しかったので友達! でも今度はベンチ独占してやる。なんて事思いながらみんなと一緒に帰った。