何時もと変わらず『ティアラメンツ・シェイレーン』は部屋の中をぷかぷかと浮かび揺蕩いながら本を読む。珍しく電子書籍ではないただの本をだ。
実のところシェイレーンは結構読書と言うものが好きだったりする。よく読んでいる漫画もそうだが、昔の作家が書いた割と小難しい類いの小説なんかも楽しく読める程度には読書を好んでいる。もっとも今読んでいるのはそこまでお堅い類いのものではないが。
そもそも己のマスターである『稲田遊賀』と一緒に静かに読書している時間が好き、という事なのだから読んでいる本の種類はそこまで彼女は気にしていないのだ。
「んー…」
「ん? どうかしたか?」
さてそんな彼女だが、本を片手に唸りながら同じくソファで本を読んでいた遊賀の横にポスンと落ちる。それに彼は首を傾げながら問いかけると。
「ねぇマスター、防犯用のデュエルってちゃんと効果あるの?」
「どうした急に?」
「いやね、本で防犯用のデュエルロボが泥棒にぼろ敗けして大切なデータが盗まれたーなんて描写があったのよ。それで現実でも防犯用のそれが実際に使われてるって話思い出して実際はどうなのかなって思ったのよ」
「あーそういうことか」
成程と言いながら彼は本を片手に確かと呟きながら少し考える。
「そこまで詳しい訳じゃないけど、割としっかり効果あるらしいぞ。防犯用のデュエルロボ」
「あ、そうなの?」
「あぁ。そもそも防犯用のデュエルロボが動いた時点で警察やら警備会社やらに連絡行くからな? その時点で大抵の泥棒はさっさと逃げる」
「…確かに」
「それに小説とか漫画みたいに警察が来る前に云々とかも出来ないからな」
「え、なんで?」
これは素の疑問。デュエリスという者たちの強さを知ってるから割と平然と出来そうと思っていたからシェイレーンは結構驚いた。そしたら彼は続ける。
「いや、防犯用のデュエルロボの目的はデュエルに勝つことじゃないからな? レギュレーションもなにもない只ひたすらに嫌がらせみたいな勝ちも敗けもしないデュエルをするんだよ。分かりやすく言えば『ロンゴミ発禁令』とか『魔鍾洞』とかそういうやつ」
「…うわぁ」
思わず、嫌そうな声を溢すシェイレーン。『魔鍾洞』と言うのは相手取った事が無いからよく分からないが『ロンゴミ発禁令』なんて禁止になるまでは何度か当たったことがあるので、それがどれだけ面倒であるか身に染みているのだ。
「更に言えば防犯用のデュエルロボは手札事故が起こらない様になってるらしいからな。正直デュエルに勝って無力化って言うのはよっぽど運が良くてたまたま相手のメタデッキを持ってて手札も完璧って状態でもない限り無理だな」
「はぁ!? なにそれありなの!?」
「ありだろ、飽くまで犯罪を防ぐのが目的の物なんだから」
「…あー」
「まぁそんな性能とかがそこそこ知られてるからあるだけでも結構効果的って話だぞ。まぁさっきも言ったがそこまで詳しい訳じゃないから実際は違います、なんて事は普通にあるだろうがな。それでもデュエルロボが配備されてる場所での盗難とかの犯罪はかなり減ったらしいけど」
「あ、それでも無くなったって訳じゃないのね。正直さっきの話聞く限り絶対相手したくないロボだけど」
「起動したデュエルロボを物理的にぶっ壊してってするやつがそこそこいるからな」
「すっごい力業だった」
だが先程聞いた内容から考えるとそれが最適解に思えてならないシェイレーン。大抵の事をハンマーで解決するタイプである友達もその通りと満面の笑みを浮かべサムズアップしながら頷いている気がした、文字通り気がしただけなので多分気のせい。
と、そういえばともう一つ気になることを問いかける。
「じゃあれは? あの詰めデュエルを使ってるってやつ。あれもよく小説とか漫画とかで見るけど」
「あー、あれか。あれもそう簡単に解ける類いのものじゃないぞ」
「あ、やっぱり?」
「防犯に使われてる詰めデュエルは殆ど知られていない様なマイナーカードがめっちゃ使われてるらしいんだよ。知らないテーマのデッキの最適な動きをして相手の盤面を突破してください、なんて言われても無理だろ?」
「確かに」
効果を知っていても頭を悩ませるのが詰めデュエルというものだ。それを効果やデッキの内容がよく分かっていないものを使ってやれと言われても無理と言うしかない。
「だから犯罪者みたいなそもそも時間を掛けたくない類いの奴からすれば面倒だからやだってなる事が多いらしいぞ?」
「ってことはそれもちゃんと防犯効果があるって事なのね」
「少なくとも小説みたいにサクッと突破されるようなものではないと思うぞ。それにMDが配信されてから内容がエグい事になってるって話があるからな防犯目的の詰めデュエル」
「そうなの?」
「あぁ、まぁこれも噂話聞いた程度のものだから実際どの位の物なのかはさっぱりだがな…気になるならちゃんと調べてみるけど」
「んー…別にそこまではしなくても良いわよ」
ちょっと気になったから聞いただけ、別に正確な答えがほしかった訳ではないとシェイレーン。遊賀とちょっとした雑談を楽しみたいなと言うシェイレーンの隠された目的も達成できたので、大満足なのである。
「そうか」
「あ、晩御飯ミートスパゲッティが食べたいのだけど良い?」
「小説にでも出てたのか? まぁ良いけど」
「やった」
何て言いながらお互いに読書を再開。たまに本の感想を言い合いながらやっぱりこの時間は良いものだとシェイレーンは思いながらページを捲る。
めちゃ雑人物紹介こーなー
『稲田遊賀』
本は基本そのときの気分で読むのを決めるタイプ。言っていた通り防犯のあれこれに関してそこまで詳しいわけではなく、語っていた内容も大半が隣に住んでいる『白銀の城のラビュリンス』との世間話が元だったりする。
『ティアラメンツ・シェイレーン』
マスターと同じで気分で決めるが基本的に漫画かマスターが読んでるのと同じジャンルを読む子。あのあと小説無いでもデュエルロボが物理的に破壊される描写があり、やっぱりこれが正しい方法なのかとちょっと悩んだ。それはそれとして面白かったから続編があったら読みたいなと思うのだった。
『防犯用デュエルロボ』
もっとちゃんと堅苦しい正式名称はあるが大体の人にそう呼ばれている。デュエリスではなくリアリストとサイバース族や魔法使い族、それに機械族の精霊の手を借りて馬鹿かと言われるほど高性能化してる。余程カードに愛されていない限りデュエルでの突破はまず不可能と言われている。が、だからなのかこれにデュエルを挑まずぶっ壊して犯罪に及ぶやつが発生するようになった。
別にロボの耐久面に難がある訳ではないので、壊せる犯罪者が色々とおかしいのである。
『大体の事をハンマーで解決するタイプの友達』
もしかしなくても『ティアラメンツ・メイルゥ』の事。昔とある事件に巻き込まれた事があり、その際事件を起こした犯人を頭から地面にめり込ませたことがある。その際現場にいた精霊曰く、とても可愛らしい笑顔を浮かべながらが何度もハンマーを叩きつけててとても怖かった。とのこと。
尚、本人は殴りたくて殴っていただけで別に事件解決する為にしていたわけではなかったりする。