「なんか、秋らしいものが食べたい」
なんて、先ほどカレーパンを買い食いして、何時も通りふらふらと街中を彷徨きながら『灰流うらら』はぼそっと呟いた。本当に小さな呟きだったそれを彼女は、『儚無みずき』は聞き逃さなかった。
「ほう、ほほぉう? 秋らしいものと来ましたか」
「え、聞こえてたの? うわぁ」
「凄い嫌そうで普通に傷つきます。しかしそれはそれ。どうして急にそのようなことを? もしや先ほど食べたカレーパンになにか不満が?」
「は? カレーパンと言うアルティメットフードに不満なんて在るわけ無いじゃん、大満足したに決まってるじゃん。そうじゃなくてなんかこう、何となくもうすっかり秋だなーって思ってたら無償にこの時期にしか食べられない美味しいもの食べたい! ってなっただけで」
「成程、成程。そういう事ですか」
言いながら何度も頷くみずき。彼女はキランッと瞳を煌めかせて言葉にする。
「ならば行くしかありませんね」
「どこに? あ、もしかして旬の物が食べられるお店近くにあったりするの?」
「んなもんは知りませんが向かうべき目的地は定まりました。ズバリ、今日は山に行きましょう! そしてキノコ狩りとしゃれこむのです!」
「キノコ狩り?」
「です!」
「わたしたちだけで?」
「ですですデス!」
「普通にやだ」
「即答?! なぜなにゆえにですー!?」
勢いよく地面を滑りうららの足にすがりつくみずき。対しうららは若干鬱陶しげにしながら答える。
「わたしたちだけでって言ったじゃん今」
「言いましたね、それがなにか?」
「わたしたちキノコに詳しくないじゃん。知識ない人だけでするキノコ狩りは危ないからやだ。ストップ初心者のキノコ狩り」
「至極真っ当な理由ぅー!」
叫びながらうららの足を離し地面にべたっと倒れるみずき。かと思えば次の瞬間跳ね起きて威嚇するように構えうららを見る。
「えぇい! 真っ当な理由など知りません! 何がなんでもキノコ狩りに行きますよ!」
「滅茶苦茶粘るね!? なにがそこまでみずきを駆り立ててるのよ」
「なんか面白そうじゃないですか!」
「理由が雑!?」
なんて言いつつうららは思う。突拍子もなく面白そうだからと何かを始める、あるいは始めようとするのは『儚無みずき』にはよくあることだったなと。まぁもっとも。
「でもさ。その面白そうだから、でなにかすると何時もみずき酷い目にあってるじゃん」
「はぁん!? そんな事は……」
言葉に詰まり、視線が盛大に泳ぐ回る。思い当たるふしが沢山あるようだ。
「と、とにかく! そう言うことなので行きましょうよーキノコ狩りー! ここら辺で秋らしい食べ物探しても見つかるかも分からないんですからー!」
「だから行かないって。あと時期的にどこかしらにはあるでしょ」
「いーえ! もしかしたらと言うことがありますよ! ね、うさぎもそう思うでしょう!?」
「え、ここで俺に振るの?」
驚きながら思わず呟くうさぎは視線を向ける。みずきはふんすと鼻を鳴らし返事を待っている様で面倒くさそうにため息を吐いてから答える。
「まぁ、あるだろうね」
「ほら」
「なぁんで断言できるんですか!?」
「いやだって、あれ」
言いながらある建物を指差す。なんだと視線を向ければそこに在ったのはスーパーマーケット。確かに、時期的に秋の物を置いてあるだろう店がそこに在った。
「……あー、ありなんですあれ?」
「まぁ、ありかな?」
店であることには代わり無いしと、うららはスーパーに向かって歩いていくのだった。そしてスーパーでの買い物を済ませたうららは我慢できないと言わんばかりに早歩きで二人と一緒に公園に来ていた。
「いやぁ、なんと言うかスーパーのお総菜とかって安定感凄いよねー」
と、楽しげにそう言いながらこれだと見た瞬間に決めたサンマの炊き込みご飯で作られたおにぎり片手にまいたけの天ぷらを頬張り、満面の笑みを浮かべるうらら。
「んまぁー。え、待って、冷めてるのにサクサクなのなに? バグ? バグなの? こんな素晴らしいバグが現実に存在することサイバース族のひとら知ってるのかな? うまー、んふふ」
「というかサンマの炊き込みご飯のおにぎりとか売ってるの始めて見ましたよあたし」
なんて呟きながら栗味のクッキーを食べるみずきに確かにうららは頷きながらおにぎりを一口。
「んむ…ぬふぅー、わたしも始めてみたよ。いやーなめていた積もりはなかったけど、まだ足りなかったね。スーパー、恐るべし。こうなると今まで行ってきた所にもあったスーパー見ておけば良かったなー」
「それは流石にどうかと思いますけど?」
「いやでもさ、こういう美味しいのが置いてあった場所があったかもと思うとさ。そういうの見逃してた訳だから惜しいなーって」
「むむむ、惜しいですか。確かに先ほどお邪魔したスーパーには見たこと無い商品が幾つかありましたね。そういうのを探すと言う意味では確かに面白いかも…うさぎはどう思いますか?」
「だから俺に振らないでくれよ反応に困るから」
そう言ってうさぎは齧っていたスルメを噛み千切る。
「まぁ、良いんじゃないの? 流石によっぽど酷いことするって言うなら別だけど」
「そんなことしないよ。じゃあこれからご当地スーパー的なのも見て回ってみようかな、今から楽しみだ」
と、うららはおにぎりの最後の一欠片を口に放り込み、飲み込んで手合わせ。
「ごちそうさまでした。あー美味しかったー! はぁー……なんかカツ丼食べたくなってきた」
「なぜ!?」
「いやスーパーで売ってるのを見てね。秋っぽい感じのおにぎりとかを優先したけどやっぱり食べたかったなーって。どうせなら揚げたてが食べたいなー…たしかここ来る時に通った道にカツ屋さんあったよね。そこ行こそこ!」
「毎回思いますけど良くもまぁそんなに食べられますよね? 精霊として生まれる存在間違えたのではと思えてなりませんよ」
「まぁ確かに」
「酷くない?」
まぁ別に気にしないけどと。そんなことよりカツ丼だとうららは立ち上がり目的地に向かってまた歩き始める。ある意味、食欲の秋という観点から見て誰よりも季節を楽しんでいる精霊かもしれない。
「あ、待ってください! キノコ狩り行く話は!?」
「いやだから行かないって言ってるじゃん」
なお、結局キノコ狩りに行く事になるのはまた別のお話である。
めちゃ雑人物紹介こーなー
『灰流うらら』
多分グラットンとかに生まれる筈だったのに間違えてうららになっちゃった感じの子。めっちゃ美味しいそうに物を食べることで有名で、それ以上に滅茶苦茶な量を食べることで有名。美味しそうな物があるとふらっと吸い寄せられる。カードのうららと違ってこのうららは好きという人が結構居る。
座右の銘は『口に合わないものはあっても不味いものはない』
『儚無みずき』
本来裏方な筈なのにいつのまにか堂々と映り込みそしてレギュラー化してた奴。ひたすら面白そうな物を求めて徘徊してる。視聴者たちからドジっ子認定されてる。『灰流うららの一日』とか言う良く分からんものが生まれた原因。因みに始めた理由は勿論なんか面白そうだから。割と思い付きでなにか企んだり行動したりする。のだがそれにばかり意識を向けているからなのか良く分からんタイミングでずっこけて失敗する。
結局、行けたキノコ狩りも始める前にぬかるみに足を取られ盛大にスッ転び泥だらけになった。
『幽鬼うさぎ』
実はマスターがテレビ関係者で『灰流うららの一日』とか言う訳分からんものが放送されることになった元凶。スルメを齧って引きちぎれる強靭な顎と歯と俺っ子として有名。普段は彼女がカメラを使って撮影しているので映り込むのは極めて稀。しかし彼女が堂々と姿を表すと大体神回であるとの話。
実は面白そうだからとみずきが行動し、結果ひどい目にあうのを密かに楽しみにしている。
『灰流うららの一日』
楽しんでは居るがなんでこれテレビで放送されてるのか視聴者は首を傾げている。そして同じくらい人気だから良いけどなんでこれ放送しているのかと関係者も首を傾げている。うららも色んな物食べられて嬉しいから良いけどなんでこれで人気なのかと首を傾げている。