それは突然の事だった。
「隣とか近場に強力なライバル店がオープンしたせいで経営難に陥ってる店を才能溢れる新人が救うって展開なんか良いよね」
「分かるよー。僕も実は密かにライバル店出来ないかなーって思ってたりするし」
「その場合救うポジは誰になるのか、やはり彼?」
「んー、遊賀くんはどれかといえば頼れる先輩って感じかな」
「なるほど、納得しかない」
「いやどういう話よ?」
本当に突然すぎてシェイレーンには理解が追い付かなかった。なんか何時だかに知り合った『蒼翠の風霊使いウィン』が店に来たかと思えば注文する前にこの会話である。なんか凄い早さで筑波店長と意気投合してる点も含めて意味が分からないと首を傾げるばかりである。
「ん、貴女はない? 漫画や小説みたいな出来事が実際に起こらないかなって思ったこと」
「いや無いわよ。そう言うのはフィクションだから良いのであって現実では起こって欲しいことではないでしょ」
シェイレーンが良く読んでいる実話を元に描かれているという『それ行けスプリガンズ!!』だって漫画として読むなら兎も角実際に起こっているそれに巻き込まれたいかと言われれば全力で嫌だと言う他無い。
「それは確かに一理ある。暇な時間によくやる突然テロリストが襲撃してきた際にどう動くとかって考えることはあるけど実際に起きて欲しくはない。詰まり場合による感じ。と言うわけで店長さんコーヒーください」
「はいよ」
「いやどういうわけで?」
そういいながら首を傾げるシェイレーン。なお、先ほどウィンが言っていたテロリスト云々の話は実は彼女もしていたりする。勿論、暇潰し目的等でなくもしもの場合マスターである『稲田遊賀』を守るために真剣に行っている。それこそ定期的に隣に住んでいる『ラビュリンス』と一緒に話し合いをしている程度には本気である。
と、数日前にも行った話し合いを思い出し、ふとそういえばと気になったことを問いかける。
「今日は貴女一人なの? 他の人は?」
「今日は逃げてきたから私一人、故にフリーダム。いえーい」
「ふーん…は? 逃げてきた?」
「家でアウスとライナが大喧嘩は始めたから、多分今ごろヒータに凄い怒られてる。それに巻き込まれたくなかったから逃げてきた。そう、はやきことかぜのごとく。どやぁ」
渾身のどや顔を浮かべるウィン。それは誇ることなのかと思いながら。
「で、なんで喧嘩になったのよ?」
「ん、アウスがハンバーガーに挟まってた嫌いなトマトをライナに押し付けようとしたのが始まり。最初は口喧嘩だったけどあれよあれよと大喧嘩」
「理由…」
なんだそれと思いつつもちょっとした事が原因で、なんてよくある事。その程度で、とは言えないシェイレーンだった。
「というかトマト嫌いなのねあの子」
「凄く嫌い。何時も隣に座った誰かに押し付けてはヒータに怒られてる」
「筋金入りね」
「他にも嫌いなものがあるからよくヒータとマスターが頭を悩ませてる」
そう、どうしたものやらと口にした瞬間、テーブルを拭き終わり一息入れていた『宣告者の神巫』が勢いよく振り返り満面の笑みを浮かべながら信仰心で濁りきった瞳をさらに輝かせてすっ飛んできた。
「問題ですか? お悩みですか? それならば『宣告者』様を信仰すべきです!」
「うわやっぱり来た」
「苦手、あるいは嫌悪の克服! それはまさしく『宣告者』様からの試練! さぁ一緒に試練を乗り越えようではありませんか!」
『宣告者の神巫』はから勢いよくウィンに向かって手を伸ばし。
直後、いつのまにか彼女の後ろに立っていた『崇高なる宣告者』によって首をキュッとされて意識を落とした。
見事に膝から崩れ落ちるどこか幸せそうな表情を浮かべたまま気絶している『宣告者の神巫』を担ぎ、申し訳なさそうに頭を下げてから『崇高なる宣告者』はキッチンへと戻っていった。
それを眺めていたウィンはぼそりと呟いた。
「…大丈夫なの?」
「あー、多分。彼女、あたしが知ってるなかで一番頑丈だから」
「そうじゃなくて、店員減ったけど」
「忙しい時間帯でもないから大丈夫だよ。はい、コーヒーお待たせ」
「ありがとう店長さん。このお店は割とお暇?」
「うん、お昼とか凄い食べる人が来たりとかそういう時以外は大体暇だよ。良いでしょ?」
「いやそれ貴方が言っちゃ駄目でしょ店長…」
確かに暇なのは確かだけども。とそうシェイレーンが溢すと、ウィンはコーヒーに少しの砂糖を入れながらくすくすと楽しげに笑う。
「うん、やっぱり凄く良いお店。雰囲気も含めて喫茶店として個人的評価花丸三つ…ん、コーヒーも美味しいからもう一個」
「おや、それはうれしいね。因みに何個で満点なのかな?」
「これで料理も美味しかったらもう一個花丸で五つ揃って星三つ。世界の私が認めた最高の喫茶店に認定してしんぜよう」
「それは良かった、どうやらうちは三ツ星確定の様だ」
「料理に自信在り?」
「だねぇ。『崇高なる宣告者』の作る料理は凄い美味しいから。一番は無理でも二番目には食い込めると思うよ、なにか食べていくかい?」
「それは私がお昼食べていなければすぐ飛び付く位素敵な提案。でもお昼はもう食べたのでまたの機会と言うことで」
用事もあるし、とウィンは呟きながらコーヒーを飲み干す。
「はふぅ…ごちそうさま。はい店長さんこれお金」
「はいはい、えっと…うん、丁度だ。またおいで」
「ん、今度はマスターも誘って来る。私の審査は厳しいから覚悟しておくとよいぞ」
「そりゃ怖い」
それじゃと、軽く手を振ってから店を出るウィン。そんな彼女を見送ってからカップを片付けながらふと気になったことが在ったシェイレーンは筑波店長へと問いかける。
「そういえばさっきなんで一番は無理って言ったの?」
「ん?…あぁ、それね。好みは人それぞれだろう? 僕にとっての美味しいがあの子にとっての美味しいとは限らないからね。それに」
「それに?」
「シェイレーンちゃんも『崇高なる宣告者』の料理は好きだって言ってくれてるけど、遊賀くんが作った料理の方が好きだろう?」
「…そういうこと?」
「うん、そういうこと」
そういうことらしい。まぁ、納得ではあるとシェイレーンは深く頷いた。
めちゃ雑人物紹介こーなー
『ティアラメンツ・シェイレーン』
結局ウィンのノリがよく分からなかった子。結局、遊賀と一緒にご飯を食べる事が凄く好きなのである意味無敵。
『筑波店長』
割と漫画みたいな展開にならないかなーって思いながら生きてる人。結局、料理の好き嫌いは味だけでは決まらないんだよね、と語る彼の一番の好物は鮭おにぎり。その理由は、単純過ぎて恥ずかしいから内緒、らしい。とても楽しげな笑顔を浮かべていた。
『崇高なる宣告者』
最近、真理に到達しなにを言っても止まらない『宣告者の神巫』を腕力で止めるようになった。やはり暴力である。
『稲田遊賀』
実はずっと初心者のデッキ構築手伝ってた。
『蒼翠の風霊使いウィン』
その場のノリと勢いで行動しがちな少女。後に彼女のマスターと店に訪れた際に無事五つ目の花丸を進呈した、これでここも三ツ星である、むふー。
好きな食べ物は鍋らしい。なんでもみんなで楽しく食べられるからとの事。