デッキをシャッフルしてドロー。手札の五枚のカードを見て渋い顔をしながら再びデッキをシャッフルしてドロー。そして手札を手札を見てはぁとため息を吐いて彼『VSラゼン』はテーブルに突っ伏した。
「なぁ、一つ聞いて言いか?」
「なによ?」
「どうやったら思った通りのカードがドロー出来るんだ?」
「そんなのあたしが知りたいわよ」
と何を言ってるんだと目を細め、テーブルに突っ伏しながら気の抜けた声を溢している知り合いを見ながら『ティアラメンツ・シェイレーン』はお茶を飲む。うむ、今日は言い具合にお茶が淹れられたと満足げに頷き。
「で、どうしたって言うのよ?」
「あ? どうしたって何が?」
「何がはこっちの台詞よ。デュエル始めて手札見た直後にサレンダー…は、まぁ別に珍しい事じゃないか。けどその後に呻きながらドロー練習始めたかと思えばさっきの言葉なんだからどうした? って思うのは別に可笑しな事じゃないでしょう?」
「あー、まぁそうだな」
言いながら彼は少し視線をさ迷わせてから腕を組んで。
「マスターにな、デュエルで勝てねぇんだ。ほぼデッキの構築内容が同じ筈なのに」
「…別によくある話じゃないそれ」
精霊と人間がデュエルすると大体人間が勝つ。何故そうなのか、理由はよく分かっていない。単純にそれに触れてきた時間の差だと言う人も居れば、それに注いでいる情熱の差だと言う精霊も居たなと何気なく横目で真剣な表情でMDのランクマッチをしている『稲田遊賀』を見る。
「そりゃまぁそうなんだけどさー、なんかこう申し訳ねぇって言えば良いのかね? 余りに何時も一方的に負けるからデッキ調整の手伝いが出来なくてなー」
「それも割とよく聞く話ね」
「で、どうにか出来ないもんかと身内と頭悩ませてた時にだ、お前の事思い出したんだわ」
「へぇー…なんで?」
「いやな、そういえばお前は自分達とは違うテーマのデッキ使ってたなって思ってよ。もしかしたら自分達と違う、『VS』じゃないテーマのデッキを使えばもう少しちゃんと勝負成立するんじゃねぇかなって思ったわけだ」
「あー、そういう事ね」
納得したと彼女は頷き。
「別にデッキ変えたから勝てるようになるとは限らないわよ?」
「マスターにぼこぼこにされたから身に染みてるよそれは」
寧ろ今までより酷かったと呟くラゼンに、まぁでしょうねと溢すシェイレーン。多分、組んだばかりのデッキで挑んで上手いこと回すことが出来なかったんだろうなと。
「それでまぁ、なんだ。仲間と一緒に組んで見たんだがどうにもうまく行かないんだよ」
「何度やっても相変わらず勝てないと」
「いやそれ以前の問題と言うか。さっき言ったことが関係してるんだよ」
「さっき?…あぁ、もしかして思った通り云々の事?」
「そう、それだ。と言うのもな、別のデッキを使ってるときに限って思った通りのカードが引けないんだよ! 俺たちと言うか『VS』のデッキ使ってるときはそんなこと無かったのに!」
「…あぁー」
「マスターに聞いても原因分からないみたいだったし」
「なるほどねー」
そういうことかー、と若干投げ槍気味に声を溢すシェイレーン。なにか意見を求めるように視線を向けてくるラゼンにお茶を飲んで一息。
「まず、最初に言っておくけど」
「おう」
「貴方の今の状態が普通よ」
「…まじ?」
「まじよ、大体のデュエリスト達は数えきれないほどそれで思い悩んでるもの。あたしだってそうだし」
「いやでも、えぇ?」
彼の視線がさ迷い遊賀へと向けられた後、再びシェイレーンを見る。
「俺ん所のマスターとかお前のマスターの手札が酷い事になってるところ見たことないんだけど…」
「あー、それねぇー」
確かに彼の言う通りだったりする。大会だとか本気の勝負をする時は基本的にデュエリスト達の手札は最低限動けるだけものが揃っていることが大半である。勿論、絶対にそうという訳では無いし普通にデュエルで遊ぶ時なんかは結構な頻度で事故を起こしては居るのだが。
「マスター達のしてる対応は、はっきり言ってなんの参考にはならないから考えなくても良いと思うわよ?」
「参考にならないって…どう言うことしてるんだよ?」
と、首をかしげる彼にシェイレーンはうーんと少し考えてから視線をデュエルを終えて牛乳を飲みながら一息ついている遊賀へと向ける。
「まぁ本当に言っても言わなくても変わらないだろうし言うけど。まず自分の組んだデッキを信じる事」
「それは俺のマスターにも言われたな」
「で、気合いで求めるカードを手札に引き込む」
「なるほど気合い…え、気合い? まじで? 理想のカードって気合いでドロー出来るものだったのか?」
「さぁ? でも実際引けてるんだからそうなんじゃない? まぁあたしは無理だったけど」
「えぇ、なにその…あ、てことはもしかしてマスターが言ってたのって…えぇ嘘だろまじかよ」
「どうしたのよ急に頭抱えて」
「あぁいやな。ちょっとマスターのアドバイスを思い出してな」
「へぇ、どんなこと言われたのよ?」
その問いに、あぁとラゼンは短く答えて。
「祈りながらドローすれば行けるって言われたんだよ。ただの運任せだとその時は思ったんだが」
「あぁ、それもよく聞くタイプね。そっかあの人祈るタイプだったんだ」
「祈るタイプってなんだよ」
「さぁ?」
自分で言っておいてなにを言ってるのかと思うシェイレーン。その言葉にラゼンはゴンとテーブルに突っ伏した。
「なんというか、あれだよな。たまに俺たち精霊以上によく分からん存在な気がしてきたわマスター達って言うかデュエリスト達って」
はぁとため息をはく彼を眺めながらお茶を一口。そして思う。
いや、今更じゃないそれ?…と。
めちゃ雑人物紹介こーなー
『稲田遊賀』
真剣にランクマッチに挑んでた人。気合いでドローすればなんとかなるタイプのデュエリスト。取り合えず展開するのに問題は無い程度の手札を毎回引けているが理想的なそれとは程遠いので今日もドロー練習に励んでいる。
目指せ常時シャイニングドロー。
『ティアラメンツ・シェイレーン』
手札事故に悩みまくってるタイプの精霊。気合いでは目当てのカードを引き込めなかった。それでどうにか出来るマスター凄いと思っていたがダイアモンドやマスタークラスのデュエリストなら相手の運命力に干渉してシャイニングドローを妨害する所までやると聞いて理解する事を諦めた。
というかシャイニングドローってなに?
『VSラゼン』
マスターの為にデッキを組んだら結果的にマスターの事がよく分からなくなった哀れな奴。家に帰って気合い入れてドローしてたらマスターに気合いがデッキに乗りきっていないと言われてさらによく分からなくなった。でも初動札を引ける回数事態は増えて普通にデュエルが成立するようになってきたのでまぁ良いかと思うことにした。
待て、待ってくれマスター。なんでデッキが光輝いてんの?!
『ラゼンのマスター』
遊賀の友達。生粋の『VS』使い。デッキに祈れば必ず応えてくれると信じているし、実際それで引き込んでいる。ラゼンが『VS』以外のデッキをああでもないこうでもないと悩みながら組んでいるのを見てとても喜んでいる。デュエルを楽しんでいるようで何よりだ。
デッキが祈りに応えるとき、自然と輝くものなんだラゼン。お前もいずれ分かる。
『ダイヤモンド&マスターランク』
無法地帯。割とすぐデッキやカードが光輝き盤面を打破可能なカードをピンポイントでドローしたり新たなカードが創造し始めるし、それを相手が妨害したりといったちょっとよく分からん領域のデュエルを繰り広げてる。多分精霊達よりよっぽどファンタジーな世界に生きてる。