MD次元ではカードの精霊はありふれたもの   作:春山乃都

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他所の『ティアラメンツ』達と特売品

 遊戯王マスターデュエル。通称『MD』

 

 

 

 言わずと知れたデュエルモンスターズをより手軽に、より気軽に、そしてより幅広い世代の人々が楽しめるようにと生み出された今となっては世界の中心とも呼ばれるようになったコンテンツ。

 

 日常と化した精霊と言う存在は唯の人々にとって超常であることは確かだが、そんな彼らでも普通に生きていると言う点は変わりない。

 

 

 これは一人のデュエリスト『稲田遊賀』と彼と共に在る精霊が買い物に出かけた際の出来事を描いた物語である。

 

 

 

 

 なお、本当にそれだけの物語なのでデュエル描写は召喚無効にさせてもらうぜ‼

 

 

 

 

 それは隣町のスーパーに訪れ目当ての物と偶々特売品として並べられていた卵を買えてさぁ帰るかと外に出た時の事。

 

「あ」

「ん? どうした…って、あー」

 

 買ったばかりの飴を加えながらそんな声を零したシェイレーンに軽く首を傾げ乍ら彼女の視線の先を見てみると、理由が分かった。

 

 彼女の視線の先には四人の精霊。それだけならば最近ではそう珍しい光景ではない、無いが。そこに居るのは、『メイルゥ』『ハゥフニス』『シェイレーン』そして『キトカロス』の四人。

 

 詰まり『ティアラメンツ』の少女たちがスーパーの前で話し合いをしていたのだ。

 

 ふと、隣にいるシェイレーンへと視線を向ける。彼女は四人の内の一人、キトカロスを見つめながら表現の難しい表情を浮かべていた。

 

「良いみんな、大切なのはタイミングよ。ここの特売品である卵は一家族一個まで。だから私たちは順番に店へと入り卵を買っていくの。そうすれば卵を四つ買う事が出来るはず」

「はい!」

「うん」

「言われなくても分かってるわよ」

 

 そして会話の内容が耳に入ってもっと微妙な表情を浮かべた。いやまぁ、やった事あるかないかで言えば同じような事はした事あるけども。

 

「と言うか卵のパック四個も消費しきれるのか?」

「…さぁ? 家にいる住人の数次第じゃないかしら?」

「まぁそうだよな」

 

 という事は彼女たちのマスターは大家族なのか。それとも大食いなのかな? あぁ彼女たち自身がたくさん食べるタイプの可能性があるかなんてとてもくだらない事を考えているとシェイレーンに行きましょうと声を掛けられた。

 

「ん? 話しかけたりはしないのか?」

「するわけないでしょう。確かに同じ『ティアラメンツ』ではあるけどそれだけよ? 用事があるなら兎も角そうでなければ同族が横を通り過ぎても無反応なんてそう珍しくも無いわよ。しいて言えばあぁ居るなって思う程度よ」

「へぇー」

「それに彼女たちはこれから買い物でしょう? 邪魔するのも悪いじゃない」

 

 それもそうかと、なんかやたらと気合を入れまくる四人をちらりと横目で見てからじゃあ帰るかと歩き出し。

 

「大丈夫よ‼ きっと卵を四パック買う事が出来れば…マスターの所に一つは届けられるわ‼」

「いやどういう事⁉」

 

 なんてと思わず二度見する遊賀と反射的にツッコミを入れるシェイレーン。そこでようやく二人の存在に気が付いたキトカロスがどうもと頭を下げた。

 

「ごめんなさい。邪魔だったわよね」

「いやそこは別に、あたしたちはこれから帰る所だったし…と言うかまってどういう事なの? 卵パック四つ買って一つ届くの如何のって」

「その言い方、そういう事ね。理解したわ別の私」

「待って何を?! あたしはあたしに何を理解されたの⁉」

「貴女……買い物をした事ないわね?」

「…は? え、いや普通にした事あると言うかさっきしてきたけど」

「見栄を張らなくたっていいのよ分かってるから」

「さっきの発言見栄を張った判定になるの⁉」

 

 何時の間に移動し横に立ったかと思えばシェイレーンの肩を優しく叩く『ティアラメンツ・シェイレーン』。その表情は分かっているとでも言いたげな優し気な物であった。稲田さんちのシェイレーンちゃんはひたすら困惑していた。

 

「シェイレーン…買い物は、自分との闘い」

「買い物での自分との闘いなんてダイエットや節約中の人位しか発生しないわよ?」

「一瞬の油断、わずかなミスが…命に関わるの」

「ねぇマスター、彼女たちとあたしの知ってる買い物が明らかに別物なのだけど」

 

 良く分からないけどその瞳に闘志を宿す『ハゥフニス』。シェイレーンはやっぱり良く分からずマスターである遊賀に救いを求める様に視線を向ける。

 

「貴方が別のシェイレーンちゃんのマスター…ちゃんと卵を買えるなんて、流石ですね!」

「えぇ…これ褒められてるのか?」

「はい!」

「わぁすごい元気」

 

 が、彼は彼で『メイルゥ』に謎の賞賛をされてとても困っていた。シェイレーンは思わず視線を遠くへと向けた、カラスが元気に飛んでいる。そしてしたり顔の別の自分がとても鬱陶しかった。勝手に自分の知らない良く分からない物事を理解しないでほしい。

 

「行きましょうみんな! シェイレーンとそのマスターさんに続き、私たちも卵を手に入れる‼」

 

 拳を強く握りしめそう宣言する『キトカロス』とそれに応じ声をあげる三人。そして置き去りの遊賀とシェイレーン。まずは自分からと意気揚々とスーパーへと入っていく『ティアラメンツ・メイルゥ』を見届けて互いを見る。

 

「…帰るか」

「そうね」

「まぁ待ちなさい別の私とそのマスター」

 

 そう言って歩き出そうとする二人の肩をしっかりと掴んだのは別の『シェイレーン』だった。

 

「……なによ?」

「貴方たちに見届けてもらいたいのよ…私たちが、『メイルゥ』が買い物を成し遂げる瞬間を‼」

「ねぇそれ本当にあたしの知ってる買い物なの? 別の何かじゃなくて?」

「えぇきっと別の物、貴女は本当の買い物を知らないのよ‼」

「そうね、買い物に本当の物とそうでないものが存在するなんて知らなかったわ」

 

 知りたくもなかったけどとそう言いつつ俯き若干瞳から光が失われ始めているシェイレーンに大丈夫かと声を掛ける。と、その時周囲がざわついた、いや周囲と言うかこの場に居る『ティアラメンツ』の三人がなのだが。如何したのかと彼女たちと同じ方向を見てみれば、そこには特売品の卵を失ってはいけない宝物の如く大事に抱えている『メイルゥ』の姿が。

 

 彼女は待っていた三人と捕まっている二人の姿を見ると嬉しそうに、それ以上に誇らしげに両手で卵のパックを掲げて見せた。

 

 

「カー」

「あ」

 

 

 そして、カラスに持っていかれた。

 

 沈黙。

 

 周囲に居る別の客も予想外の事態に一瞬動きを止め、両手を掲げたまま固まる『メイルゥ』を見る。捕まっている遊賀とシェイレーンも固まっている。

 

「――――――ひんっ‼」

「「「メイルゥッ‼」」」

 

 崩れ落ちるメイルゥとそんな彼女に駆け寄る三人。

 

「ご、ごめんなさいっ! 私、私また‼」

「良いの、良いのよ『メイルゥ』。貴女は何も悪くないわ‼」

「そうよ! 謝る事なんて一つも無いわ‼」

「泣く必要もないの、貴女はあたしたちの誇りよ」

「うぅ、うぅううぅぅ―――‼」

 

 涙を流す『メイルゥ』とそんな彼女を抱きしめる三人。その姿はまるで『壱世壊に奏でる哀唱』を思わせる……いや全然違うなと遊賀は一人思う。

 

「……なにこれ?」

 

 そう呟かれたシェイレーンの言葉がこの場に居る涙を流す四人以外の全員が抱いている気持ちである。

 

「『メイルゥ』、貴女の意志を涙を無駄にはしないわ。私が絶対に手にして見せる‼」

 

 そう高らかに宣言する『キトカロス』の凛々しき姿と言ったら。まるで『ティアラメンツ・ルルカロス』の様だ……いやよく見たら本当にルルカロスと同じ格好になってる⁉ 遊賀は驚きつつ横に居るシェイレーンを見る、あんな感じで変わるものなのかと。彼女は無言で首を振った。違うらしい。

 

 そんな二人を色んな意味で置き去りにし『ティアラメンツ・ルルカロス』は新たな姿、力、そして覚悟を胸に、一歩踏み出した。

 

 

 そして転けた。

 

 

 それはもう盛大に顔面から地面にいった。顔面を手で覆いながら転げまわる『ルルカロス』。そんな彼女を見ながら、『ティアラメンツ・シェイレーン』は遊賀の隣に立つシェイレーンを見る。

 

「分かったかしら別の私……これが買い物よっ!」

「そう、そうなのね知らなかった」

 

 

「じゃあ断言するわね、絶対に違うわよこれ‼」

 

 

 ワイトもそう思いますと、通りすがりの『ワイト』が思わずそういう程に、力強い言葉であった。

 

「それは貴女が買い物をしたことが無いから言えるのよ‼」

「した事あるって言ったでしょ」

「なら見せてみなさいよ‼ 貴女の覚悟を、あの死地で‼」

「スーパーを死地呼ばわりするんじゃないわよ失礼でしょうが‼」

 

 言いつつ、どうしようかと己のマスターを見るシェイレーン。正直彼にしてもどうすべきなのか良く分からないが、まぁ良いんじゃないかと頷いて見せた。と、シェイレーンは仕方がないと言いたげにため息を吐いてスーパーの中へ、そして少し経ってから卵のパック片手に戻って来た。

 

「はい、これで良いんでしょう?」

「嘘でしょう⁉ 直前で卵が売り切れてたりしなかったの⁉」

「してないわよ」

「大丈夫だったのシェイレーンちゃん⁉ 転がって怪我したりは⁉」

「いや転がらないわよあたし浮いてるんだし」

「唐突に表れた鳥に奪われたりとかしなかった?」

「されてないから今持ってるんでしょうが」

「では、急な『増援』に答える為にスーパーを横切っていく戦士族に跳ね飛ばされたり偶々通りがかった空腹極まった『百万喰らいのグラットン』に襲われたりしなかったというの⁉」

「しなかったしそんな事起こってないわよ何言ってるのよ⁉ マスター‼ ねぇマスターこれあたしが可笑しいの⁉ あたしが可笑しくて『ティアラメンツ』的にはこれが普通なの⁉」

 

 涙目に成りながら問いかけてくるシェイレーン。遊賀は思う、聞かれても困ると。帰ってから知り合いに居るだろう他の『ティアラメンツ』の誰かに聞いてくれ。と思ったのが伝わったのか何かを堪える様に体を震わせて、少しして諦めたように肩を落としはいと持っていた卵のパックを手渡した。

 

 手渡された『ティアラメンツ・ルルカロス』はと言えば、打ち付けただろう鼻を赤くしたままキョトンとした表情を浮かべて卵とシェイレーンとを視線を行き交わせ。

 

 

 

「もしかして、貴女…実は『ヴィサス=スタフロスト』なのでは」

「違うわよ‼」

 

 勝手に違う存在にするなと、今日一番の叫びであった。




めちゃ雑人物紹介こーなー


『ティアラメンツ・シェイレーン』

 帰宅後すぐに知り合いに連絡を入れた。結果自分が知っている中で一番常識のある精霊にお前は可笑しく無いと言ってもらえて一安心。そして元気出せとマスターに頭ナデナデして貰えて少し得した気分になった。


『稲田遊賀』

 まぁ精神的に疲れてるだろうしと思いっきりシェイレーンの事を甘やかした。


『ティアラメンツ四人娘』

 間違いなく可笑しい方。ただ只管に運が悪い子たち。全盛期『イシズティアラメンツデッキ』に余計なカードを三枚入れてメイルゥの効果使ったらピンポイントでその三枚が墓地に落ちるレベルで運が悪い。卵のパックを受け取った後、帰り道でカラスの群れに襲われたり、『I:Pマスカレーナ』と『S-Force乱破小夜丸』のチェイスに巻き込まれたり、寝起きの『百万喰らいのグラットン』に襲われたりしたが見事に卵を二つ持ち帰ることに成功した…成功と言えるのかこれ?


『ティアラメンツ・レイノハート』

 人間界に居る知り合いから突然自分は自分なのだろうかと哲学的な事を聞かれて宇宙猫化した可哀そうな人。詳しい話を聞いた後に頭痛を覚えながらも「そんなわけねぇだろ」とバッサリ言った。なお、この後とある精霊の効果によって特殊召喚され、激辛完食チャレンジを代わりにさせられる事となる。そしてキレる。


『ヴィサス=スタフロスト』

 当然だがシェイレーンの事では無い。


『ワイト』

 ワイトもそう思います。







 実は本当は『ワイトベイキング』だったのだが芋を持っていない所為で誰も気が付かなかった。
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