MD次元ではカードの精霊はありふれたもの   作:春山乃都

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休日の『ドラゴンメイド・ラドリー』とミニ試食会

 遊戯王マスターデュエル。通称『MD』

 

 

 

 

 

 

 

 言わずと知れたデュエルモンスターズをより手軽に、より気軽に、そしてより幅広い世代の人々が楽しめるようにと生み出された今となっては世界の中心とも呼ばれるようになったコンテンツ。

 

 それによりもはや共に在るのが普通とまで言われるようになった精霊たちの中には今まで興味のなかった趣味に目覚めるものも居ると言う。

 

 

 これは一人のデュエリスト『稲田遊賀』と共に在る精霊『ティアラメンツ・シェイレーン』がある精霊と出会った際の出来事を描いた物語である。

 

 

 

 

 なお、本当にそれだけなのでデュエル描写は効果を発動できないぜ‼

 

 

 

 

「よろしくお願いします!」

「どういう訳よ」

 

 『ティアラメンツ・シェイレーン』は困惑していた。日課の散歩の途中、何時もの噴水の前でシートを広げてそこ座っていた知ってはいるが知らない人物、いや精霊が居た上にそんなことを言われたのだ。困惑するのも仕方がない。

 

「こちらをどうぞ‼」

「だからどういう事よ⁉」

 

 なんか最近叫ぶこと多くなったなと思いながらも目の前にいる『ドラゴンメイド・ラドリー』の言葉に声を荒げずに入られなかった。

 

 

 

 

「詰まり、久しぶりの休日だから色々と作ったものを食べて評価してもらう為にここに居ると?」

「です‼ ちゃんと公園の管理者さんからは許可をもらってますよ‼」

 

 成程と頷きながら正座をしながら満面の笑みを浮かべるラドリーとその前に置いて在る良く分からない箱を見る。

 

「じゃあそれがその、評価してもらいたいものって事?」

「そうです‼ おひとついかがですか‼」

「いかがですかって言われても」

 

 改めて箱を見る。どう見てもただの長方形で、それが幾つも並んでいるだけ。ふんすと笑みを浮かべるラドリーを見ながら帰ろうかなと思い。

 

 いやでもこれがどんな物なのか気になるなという好奇心が顔を出した。

 

 良く見れば箱には平仮名が一つずつ書かれていることに気が付く。と言っても書かれているのは『こ、か、い、れ』だけでやっぱり良く分からない。

 

「…じゃあその『こ』って書いてあるの」

「了解です‼」

 

 無駄なチャレンジ精神な気もするがと思いつつ選んでみると、ラドリーは満面の笑みを浮かべながら『こ』と書かれた箱を手に取り、蓋を開けて中からそれを取り出す。

 

 

「どうぞ、昆布出汁です」

「思ってたのと違う」

 

 

 まさかの出汁。抑えられず零れた言葉にラドリーは首を傾げつつもはいと手渡してきた。受け取ったそれはまだ暖かく、そしてとても良い香りがした。口にしたそれはとても美味しくて。

 

 しかしそれ位でどう評価すれば良いのかシェイレーンには分からなかった。飲んだだけ嗅いだだけであれこれ評価が出てくる程彼女は出汁には詳しくなかったのだ。

 

「どうでしょうか⁉」

「…うん、美味しいと思うわよ」

「やったー‼」

 

 両手を上げて喜ぶラドリー。美味しいとしか言えない自分が少し申し訳なかった。

 

「他のもどうですか?」

「…そうね、貰おうかしら」

 

 初手予想外の出汁だったことで他のものがますます気になってしまったと、視線を彷徨わせてから順番に選ぶかと『こ』の隣にある『か』を指さした。

 

「じゃあこれを」

「わっかりました‼」

 

 言って手に取り取り出されたのは。

 

「どうぞ、鰹節です‼」

「…鰹節」

「はい‼ 今年最初のです‼」

 

 今削るので少々お待ちを。そう言いながらぱっと見、木にしか見えないそれを何処からか取り出した鉋で削っていく。

 

「それ、自分で作ったの?」

「です‼ あ、でも一人でじゃなくてハスキーに手伝ってもらいました‼」

「そ、そうなの」

「はい!」

 

 どうぞと小皿に載せられた削りたての鰹節を渡された。やっぱり美味しいとしか感想が出てこなかった。ただ、市販の物より味が良いと感じた、これの出来が良いのか削りたてだからなのかは…やっぱり分からなかった。しかしメイドは鰹節も自作するのか、凄いなと投げやり気味に思った。

 

 同時に、どうせだから全部見るかとも。

 

「どうでしたか?」

「美味しかったわよ。次は『い』って書いてあるの見せてもらえる?」

「かしこまりーです‼」

 

 さっきから掛け声が変わってるのねなんてどうでもいい事に気が付くシェイレーンの前で『い』と書かれた箱が開かれ。

 

「芋焼酎です‼」

「あ、ごめんなさい。それはあたし無理だわ」

 

 お酒は二十歳を過ぎてから、なんてものは精霊には当てはまらない。見た目子供で年齢千歳が普通にいるのが精霊というもの。これは単純にシェイレーンが酒を飲むタイプではないと言うだけの事だ。

 

 そうですかと少ししょんぼりとするラドリーにふと気になったことを問いかける。

 

「それも貴女が作ったの?」

「いえこれはナサリーが趣味で作ったものを分けてもらったやつです」

「凄いわねメイド」

 

 鰹節と言いメイドはそこまで出来るのかと素直に感心した。正直そこまでする必要あるのかはさっぱりだが、とにかく凄いと心の底から思った。そういえば酒造法とかいうのあった気がするけどそれ大丈夫なのだろうか。

 

「…一応聞くけど、その最後の『れ』はお酒とかそういう?」

「違いますよ?」

「そう、じゃあ貰ってもいいかしら?」

「拝承致しましたー‼」

 

 彼女の言葉にラドリーが最後の箱を手に取り、そして取り出されたのは。

 

「どうぞ‼ レモンカスタードパイです‼」

 

 彼女は拳を天高く突き上げた。それは反射だった。喜びを分かりやすく表現するそれが意味する事はと言えば、彼女は甘い物が大好きであると言う事だけだった。勢いあまってその場で一回転した彼女はそのまま流れる様に両手を差し出した。

 

「……頂きます」

「あ、はいどうぞ」

 

 そのテンションの上がりっぷりにラドリーは驚きつつ手慣れた様子で皿に乗せ手渡す。無言で使い捨てフォークで一口…そしてサムズアップ。言葉が出ない、いや必要ないとシェイレーンは思った。それでも言葉を絞り出すとするならあの一言だけだ。

 

「…美味しい」

「ありがとうございます‼」

 

 いや本当に、こんな美味しい物を朝から食べてしまって良いのだろうかとシェイレーンは思った。思ったがフォークを動かす手が止まらなかった。今まで食べたパイの中で一二を争う美味しさだった。そして帰ったら朝食を用意してくれているだろうマスターに対して申し訳なくて少し泣いた。

 

 直後にこれがまだ残っていたら貰っていけないだろうかと空になった皿を見ながら思った。この感動をマスターと共に感じたいと。と言う訳で即行動。

 

「ねぇこのレモンカスタードパイまだあるかしら?」

「え、はいありますよ‼」

「それ、持ち帰りたいのだけど良いかしら?」

「はいもちろ―――」

 

「ちょっと待ったー‼」

 

 突然の声、何事かと二人して振り返ってみると。

 

「あれ、ティルル? どうしてここに居るの?」

 

 そう問われた精霊『ドラゴンメイド・ティルル』がお盆片手にそこに立っていた。

 

「どうしたもこうしたも無いわラドリー。貴女は今日休み、という事は何時ものお試しをやっているという事でしょう? ならば今そこに居る精霊はお客様という事。そしてお客様に対してする事と言えば一つ! これもお試しくださいませー‼」

 

 言って、差し出されたお盆の上には『し』と書かれた箱からシュークリームを取り出す…最初から思っていたがなんで全部箱に入れた上で書かれているのが平仮名一つだけなのだろうか。いやそこは良いとして、どうすべきなのかと視線をラドリーに向けると、どうぞと言いたげに手をティルルの持つシュークリームに向けていた。

 

 まぁそういうならとシュークリームを受け取って、一口。

 

「どうでしょうか⁉」

「普通ね」

「ゲファ‼」

「吐血した⁉」

「ティ、ティルルー⁉」

 

 血を吐きながら膝から崩れ落ちるティルルと駆け寄るラドリー、そして余りの状況にシュークリーム片手に慌てるシェイレーン。そんな二人を後目に涙と一緒に言葉を零す。

 

「なんで、なんでぇ…普通って何よ普通って。もっといろいろあるでしょう感想ならぁ。せめて美味しいとかそうじゃないなら不味いって言ってよぉ…普通って言われると何も分からないわよぉ…他の感想言ってよぉ…‼」

「ほ、他の感想って…その食べなれた感じのシュークリームよ?」

「ヴァーっ‼」

「また吐いた⁉」

「それって普通って事じゃないですかぁ‼」

「いやどうしろって言うのよ⁉」

「大丈夫ティルル? その、私はすっごい美味しいと思ってるよ‼ 特にティルルが作った乾パン‼」

「微妙に嬉しくないぃーっ‼」

「いや乾パン美味しく作れるの凄いと思うわよ」

 

 寧ろ乾パンって個人で作って美味しく作れるものなのかと彼女は思う。やっぱりメイドはすごい。

 

 と、思った直後に。

 

 

―――ズドンっと、何かが落ちて来た。

 

 

「今度は何よ⁉」

 

 これ以上場を混沌としたものにしないでほしいと叫びながら見ればそこには。人が、いや精霊が、いや。

 

 

 ドラゴンが居た。

 

 

 それは浅く息を吐くと真っすぐと彼女を、『ドラゴンメイド・ティルル』を睨みつけた。余りの圧に、固まる三人、その中でラドリーはあっと声を零してからぎこちなくティルルを見て。

 

「そういえば、ティルルは今日のお休みじゃないよね?」

 

 あ…と、声を零すティルル。その反応に目の前のドラゴンが、『ドラゴンメイド・シュトラール』が低く唸る。それが何か言っているのかそうでないのかはシェイレーンには分からないが、何が言いたいのかは理解できた。

 

 

 『仕事さぼってんじゃねぇ』である。

 

 

「あちょ」

 

 膝をついているティルルの頭を咥えるシュトラール。そして四肢に力を籠め。

 

「待ってせめてドラゴン体にパ――――⁉」

 

 飛んだ。

 

 ドンと音を響かせ空高く、そして風の如く速く飛び去って行くシュトラールと流れ星の如く遠ざかっていくティルルの悲鳴。まさしく嵐の如く訪れ、そして去っていった。

 

「あの、お騒がせしました。これ、お詫びに」

「あ、どうも」

 

 言って、渡された昆布出汁と鰹節とレモンカスタードパイ。それらを両手一杯に抱えながらシュトラールが飛んで行った方角を見て、思う。

 

 やっぱメイドって凄いな、と。




めちゃ雑人物紹介こーなー


『ティアラメンツ・シェイレーン』

 最近朝の散歩で変な事に巻き込まれることが多くなってきた子。日課だったがやめようかと真剣に悩んでいる。結果的に欲しいと思ったパイからまぁ良いかと思う事にした。

 持って帰ったものの中でマスターに尤も好評だったのが鰹節だった。結局彼女には違いが分からなかった。


『ドラゴンメイド・ラドリー』

 墓地肥やししてくれるえらい子。休日では良く色々と作ったものを公園や店で許可を取り試食してもらっては感想を聞かせてもらってる。最近お菓子作りが驚くほど上手な事が発覚した。なお、洗濯物はひっくり返す模様。


『ドラゴンメイド・ハスキー』

 眼鏡輝くメイドさん。色々作ってみたいと言ったラドリーを手伝っていたら自分の方が嵌まり込んでしまった人。最初は干ししいたけ程度だったのに何時の間にか鰹節を作るまでに至った。今度は何にチャレンジしようかと色々と調べている。


『ドラゴンメイド・ナサリー』

 同僚を蘇生してくれる凄い子。勝手に自分で飲むために酒造しているが、ハスキーには消毒用だと言い張っている。無論、そんな言い訳は通じるはずもなくとても怒られた。今は問題にならないように精霊界でお酒を造っている、全く凝りていない。


『ドラゴンメイド・ティルル』

 料理で何を作っても普通と言われるかわいそうな子。理由は分からない、だが彼女の料理は旨い不味いを超越して普通になる。何故か乾パンと羊羹だけが異様に美味しく作れるが、彼女的には嬉しくないらしい。

 今回朝のくっそ忙しい時間に勝手にシュークリーム焼いたうえでそのままどこかに出かけた結果、とても怒られた。当たり前である。


『稲田遊賀』

 この鰹節めっちゃうまいな
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