陰謀が渦巻くジャブローで自分達の知る事からの曖昧な無理難題を振り掛けられた事に憤るシオンではあるが、ロベルトがそうしたキッカケになったヤヨイからの一喝で思い切った行動に出たシオンに、交戦中のエマは言葉を失うが何故かシオンの要求を聞き入れてしまう。
操縦系統は元が同じな為に変わらない、エマ・シーンを何故か信じられるのは後回しだ。ヤヨイの一喝がこの上なくシオンに効いていたのだ。自分の事に関しては論外な結末はまだしもエマがあのままティターンズに帰って、自分の事を伝えても?
【それはそれで都合が良い】
自分達は決してバレなければ良いなんて甘い考えはしていない。
そして、司令部に近付けば近付くだけシオンには嫌な感覚が頭に入って、無抵抗に建物に隣接出来た。ティターンズの機体であるからと言われたらそれまでだが、コックピットから出る時に手榴弾サイズで電波妨害を出す目眩ましガス爆弾を投げた。エゥーゴも寡兵ならではな手段を考えてはいる。
「何て・・・・事」
司令部と思わしき場には複数の死体が転がっていた。パイロットスーツを着てなければ危険だったかもしれないガスか何かで命を落としたのか、資料で見せてもらった『30バンチ』のようだ。器機類も全て破壊されたようでショートして電流が溢れている・・・・気分じゃないが、シオンは?
【取れるだけのものを取って退散した】
その後に、恐らく・・・・な場へ向かった途中。
『~~ぃ』
『~~ぁ』
段々とハッキリして行く。感じるだけじゃなく聞こえて来た。
『~い、人がいるんだぞっ!』
漸く見つけた。司令部の下の階の奥の部屋なので銃を使って鍵を破壊した奥には?
「おぉ、来てくれたかっ!」
「小さい奴だな。子供かい?」
他はともかく、皮肉と毒舌隠そうとしないのがいたが気にしないでいた。
「僕はエゥーゴの者です!先に潜入した人達ですね?」
「おぉ、そうさ・・・・期待したんだが、やっぱり攻めに来ちまったか」
「カイ・シデン、助けに来てくれたんだから後にしな。ガンダムのパイロット、済まないが数分待っていてくれ、探し物が近くにあるハズなんだ!」
【カイ・シデン】
潜入したメンバーの中ではいつの間にかリーダー格になっていた元ホワイト・ベースクルーであるが?【ある事】をキッカケに一緒にいるメンバーからは浮いた存在として距離が出来ていたのを近くに一旦残った者から聞いた。シオンも知ってる範囲でアムロ・レイとガンダムが有名過ぎるので霞んでいるが、実は白兵戦用武器が無い以外はガンダムびっくりな性能のガンキャノンで他部隊なエース顔負けな戦果を挙げてたとして、そんな存在が何故かと心当たりはあったが、撤収が先だ。
――――――。
『疑ってなかっなのね・・・・』
「はい」
エマは待っていてくれた。
保険が効いてくれたのもある。持ち帰れたものがあるから協力はしてくれるだろうとして、計四人を連れて脱出を提案したが、レーダーに反応が出た。ミノフスキー粒子下でも気休め程度は効くのだ。シオンからしたら、アングラで読む書物の幾つかはその点を完全に忘れてる気がした。
「出迎えですね」
近付いて来たのは金色の機体、クワトロ大尉が来てくれたとして、コックピットの方にいるカイの雰囲気がより険しくなったが、それが当然なのかもとシオンは正確に把握していた。
『状況は理解しているな、時間はほぼギリギリしかない!隣の機体は?』
「【鹵獲機】として、グリプスの時みたいに誰かが動かしたにするのはどうてす?」
さも当然とする言い分に他が目を丸くした。エマが自分達に同行するのを疑ってすらいないが、シャアは益々シオンの感性の中に【シャリアとララァ】を見た。
『あの・・・・私は行きますから、機体は元に戻して、シオン君の機体の手に乗っている二人は白い方のコックピットに・・・・』
「了解した。先導するから従ってくれ」
クワトロとシオンの豪胆な対応に他は目を丸くしたが、今は迅速に撤収あるのみだ。百式と白黒のMK―IIは出口を目指して全力で移動した途中で旧式のザクタンクやジム等で構成された部隊が立ちはだがり、百式と白いMK―IIが性能差を活かした先手で次々と撃墜しながら進んで行ったが?
「おいっ、何も知らない部隊かもしれないじゃないか!?」
『時間が無い』
「それに、連れて行こうにも。あの機体の推力じゃ同行は無理です」
カイの叫びに冷静に返す言葉は尤もだ。事情を説明して説得しようにも直ぐには応じない、エマが例外なのだ。更に、彼等の機体では確かに残り時間には間に合わないし、機体のコックピットや掌の上に乗せる余裕は無い・・・・それを実証するように、離陸したガルダに合流出来たが、最後にフルパワーでジャンプした百式は僅かに届かなかったが、シオンのMK―IIが百式の手を掴んで正にギリギリだった後。
【ジャブローの地下の核が爆発して、核特有の火柱がたった】
その光景の次に戦慄したのは、場慣れしたクワトロとそれを平然と受け入れるシオンの図、クワトロの正体を知るカイには【事前に知った事】を検証して、クワトロがシオンを短期間でソロモン戦前後の敵や中立的な視点から見た場合のアムロのような冷徹なキル・マシーンに仕立てているように映っていたが、それが間違いだった・・・・シオンにとっては他に言いようが無い体験と憑依した者が元来持つ反発対象がズレていただけの話でもある。
「エマ中尉、君に関しては何があったかを聞かせてもらいたい」
「はい・・・・」
「あの・・・・大尉?」
「シオン、軍とは簡単なものではない・・・・君はデータをまとめておけ、先ずは初めての地上で良くやった」
「はいっ!」
何か通じ合っているようでそうでないと思うやり取り、エマなりにこの二人には不用意に踏み入るのは止めておく事にしたが、二人を見つめるカイの目には危険な光があった。
だが、その私心こそが致命的な見落としになるのだが。
そして、月の裏側にあるグラナダでは?
「どうするつもりだっ!?」
エゥーゴの出資者達が集まる場において、怒号が飛び交うような状況になっていた。
【エゥーゴはジャブローの地下で核を使った】
これにより、ジオンですら不可能だったジャブロー攻略を成し遂げたが?
【地球を寄りによってジャブローという森林地帯を核で汚染したテロリスト】
そんな烙印を押されるだろう、それ加え。
【ジャブローは引っ越し中であり、今が絶好の機会だとした】
そうする為の動きが既に始まっている情報も入っている。
この場の全員の目が【責任者】に向いた。実は【致命的な失言】をしているのだ。
【ウォン・リー】
エゥーゴの出資者の中で実質トップであり、事業の儲けの全てをエゥーゴに向け、全権を任されてまでいる。実は立ち上げ中に軍や政府が宇宙に関心を持たないから自分達が勢力を伸ばせていたと皮肉りながら周りを鼓舞した。だが今回の件は正に逆効果でブーメランと言うのも生温い結果だ。地球上の事を全然把握していなかった事で最悪の結果となった。悔しげに俯くのみだが、地球にいるクワトロが向けられてるような事を言われないのは幸か不幸かである。
ジャブローは核の炎に焼かれた。
地下に埋められた核と言う点は事前に連邦が基地をむざむざ制圧されない為にやっていた事で、起動させたのはエゥーゴとするだけの話だろう、クワトロは捕虜にしたジドレと面会して屈辱と言える時間を過ごす事となった。
「攻める前に、事前に内部でしらみ潰しにする作戦である可能性を匂わす通信が来て、それを一部は想定していたが、通信が此方の送った工作員からと見せてティターンズ側の流した偽情報だったか・・・・」
グリプスの時のような裏切り者がいたのか否かは未確認だが、やはり性急に過ぎたのだとして話を進める。
「それに対し、我々の側は地上のカラバが海中から陽動を掛ける一手を任せたが、皮肉にもそれらを考える事までがしてやられた原因となった。実はジャブローは【引っ越し中】だったのだが、その動きは君が言うようにルナ2の次はジャブローと危惧し、これから始まる作戦で出る被害を想定して内部の民間人の避難を進めていたからと偽装もしていたと言うわけか」
「それ以前から、ガルダ級を動員して進められていた・・・・傑作だなクワトロ大尉!地球側の事を全く見てないとはなあ?そう言えば、1年戦争でもジオン軍は、例えば赤い彗星のシャアが乗っていたズゴックを初めとした水中用の部隊を空中からの降下部隊として降ろすと言う奇行をしでかして笑いを取った!しかし、今回はジオンですらやっていたそれなりな下調べすらも怠っていたとするべきだ!全く、事情があるだろうにせよ勝負を焦ってこのザマとは・・・・ジオンの残党呼ばわりすら褒め言葉になると思わないか!?」
クワトロからしたら、自分の正体を知った上での皮肉にもなる内容を含めて痛いところを突かれてしまった。自分がジオンの赤い彗星として戦っていた頃、冷静に考えれば?
【地球側の事情と地球上の戦い方についての考えが甘過ぎる】
出資者達の意向以前に完全に同じ過ちを繰り返したようなものだ。
水中用MSで思い当たったが、ジオンに比べたら未だに半端な形にしか実用化出来てはいない連邦からしたらそこを突かれた作戦で来られたら厄介だったハズなのに、わざわざガウと合流して言われたような流れになって部下を死なせたシャアからしたら弁解の余地は無い、当時のアクア・ジム程度ではズゴック辺りとは勝負にならない、冷静に考えれば、有利な点を駆使した揺さぶりを続けるべきだった。
今回、元ホワイトベースクルーが参加した海中からの撹乱が成功したのも皮肉に聞こえた。
それは後にして、どうみても豪胆とは真逆なハズな士官の言い方・・・・かなり念入りな算段を事前に吹き込まれている・・・・実際は、ジオンへの怨嗟を利用した算段ではある。幾ら小心者でも1年戦争がトラウマになっている者に恨み言を言わせる狙いはそう難しくはない・・・・これでは、今後を迂闊に進められないとして一旦は引くしかなかった。
脱出は成功な回。