確保したガルダ級二機でジャブローを脱出したエゥーゴであるが、前途多難そのものだ。地球を核で汚染したテロリストの烙印を既に押されている事で憤るか士気が低下しているかであるが、唯一の救いは戦力をそれ程に消耗していない事・・・・と、思っていたら?
『敵襲!』
警報が鳴り響いた。ガルダとは言えブリッジクルーが殆どいない上に積載量が9,800tのガルダとは言えMSをギリギリ積み込んでいる状態の上にドダイを始めとしたSFSが無い・・・・あるのは?
「おケチが役立ったか・・・・」
そう、シオンが使ったフライングアーマーである。何故わざわざガルダに預けてからジャブローの地下に向かったかは?言った通りでしかない、本来なら乗り捨てるには惜しいものだからだ。ここで取るべき手は?
「シオン、確認された敵を足止めしてくれれば良い!出撃後はガルダの対空砲に巻き込まれるな!」
「了解!MK―II行きます!」
そう、MK―II用に調整してしまったアーマーには他をいきなり乗せてはバランスにズレがある。ここは足止めしてもらう程度でシオンに出てもらうのがクワトロの判断・・・・幸い、工作員用の『変声機』もある事で『シオンの存在を利用したトリック』を使うに良い機会だ。一兵士を巡るミクロ視点だからこそ・・・・。
「・・・・来た?けど・・・・」
MK―IIはライフルを撃って、敵機のドダイを二機破壊した。そのまま逃げるように地上へ降下して行くのは?
『ジムコマンド』
おかしい、例えば?エゥーゴでも使っているジム・キャノンIIすら出て来てない・・・・これはまさか?と、考えた時に凄まじい殺気を感じて右下に軌道を反らした次の瞬間、MK―IIのシールドが前方から放たれたビーム、いやメガ粒子砲の『余波』に掠められ、1/3程度が溶かされた。宇宙だったら終わっていたかもしれないと冷や汗が出た。
「外れたっ!?」
確認された敵機に向けて、最大出力で乗機のメガ粒子を放ったが、外れたのに動揺したが。これしきでと機体を突っ込ませた。敵は『下駄履き』のようなので自分達が駆る『ギャプラン』の敵ではないと『ロザミア・バダム』は判断したのだ。
「航空機?いや、違う・・・・」
直線的なフォルムの機体と一瞬確認出来たが直ぐにそんな余裕が無くなった。音速の軽く数倍で迫る機体が『二機』しかも、SFS代わりのフライングアーマーなんかでどうにもならない・・・・しかし?
「何だ?直線的過ぎるぞ?」
軌道だけの問題じゃなくて、妙に一本調子だと感じた。お互いビームを撃ちながら機体がすれ違ったが、次は?と考えた時にシオンは思い切った行動に出た。幸い、この辺りは下は町や民家は無い!
「ロザミア中尉!相手は見た目がガンダムなだけだ!いけるぞ!」
そう通信して来た僚機の意見には賛成だ。性能は恐るるに足りない、だが初手を回避された事で躊躇して旋回が送れたのが失敗だった。自分の『同僚で同時期の作品』が乗るギャプランは再度突っ込み、雲から高速で出た機影を確認したが、フライングアーマーだけでガンダムが乗っていない?
ドォンっ!
機体を襲った衝撃に戸惑ったのが彼の最後の記憶、フライングアーマーを囮にしたシオンは違うSFSに飛び乗るようにギャプランの上に張り付いてコックピットをライフルで撃ち抜いて離脱・・・・衝撃的な光景に一瞬出来た隙を突いて囮にしたアーマーに戻ろうとするが?
「くっ!だが、それまでだ!」
何とか冷静さを取り戻しながら間に機体を滑らせながらギャプランを変形させた。こうなれば空中での性能的差がモロに出るので両腕のライフルを乱射したが、回避を繰り返してSFSに戻られた・・・・正直、相手の腕が尋常では無いが?
「腕だけで機体の飛行が可能にはならない!捕まえたよ」
『此方もな!』
上から違うプレッシャーが感じられた。密かに出撃していた百式が上空に飛んで落下しながら迫って来たのだ。この瞬間なら地球育ち故に重力下の影響で水平軌道になりがちな相手には有効となる。これが先程のシオンが動きが直線的と感じた理由、残りは?
「っ!?そ、宇宙が・・・・落ち、て・・・・いやああああぁぁっ!」
上空から落ちてくるプレッシャーから感じる恐怖、1年戦争のコロニー落としで負ったトラウマを利用した精神操作を受けていた為に上空からの攻撃が弱点に近いロザミアの精神に殺気を込めて接近した事で意図せぬ痛撃を浴びせられたとは知らないクワトロには、ギャプランの動きが鈍いのは何かの誘いから機体トラブルかとも映ったが、躊躇してはいられないとしてビームの乱射を浴びせた。ロザミアは恐怖の余りにがむしゃらに機体を操作し、辛うじでシールドをかざす事になった。ビームを受け止めたが、別方向からMK―IIが撃ったビームで片足を吹き飛ばされ、全力で離脱しようとしたが背後のスラスターを破壊される形になり、脱出ポッドが射出された。この場で命拾いした事が幸いかどうかはまだわからない。
無理な形で何とかフライングアーマーに百式を降ろしたクワトロは取り敢えずの危機を脱したと判断して、シオンに帰還を任せた。
「無事か?」
「はい、ガルダの方は?」
「別方向から来たのは旧式ばかりだったせいでガルダの対空砲だけで撃退出来たが、あの新型は初めてだな?」
「えぇ、あの『女』・・・・何でしょう?」
「あまり気にするな」
撃墜した新型のパイロットが『女』と言った事は触れなかった。予想は出来ていたが、説明には細心の注意が必要・・・・それと、襲い掛かってきたのが旧式で構成された部隊だという方が問題だったのだ。
そして、一兵士として予想以上の成果を出しているシオンではあるが、皮肉にも成果を出せば出す程に危険が迫ってもいる。
「何だと!?『クルスト博士』にも目を付けられてただあっ!?」
フィリップは『旧友』からの暗号過多な電文で完全に甘かったと悟った。
『クルスト・モーゼス』
例の『EXAM』のモルモット候補に数多くのNTをピックアップしていたのだから、両親がサイド3出身のシオンが引っ掛かっていても不思議ではない!そもそも、ブライトから聞いた時点で考えるべきだった!
「畜生め!頭を使ってるのは此方だけじゃねえぞ!って笑われてのが目に浮かぶぜ」
原作への皮肉を自分なりに詰め込んだ。
ロザミアはご察しな弱点が出た結果な回。