エゥーゴ上層部が、地上部隊に宇宙で起きた戦いの事を隠しながら右往左往する間の事。
暗礁空域の先の待ち伏せから救ってもらえたアーガマとモンブランはかなりの時間、先導と言うより連行されていた気分であった。しかし、相手の発言が発言なので『会見』次第では何かがあるかもしれないと考えはあった。
そして、その時は来た。ブライトは、漸くグワダンの客室で会談に赴けていた。
「畏まらないで頂きたい、我々は『同じ男』に賛同した者ではないですか?」
『アクシズの摂政、ハマーン・カーン』
まだ二十歳になったばかりらしいが、発散されるプレッシャーがNTではないブライトですら感じられる範囲で尋常ではない、クワトロ大尉の元に馳せ参じたと言うが、果たして信用して良いのか?と警戒していた。
「顔に出ていますよ艦長?私達を信用して良いのかと」
ブライトは、相手が悪いからと思いたかったが?自分がわかりやすいだけだったとした。今は流すしかない。
「無理も無いですが、私にとっては亡き父の遺言を守ろうとしての事でもあります。シャア大佐が、実は『キャスバル・レム・ダイクン』様である事、いずれ宇宙移民の為に立ち上がるであろうキャスバル様の力になるようにと」
『亡き父』
アクシズの穏健派の元に身を寄せていた事は聞いていたブライト、しかし『シャア』のやった事は?という疑問にはハマーンの方から切り出した。
「地球圏に潜伏した同志からアングラの出版物でまで掲載され始めているとの報告で、ある程度は知られています。シャア・アズナブルという偽名でジオンに入り、ザビ家を倒した・・・・艦長はジオンはジオンでも?『ザビ家』と『ダイクン家』の違いを早目に気付いた側では?」
その通りだった。ブライトは、ジオン・ダイクンがザビ家に暗殺された事もザビ家がその後にサイド3を掌握して、戦争を仕掛けた事も1年戦争の時期からある程度は認識していて、セイラ・マスと話した時で完全に確信した。
だが?クワトロは、それについては肯定しているが後ろ向きなので慎重に徹するのを決めた側でもある。もしも土壇場でこれ迄の価値観が崩されるような事実を突き付けられたらたまったものではない。
第一、目の前の女性が本当に自分達のような認識に加えて、キャスバルとしてのクワトロの元に馳せ参じて、自分達に協力しようとしているのか?という真偽が問題だとしている。ザビ家を担ぐ者達が自分達の仇でもある存在を?と考えている。
「言いたい事はわかりますが?私は、シャア大佐がミネバ様を殺す事は無いと確信している身ですよ艦長?」
「な、何故?」
「ミネバ様が2歳の頃のシャアに慕われていました。子供の目は確かです。殺意を抱く相手にするものではない・・・・それに、ミネバ様はまだ幼いながら、感性が素晴らしく?NTだとも言われてます」
ブライトは自分の弱点を2つ突かれた心境であった。
『子供』
『NT』
2児の父であり、今も10代半ばの少年をパイロットとして戦場に送っている身、一般論で反論はいけないとした時。
『緊急で失礼しますハマーン様、ティターンズの追撃部隊です!』
「むっ!?」
このような宙域に、しかも『ティターンズ』が?とブライトは考えた。
通常の連邦軍ばかり相手にしてせいで、ブライトも自分なりにティターンズの意図は予想していた。艦の数は此方のおよそ3倍らしい。
「艦長?貴方が指揮取ってはくれまいか?」
「は?」
「今からでは、アーガマに戻る時間も惜しいでしょう、我等は実戦経験のある兵が少ないのです」
間抜けな声と顔をしてしまったが、確かに言う通りなら・・・・ブライトなりの決断は受ける事で、ブリッジに上がったが?目にしたのは自分を歓迎しているような敬礼をするブリッジクルー達だった。
(ジオンにしては・・・・)
何やらおかしいとした。ザビ家派にしては歓迎されていると感じた。本当にシャアを支持する側だとでも言うのか?と、疑問だが?今はやるべき事をとやるべき事を始めた。
「事情は聞いているようで・・・・では?今から指揮を取らせてもらう!アーガマとモンブランには連絡はしてあるな?」
「はっ!アーガマはオペレーターである『トーレス』と言う者が艦長代理を勤めるそうです!」
「わかった。全艦戦闘態勢を取れ!敵影と構図は?」
一応はやり方を知っている者がアーガマ内の指揮を取るのを確認した。恐らく安心だろう・・・・そして、出た図は?
「敵艦隊、サラミス級が5隻と後方に補給艦3隻です!我が方とは小惑星郡を挟んでの対峙図です!」
「よし、これから敵艦隊は小惑星郡を迂回する為に回頭をする!全艦、そこを狙ってメガ砲で一斉射撃!」
「はっ・・・・?」
「命令通りにしろっ!」
「は、はいっ・・・・砲撃用意・・・・っ!・・・・敵艦隊が回頭開始の動き?・・・・砲撃用意完了です」
「撃て!」
グワダンのブリッジクルーは言われたように、回頭開始中だった上に射程は向こうより上の艦ばかりな為に反撃は来ない図となった事に唖然とした。小惑星郡や1年戦争以降に流れたデブリ程度では戦艦のメガ粒子砲には盾にはならないので、その内に動きが乱れて何発か当たって足が鈍ったようだと確認出来た。
「ダミーはあるか?」
「は、はい・・・・」
「よし、ダミーを射出して後退!やはり相手は地球上がりばかりで宇宙慣れしていないようだ。MSを無駄に出すかどうかで終わるハズだ」
「りょ、了解!」
「・・・・此方からは仕掛けないのですか?」
「聞いた通りなら、この空域で乱戦をやれるような練度はグワダンのMS隊には『まだ』無いでしょう?小惑星郡にやられては目も当てられません、接近出来た部隊だけを数に任せて殲滅します」
「流石ですな・・・・」
「距離はまだしも?接敵する瞬間だけで決まる勝負と言うのもあります・・・・『シャアと戦った』私はそれを思い知らされています」
「確かに」
テキサスコロニーでのワッケインの事を思い出したが、振り切ったブライトは、自分なりにティターンズの実情を見たならではの策を取ったが、これは正解かどうかはわからなかった。グワダンのMS隊のパイロット達を最初の頃のカイやハヤトのように扱ってしまったのも後になってどう響くかの危惧もあったが、それ以上に?
(やはり、わからん・・・・追撃していた部隊がバスクのような経験者ですらないとすれば私に任せなくても勝てるレベルだとは想像がついたハズ、何を考えているのだ?)
そうは思っても、ブライトは気付いてなかった。ハマーンには密かにブライトの痛い部分に探りを入れられていたのだ。
その後、地球に住む側からは『魔の宙域』と移る暗礁宙域を散り散りになって進むティターンズの部隊は、先手を取られ続けて撤収せざるを得なかった。
宇宙の暗礁宙域を甘く見ていた側と、それを見抜いていた側の戦いは当たり前の結果が出ただけに終わった。
何か、アニメでは当たり前になってるけど?『宇宙』って、移動するのも一苦労に怖いもんだというのを経験の差を出す事で少々やった戦い。