「籠の中の鳥は鑑賞される道具でしかない」
「じゃあ、壊させれば良いでしょう」
「シオン、アムロ・レイは自分から飛び出すタイプではないらしいのだ」
俺は帰還したクワトロ大尉と一緒に整備中のMSの光景を見ながらデッキ上の通路で話し込んでいた。作戦の事もそうだが、大尉の関心はアムロ・レイにある。連邦内からのエゥーゴ参加者はホワイトベース支持派が多いから招き入れようとする声が多いが、地球連邦の人事広報について調べても一年戦争後の事がわからないらしい、殺されているのではないかとかが大尉の耳に入ってる。
「一説には北米にいるとか、だとしたらデラーズ紛争のコロニー落としで逃げ延びた場合、例の【奇跡の子供達】みたいな危険に見舞われているかもしれませんね」
「それも【アングラ】の出版物がもとの言い方かね?」
「はい、けど。こじつけられそうなものはトコトンにこじつけたがるんじゃないんですか、その後を知りたいか物語にしたいとかで。上手く収まったならそのままにした方が良いのの続編作りたがる理由を知りたいもんです」
大尉は、何故かアムロ・レイを表舞台に引っ張り出したがってるように見えた。上手く収まるなら収まるで良いのに、けどシャアならわかる話な一方、他や本人はどうなんだ?
―――――――――。
「好きでこうなったんじゃない。クリス、君の前で言って良い事じゃ無いがな」
「良いんですよ。戦おうにも本当に倒さなきゃならない敵とだけ戦えるなら兵士には苦労も何も有りませんよ、寧ろ顔見知り・・・・今のアムロ大尉なら、教え子を撃っちゃったとかになりかねません」
赤毛の天然パーマ気味な短髪とストレートロングヘアーは北米辺りでは割と目立つ。何回目になるかわからない酒の席で二人は酔いを回していた。自分達は何をやっているのか・・・・MSに関わってはいるが、機械弄りとしていた。
【機械】
シミュレーションで自分の教え子達を二分掛からずに全滅させるアムロの動きを目の当たりにしたが、一年戦争の半分も出せないと自虐している。
「僕は、親父の作ったのが合ってただけなんだよ。血の通いやら流れってのは厄介なものさ」
【血】
クリスは何となくわかる。機械と割り切る者にはわからないが、MSは人を模した物だとすると心や血の通わせられるか否か。
【ガンダムに流れる血は感じられなかった】
戦後にアムロが乗った機体には、ガンダムのように血の通うものを体現出来るものがないものばかりだった。当時の連邦にある技術からアムロの為のガンダムとして開発された機体を使ったクリスには良くわかる。
そして、帰り道に着いた。
シャイアンにある豪邸において。使用人達が客人を通していたが顔見知りだ。
【フラウ・コバヤシ】
そばかすが消えて大人びた幼馴染みは、養子三人を連れて訪ねて来ていた。
【カツ・レツ・キッカ】
一説によると、ホワイトベースファンには食堂のメニューなカツレツをカツレツキッカとしてメニューに表示する強者がいたらしい。
「やあ、フラウ。こんなとこに来てどうしたんだい、ハヤトの博物館は良いのかい?」
「アムロ・・・・」
明らかな落胆、甘い笑顔のようで酒に酔って溺れた姿。フラウからは見たくなかった姿で後方から有りがちな姿を晒す者があと一人。
「大尉ぃ~、先ずはお水。使用人にご主人らしく運ばせて下さい。昔より今って言うじゃないですかあ?」
クリスも泊まり込むつもりで同行していた。大人としては有り得る男女の図だが、やはり落胆する。あのアムロが酒に酔って女を連れ込む姿等はと。そして、ソファーに座ってお互い向き合い、自己紹介を終えた。
「ホワイトベースのクルーや乗り込んでしまった子供達ですか、今だって軍人に関わる年でもないのに難儀ですね」
「アムロさん、率直にいいます。アムロさんは何故エゥーゴに参加しないんです?」
クリスを意に介せず。カツなりの酔い醒ましを見舞うが、アムロはそんなものは取り合わない理由がある。無論、フラウ達にすら話せないものがだ。
「僕は一年戦争で立派に戦ったよ、NTとして危険人物扱いされたまま過ごしてるけど、元々機械弄りしながらマイペースにやるのがお似合いなんだ。早く軍から離れて一般生活に戻りたい」
「そうですよねえ、アムロ大尉はネクラだけど優しい人で、本来は戦うのは好きじゃないだから骨を埋めるには良い環境ですよ」
「な、何なんです。貴女は!?」
絶句する一方でアムロと妙に近い距離感を感じる女性にカツは憤るが、クリスは徐々に暗い気を纏っていた。
「はあ、とにかくアムロさんの実像見誤ってますな典型例みたいな言動ね。少しは現実見なさいよ。飲み仲間な私に負けてるようじゃ危機感持つべきね」
「そ、それは・・・・アムロさんは僕達のヒーローだったんだ!ホワイトベースにもガンダムに乗った事もないような人が偉そうに言わないで下さい!」
「・・・・乗ってたわよ?」
空気が完全に変わった。仮にもNTか近い域に踏み込んだフラウ達はクリスの発言に踏み込む事が出来ない。完全に気圧された。
「私は、一年戦争末期にね。ガンダムに乗って戦った。それも【アムロ大尉に渡される予定だったガンダム】に乗ってね。だから、パイロットとしてのアムロさんがどんな存在か、貴方達がどれだけアムロさんの実像見誤ってるかは知っているわよ」
「クリス、もう良いさ・・・・とにかく、今日は部屋を用意させるから寝てから話そう」
「了解、カツ君。何を言いたいかはまだしもエゥーゴなんかに誘ってね・・・・【アムロ大尉が顔見知りと戦って撃破】なんてやらかす事になったらどうするの?」
それは充分有り得る話だ。例えば、不用意にMSを奪って脱走を試みたら有り得るのだ。この辺りの守備隊にはアムロの顔見知りから教え子は多い、クリスから見ても全盛期に及ばないアムロでは加減の余裕は無い。
「撃破されたMSのコックピット内を見た兵士達が【ミンチよりひでぇや】なんてボヤいてるのをパイロットが聞いてない保証は無いし、後で【知ってしまった】とか有り得ない保証も無いのよ、少しは選択の自由がある有り難さを知るのね」
何も言えない、アムロも何事も無かったように部屋に向かう。フラウ達は結局はアムロの七年を知らないのだ。
~~~~~っ。
「こんな所で戦いを仕掛けて来るなんて、許せない!」
クリスは夢の中で戦っていた。あの日、新型にしてやられて乗機を損傷させられた後のクリスマスの死闘。
戦後になって、思い返せば凄いパイロットだと思った。
【ザク】
後期に開発された型にしても、自分があの時に乗ったNT用ガンダムとして開発されたアレックスを使いこなしきれてなかったにしても。
ダミーをフルに活用して腕部ガトリングを破壊された自分に残っていた手段は接近戦、一思いにコックピットを貫いたが、アレックスの首を跳ねられ、至近距離の爆発を受けた。立場上では敗北。アレックスを大破させてアムロに届けられなかった。
何度か、あの時の戦いを思い出したある日だった。
「そう、そうだったの・・・・」
クリスが見せられた証拠映像が誰が持ち込んだのなのか知ってしまった。サイド6を核攻撃させまいとしたジオン兵は、何故コロニーが標的になったかの証言を収めたテープや証拠の品を警察に送っていた一方、自分の兵士としてやらなければならない戦いを挑んだ。
「~~~~」
無我夢中だった。怪我をした激痛もあるが、自分もやらなければならない事をしているのだと・・・・仮にも士官学校を首席で卒業してはいないクリスは自分なりに使命感はあった。そして決着を付けた。
「パイロットはね・・・・スーパーマンじゃないのよ、貴方は・・・・【アルにそれを教えた】・・・・そうでしょ・・・・【バーニィ】」
~~~~~~っ。
「また夢を見たのね・・・・」
クリスの手には、ザクのコックピットをサーベルで貫くべく動かした感覚が今も鮮明に残っている。あれがアムロの言うガンダムに通う血の産物なのかもしれないとも思っている。昨夜は喋り過ぎたが理由はある。
【カツと言う少年は、自分が察したアルにはなれない】
それを確信する形のものに突き動かされていると感じたからだとして寝汗を流すべくシャワー室に向かった。
アムロじゃなくてクリス主体な回。