「身一つで来るとは流石ですな」
「はい、お久し振りです【カムラン】さん」
ブライトは、今自分の妻となっているミライの元婚約者と対面していた。お互いにこのサイド6では苦い思いをしたものだとしながら事情を話したが、やはり切っ掛けからして目を丸くされた。エゥーゴでありながらジオンの赤い彗星の元に馳せ参じて来た女と手を組む等とつくづくはみ出し者らしいと開き直るしかなかったが、カムランもカムランでホワイトベース隊を信じた側として出戻りを繰り返す等と散々だったようだ。
実は極秘にブレックスと連絡を取れていたブライトは一声で全てを任された。
【任せる】
ハマーン・カーン率いるアクシズからの早期帰還を選んだ隊と言うよりシャア支持派に合流したとするべきか。ブレックスのような懐深さは無いせいだが自分達が手を組んだのは、あのシャア・アズナブルなのだ。現場の指揮官だけの視野では把握できない陰謀が渦巻いていると考えるのが当然だ。エゥーゴに帰っても再び出資者の愚行に巻き込まれるだけだとするブレックスの豪胆さに甘えるしかないと割り切った。今落ち着いているのはアーガマが行方不明で地上はシャアに任せるしかない状況故。
ブライトも、グワダンのクルーは自分が見たところザビ家ではなく本当にダイクン派のような気配がある。そして、拡散された映像がブライト達の目に入った。
『連邦の新型らしき巨大なガンダムタイプのと、それを葬った所属不明機体の戦闘映像か。何故拡散されたかは知らんが、勝った方のパイロットは尋常な腕では無いな、艦長からしても大したものなのではないか?』
ブライトは、一年戦争時のアムロにシャア。それに今のシオンを知る自分に向ける発言としては心臓に悪いとしている。映った機体は自分もシオンの設計図を見せてもらったゼータガンダムに間違い無いが。アレはどうやらアナハイム本部か入り込んだシャア派のどちらの意向が反映されたかと言えば圧倒的に後者だ。パイロットはシオンかどうかは知る術は無い。
『ハマーン・カーン。今の私には、貴女の情報が正しいとすれば意図に乗るしかない・・・・こき使われていたにしても便宜は図ってくれた【レビル将軍】の無念は晴らしたいのです』
『だろうな、亡き将軍は意図がどうあれホワイトベースを信じていた側のハズだ。ならば艦長もアレを許すワケにはいかん。我々はルナ2を占拠、それを起点に【グリプスをコロニーレーザーに改造する事を阻止する】!』
【占拠】
橋頭堡にするのもならそれは有り得るだろうとした。ルナ2は修復が後回しにされているから可能ではあるかもしれないが、その後にアーガマとモンブランにグワダンだけでどう戦うかが問題だがハマーンからは恐るべき提案があった。流石に躊躇したが月やエゥーゴを支持するサイドをコロニーレーザーを撃たれるよりは良い。
そして、ハマーンは自分の計画通りに動いてカムランに自分が根回しする算段。指揮官どころか一組織の摂政自らが動くのもどうかと思うが、ハマーンからの説得にはブライトには肝を冷やすものがあった。
『艦長には複雑だが、シャアがサイド7で犯した過ちの原因は一説には私の父かその同類だと聞きまして』
シャアが一年戦争で名を馳せたのは、当時のザクでルウム戦役で五隻の戦艦を沈めた戦いであるが、シャア自身は若さに任せて戦功さえあげれば良いと映る行動を繰り返した。それをハマーンの父であるマハラジャのような者に咎められたが、裏目に出たとされている場所こそ。
【サイド7】
連邦のV作戦の情報を掴み、サイド7に先行しての偵察は新兵と経験者に任せたが、知らない側からしたら推測過多な見方で功を焦った新兵の暴走が始まった流れが自分達の災難の始まり、ジオンからしたらホワイトベース隊として運用される兵器以外を潰せた結果が正しかったか否かだが。
【アムロをガンダムに乗せてしまった代償は果てしないものだった】
そして、ハマーンが語ったもしもが問題だ。
『聞いた限りで、仮にシャアがあの時にルウム前後の気性のまま直接行っていたら迅速に破壊し始めたでしょうし、部下も信頼する上司に従って効率良く破壊し始めていたハズ。ガンダムと言えど無人の時にコックピットを潰されては一溜りも無いし、民間人だったアムロ・レイが乗り込めたからにはセキュリティが充分ではないでしょう?』
確かにとした。当時のシャアがアムロが乗り込むより先にガンダムを破壊したり鹵獲したとしたらと思うと身体が震えた。
話は切り上げ、少なくとも任せられるか否かとすると断じて否。人材が足りない故な結果である。
―――――。
「しかし、これをどうするかですな」
一呼吸起きながらの回想を終えてカムランと一緒に見たのはティターンズの運び込んだ貨物船であるが、中身が問題過ぎた。
【MSサイズの空気清浄機】
そう偽って運び込まれたのは清浄器等では無い。
「相当、根回しが進んでいたようですね。これの中身は【Gー3】かもしれない!これを内部で解放されたら30バンチの二の舞だ!」
カムランもしてやられた怒りが滲んでいた。バスク・オムが1500万人を虐殺した事件を知ったばかりなので断じて許すワケにはいかない。
その頃。
「ね、ねえ。貴女の機体のニンニクみたいなのは?」
「マチュ、ラーメンに入れてたからって・・・・」
ハマーンは説明はしたがファンネルをニンニク呼ばわりとするマチュの発言は不本意だとしたが、この機体の武装であり何かを感じるマチュには益々興味が湧いた。
【キュベレイ】
スミレ・ホンゴウが残したデータを元に完成した試作機、純白の洗練された機体のサイコミュ搭載機を感じられるのは益々悪くないとして来たルートを辿って連れ帰ったが、それがハマーンの【浮かれ】から来る悲劇の始まりであった。
「ね、ねえ。ここってジオンの戦艦?」
「だよね、ゲストルームってやつに通されたけど・・・・何か可笑しくない。空気が良いようで淀んでる?」
二人の不安を後押しするように艦内には緊急事態を示す類いな警報が鳴り響いた。周りが騒がしいが、状況すらわからないで誰かとみたいなのを鳴らして誰かを呼ぼうとして連絡機を弄ったら何処かにテレビ回線が繋がった。
『お、何だ子供じゃねえか・・・・もしかしてアーガマから来たお手伝いさんか?』
「え、それより何があったの?」
『何がって聞いてねえのかよ、ハマーン様が調査に行ったコロニー内にティターンズが毒ガスを持ち込んだんだよ!このままじゃ、住民は全滅だからMSを向かわせたりするけど偵察とか所要でパイロットの数が足んねえ!』
マチュは頭を殴られたような衝撃を受けた。実はそこまでとは行かなくてもティターンズが各コロニーでひどい事をしているとは知っているのだ。
『訓練用しかねえけど、数が足りねえ!動かせるなら出てくれ!後で話しは通すから!』
「わ、わかった!」
マチュは飛び出すが、それが陰謀の一部とは知らないが母親も学友もいるコロニー内で毒ガス等と正気ではいられなかったが、ニャアンが全力で待ったを掛けた。
「ま、マチュ!駄目だよ、そもそも動かせないでしょ!」
「は、離せ!離せ!あのコロニーにはお母さんがいるんだ!」
「マチュ・・・・」
ニャアンはマチュを羽交い締めにして時折に肘や足踏みを受ける形になりながら必死に止めていた。言い出せない事をやろうとしてしまったが、今のニャアンにはマチュしかいない。シュウジが何処かに行った後にたまたま来てくれただけとしてもだ。
『おやおや、気持ちはわかるけど可愛い子同士での図は感心しないねえ?』
ハマーンの時と似ているとして振り返った先にいたのは身長が190はある長い黒髪の妖艶な雰囲気の女性だった。歳は最低三十路ギリギリのようだが、それに負けない猛々しに満ちている。マチュですら黙らせられる女性は抑えきれない憎悪を込めた声色で語り掛けた。
「お嬢ちゃんも噂のNTらしいね。あたしに何かを感じたようだ。じゃあ来なよ!あたしは【人生最大の幸運】かもしれない機会で浮かれてるのさね!」
「あ、あの・・・・貴女は?」
「あたしは、木星に行くハズだった輸送船団の船長【エフェメラ・ハント】!良いからグズグズするんじゃない!」
素性も生い立ちも知らないが、何物も焼き尽くす憎悪すら越えた歓喜を纏わせる女性に手を引かれてマチュはMSデッキに向かう、イズマコロニーの転機迄、あと僅か・・・・。
コウが例の漫画みたいなルートだから、おいで下さった御方とマチュの出会い回でした。果たして陰謀渦巻く中でGジェネNEOのように30バンチ事件阻止は無理だったが、次は防げるかな展開。
途中のマハラジャとかに戒められたシャアってのは何故か検索で出たのが元だけど、部下に任せるシャアってのは言われてみればらしくなかった故。