「ね、ねえエフェメラさん。MSデッキに行ってどうするの?」
「そりゃこの嬢ちゃんをMSに乗せてコロニーに行かせるのさ。この艦内も訳ありだから最悪の場合は機体をコロニー内で捨ててお家に帰りな!何をするにしても死んだらおしまいだ。難民の方と違って一般人として暮らせてた側なら普通に暮らしつつ目的を果たすチャンスはあるさ」
ニャアンはとんでもない言い分に青ざめた。気遣いはしてもらえてるにしても、いきなりMSの操縦なんて、英雄故に殺されてるかもしれないとまで言われているアムロ・レイではあるまいしと。
実は何も知らない一般人には配線を触っただけで操作法がわかったとまで広まってるが、ニャアンは実際はマニュアル片手に動かしていたとしている事を信じている派、それ程に当時のガンダムはザクを上回る性能だった。
今はそんな条件ではないとしてマチュですら不安になったが、エフェメラは冷徹だった。
「ハマーンが連れ帰った時点でわかった。あんた等はこのままじゃ近い内に戦争の道具にされるよ」
そこから噂されているニタ研の一般人から難民の拉致について説明された。簡単に言えばNTの素質ありとされる者達をあの手この手で集めてモルモットにしているのだと、つまりマチュのような感性が独特な民間人とニャアンのようなそこそこに頑張る難民はターゲットの内だと。
「何よ。そんなんで普通に学校行って勉強してりゃ良いなんて、おか・・・・大人達は何を考えてんの!?」
「そうさねえ。知らなかったなら母として有りがちな思考だけど、例えば将来の選択肢を広めとく為に技能や知識を身に付けさせてあげたいとかならまだわかるよ・・・・けど、肝心な事を知らないまま政治家とかになってもねえ、まあ良いさ。このプログラム通りにやってりゃ私の言ったようになるかお母さんだけでも乗せて逃げて来られる可能性ある。失敗したら自分なりに逃げな。此方のはあたしが面倒見てやるって事にして、後はやるだけ!やってみるかい?」
「やってみるじゃなくて・・・・やるしかないんでしょ!」
「そうそう、じゃ大漁を願ってるよ」
渡されたディスクは新人教育用のマニュアルである。いちいち操作法を出してもらえるが実戦ではものの役に立たない。少なくともマチュにしたら最大の譲歩である。管制指示通りに発進してしまったマチュをニャアンは泣きそうになりながら見送った。
「マ、マチュ・・・・」
「何で置いてかれたかとか考えてるようだけど身内がいるからだろ、まあ良いから生きてるのを望みなよ」
エフェメラは何となくわかった。シュウジの事はまだ知らないが、縋れそうなマチュが身内が危ないにしても自分の傍にいてくれないのが不満で不安なのは年相応だとしたが、宥められている間にニャアンは一つ聞くべき事を聞く。
「エフェメラさんは、何でこうしてくれてるんですか?」
「言ったろ、幸運ってやつさ。立ち回り考えとか七面倒な事あるけど、毒ガス・・・・そうさ。毒ガスとか許せないのは本当さ!あんたらもソレ感じたから言うこと聞いてくれたんだろ?」
凄まじいプレッシャーにニャアンは震え上がった。少なくとも本能的にエフェメラが真剣なのは痛感という次元を越える程に理解しているので疑いようは無い。もしも疑ったらと震えるニャアンは自分がどう映っているか気にする余裕すら無かった。
(けど、こういうのって案外と実は一番化けるヤツなオチがあるんだよねえ・・・・後は、此処からじゃ把握出来ないのがどう動くが)
エフェメラの危惧は当たってはいるが、数が足りてなかった。
「カクリコン。お、俺達はどうすれば・・・・」
「空調器と騙されたとかにしろって事か、敵を騙すには先ず味方とか・・・・どのみち運び込んじまったぜ!」
ジェリドカクリコンは事態を把握していた。コロニーの空中器としては普通なサイズであったが、中身がG3であった等とはと・・・・これの意図は知らないが、あとが無い自分達には独自に解釈する頭が回らない。
【地球に帰りたい】
カクリコンは地球にアメリアという恋人がいる。ティターンズとして汚れ仕事すら厭わないつもりでいたが、此処までとは思わなかった。ジェリドも逃げ出したくなった程だ。コロニーの港の管制室で弱気を振り払おうとしたが、そんな感傷に浸れるような状況ではない。何やら外で揉めているような声が聞こえた時に管制室の扉が開いた。
「この場は我等が占拠する!我等こそがジオンの伝統を伝える者だ!」
「【サトウ】隊長!他は予定通りに!」
呆気に取られるジェリドとカクリコン。幸運か否かの機会を得たかはまだわからない、ジオン残党狩りを目的にした組織に入った自分達がジオンを名乗る者達にそのような機会を与えてもらったとは夢にも思えない。
ーーーーーーー。
プログラム通りに飛ぶマチュはこの機体のカラクリを知っていたが、やはり不安だった。
【アクシズ製サイコミュ試験用ザク】
実は試験的な武装とサイコミュ以外ザクだ。軍に志願した者の中からNT適正があるかどうか判断する為の検査の為に適性検査用に用意したザクを黒く塗ったように見せ掛けたもの。これは機体が敏感だが、キラキラを見るようなものではないが操作はやれるとした。とにかく偵察機と見せ掛けてイズマコロニーに行く。
次にティターンズの動向を探りつつ、ハマーンが通ったルートから再度侵入して母に聞こえるよう呼び掛ける。
だが、マチュは視野が狭まっていた。これ迄にグワダンの偵察機が見当たらない理由を考えられなかったのだ。
『む、そこのMSはグワダンのハマーン様所属の御方か?』
「え、味方。良かっ・・・・何で襲ってくるの?」
マチュは漸く会えたグワダンを知る部隊、つまり味方らしき機体が発砲して来たと理解して機体を我武者羅に動かして侵入口に逃げコム。
「ど、どうしよう。こんなんじゃ」
簡単な操作程度は何となくわかるが、来る前に自分で思った。今の自分は一年戦争でのアムロ・レイのガンダムように性能なんか宛に出来ない。現に相手はティターンズのハイザックを回収して改修した機体でスペックは圧倒的にマチュのザク以上だった。
(こんなんじゃ・・・・行きたいとこいけない、何か。何か・・・・この状況を・・・・っ!)
マチュは予定とズレながら何とかコロニー内に入ってゴミ捨て場のようなジャンクの山に逃げ込んだ。騒ぎが伝わったのか軍警が間も無く足元に来る位置に確認した。追手も間も無くとした時に声が聞こえた。
(え、何あれ・・・・キラキラって言うより、何か【虹】・・・・けど、あっちのほうが強そう!)
何とか目当ての近くに着陸したが、何発か被弾して上手く動かせない。機体の手を伸ばすが何故か機体自身が上手く動かないのでマチュは賭けに出た。何とか機体の左腕を伸ばし、コックピットから出て左腕の上を走り、マニピュレーターの先に乗って思い切り跳躍をした。後は開いているコックピットの中に入れたから何かスイッチをとした時。何かに動かされるように起動スイッチを押した。
「【右腕が無い】けど・・・・凄いパワー数値ね。それにコレって・・・・広まった画像で見たシャープなガンダムに似てる・・・・機体名は・・・・【ゼータガンダム】?」
起動して立ち上がったが、武装が無い。上空から追手が来て、何やら戸惑っているようだがどうすればとした時にマチュは声を聞いた。
「え、シュウジじゃないよね。けど・・・・アレを使えって・・・・よくわかんないけど、なんかわかった!」
マチュの乗ったゼータはピーキーの極みのようだが、コントロールが出来た。そして、マチュが乗って来たザクの腰に装備されていた特注のヒートホークを機体の手に取らせた。何やら【獅子】を象った趣向が施されているのは趣味かとしたが使えるなら良いとした。
「え、爆破させないで【頭】を狙え。わかったよ!」
マチュは思い切り機体を突っ込ませて斧を横薙ぎに奮って頭部を切断した。相手からしたら規格外の運動性だった故の結果、動力バイブを始めとした重要部分があるザクはそれで戦闘続行は不可能となる。
もう一機に狙いを定めたが、問答無用にビームを撃って来たのでシールドを構えたが、ビームではとした時にマチュは気付いた。
「凄い、このシールド。至近距離からのビームを受け止めてる・・・・って、来た!」
流石にこの距離のビームを受け止めるシールド等は現存MSの知識では有り得ないので突っ込んで来た時にマチュは斧で応戦では無く、戦闘機の先端になるような形のシールド打突を見舞った。完全にカウンターの形になったので頭部を飛ばされて倒れ付した。
「や、やった・・・・けど、次。次は・・・・」
マチュは予定とは違った流れになって戸惑うが、その姿は別の場にいるブライトとカムランがモニターしていた。
「カムランさん、あの機体は?」
「あ、あの辺りはジャンクの山だったので半壊したMSくらいはある場ですが、あの機体は最近では見ませんね」
カムランはまだ目にしてないとわかるが、ブライトは混乱手前であった。シオンが使ってるかもしれない機体と酷似しているが、アレはロールアウトしたてな機体のハズ。それに比べたら何故か洗練されている機体の各部はビームの余波を受けたような跡が所々にあり、片腕を失っている以上に幾度も激戦を潜り抜けたような機体だ。その姿に何故かブライトは人型である事を喜んでしまう自分を感じていた。
機体の方のジークアクスが世界線からしてアレなので、マチュが乗ったのは?
【何故かあった片腕無いゼータガンダム】