「エゥーゴのスポンサー内で責任者やら何やらの実権が他に移っただあ?」
「ああ、ジャブローの大失態が原因でな」
カイとハヤトが怪訝になりながら話題にしている事はカラバ内でも波紋が拡がる内容だが、ジャブローが切っ掛けだとしたら反論は出来ない、自分達も引っ掛かったか上手く立ち回れなかった側である。気になるのは一年戦争のホワイトベースに例えたら人事がどうなるのか、極端に言うと補充された人員が来る場合。
【スレッガー・ロウではなくリードのような者ならたまったものではない】
それより、当面は一番影響を心配しなくてはならないのは?
「シャアだな、赤い彗星がエゥーゴの前線指揮官なのは劇薬染みてるのに何故か必要以上にクワトロ大尉がシャアだと知れ渡っているのが気になる。新しい実権担当がどうなるかだ。それはそうとカイはレコア少尉と一緒に【日本】に行くそうだな」
「ああ、お前さんの奥さんと養子になったチビ三人は機会があったら様子は見といてやるよ」
それは有り難いが、ハヤトも騒ぎは聞いていた。シオンが日本と【5番目】と言い出してカイが激しく詰め寄ったと。それについて不吉な予感がするのだが、レコアについては捜査任務でもあるのだから口は挟めない。
そして、月ではブレックスが次の全権担当を任されてしまった者と対面していた。
「貴女が・・・・エゥーゴの実権を任されたと?」
「はい、引き継ぎ途中ですが私ことマーサ・ビスト・カーバインがこれから全権を握ります。率直に言いますが、貴方達実働部隊に全てを委ねて私共は必要な事に対して図れるだけの便宜を約束します。アナハイムや月企業の細かい事は私達にお任せ下さい、流石にティターンズが出すような無茶には協力出来ないですが」
「そ、それは有り難いし勿論ですが・・・・アクシズの先行隊に同行しているブライト・ノアや地上に残った部隊についてもですかな?」
「はい、包み隠さず言いますがブレックス准将も思っているのでしょう。シャ・・・・いえ、いけませんわね。そもそもクワトロ大尉が提案してたようにグリプス攻略をやっていればこのような事態にはならなかった。現にティターンズのジャミトフはジャブローの時にグリプスに向かって降下部隊と行き違いになっていた。肝心なグリプスがハマーンと言う女性にルナ2に衝突させられて宇宙でどうしている事やらな状況のようですが、場合によってはエゥーゴ側が討ち取れた可能性はゼロではない」
ブレックスとてこの問題をスポンサー達の押し付けのせいのみで済ますつもりはないが、都合が良い流れに任されまいとしている中でグラスの酒を飲み干したマーサの次の言葉を待ったが、次も都合が良い言葉だ。
「勝つ為に一番有効な戦術は【相手より勝ってる部分で戦う事】・・・・ティターンズ側は物量でエゥーゴにとっては前線指揮官。バスクに対して此方はクワトロ大尉です。これを活かさないのは愚行・・・・無論、過信は禁物です。例えば地球上では汎用機の百式では新型の可変機相手には不利ですからね」
「尤もですな、彼はMSパイロットとしては屈指だが条件次第ではやられもしましょう」
「それをフォローするのも任せて頂きたい。ジャミトフが宇宙で何を企むにしても次は何となくわかります。地球に戻るか、若しくは【コンペイトウ】ですね」
それは想定内だが、四年前の惨劇の場を本当にそうする場合、どの勢力が牛耳るにしても只では済まない、ティターンズもそうだがエゥーゴやアナハイムも恐るべき陰謀の渦巻く中に入ったと予感をしたブレックスの戦いは新たな域に入った。
そして、地球では。
(今回も機体性能はそんなに変わらないハズだけど・・・・っ)
ペッシェはアフリカの広大な峡谷、フィッシュリバー・キャニオンやブライデリバー・キャニオンを想定した設定のシミュレーションにマチュの乗った方のゼータで挑んでいた。相手はシオン、今はアネッサのゼータなのだが、上空ですれ違い様を開始の合図としたが予想外な光景を見せられた。
月や隕石基地のような狭めな峡谷に機体を侵入させたので上空からビームを乱射した。これなら回避する際にコントロールが多少狂えば崖に突っ込んで自滅するとしたが、拡散ビームでも駄目かもしれない程に当たり前に回避されてしまう。漸く自機に向き合った時には自分の方のライフルが弾切れを起こしていたと気付いた時にはコックピットを撃ち抜かれて終了となった。
次は市街地戦での遭遇戦だったが、ビル越しのヘッドショットで敗北と地形を巧みに使われてどうにもならないとした時にスミレからのコールが掛かった。
「一旦休憩、凄いわねアネさん。戦闘lQが余程高いのか地形の使い方が上手いわ」
「そりゃ、経験値や装甲の恩恵無い状況だったから正攻法だけじゃ無理でしたし」
素人が新世代機になれなかったMK―IIで戦ってたならではな台詞だがフォウやペッシェに言わせれば悪く言えば小賢しいとすべき流れを当たり前にやる発想力と操縦技術は尋常では無かったが?
「けどアネさん、接近戦のガチ避けてない?」
「ああ、おかしな事と思われるだろうけど」
マチュの指摘に対してのアネッサは神妙な言い方だった。
「はぁ?MSで抱き着かれたりするのが嫌って何よそれ」
「いやな、夢か何かとしか言いようが無いがビームは回避出来ても何処からでも抱き着かれたりするのが嫌なんだ。それで俺もそうしたりしちまうんだ」
「何でサーベルでやらないし、組み付いたままバルカンとか固定武装の攻撃しないの?」
「わからん、それで俺の機体が宇宙空間で動き止めてるとこに背後からヒートホークで斬り付けられても推力全開の体当たり気味な抱き着き、良く言えばラグビーのタックルをされてもビクともしないで腕を適当に振るって相手の頭を飛ばしちまう事もあるんだ」
「子供の頃に強さ表現間違ってたりロボットの抱き着き合いに欲情する変態の造ったアニメでも観たんじゃない?アングラで妙なの飛び交ってるし・・・・少なくともアネさん賢くて強いんだから気にしない方が良いよ、じゃあ次は私の相手してね」
「マ、マチュは戦う必要無いでしょ」
「フォウやペッシェもわかってんでしょ、アネさんが集中出来る内がチャンスなの」
マチュ達の会話に立ち入れないスミレだが、少なくとも悪い流れではないとした。近々荒れるから今がチャンスなのは間違い無い。アネッサには良い意味で状況を切り抜ける為の下地が必要なのだ。
一方。
「え、これを私に?」
「そうだ。私のキュベレイのMK―IIとすべき機体だ」
事態が落ち着いたグワダンでニャアンがハマーンから見せられたのは【黒いキュベレイ】であった。言うようにキュベレイMK―IIとして製造予定だった機体をアクシズから【諸事情で持ち出して】グワダン内で急遽に仕上げた機体だが、ニャアンには何故自分にとする疑問があった。それに対して酷薄な笑みで返された。
「少しでもニュータイプと思える者をぶつけないと、あのガンダムからお前のお友達を救い出せないと思ったからさ・・・・」
【お友達】
ハマーンがマチュの暴走をあのガンダムが一因としているのは流石に見抜かれているのはともかく、自分とマチュの関係は本当にそうなのかわからないのがニャアンの現実。少なくとも釣り合う力が無ければ相手にはされないし乗りたい流れに乗れないと難民の自分にはわかっている。現に置いてかれてしまった。
「これを使って、私にシュウちゃんを探す許可を貰えますか?」
「成果次第だ。私はお前にコレを使いこなして欲しい理由があるのでな・・・・しかし、何なのだお前の頭に乗っているのは?」
「これは【コンチ】です。シュウちゃんが何故かスイッチを切りっぱなしにしてた小さなダンボールみたいなロボットで、借りてて返せなかった・・・・」
確かに小さなダンボールみたいなゲーム機に四足を付けた奇妙なものだが、ハマーンからしたら【アクシズで出会った幼女】よりはマシだとして問題にはしなかった。
誰が一番怖い事を考えてるか?な回。